(C:\\Users\\Kajii\\Desktop\\\220V\202\265\202\242\203t\203H\203

06d 自然流産・死産の染色体分析
自然流産・死産の染色体分析
図1.絨毛と脱落膜の関係
妊婦の 15%~
15%~20
%~20%が自然流産し
20%が自然流産し、
%が自然流産し 、その 50%~70%が染
50%~70%が染
流産標本を無菌の Ringer 氏液(または生理的
色体異常を持ち、
色体異常を持ち 、全妊娠の 7.5%~
7.5%~14
%~14%に相当します
14%に相当します。
%に相当します 。
食塩水)
食塩水)中で血液を洗い流し、
中で血液を洗い流し 、胎盤の絨毛1cm
胎盤の絨毛1 cm3 を
自然流産の率は母年齢と共に増加して 35 歳で 25%
無菌的に切り採ります。
無菌的に切り採ります 。輸送用の培養液入りのチュ
に達し、4
に達し、 4 回の妊娠に一回は流産することになりま
ーブに入れて密栓し、
ーブに入れて密栓し 、チューブの首にパラフィルム
す。死産の染色体異常(
死産の染色体異常 (6%)、新生児の染色体異常
を巻いて保護して 4℃で輸送します。培養液入りの
(0.83%
(0.83 % ) を加えると、妊娠 6 週~12
週~ 12 週の胎児の
チューブが手元になければ、滅菌した Ringer 氏液
10%以上が染色体異常を持つと推定されます。
10%以上が染色体異常を持つと推定されます。 3 回
または生食を滅菌チューブに入れ、
または生食を滅菌チューブに入れ 、絨毛を入れて密
以 上 続 け て 流 産 す れ ば 習 慣 性 流 産 ( habitual
栓してください。
栓してください。採取後 1 日以内に到着するのが望
abortions)と呼びます。
abortions)と呼びます。
ましいのですが、4
ましいのですが、4℃に 2~3 日保存した後に輸送し
ても大丈夫です。 凍結したりフォルマリン固定し
自然流産の染色体分析の需要は根強いものがあ
ります。
ります。1)妊婦・
妊婦・医師が流産の原因を知りたいの
たりしてから送られてきた検体は、
たりしてから送られてきた検体は 、培養できません。
は当然と言えましょう。
は当然と言えましょう 。2)染色体異常があれば流
検体の 10%は絨毛を含まない脱落膜だけなので、母
10%は絨毛を含まない脱落膜だけなので、母
産の原因だと特定でき、
産の原因だと特定でき 、流産による妊婦の罪悪感を
体細胞を分析することになり、
体細胞を分析することになり 、無駄です。
無駄です。このよう
取り除くことができます。
取り除くことができます 。3)妊娠中に認めた異常
な無駄を避けるために、
な無駄を避けるために 、必ず絨毛を選んでください。
(例えば頚部透明像の拡大)と染色体異常 (45,X、
(45,X、
血液を生理的食塩水で洗い流せば、
血液を生理的食塩水で洗い流せば 、肉眼で絨毛を選
トリソミー 18、トリソミー
18、トリソミー 21) の関係を証明でき
ぶことができます。
ぶことができます。実体顕微鏡下で観察しながら絨
ます。
ます。4)流産胎児で染色体構造異常を発見したら 、
毛を取り分ければ、さらに確実です。
絨毛以外の組織(
絨毛以外の組織(胎児皮膚・
胎児皮膚・その他の組織・
その他の組織 ・羊水)
羊水)
両親の染色体を分析することによって均衡型構造
異常の保因者を同定し、
異常の保因者を同定し 、次の妊娠で出生前染色体分
は細胞が死んでいることが多いので 、特別な場合―
特別な場合―
析によって異常児の出生を予防できます 。このよう
例えば複数の組織の染色体構成を知りたいとき―
例えば複数の組織の染色体構成を知りたいとき―
な事情をふまえて、
な事情をふまえて 、自然流産の染色体分析を解説し
以外は避けてください (Johnson et al., 1990)。
1990)。
2)人工流産 (または新鮮な組織)
または新鮮な組織 )
ます。
胎児の皮膚・肺組織を選びます。死亡直後なら 、
末梢血から採取した血液でも分析できます。
1.流産組織の採取と輸送
1)自然流産胎児
3)死産
1
06d 自然流産・死産の染色体分析
死産では胎児の皮膚・
死産では胎児の皮膚 ・末梢血が送られてくること
4.反覆流産胎児の染色体
が多いのですが、
が多いのですが 、培養の成功率が低いので、
培養の成功率が低いので 、胎盤絨
トリソミーの流産後にはトリソミーの流産を繰
毛を選ぶべきです。
り返す傾向がありますが、
り返す傾向がありますが 、高齢の妊娠でトリソミー
が多いことを反映したもので、
が多いことを反映したもので 、母年齢の影響を修正
2.母体内膜細胞の混入
絨毛には母体脱落膜が付着しています 。実体顕微
するとこの傾向は殆どないとされていました
鏡下で観察しながら絨毛をできるだけ取り除きま
( Morton et al., 1987)。しかし、自然流産で各種
1987)。しかし、自然流産で各種
す が 、 完 全 に は 除 け ま せ ん 。 46,XY/46,XX
46,XY/46,XX 、
のトリソミーを認めその後の妊娠で出生前染色体
47,XX,+21/46,XX などの核型では、 46,XX は母体脱
分析をした北米のデータによると 、母年齢その他の
落膜由来と考えます。46,XX
落膜由来と考えます。 46,XX でも絨毛由来細胞が脱
影 響 を 除 い て も ト リ ソ ミ ー は 通 常 の 1.8 倍 で す
落膜由来細胞に制圧された可能性は常にあります 。
(Warburton et al., 2004)
2004)。トリソミー 13,
13, 18,
18, 21,
このような問題があるにも関わらず絨毛を培養す
XXX, XXY
XXY のような出生する可能性のあるトリソミー
るのは、
るのは、生きている可能性が最も多い組織だからで
の流産では次の妊娠でトリソミーが多くなる傾向
す。母体の血液が混じることがありますが 、培養の
があるので、
があるので、出生前診断をすることは理論的に適当
途中で洗い流されるか死滅してしまいます。
だと思われます。
3.自然流産胎児の染色体異常
5.Confined
5.Confined placental mosaicism (CPM)
自然流産胎児の 50%~70%
50%~70%が染色体異常を持ちます
%~70%が染色体異常を持ちます
絨毛を培養すると、
絨毛を培養すると 、絨毛内部の間質 (stroma) 由
が、その大部分は数の異常 (45,X; 各種のトリソミ
来の線維芽細胞が増殖します。
来の線維芽細胞が増殖します 。絨毛の間質は内細胞
ー ; 三倍体;
三倍体; 四倍体)で、均衡型・不均衡型構造異
塊の下層 (hypoblast) 起源です(
起源です(表2)
表2)。これに対
常は 2%に過ぎません(
%に過ぎません(表1)
表1)。構造異常の半分が親
して、
して、直接法で分析できるのは絨毛外側の栄養膜細
の均衡型構造異常に由来し、半分が de novo (新生)
新生)
胞(trophoblast
胞( trophoblast)です。胎児の組織を培養して増
trophoblast)です。胎児の組織を培養して増
です。
です。核型が正常な流産胎児でも、
核型が正常な流産胎児でも 、大部分は何らか
殖する線維芽細胞胞は内細胞塊の上層 (epiblast)
の奇形(empty
の奇形(empty sac~部分奇形)を伴います。
sac~部分奇形)を伴います。
に由来します。
に由来します。同じ線維芽細胞でも発生の早期に分
かれた別のものです。
核型分析成功率の最も高かったのはスペインの
Morales et al. (2008) の半直接法による分析です。
絨毛と胎児組織を別々に培養して絨毛でトリソ
分析成功率は 89%で、染色体異常は
89%で、染色体異常は 80%でした。流産
80%でした。流産
ミー/
ミー /正常モザイク、胎児で正常核型のことがあり
絨毛を 20~
20~24 時間培養後に染色体標本を作製します。
ます(図2)
ます(図2)。confined placental mosaicism (CPM)
この程度の培養時間だと、母胎脱落膜由来細胞が分裂
と呼びます (Kalousek et al., 1996)。トリソミ
1996)。トリソミー
。トリソミ ー
する暇がありません。
16 の CPM は 胎 児 IUGR の 原 因 の 6 % を 占 め ま す
(Moore et al., 1997)。
1997)。
表1.自然流産胎児の染色体分析
核型
6.流産標本の染色体分析の限界
頻度(
頻度(%)
正常核型
50
異常核型
50
1)培養不成功
自然流産組織を培養して 100%成功することはあり得
100%成功することはあり得
45,X
8
ません。70%
ません。 70%なら良しとすべきです。培養に失敗した標
70%なら良しとすべきです。培養に失敗した標
三倍体
8
本からあらかじめ取り分けた組織を FISH 分析(13,
分析(13, 15,
四倍体
3
16, 21, 22, X, Y )した結果は 46,XX ( 31% )、 46,XY
トリソミー 2~22
( 33% ) 、 異 常 核 型 ( 36% ) で す ( Johanputra et al.,
23
構造異常
2
2010)。異常核型にはモノソミー
2010)。異常核型にはモノソミー 21、モノソミー
21、モノソミー 15 を含
その他
6
みます。
2
06d 自然流産・死産の染色体分析
表2.組織と細胞の発生起源
組織
絨毛
胎児組織
分析法
細胞の種類
発生の起源
(半)直接法 栄養膜細胞 (絨毛の外層)
絨毛の外層)
栄養膜細胞層
培養
線維芽細胞 (絨毛の間質細胞)
絨毛の間質細胞 )
内細胞塊の下層 (hypoblast)
培養
線維芽細胞
内細胞塊の上層 (epiblast)
図2.Confined
図2.Confined placental mosaicism (CPM)
7.胞状奇胎の染色体分析
2)46,XX
2)46,XX 核型
流産標本が 46,XX(正常女性)核型なら、
46,XX(正常女性)核型なら、①
(正常女性)核型なら、 ① 本当に
全奇胎(complete
全奇胎(complete mole)の
mole)の≧90%が
90%が 46,XX、<
46,XX、<10
、<10%
10%
正常女性核型、②
正常女性核型、 ②本当は 46,XY(正常男性)核型だが
46,XY(正常男性)核型だが
が 46,XY 核型なので、46,XX
核型なので、46,XX or XY であれば全奇胎の
脱落膜由来細胞に制圧された、 ③ 染色体異常を持つ
傍証になります。全奇胎は二倍性雄核発生( diploid
絨毛由来細胞が脱落膜由来細胞に制圧された、の三
androgenesis)
androgenesis) (雄性発生という用語はない ) 起源で
種の可能性があります。Johanputra
種の可能性があります。 Johanputra et al. (2010) の
すが、起源の追求には奇胎とその両親の染色体・ DNA
FISH 分析の結果では、①
分析の結果では、①が 72%、
72%、②が 8%、
8%、③が 20%で
20%で
の多型の比較が必要です。部分奇胎( partial mole)
mole)
す。
の主体は三倍体で、これに種々の核型異常が混じり、
稀に正常核型のこともあります。[06g
稀に正常核型のこともあります。 [06g 全奇胎と部分奇
比較的安価で自動化が可能な分析法を開発する必
胎] を参照。
要があります。13,
要があります。 13, 15, 16, 18, 21, 22, X, Y の8種
の FISH 分析は自然流産の染色体異常の 80%を検出で
80%を検出で
きますが、自動化できず高価です。 array CGH、
CGH、MLPA は
文献
自動化できますが、三倍体・四倍体を検出できず、高価
Johanputra V, Estives C, Sobrino A, Brown S,
です。13,
です。 13, 15, 16, 18, 21, 22, X, Y の 8 種をプロ
Kline J, Warburton D: Increasing yield and
ーブとする QF-PCR ができれば比較的安価で自動化で
accuracy
きますが、相互転座を含む構造異常を検出できません。
abortion specimens. 41th Biennial American
13, 18, 21, X, Y は生まれる可能性のあるトリソミーを
Cytogenetics Conference, May 13-16, 2010.
含み、15,
含み、15, 16, 22 は生まれる可能性はないけれども流
Johnson MP, Drugan A, Koppitch FC, 3rd,
3rd, Uhlmann
産に多いトリソミーを含みます。
of karyotypes
from spontaneous
WR, Evans MI: Postmortem chorionic villus
sampling is a better method for cytogenetic
3
06d 自然流産・死産の染色体分析
evaluation of early fetal loss than culture of
semi-direct analysis
abortus material.
samples detects the broadest spectrum of
Am J Obstet Gynecol 163:
of
chorionic
villi
chromosome abnormalities. Am J Med Genet
1505−
1505−1510, 1990.
A
146A:66−
146A:66−70, 2008.
Kalousek D, Vekemans M: Confined placental
mosaicism. J Med Genet 33: 529−
529−533, 1996.
Morton NE, Chiu D, Holland C, Jacobs PA, Pettay
Moore GE, Ali Z, Khan RU, Blunt S, Bennett PR,
D: Chromosome anomalies as predictors of
Vaughan JI: The incidence of uniparental
recurrence risk for spontaneous abortion. Am
disomy associated with intrauterine growth
J Med Genet 28: 353−
353−360, 1987.
cohort of thirty-five
Warburton D, Dallaire L, Thangavelu M, Ross L,
severely affected babies. Am J Obstet Gynecol
Levin B, Kline J: Trisomy recurrence: A
176: 294−
294−299, 1997.
reconsideration based on North American data.
retardation in a
Am J Hum Genet 75:376−
75:376−385, 2004.
Morales C, Sánches A, Brugera J, Margarit E,
Borrell A, Borobio V, Soler A: Cytogenetic
study
of
spontaneous
abortions
梶井 [2010
[2010 年 10 年 6 日:改訂]
日:改訂]
using
4