ur2006rd010-05

晴海高層アパート
-昭和 30 年代の高層集合住宅-
概要
来 るべき高 層 化 時 代 に 向 けて試 作 されたのが晴 海 高 層 アパートです。3層
6戸を 1 単 位 とし将 来 の規 模 可 変を許 容する大 架 構 、スキップアクセス、伝 統
的 な寸 法にとらわれない畳 の採 用 など数々の提 案 が盛り込まれました。
■ 高層住宅への取り組み
公 団 は 、設 立 当 初 か ら 都 市 部 に お い て 中 低 層 の 集
合 住 宅 の 供 給 を 行 う 一 方 で 、都 市 住 宅 の 一 つ の 形 態
と し て 高 層 住 宅 の 検 討 を 始 め 、昭 和 33 年( 1958)
に 晴 海 高 層 ア パ ー ト( 東 京 都 中 央 区 )と 西 長 堀 ア パ
ート(大阪市西区)の 2 つの高層集合住宅を建設
しました。
晴 海 高 層 ア パ ー ト は 、1957 年( 昭 和 32 年 )に
入 居 が 始 ま っ た 晴 海 団 地 の 中 に あ る 総 戸 数 168 戸
鉄 骨 鉄 筋 コ ン ク リ ー ト 造 10 階 建 の 集 合 住 宅 で す 。
設計は日本を代表する建築家である前川國男が行
いました。3 層 6 住戸分を一単位とするメガスト
ラクチャーの採用による住戸規模の可変性を持た
せ た 架 構 方 式 、ス キ ッ プ 形 式 の ア ク セ ス 方 式 、従 来
の寸法にとらわれない畳形状など戦後日本の合理
性 へ の 追 求 が 多 く 見 ら れ ま す 。外 観 も フ ラ ン ス の 建
築 家 ル・コ ル ビ ジ ェ 設 計 の 集 合 住 宅( ユ ニ テ・ダ ビ
タ シ オ ン )を 連 想 さ せ る 力 強 い も の で 、日 本 の 集 合
住宅歴史上ユニークな存在でした。
■ SI住宅のさきがけ
中 層 住 宅 と 同 じ コ ス ト で 高 層 住 宅 を 実 現 す る と い う の が 、晴 海 高 層 ア パ ー ト に 課 せ ら れ
た 課 題 で し た 。同 時 に 13 坪 と い う 制 約 も 将 来 の 規 模 拡 大 を 念 頭 に 入 れ た 設 計 が 行 わ れ
ま し た 。そ こ で 、構 造 体 の 主 要 部 分 は 耐 震 性 に 優 れ た 鉄 骨 鉄 筋 コ ン ク リ ー ト 構 造 と し ま
す が 、コ ス ト の 高 い 鉄 骨 の 使 用 量 を 減 ら し 、
将来の規模拡大を許容できる大架構を採用
します。これは同時に非廊下階住戸の居住
性向上やエレベーターの停止階が減ったこ
とによるコスト削減にも有利に働きました。
また、躯体をはじめとする施工精度を上
げることにより、取り合い部分の補修や仕
上げの左官工事を減らし、間仕切りや内装
は将来の改装に対応するようブロックや部
品化された木造作により構成されました。
こうした考え方は現代のSI住宅に通じる
ものがあります。
■ 復元した住宅
晴海高層アパートは、平成 9 年同団地を含む晴海
地 区 の 再 開 発 の た め 解 体 さ れ た た め 、エ レ ベ ー タ ー の
停 止 す る 共 用 廊 下 に 面 す る 住 戸( 廊 下 階 )と 、そ の 下
階 に あ っ て 、階 段 で ア ク セ ス す る 住 戸( 非 廊 下 階 )を
移 築・復 元 し ま し た 。特 徴 の 一 つ で あ る ス キ ッ プ 形 式
の ア ク セ ス も 再 現 し ま し た 。ま た 、公 団 初 設 置 の エ レ
復元した部分
ベ ー タ ー や 、複 雑 に な っ た 住 戸 へ の 道 筋 を し め す 案 内
板、屋外には 2 階の住戸ヘの専用の円形階段なども
展示しています。
●スキップ形式のアクセス
晴 海 で は 3 層 ご と に 廊 下 を 設 け 、上 下 階 の 住 宅 へ
はその廊下からアクセスします。廊下のない住宅の
プライバシーや通風採光に優れ、共用部面積を少な
くすることができます。
●廊下階住戸(2階の展示)
エ レ ベ ー タ ー の 停 止 す る 3 ,6 ,9 階 の 幅 の 広 い
廊 下 に は 、高 層 住 宅 で の 生 活 に 安 心 感 を 与 え る プ レ
キ ャ ス ト コ ン ク リ ー ト の し っ か り と し た 手 摺 、共 用
の 電 話 設 備 、外 流 し 、郵 便 受 け な ど が 備 え ら れ て い
ました。玄関の扉は引き戸です。
●非廊下階住戸(1階の展示)
非 廊 下 階 住 戸 の 展 示 で は 、高 層 ア パ ー ト で の 新 し
い住まい方を提案した当時のモデルルームの姿を
再 現 し て い ま す 。ス テ ン レ ス 製 の 流 し 台 は 量 産 化 が
成 功 し た 最 初 期 の も の で す 。便 所 は 、1958 年 か ら
正式採用される洋風便器です。
写真右上
廊下
写真右中
住戸内部
写真右下
ステンス製
流し台
写真左
2 階住戸専
用円形階段
円形階段