乾式脱硫脱硝技術 - 財団法人・石炭エネルギーセンター(JCOAL)

JCOAL平成26年度第1回勉強会
乾式脱硫脱硝技術
(ReACT :Regenerative Activated Coke Technology)
2014年 6月25日
ジェイパワー・エンテック株式会社
エンジニアリングセンター
井原 公生
1
JCOAL 勉強会, 2014. 6.25
内
容
1.JP-EnTech/ジェイパワー・エンテック(株)について
2.乾式脱硫脱硝技術(ReACT)
2.1 技術開発の経緯と取組状況
2.2 乾式脱硫脱硝技術の特色
2.3 納入実績紹介
3.まとめ
JCOAL 勉強会, 2014. 6.25
2
1.ジェイパワー・エンテック(株)の概要
2005年3月
ジェイパワー・エンテック㈱設立
(出資 J-POWER 100%)
2005年4月
J-POWERが三井鉱山㈱の乾脱エンジニアリング部門を吸収
2005年6月
J-POWERと三井鉱山㈱がJM活性コークス㈱を設立
(出資 J-POWER 51% 三井鉱山 49%)
JM活性コークス㈱が三井鉱山㈱より活性コークス製造事業を
営業譲渡
2007年
活性コークスを利用した排ガス処理技術のうち、ジェイパワー・
エンテック社の乾式排煙処理技術のことを「ReACT」と登録商標
注記 1) 三井鉱山→日本コークス工業(NCE)に社名変更
2) JMAC社出資比率 JP:90% NCE:10% に変更
3
JCOAL 勉強会, 2014. 6.25
ジェイパワー・エンテック㈱
乾式脱硫脱硝の
設備設計、エンジニアリング
設立: 2005年3月
株主: J-POWER(100%)
活性コークスの
製造・販売
統合エンジニアリング
JM活性コークス㈱
設立:2005年5月
株主: J-POWER(90%)
NCE(10%)
乾式脱硫脱硝技術の
実証・安定運用
J-POWER(電源開発㈱)
活性コークス製造プラント(北九州)
J-POWER 磯子火力発電所2号機
4
JCOAL 勉強会, 2014. 6.25
内
容
1.JP-EnTech/ジェイパワー・エンテック(株)について
2.乾式脱硫脱硝技術(ReACT)
2.1 技術開発の経緯と取組状況
2.2 乾式脱硫脱硝技術の特色
2.3 納入実績紹介
3.まとめ
JCOAL 勉強会, 2014. 6.25
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2. ReACTの概要(Regenerative Activated Coke Technology)
ReACTは、活性コークス(AC:Activated Coke)を利用して工場等の排ガスを
クリーンにする技術であり、水をほとんど使用せず、脱硫、脱硝、脱塵、ダイオキ
シン、水銀除去など複数種の微量汚染物質を一括処理する特徴を有している。
ReACTは、吸着工程、再生工程、副生品回収工程の3つの基本プロセスから
成り立っている。
< 吸着工程 >
< 再生工程 >
< 副生品回収工程 >
AC
AC
再生塔
*1 *
2
NH3
SO2 リッチガス
脱硫塔
排ガス
清浄ガス
煙 突
通風機
AC 貯層
副生品回収装置
オフガス
*3
*2
空気
活性コークス(AC)
燃料
熱風炉
AC
副生品
ダスト、AC粉
篩分機
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*3
6
*1
2.1 技術開発の経緯と取組状況
1970年代頃
1980年代頃
1990年代頃
排煙脱硫技術
の開発
脱硫・脱硝技術
の開発
ダイオキシン対策
硫黄酸化物(SOx)の排出規制
1968
K値規制(第一次規制)
1974 SOxの総量規制
排煙脱硫装置の開発
1966 通産省 大型工業技術研究開発
1970 実用装置稼働
1970代頃の主な開発中の脱硫プロセス
脱硫プロセス
湿式
乾式
吸収剤又は吸着剤
副生物(処理)
石灰石-石膏法
石灰石
石膏
Reinluft法(ドイツ)
褐炭半成コークス
硫酸
水洗脱着活性炭法
活性炭
硫酸
BF(Bergbau-Forshung)法(ドイツ) 活性コークス
硫酸
【参考文献】河添邦太朗、「燃焼排ガスの脱硫プロセスについて」(1968)
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2.1 技術開発の経緯と取組状況
図2.1 Reinluft法(ドイツ)
図2.2水洗脱着活性炭法
【出典】河添邦太朗、「燃焼排ガスの脱硫プロセスについて」(1968)
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2.1 技術開発の経緯と取組状況
1970年代頃
1980年代頃
1990年代頃
排煙脱硫技術
の開発
脱硫・脱硝技術
の開発
ダイオキシン対策
窒素酸化物(NOx)の排出規制
1973
排出基準(第一次規制)
1982
NOxの総量規制
排煙脱硝装置の開発
1970頃 アンモニア接触還元法(SCR)研究盛ん
1970後半 実用化
三井-BF式乾式同時脱硫脱硝プロセスの開発
1980 旧・三井鉱山がBF社と技術提携し、乾式脱硫脱硝技術の開発開始
1981 パイロットテスト(1,000m3N/h)実施
活性コークス製造パイロットプラント(0.5t/日)運転開始
1984 自家発用ボイラ(30,000m3N/h)に実証機を納入
1987 重質油接触分解装置の排ガス処理装置として実用化1号機を納入
1995
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乾式脱硝装置としてJパワー竹原火力発電所2号機(FBCボイラー、
350MW) に大型石炭火力向け1号機を納入。
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2.1 技術開発の経緯と取組状況
1970年代頃
1980年代頃
1990年代頃
排煙脱硫技術
の開発
脱硫・脱硝技術
の開発
ダイオキシン対策
ダイオキシン類の排出規制
1998 廃棄物焼却炉のばいじん規制強化
1999 ダイオキシン類対策特別措置法
三井-BF式乾式同時脱硫脱硝プロセス→ReACTの開発
1990後半 ダイオキシン除去試験実施
2000頃 都市ごみ焼却炉、焼結炉へ納入
2005
2007
2009
2009
2013
ジェイパワー・エンテック社設立
ReACT登録商標
乾式脱硫装置としてJパワー磯子火力発電所新2号機(USC、600MW)に納入
米国環境設備メーカのHamon Research-Cottrell, Inc(HRC社)と技術提携
HRC社が米国内発電所向けにReACTを初受注
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2.2 湿式脱硫と乾式脱硫の脱硫反応比較(1/2)
Boiler
Desin Temp. :3
Desin Press.
SCR
AH
脱硝
装置
空気
予熱器
Non-leak GGH
1. 湿式脱硫システム例
ESP
電気集塵器
FG D
脱硫
装置
Stack
79 C
脱硫排水処理
放流
2. 湿式石灰石-石膏法排煙脱硫装置の脱硫反応
[吸収]
SO2 + H2O → H2SO3
CaCO3 + 2H2SO3
→ Ca2 ++2HSO3-+H2O+CO2↑
[石膏製造]
SO42- + H2SO3
2HSO3- + 1/2O2 →
2HSO3- + O2
→
2SO42- + 2H +
CaCO3 + 2H+
→
Ca2 + + H2O + CO2↑
Ca2+ +SO42- + 2H2O → CaSO4・2H2O ↓
湿式脱硫装置の進展:スーツ分離方式→スーツ混合方式→塔内酸化方式
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2.2 湿式脱硫と乾式脱硫の脱硫反応比較(2/2)
1. 乾式脱硫システム例
ReACT
2. 乾式脱硫装置の脱硫反応
脱硫反応のイメージ
① NH3の注入無し
SO2 + 1/2O2 + H2O → H2SO4
② NH3の注入有り
SO2 + 1/2O2 + H2O+ NH3 → NH4HSO4
SO2 + 1/2O2 + H2O+ 2NH3 → (NH4)2SO4
O2
SO2
H2O
O2
H2O
SO2
O
O2
O
SO3
SO2
O2
H2O
O
O
H2O
O2
O
H2SO4
活性コークス
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2.2 活性コークスと活性炭の比較(1/2)
項
目
比表面積 [m2/g]
機械的強度 [ % ]
着火点 [℃]
SO2 吸着量 [mg-SO2/g-AC]
初期脱硝性能 [ % ]
活性コークス
活性炭
150 - 300
700 - 1,000
> 95
> 380
60 - 120
Fresh:45-55
Used:80-85
70 - 85
250 – 300
100 - 150
Fresh:10-40
Used:50-60
活性コークス製造フロー
原料炭
乾燥
破砕
混練
成型
乾留
賦活
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2.2 活性コークスと活性炭の比較(2/2)
脱硝率 (%)
SO2吸着能 (mg-SO2/g)
【出典】K.Tuji and I. Shiraishi、「Combined desulfurization and reduction of air
toxics using activated cike」,FUEL(1997)
BET比表面積 (m2/g)
図2.3 活性コークスと活性炭のSO2吸着能と
比表面積の関係(新品vs使用品)
図2.4 活性コークスの元素組成と脱硝率の関係
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2.2 ReACT 主要反応のメカニズム(1/2)
脱硫反応機構
① NH3の注入無し
SO2 + 1/2O2 + H2O → H2SO4
② NH3の注入有り
SO2 + 1/2O2 + H2O+ NH3 → NH4HSO4
SO2 + 1/2O2 + H2O+ 2NH3 → (NH4)2SO4
脱硝反応機構
再生反応
ACは400-500℃にて加熱再生
H2SO4 +1/2C→ SO2 +1/2CO2+H2O
NH4HSO4→SO2+1/3N2+1/3NH3+2H2O
脱硝反応のイメージ
① SCR脱硝※
NO + NH3 +1/402 → N2 + 3/2H2O
② 窒素官能基による脱硝(Non-SCR)
NO + NHxO-AC → N2 + H2O + OH-AC
※ACが金属触媒と同様に作用
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ダイオキシン除去
ダイオキシン類は、吸着塔でACに吸着され、
再生塔で400〜500℃で加熱再生される時に
99%以上分解される。
re
Po
soMe
Macro-Pore
2.2 ReACT 主要反応のメカニズム(2/2)
DXNsの分解(無害化)
Micro-Pore
再生時に分解
→99%以上
: Dioxins
水銀除去
水銀は、吸着塔でACに吸着される。
反応式は右記のとおり。
Hg0
→
Hg0*
HgCL
→
HgCL*
HgCL2
→
HgCL2*
Hg + H2SO4*
→
HgSO4*
Hg + 1/2O2
→
HgO*
HgO* + H2SO4* →
HgSO4*
( *:吸着反応)
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2.2 ReACT プロセス
(2) 2塔方式
(1) 1塔方式
コンベヤ
副生品
回収装置
コンベヤ
副生品
回収装置
排ガス出口
排ガス出口
脱硝塔
排ガス入口 脱硫塔
AC貯槽
排ガス入口
AC貯槽
脱硫塔
コンベヤ
篩分機
コンベヤ
篩分機
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2.2
ReACT 鳥 瞰 図
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2.2
ReACT 運用実績
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2.2 ReACTの特徴
 複数の汚染物質の同時除去が可能
本技術による排煙処理は、SO2の除去(回収)、窒素酸化物
の分解 (無害化)、集じん、微量物質の水銀、ダイオキシン等
の複数の汚染物質を一括処理できる。
 低温での脱硝が可能
 用水の使用量が少ない(1/10以下に節水)
 副産物(硫酸/石膏/単体硫黄)は選定可能で化学
工業との連携が可能
以上の特徴から、結果的に次のメリットが得られる。
 所要敷地面積削減
 省エネ
 水資源の節約
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2.3 ReACT納入実績(三井-BF式を含む)
・ 国内14基、国外2+(1)基
プラント (国名)
排ガスの種類
1
A(日本)
石炭燃焼ボイラー
排ガス量(mN3/h)
[出力(MW)]
30,000
2
B (日本)
重質油接触分解装置
3
C (ドイツ)
石炭燃焼ボイラー
4
D (ドイツ)
5
運転開始
副生成物
10 / 84
単体硫黄
236,000
4 / 87
単体硫黄
451,000
7 / 88
硫酸
659,000
7 / 88
硫酸
石炭燃焼ボイラー
323,000
8 / 89
硫酸
E (日本)
ごみ焼却炉
32,000
12 / 94
―
6
J-POWER(日本)
FBCボイラー(竹原2号機)
1,163,000 [350]
7 / 95
―
7
F (日本)
重油ボイラー
457,000
8 / 99
硫酸
8
G (日本)
都市ごみ焼却炉
19,200
6 / 00
―
9
H (日本)
ごみ焼却灰セメントキルン
108,000
2 / 01
―
10
I (日本)
焼結炉
1,100,000
11 / 01
硫酸
11
J (日本)
焼結炉
1,700,000
3 / 02
硫酸
12
K (日本)
焼結炉
1,100,000
2 / 03
石膏
13
L (日本)
焼結炉
1,100,000
12 / 02
石膏
14
M(日本)
都市ごみ焼却炉
72,000×2系
1 / 07
―
15
N (日本)
焼結炉
1,023,700
1/09
石膏
16
J-POWER(日本)
石炭燃焼ボイラー(磯子2号)
1734,000 [600]
7/09
硫酸
17
O(米国)ライセンス
石炭燃焼ボイラー
1,400,000
10/16
硫酸
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3. まとめ
「エネルギー白書2014」より抜粋
◆ エネルギーセキュリティの向上やエネルギーコストの削減、環境負荷低減
の観点から、石炭や天然ガス等の化石燃料の高度利用は重要な課題です。
中でも石炭については、温室効果ガスの排出量が大きいという問題がありま
すが、地政学的リスクが化石燃料の中で最も低く、熱量当たりの単価も化石
燃料の中で最も安いことから、安定供給性や経済性に優れた重要なベースロ
ード電源の燃料として再評価されており、高効率石炭火力発電の有効利用等
により環境負荷を低減しつつ活用していくエネルギー源です。
本技術(ReACT)は
①石炭を原料とした活性コークスを利用(石炭の高度利用)
②石炭燃焼排ガス中のSOx、NOx、ばいじんに加え、ダイオキシン、水銀な
ど複数種の微量汚染物質を一括処理する優れた環境性能を有している。
③湿式脱硫と比較し、用水の使用量を1/10以下に節水し、かつ、排ガスの再
加熱が不要であり、結果として、所要敷地面積削減と省エネが得られる。
以上から、JPエンテックはReACT事業を推進することで、世界の水・大気環境
保全とエネルギー安全保障に貢献していきたいと考える。
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