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第12回大麦食品シンポジウム
「東京慈恵会医科大学附属病院に
おける大麦食品の利用とその効果」
平成26年10月25日(土)
東京慈恵会医科大学附属病院
栄養部 濱 裕宣
本日お話すること

慈恵大学の紹介

慈恵大学と麦飯

大麦食品の利用と効果
本日お話すること

慈恵大学の紹介

慈恵大学と麦飯

大麦食品の利用と効果
慈恵大学の基本理念Ⅰ
建学の精神 「病気を診ずして病人を診よ」
明治14年(1881年)学祖高木兼寛により、成医会講習所が開
設され、英国医学を教授したのが始まりです。翌年の明治15年
に有志共立東京病院、明治18年に日本で初めての看護師養
成所を設立しました。
慈恵大学の基本理念Ⅱ
2.病院の理念
●患者さまの立場にたった医療の実践
●最高かつ最善の医療の提供
●良き医療人の育成
3.栄養部の使命
栄養部は給食管理と臨床栄養管理をバランス良
く機能させ、 より良い食事と栄養食事指導を
もって、患者さまの病態改善・治療・治癒に貢
献します。
東京慈恵会医科大学附属病院
葛飾医療センター
附属病院
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所在地:港区西新橋
届出床:1,075
使用床:1,051
平均在院日数:11.6日
1回700食
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所在地:東京都葛飾区
届出床:356
使用床:356
平均在院日数:10.9日
1回230食
晴海トリトンクリニック
第三病院
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所在地:東京都狛江市
届出床:581
使用床:560
平均在院日数:13.5日
1回400食
柏病院
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所在地:千葉県柏市
届出床:624
使用床:582
平均在院日数:13.2日
1回400食
本日お話すること

慈恵大学の紹介

慈恵大学と麦飯

大麦食品の利用と効果
高木兼寛と脚気
• 英国セント・トーマス病院医学校に留学後、1880年1
1月に帰国。東京海軍病院院長を任命される。
• 脚気患者の多さに驚き、本格的に脚気の研究を始め
、撲滅に全精力を傾けることを決意した。
• 脚気の原因を探究するのに、「生活環境(衣食住)」
から始めたことは、当時としては極めて画期的なこと
であった。
• 徹底した調査の中でも、衣と住には脚気の原因を裏
付ける事象は見いだせず、「食」に目をつける。
高木兼寛と脚気
• 「食」に関係する根拠として、練習艦筑波の二度の航
海での脚気発生に関する報告書であった。
一度目:日本→サンフランシスコ碇泊→帰国
二度目:日本→シドニー碇泊→帰国
• いずれの場合にも、港に碇泊している間は脚気患者
は皆無であったが、航海が始まると急増した。
外国の港に碇泊中は、洋食(パン、肉食)を食べていた
から、脚気患者の発生がなかったと推測した。
高木兼寛と脚気
• 更に海軍兵士の階級と脚気患者の発生を調査した。
(階級によって食事に費やす費用に違いがあった)
多い
少ない
囚人
水兵
下士官
将校
食事の質に原因があり、炭水化物過剰で蛋白質が過
少であると発症し、反対にこの量比が標準値(蛋白質:
炭水化物=1:6すなわちN:C=1:15)に近い(パン食、
麦飯食)ときには発症しない。
高木兼寛と脚気
• 練習艦「龍驤」と「筑波」の乗組員を使った壮大な航
海実験を行う
1883年の龍驤には米飯食、1884年の筑波には洋食を積み、各
約300名、同じコースを9ヶ月間航海した。
結果:龍驤 169名重症患者が発生(内25名もの兵卒が死亡)
筑波 脚気発症0名
しかし、パン食は腹持ちが悪く、乗組員からは不評であ
ったため、腹持ちの良い「麦飯」が定着した。
高木兼寛と脚気
一世紀前の医学界で実際にあった「脚気」にまつわる話で、日本を代表する医
者達が「海軍と陸軍」、「イギリス医学とドイツ医学」に分かれて繰り広げた「面子
と強情な無責任さ」が招いた歴史的な悲劇である。
陸軍
海軍
英医学
疫学
脚気栄養説:高木兼寛
対立
独医学
(東大閥)
病理学
脚気細菌説:森林太郎
●1894年日清戦争:白米の陸軍と麦飯の海軍における脚気患者の数、海軍では脚気
患者0、陸軍は4万人を超える患者で、入院患者の1/4が脚気、銃砲で傷ついた傷病兵
数の11倍の兵士が脚気であり、死者は4千人を超えた。
●1904年日露戦争:海軍では105人の脚気患者、陸軍は25万人の脚気患者を出し、3
万人近い兵士の命が犠牲となった。
脚気論争
• 陸軍医(森林太郎)・・・脚気菌説
• 海軍医(高木兼寛)・・・栄養欠陥説
この激しい論争は、1924年に臨時脚気病調
査会が、「脚気ビタミンB欠乏を主因として
起こる」という結論を下すまで続いた。
高木兼寛の麦飯論
『麦に勝る米はない。麦は初めは食べにくいが慣
れてくると麦の方が食う時の味も食うた後の腹工
合も好く、実に一挙両得の食品である。麦を食す
れば家族が脚気になることはなくなる。来訪の人
には麦飯は無礼であるという人があるが、私の宅
では明治18年(1885年)以来白いご飯を人に上げ
たことがない。どんな祝事があっても、遠方から
珍客があっても麦飯を供することに致している。
なるほど、白い飯は外観は立派だが、人に与えれ
ば、人のために害になると知っていながら知らぬ
振りをして上げることはできない』
本日お話すること

慈恵大学の紹介

慈恵大学と麦飯

大麦食品の利用と効果
慈恵医大での取組み
• 4機関において、毎昼食に麦ご飯を提供。
(献立:31献立サイクル、内4献立は麦飯&とろろ)
慈恵医大での取組み
• 基本献立に麦料理を取り入れ
•
•
•
•
ミートローフ
麦とオクラの和え物
麦入りふろふき大根
麦とひじきのサラダ
慈恵医大での取組み
• 個室の一品として、麦入り小鉢を提供。
• 大麦のひじきサラダ
• 大麦とわかめの梅サラダ
• たっぷり麦の白和え
• 麦入りねばねば小鉢
大麦(βーグルカン)の効果
• 食後の血糖値の上昇を抑える
• 正常な腸機能の維持
• 排便促進効果
• 心疾患のリスクが減る
• コレステロール値の低下
• 満腹感の維持
• 内臓脂肪の低減
大麦(βーグルカン)の効果
• 食後の血糖値の上昇を抑える
• 正常な腸機能の維持
• 排便促進効果
• 心疾患のリスクが減る
• コレステロール値の低下
• 満腹感の維持
• 内臓脂肪の低減
本邦における戦後の糖尿病有病率と食環境の推移
エ 脂穀
ネ
ル 肪物
ギ
ー
(kcal)
2400
(g)
70
60
「 糖尿病が強く疑われる人」+
「 糖尿病の可能性を否定できない人」=「 合計」
(%)
20
穀物摂取量
(大麦・雑穀等)
平均エネルギー摂取量
50
「 糖尿病の可能性
を否定できない人」
40
2100
10
脂肪摂取量
30
20
10
1800
「 糖尿病が強く疑われる人」
糖尿病
0
1950
1960
1970
1980
1990
2000
2007
注) 各摂取量は1日当たりの平均
1) 国民栄養の現状(1950~2002)および国民健康・栄養調査(2003~2007)から引用作図。
2) 糖尿病推定有病率はGoto Y.Tohoku Journal of Experimental Medicine(1983)および,
厚生労働省の糖尿病実態調査報告(1997,2002,2006,2007)から引用作図。
3) MAG21研究会HPより引用 慈恵医大横田邦信教授ら作成
MAG20120127
糖
尿
病
推
定
有
病
率
48歳男性 50gブドウ糖、糖質含有量を50gに統一した4食品
を常温水150mlと共に3時間毎に摂取したときのCGMの結果
ブドウ糖 フランスパン 白米ご飯 玄米ご飯 日本そば
食事摂取開始から2時間までの血糖上昇下面積
を計測して数値化したものがGIです、糖質50gの
食品でも、このように食べ物により違いがでます
持続血糖モニタリングシステム
低GIごはんが血糖値を下げる(NHK出版)より転載
第11回日本GI研究会 慈恵医大 西村理明氏の発表より
野菜から先に良く噛む効果
運動効果
低GIごはんが血糖値を下げる(NHK出版)より転載
第11回日本GI研究会 慈恵医大 西村理明氏の発表より
GI測定の統一プロトコール(日本GI研究会推奨)
○被験者
1グループ10名、20~50才までの男女、BMI30以下、過去1年間の検査で耐糖能異常がないこと、降
圧剤など薬剤の服用がないこと、事前にヘルシンキ宣言に則ったインフォームドコンセントを行ない
了承を得ていること、前日の検査より1日以上経過していること、生理期間中は未実施
○検査日
朝食を摂らない(お茶程度は可)、午前7~9時に実施する、摂取前に指をアルコールで消毒し、よく
乾かし空腹時の血糖①を測定する、(どの指でも可)空腹時血糖が70から110以内であれば測定可、
摂取開始から15分②・30分③・45分④・60分⑤・90分⑥・120分⑦の血糖を測定する、※食べ終わっ
てから15分でなく、摂取開始から15分
IAUCとは、(The incremental area under the blood
○摂取時間
5~10分で行なう (一口30回程度噛む事)、測定中は 180
喫煙を避け静かな立ち仕事や座位の仕事程度にす 170
る、10名以上の平均でGIを算出する
160
150
○検査機器
簡易採血機で自己採血を行い、自己血糖測定器で 140
130
測定する
120
○基準食
サトウのご飯147g (2回摂取しC.V.25%以内であれば 110
100
可) 糖質50g相当 + 薄めのお茶(白湯)150cc
90
○検査食
80
糖質50gに相当する食品
glucose response curve)
血糖上昇下面積
IAUC=A+B+C+D+E+F
(Gの面積は引かない)
55
40
22
20
C
B
D
E
A
0
10
F
G
-10
0
15
30
45
60
90
120
糖尿病者を対象に糖質量を合わせ摂取し血糖値を測定
基準食献立
白米ごはん 白菜の味噌汁
高野豆腐の煮物
大根のきんぴら風 塩もみ
エネルギー512kcal たんぱく質17.9g
脂質9.2g
炭水化物 87.0g
食物繊維5.1g
糖質 81.9g
検査(高食物繊維+酢)食献立
→
→
麦ごはん 茸と若布の味噌汁
納豆 切干大根煮
酢の物
エネルギー516kcal
脂質9.5g
食物繊維11.1g
たんぱく質17.2g
炭水化物91.9g
糖質81.6g
第6回日本GI研究会 慈恵医大 山本恵美氏の発表より
血糖値の推移と血糖下面積(糖尿病者46名)
*P<0.05
血糖値(mg/dl)
200
14000
n46
180
12000
基準食
160
10000
8000
6000
140
検査食
120
11223
8637
4000
基準食
検査食
2000
100
0
摂取前
60分
120分
210分
基準食
検査食
時間(分)
血糖値の下面積は、基準食11223に比べ検査食は8637と差
が認められ、基準食に比べ高食物繊維食+酢を添加した検査
食は、糖尿病患者に有効であることが確認された。
難消化性デキストリン添加米飯・パン・
麦ごはん・発芽玄米のGI
20~40代の男女25名に、食後の血糖値上昇を抑制する効果があると言われてい
る難消化性デキストリンを、米飯や食パンに添加した場合と添加しなかった場合の
食後血糖上昇の差異を検討した。並行して、市販されている包装米飯の麦ごはん、
発芽玄米摂取時についても同様の試験を試みた。
mg/dl
n25
140
包装米飯
147g
難消化性
添加米飯
161g
120
食パン 113g
難消化性
添加食パン
127g
100
包装発芽
玄米 153g
80
空腹
15分
30分
45分
60分
90分
120分
包装麦ご
はん 175g
包装米飯をGI100とすると、難
消化性デキストリン添加米飯
は90であった。食パンは79、
難消化性デキストリン添加食
パンは67であった。包装麦ご
はんは65、包装発芽玄米は65
と、低値を示した。
以上の結果から、難消化性デ
キストリンは食後の血糖値上
昇を抑制する効果があること
が実証された。
第2回日本GI研究会 慈恵医大 林進の発表より
いも類のGI
日本人が日常的に摂取しているにもかかわら
ずGIが明らかにされていない食品も多い。本研
究では芋類および雑豆類のGIを明らかにしたい。
対象者は、年齢19~24歳、BMI 30未満、耐糖
能異常でない一般健常人とし、各検査食につき9
~12名で測定を行った。検査食の糖質総量は、
50g(雑豆類は25g)に調製し、基準食には米飯
(サトウのごはん)を用いた。検査食は、芋類に
はさつま芋、じゃが芋、里芋、および長芋、雑豆
類には小豆、手亡(白インゲン)および金時を使
用した。
芋類または雑豆類単品では、生の長芋のGIは
基準食に比べて有意に低値を示した(p<0.01)。
本研究で用いた芋類のGIは生の長芋を除き、
いずれも高GI食品であった。長芋のGIは加熱に
より、生食に比べて高値となることが明らかに
なった。また、雑豆類はいずれも低GI食品である
ことが確認された。日常的な食事で摂取する芋
類および雑豆類がGIに影響を及ぼすことが示唆
された。
第9回日本GI研究会
静岡県立大学 若杉悠佑氏の発表より
ということは
• 低GIの『麦ご飯』と『とろろ』は、血糖値の上昇
を抑制する
最高のカップル!
糖尿病患者の栄養指導
食生活調査を行い、問題点の洗い出し
• 空腹感があり、主食の摂り過ぎ
• 間食がやめられない
• 野菜をあまり食べない
などなど....
改善案の提示
• 主食を白米から麦ご飯に置き換える
• 「大麦生活」などのサンプル
• 麦レシピの紹介
大塚製薬HPより
糖尿病患者の栄養指導
患者からの反応
•
•
•
•
•
•
•
精白米を麦ご飯に変えるだけなので楽
麦ご飯に変えて腹持ちがよくなり空腹感が軽減
食べる順番を気にしなくて良い
お通じが良くなった
間食の回数が減った
クラッカーは味気がなく、食べるのが辛い
ポタージュは溶けにくい
まとめ
• 大麦は血糖値の上昇を抑える作用がある
• ファーストステップとして、主食を置き換える
だけなので、患者が『ガマン』しなくてよい
• 主食を置き換えることで、その他の効果(食
欲の抑制、整腸作用など)が期待できる
ただし!!!
• 大麦を食べていれば、その他に『何を食べ
ても良い訳ではありません』のでご注意下
さい!!
慈恵医大レシピ本
• 12月中旬頃に病院食と麦
レシピの本を出版します。
乞うご期待!
レシピ本プロジェクトメンバー
ご清聴ありがとうございました