原版(カラー)はこちら

TAOGニュース
東京産婦人科医会
平成25年度定期代議員総会
去る3月22日(土)に東京商工会議所8階において平
成25年度第2回定期代議員会と総会が開催されました。
冒頭の挨拶で落合会長は、今回の保険点数改定における
帝王切開術の減点への抗議署名へのお礼を述べた上で、
問題点を指摘して抗議行動を続けていきたい旨の方針
が述べられました。平成25年度に逝去された物故会員へ
の黙祷に続いて、以下の報告と協議がなされました。中
心的な議題のひとつは、役員の交代時期における活動状
況の報告と次年度予算の策定です。もう一つは、かねて
からの懸案である本会の法人化に関する協議です。法人
化の目的は、TAOGニュースの新年号にも示されたよう
に、任意団体である本会が多くの公的な仕事を受託して
おり、また近年その割合が増加していることが挙げられ
ます。例えばNCPR講習会に対する 東京都からの補助
金や、公益財団法人となった東京都予防医学協会からの
癌研究協力費などです。
一方各支部においても会員の高齢化が進んでおり、再
活性化には抜本的な改革が求められています。
「法人化
によってさらに求心力を高めながら、東京産婦人科学会
との連携を強化する必要があります。 常務理事会内に
法人化検討委員会を設置して検討を重ねた結果、法人化
にはいくつものハードルがあり、そのために一時的な
支出も覚悟しなければなりません。し
かし本会の今後の発展を考えると、避
けて通れない道であろうと判断しまし
た」との落合会長はじめ理事会の意向
が表明されました。複数の代議員から
出された意見を含めての協議がなされ
た結果、全ての報告事項と協議事項が
原案通りに承認されました。法人化へ
の方向性と予算処置が固まったことに
より、本年秋頃の臨時総会で定款改定
等の具体的な決議がなされれば、本会
は平成27年度から一般社団法人に移行
することになります。
平成25年度定期代議員総会 ………………………………
会長挨拶 ……………………………………………………
副会長挨拶 …………………………………………………
第290回 臨床研究会を終えて …………………………
1
2
3
5
第286号(通巻293号)
NO.129
4
月 号
平成26年
2 0 1 4
§ 報 告
平成25年度事業について
平成25年度収支見込みについて
母体保護法改定と新規指定医及び指定医師更新について
おぎゃー献金について
法人化検討委員会について
選挙管理委員会設置について
事務局職員定年退職について
§ 協 議
第1号議案 平成26年度事業計画に関する件 第2号議案 平成26年度収支予算に関する件 第3号議案 一般社団法人の移行に関する件 総会終了後に、おぎゃー献金の贈呈式が行われました。
次に三枝選挙管理委員長より 平成26・27年度役員選
挙の結果報告がなされ、承認されました。
目 次
平成26年−27年度新役員
会 長 落合 和彦
副会長 中林 正雄、荻野 雅弘、山田 正興
監 事 岩本 絹子、木村 好秀
第27回東京産婦人科医会・東京産科婦人科学会合同研修会
並びに第369回東京産科婦人科学会例会を担当して ……… 7
東産婦医会筆伝 …………………………………………… 8
TOKYO ASSOCIATION OF OBSTETRICIANS & GYNECOLOGISTS
本会 E - Mail:[email protected] Web サイト http : //www.taog.gr.jp
1



平成26年度定期総会及び




定期代議員会のお知らせ




 日時:平成26年6月7日(土)



1.定期代議員会 午後4時から


2.定期総会 定期代議員会終了後




(午後5時頃予定)


 会場:主婦会館プラザエフ



千代田区六番町15


四谷駅【麹町口】から徒歩1分


電話:03 - 3265 - 8111


 報告事項



1.平成26年度行事予定について




2.部会・委員会・各支部人事について


3.平成25年度人工妊娠中絶統計について




4.本会顧問委嘱について


5.その他


 協議事項



第1号議案 平成25年度事業報告に関する件


第2号議案 平成25年度収支決算に関する件




その他


 懇親会(午後6時頃予定)


総務部 



今年は母体保護法指定医更新の年です
※今年の指定医更新の要領は今まで通りです
①日母研修シールは、9月末日までに、平成24年
度(青)平成25年度(ピンク)、合計6枚以上(指
定を受けて1年以内の場合、3枚以上)を日母研修
記録手帳に貼付して(研修記録手帳を紛失された
場合は、かわりの台紙に貼って)、各支部でまとめ
るか、又は個人で、東京産婦人科医会事務局へお
送りください。日本産婦人科医会研修シール不足
の場合は2枚まで、日本産科婦人科学会の研修シー
ル、日本医師会・東京都医師会主催の生涯教育制
度参加証を使用することも出来ます。
②指定医師更新申請書は、各所属地区医師会を通
して、東京都医師会に提出します。その際貼付し
たシールの枚数を記入する欄がありますので、貼
付けしたシールの枚数をメモしておいてください。
【更新申請書送付先】各所属地区医師会
【研修記録手帳送付先】東京産婦人科医会
プレグランディン腟坐剤の報告書提出のお願い
プレグランディン腟坐剤の報告書提出は年1回と
なっております。
毎年4月末日が締め切りです。平成25年度分(平成
25年4月1日〜平成26年3月31日)を期日厳守で本会
事務局までご提出ください。
用紙は東京産婦人科医会のホームページよりダウン
ロードできます。
◆
2
会長に再選されて
落合 和彦
このたび会員、代議員の皆さまのご
理解により、会長として再選いただき
ました。引き続き会務の舵取りを委ね
られましたことは身に余る光栄であり
ますと共に、その責任の重さを痛感し
ております。東京産婦人科医会は、現在「法人化」を目
指し、東京都をはじめ関係機関と鋭意折衝をおこなって
いるところでございます。代議員会、総会でご承認いた
だきましたスケジュール、すなわち平成27年4月の法人
化に向けて、作業を加速してまいる所存でございます。
そのためには執行部の継続性が求められることもあり、
3副会長は留任していただきました。私同様、よろしく
お願い申し上げます。
さて、東京産婦人科医会は会員約 1200 名を擁する、
全国的にも最も大きい医会でございます。しかし、会
員の高齢化、減免会員の増加により会費収入の減少が
顕著となり、また支部組織も同様の問題点をかかえ、
組織力の減退を招いております。これらの解決のため
には、何より若い産婦人科勤務医が医会に加入いただ
くことでありますが、そのためにはいろいろと小手先
の解決策を駆使することより、魅力ある組織を構築す
ることこそが必要であります。若い勤務医にとっても
生涯教育や母体保護法を中心とした社会活動の必要性
は十分に認識しておりますし、医局中心の医療提供体
制が次第に変化していることを感じている勤務医も少
なくありません。我々も学会と連携しながら今以上に
魅力的な事業展開をはかると共に、会員への迅速で的
確な情報提供を図りたいと考えております。そのため
には各支部が目的意識を明確にして一丸となって組織
力を高めることが必要であります。各支部が活性化す
ることこそが「元気な医会」をつくる根源になるので
あります。一方で本会の事業は増えることがあっても
減ることはありません。母体保護法指定医基準の見直
しにより、指定講習会の開催、更新事務など、より厳
格な運用が求められております。また東京都周産期協
議会をはじめとした母体搬送、胎児救急体制の整備な
ど行政と一体となった事業も増加しております。これ
らは、冒頭で申し上げた法人化を目指す大きな理由で
はありますが、事業の遂行のためには会員皆様のご理
解とご支援がなければ達成することができませんし、
これらの事業内容を皆様と共有化することこそが、会
員そして支部の目的意識の向上につながるものと確信
しております。どうか改めて先生方の力強いご支援と
ご協力を切にお願い申し上げまして、再選のご挨拶と
させていただきます。
副会長就任にあたり
出産育児一時金55万円実現にむけて
中林 正雄
安全で快適な妊娠・出産は最近の
社会のニーズであり、私たちはその
ために不断の努力を続けていますが、
産科医療資源は人的資源を中心とし
て枯渇しているのが現状です。対策
としては産科医療システムの改革と財政的支援が必須
であろうと思われます。
平成15年(2004年)厚生労働科学研究事業「産科領
域における安全対策に関する研究」(主任研究者 中林
正雄)では“妊婦のリスク評価”、“産科オープン・セ
ミオープンシステム病院の普及について”などの報告
と同時に“安全な妊娠・分娩のために必要な費用”(分
担研究者:佐藤仁)が報告されています(平成17年、
2005年4月)。それによれば、“安全性と快適性の確保
のためには、妊婦健診費用16万円と出産費用53万円の
合計69万円が必要になる”とされています。この報告
をもとに、当時この方面に特段ご理解のあった医政局
指導課 佐藤敏信課長(のちに医療課長、現健康局長)
を中心に協議を重ね、「将来的には50 〜 55万円を目指
す」ことと、平成18年には12年ぶりに35万円に増額す
ることが決定されました。そして平成21年に39万円(産
科補償制度掛け金3万円を加えて(42万円))となって
います。
全国の産科施設における出産費用の平均は約48万円
といわれていますが、医師当直料の正常化などに必要な
人件費アップを考慮すれば、今後は適正価格に増額する
必要があると考えます。
なお、妊婦健診については、当時2枚であった補助
券の増加については、厚労省としては地方自治体に決
定権が委譲されているため、困難であろうとの返答で
したが、第一次安倍内閣時代に5枚に増加し、その後
14枚(8万円相当)にまで増加したことは、全国の会
員の皆様のご支援の賜物と思われます。
一方、少子化対策は国として喫緊の課題であるにも関
わらず、かけ声だけで実態が伴っていないのは残念なこ
とです。消費税アップ分は福祉のために使用されること
になっているのですから、この機会に一時金55万円への
増額は真っ先に実行すべき政策と思われます。
(ちなみ
に、港区では出産費用が全国平均より高額であることか
ら、区から60万円を限度とした補助金が支給されます
し、世田谷区では第3子からは分娩費用は全額支給され
ます。
)
今こそ東京産婦人科医会が率先して現政権に出産一
時金55万円の実現を要求し、少子化に歯止めをかけ、産
科医慮システムを改革し、産婦人科の斜陽化を防ぐ絶好
の時期であろうと思います。
副会長に就任して
荻野 雅弘
会員また代議員の皆様に再選させて
頂き誠に有り難う在います。
これまでの落合会長の下での事業の
一つは会則改定であります。これは一
つに各種会議の成立要件である議決用
件を明確化することを目的としております。二つ目は第
二次医療圏に相当するブロックと地区医師会とを単位
とする各支部を結びつけること(ただし、多摩地区は現
行通り)を行ないました。また第三として事業部が会務
執行を弾力的に行なえるように改変しました。今期は皆
様のご理解の下に本会の法人化を実行に移らせて頂き
たいと考えています。
さて担当した部会を振り返りますと母体保護部の報告
ですが、先生方のお手元に日本産婦人科医会の本部より
3
平成26年度改定の指定医師必携が届いたと思います。今
期は母体法指定医更新の年ですが、平成26年度まではこ
れまでと同様に、月間報告とシール提出で手続きが更新
できます。企画として指定・更新のための研修会を開催
し、案内を配信しますが研修会の出席は必須のものでは
ありません。次に、献金部ですが担当の先生のご努力
で施設配分(クレヨンキッズ(調布市)車輌)、小口配分
(島田療育センター(多摩市)エアーマットレス)と4大
学(順天堂大学、東京女子医大、昭和大学、東京大学)
の研究費が配分されました。広報部はTAOGニュ-スが
年4回の発刊となり、医会員のみならず若い学会員にも
ご覧になって頂き医会の活動を十分ご理解して頂き、医
会へのご加入をお待ちしています。
最後になりますが、東京都から「性犯罪者被害者支援
事業」を東京産婦人科医会と警視庁にも協力して欲し
いとの要望が在りましたので新たな事業になろうかと
思っています。以上「会員のための会」をと常に考え、
皆様方のお力添えの下で医会発展に努めたいと思って
います。今後とも宜しくご支援をお願いします。
副会長の就任にあたり
山田 正興
この度、落合会長の下で3期目の副
会長に就任いたしました山田正興で
す。会員の皆様には平素から医会の運
営にご協力を賜り誠にありがとうござ
います。
さて、東京産婦人科医会は昭和23年に発足し60年余の
間、「任意団体」として活動してまいりました。2008年
12月に施行された民法の改正に伴う法人制度改革によ
り、いままで社団法人として活動していた法人の多くは
特例民法法人を経て、新たな法人を設立し、活動してい
4
ます。当会においても、会員数の減少と会員の高齢化が
進み、会費だけでは運営していくことが極めて難しい状
況に来ています。今後は東京都や東京都医師会等からの
委託を受け、会員のためだけでなく、都民のための事業
を行っていく必要があります。これまで以上に公益性の
高い事業を積極的に行っていくためには、法人化を取得
せざるを得ない状況に来ています。法人化への移行をス
ムーズに進めるため、ガバナンスとしての会則や職員就
業規則の変更、法人会計基準に沿った経理処理など一歩
一歩、着実に進めていかなければなりません。一方、新
たな専門医制度を踏まえた母体保護法のあり方、安心・
安全な妊娠・分娩の確立、妊娠期から始める児童虐待へ
の対応、子どもたちへの正しい性知識の普及・啓発等
様々な課題が山積しています。会員の皆様のより一層の
ご指導を頂き、医会の健全な運営をはかってまいります
ので、今後ともご指導いただけますようよろしくお願い
申し上げます。
平成26年−27年度常務理事選出される
平成26年4月1日に第1回理事会を通信でおこない、
会則第3章第15条、19条により以下の常務理事が選出
されました。
(50音順)
◎支部選出理事 10名 飯野 孝一(調布市)
、川嶋 一成(江東区)
小泉 邦夫(南多摩)
、鈴木 正明(墨田区)
髙木耕一郎(東女医大)
、中井 章人(日医大)
堀 量博(港 区)
、松本 和紀(豊島区)
室谷 哲弥(千代田区)
、吉野 一枝(中野区)
◎会長推薦理事 5名
亀井 清(港 区)
、北井 啓勝(南多摩)
是澤 光彦(杉並区)
、角田 肇(品川区)
宮崎亮一郎(江東区)
第290回 臨床研究会を終えて
学術担当常務理事 髙木耕一郎
要性が十分認知されていない可能性が考えられました。
児童虐待への対応は医会の重要な事業のひとつであり、
今後の参考にしていただければ幸いです。
今回の臨床研究会は平成26年1月18日(土)の16時か
第290回臨床研究会座長コメント
ら大手町・東京駅のトラストシティカンファレンス丸の
内という会場において、持田製薬との共催で開催しまし
演題1 「子宮内膜症診療の最新トレンド」の要旨
た。参加者は74名、うち女性が20名でした。会場につき
ましては東京駅構内が工事中ということもあり、大手町
演者 東京大学産婦人科学教室教授
からも東京駅からも道順がわかりにくかったこと、ま
た、会議室のあるビルが大きく、会場への案内が必ずし
大須賀 穣
もわかりやすいとは言えなかったことなど、会場へのア
クセスの問題がありましたことをお詫び申し上げます。 子宮内膜症とは、子宮内膜類似の組
織が子宮外に発育し、エストロゲン依
参加者を対象としたアンケート調査では、開始時刻につ
存性に発育する慢性炎症性増殖性疾
いては昨年度の1月に開催した研究会と同様に、従来の
患である。大須賀氏は、子宮内膜症と疼痛、卵巣嚢胞、
14時開始より16時開始について、60%(21/35;回収率
卵巣機能低下、希少部位病変、予防の四点について、自
49%)が「いつもより来場しやすかった。」との回答で
験例や自身の研究成績などを交えて、わかりやすく講演
した。また、会場の場所については、「いつもより来場
された。まず、子宮内膜症と疼痛については、月困難症
しやすかった。」が40%、
「かわらない。」が26%、
「いつ
患者では子宮収縮が増強していること、子宮内膜症患者
もより来場しにくかった。」が31%と、6割以上の方は
の子宮では子宮収縮の頻度、子宮内圧がすべて増加して
及第点を付けて下さいましたが、3割の方は来場される
おり、その収縮は、子宮内膜間質細胞の培養系でイン
のに苦労されたようでした。今後の会場の設定にあたっ
ターロイキン8(IL - 8)という炎症性サイトカインを介
ては、所在地のみならず、会場周辺の分かりやすさも重
している可能性を示した。そして、IL - 8産生は、同培
要であることを痛感いたしました。
養系でエストロゲンとプロゲステロンの添加により抑
講演につきましては、講演内容の理解度についての
制されることを示し、両者の混合剤である経口避妊薬
アンケート調査結果では、大須賀教授の講演について
(OC)の月経困難症患者への投与の有効性を子宮内膜間
は「よく理解出来た。」が54%、
「まあまあ理解出来た。」
が23%と、約8割が理解出来たとの回答でした。一方、 質細胞のIL-8産生抑制作用から説明した。子宮内膜症と
卵巣嚢胞については、癌化の問題を症例呈示により示
パネルディスカッションについては、途中退席された
方もあり回答数は減少しましたが、「よく理解出来た。」 し、チョコレート嚢胞の卵巣癌発症リスクは正常の8.95
倍であること、チョコレート嚢胞は0.72%の頻度で悪性
が39%、「まあまあ理解出来た。」が、44%であり、大
化するとの小林らの成績を紹介した。また、癌化のリス
須賀教授の講演と比較すると、若干、理解度が低いよう
に思われました。途中退席者が目立ったことと併せて、 クは年齢とともに増加すること、子宮内膜症から発生す
ることの多い卵巣癌は、明細胞癌、類内膜癌、低悪性度
東京産婦人科医会の会員諸氏に、0歳児虐待対策の必
5
漿液性腺癌が多いことを示した。次に子宮内膜症と卵巣
機能低下について言及し、子宮内膜症性嚢胞があると、
近傍の一見正常と思われる組織においても線維化によ
り卵胞が減少していること、チョコレート嚢胞の摘出手
術を行った場合、摘出病巣に正常卵巣組織が巻き込ま
れている場合には、抗ミュラー管ホルモン(AMH)を
指標とした卵巣の予備能が低下することを示した。一
方、チョコレート嚢胞の術後再発の点からは再発例に
おいて卵巣の予備能低下が少ないことを示し、OCや
dienogestによる再発予防が重要であることを示した。
希少部位子宮内膜症として、豊富な自験例から、膀胱、
直腸、臍、梨状筋子宮内膜症などの希少部位子宮内膜症
の診断、治療について言及した。最後に子宮内膜症の予
防として、排卵抑制が有用であること、ならびに治療戦
略として、薬物療法、手術、生殖補助医療の組み合わせ
からなる包括的治療が重要であることを強調された。
学術部担当常務理事 髙木耕一郎
演題2 パネルディスカッション:0歳児虐待を
めぐって
1)0歳児虐待の現状
演者 山本恒雄
2)妊娠中からの子ども虐待予防とスクリーニング(助
産師の立場から
演者 杉下佳文
3)0歳児虐待予防の取り組み(産婦人科医の立場から)
演者 山田正興
4)総合討論
日本産婦人科医会として早急な対策が必要とされて
いる「0歳児虐待をめぐって」をテーマとして、3人の
演者によるパネルディスカッションが行われた。
はじめのパネリストとして“0歳児虐待の現状”と題
して、日本子ども家庭総合研究所の山本恒雄部長にご講
演いただいた。先生は大阪府児童相談所での豊富な行政
経験に基づいて、多くの興味深いデータを示された。児
童虐待のうち、0歳児が占める率は最近の10年間で次第
に増加してきており、報告件数は2.8倍に増加している。
この傾向は社会的環境の悪化により、今後さらなる増加
が危惧されること。対応策としては、早期発見、早期対
応であり、さらには未然防止であるが、本質的には、こ
のように何らかのきっかけで発覚・発見された「不適切
養育」は社会的要因であることを認識し、社会全体で育
児支援を実施することの大切さを強調された。
2番目のパネリストとして“妊娠中からの子ども虐待
予防とスクリーニング”と題して、名古屋市立大学看護
学部の杉下佳文准教授にご講演いただいた。先生は0歳
児虐待は死亡につながりやすく、とくに出生後24時間以
内である「0日児」の実母を加害者とした死亡が多いと
いう現実を強調された。
「0日児」への加害の動機は「子どもの存在の拒否」、
「望まない妊娠」であり、加えて産後うつ、育児不安等、
母親の精神状態の関与が強いことを報告された。対応策
6
としては、妊婦健診で虐待のハイリスクである「特定妊
婦」を抽出し、早期からの妊婦と胎児の支援、とくに若
年妊婦を孤立させず、社会との接触を推進することが大
切であると述べられた。また、0日児虐待が分娩施設内
で発生していることから、具体的には「院内虐待対策委
員会」の立ち上げが急務であること、さらには特別養子
縁組の推進の必要性についても言及された。
3番目のパネリストは“0歳児虐待の取組み”と題し
て、本会副会長の山田正興先生にご講演いただいた。先
生はご自身のクリニックでの症例を中心として、中野区
としての0歳児虐待および「特定妊婦」への支援の実際
を示された。
日本産婦人科医会としては数年前から「妊娠等につい
て悩まれている方のための相談援助事業」に取り組んで
いるが、その普及は十分とはいえないのが実情であろ
う。先生は分娩施設を中心として産婦人科医全体が行政
機関と協力して「特定妊婦」に関する情報共有や、要保
護児童対策協議会への参加の必要性を示された。先生は
地域の公衆衛生活動の推進や学校医として精力的に活
躍されている立場から、望まない妊娠予防および虐待予
防として、性教育への積極的な取組みが必要であること
を強調された。
全体討論として、会場から多くの質問、ご意見をいた
だき、この課題の重要性を認識する良い機会であったと
思われた。一方、医会として0歳児虐待への取り組みを
実効あるものとするためには、産婦人科医のみならず、
コメディカルとの協力体制の整備、さらには地域の行
政との一体的なシステム整備などを推進する必要があ
ることを改めて感じさせたパネルディスカッションで
あった。
担当座長 副会長 中林 正雄
日本子ども家庭総合
研究所部長
山本 恒雄
名古屋市立大学
看護学部准教授
杉下 佳文
東京産婦人科医会
副会長
山田 正興
第27回東京産婦人科医会・東京産科婦人科学会合同研修会
並びに第369回東京産科婦人科学会例会を担当して
東京産婦人科医会多摩ブロック支部長 飯野 孝一
今回の合同研修会は多摩ブロックの担当で、平成26年
2月22日(土)午後1時30分より、JA共済ビルにおい
て開催されました。会場を都心に設定し、2会場を使っ
て一般演題および二つの特別講演が開かれました。
合同研修会は専門医制度にとっても母体保護法指定
医研修制度にとっても、大きな意義を持つことになると
思われます。そこでアクセスのいい永田町で、二つの講
演会場を設定できたことは喜ばしいことでした。これ
は東京産科婦人科学会が法人化して予算の主体を担う
ことになり可能となったことです。準備は数回にわたる
多摩ブロック役員会を経て、多摩ブロック学術担当役員
(北井啓勝、加来隆一、武知公博)により各テーマに座
長を2名づつ選出できました。
一般演題は37題、悪性腫瘍1群5題(座長:村松俊成、
平尾薫丸)、悪性腫瘍2群5題(座長:加来隆一、梅澤
聡)、妊娠1群6題(座長:柴田浩之、長尾充)、妊娠
2群5題(座長:中井晶子、西島重信)、不妊・その他
5題(座長:雀部豊、鶴田智彦)、良性腫瘍1群5題(座
長:柳下玲子、光山聡)、良性腫瘍2群6題(座長:横
須賀薫、奥田直貴)、多摩ブロック全力投球で二人座長
体制をとり、参加総数323名で活発な討議がなされ、か
つ時間通りに終了致しました。
特別講演1は弘前大学教授 水沼英樹先生(弘前大学
大学院医学研究科産科婦人科学講座)に、特別講演2は
日本産婦人科医会常務理事 石渡勇先生(石渡産婦人科
病院)にお願いしました。水沼先生は「産婦人科の新し
い診療領域-女性医学の意義」
、そして石渡先生は「妊
産婦死亡-安全な当直をするために」という演題でした。
特別講演1では座長:飯野孝一(多摩ブロック支部長
飯野病院)が水沼先生のご略歴と学会活動を報告致しま
した。「女性医学の意義」というご講演は先生の学会活
動そのものを我々に分かりやすくご教授下さった内容
で、思春期から始まり生殖年代、そして糖尿病ほか生活
習慣病の予防、ガン検診、さらに女性を骨粗鬆症から守
り、いきいきとした女性でいることが出来るのは、われ
われ産婦人科医が先頭にたっているから、と啓発して下
さいました。
特別講演2では座長:岩下光利 杏林大学教授 が石渡
先生のご略歴を紹介されました。石渡先生は産科医療補
償制度原因分析委員会部会長および厚生労働科学研究
班妊産婦死亡検討評価委員としてご尽力されており、そ
の資料に基づく「安全な当直をするために」というテー
マは学会と医会の合同研修会にふさわしいものであり
ました。「オンコール医師との連係が最重要」という指
摘は大学病院に勤務しながら医会会員の当直援助をさ
れる先生方や、当直医師を受け入れる医会会員にとって
再度肝に銘ずべき大切な指摘でありました。
同会場での懇親会は定刻通り午後6時20分より行わ
れました。今年の大雪が残る多摩の風景をビデオで眺め
ながら なごやかな雰囲気のうちに懇親会も閉会となり
ました。
さて従来より合同研修会は 大学にいる若い産婦人科
医師と各地区で活躍されている医会の産婦人科医師と
の交流の場でもありました。地元に研修医が赴き、地区
での発表を聞き、医会会員の頑張りにふれる会でもあり
ました。また地区の会員は大学からの若い先生の発表を
通して勉強しました。
今回は東京産科婦人科学会が法人化したことに伴い
法人経理処理が明確化され、医会との合同研修とは言え
予算処理の主体は学会となりました。会場も多摩を離れ
て都心となり、多摩地区の診療所会員からの発表も減り
ました。将来的に医会も法人化されたあとで、合同研修
会をどういう形で開くかは会員一同でよりよい形を模
索する必要があるでしょう。
7
東産婦医会筆伝
2014年6月1日に、白金高輪海老根
ウィメンズクリニックを開業いたしま
した海老根真由美と申します。よろし
くお願いいたします。
やっとクリニック業務が落ち着き始
めたある日、恩師である小林浩一先生
の懐かしい声が電話口から聞こえてきました。お電話で
お話しするのは10年ぶりくらい経つでしょうか。若い小
林先生が36歳、若い研修医の私26歳の当時の空気と全く
変わらず、うれしくお話しさせていただきました。毎日、
糸結びもできない私を辛抱強く指導してくださった小
林先生。当時は埼玉医科大学総合医療センター総合周産
期母子医療センターの初代病棟医長でいらっしゃいま
した。胎児の超音波計測からお産、鉗子分娩、帝王切開
術、超音波検査、ATHや筋腫核出術、嚢腫核出術、患
者さんとの接し方やムンテラの方法を事細かに教えて
いただきました。頼まれごとを忘れてしまわないように
と、こっそり左手の甲にメモ書きしたり、ボールペンを
たくさん胸ポケットに詰め込むと、「下品だ!」といわ
れたことを、時々懐かしく思い出します。多い時は1日
に3件ずつの手術の指導をしていただきました。夜中、
12時過ぎまで、読めない英文論文片手に勉強会をしてく
ださったりもしました。今にして思うと、全く分かって
いない研修医を指導するのは、どれだけ大変だったこと
か。お陰様で、それから十年後に、同総合周産期母子医
療センターの病棟医長を無事終えることが出来ました。
元気パンパンの若い私を医師として育てていただきま
88
して、本当に感謝しております。
でも、お電話の先生はなんだかちょっと浮かないお
声。理由は、
「ちょっとした病気なので…。まあ、東京
産婦人科医会の原稿を頼むよ。読めばわかるよ。
」との
こと。首を長くして、東京産婦人科医会平成26年1月号
を待ちました。そうでしたか。腎臓の腫瘍の手術だった
のですね。しばらく、呑めませんね…。残念。元気が戻
りましたら、ご一緒したいです。
そして、この後のバトンを渡す同期の茅場町いとう医
院の院長伊東先生と、久々に、この原稿を肴に呑みに行
きました。開業してから、ゆっくり同期と出かけるのは
初めて。是非、今度は小林先生と3人で呑みたいもので
す。同じ飯のカマの飯を食った仲間は、やっぱり仲間だ
なあと、古巣を恋しく思う今日この頃です。それでは、
伊東先生にお願いいたします。
白金高輪海老根ウイメンズクリニック(港区)
海老根真由美
平成26年 1 月〜平成26年 2 月 入会申込者
相澤 知美
岩本 豪紀
加藤恵利奈
金子 亨
黒田 恵司
佐々木 茂
清水 巴菜
谷口 美咲
塚田 清二
花岡 正智
美馬 博史
山本 祐華
新宿レディースクリニック
武蔵野赤十字病院
日本大学医学部附属板橋病院
お台場海浜公園 虹橋クリニック
順天堂大学附属順天堂医院
飯野病院
東京医科大学八王子医療センター
寺田病院
水口病院
はなおかレディースクリニック
美馬レディースクリニック
順天堂大学附属順天堂医院
発行人 落 合 和 彦
発行所 〒162 - 0842 東京都新宿区市谷砂土原町1-1 保健会館 別館3階
東京産婦人科医会
電 話 03
(3269)
4695 FAX 03
(3269)
4699 E-mail:[email protected] ホームページ:http : //www.taog.gr.jp