熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System

熊本大学学術リポジトリ
Kumamoto University Repository System
Title
翻訳開始因子4E-BP1による白色脂肪細胞分化制御に関す
る研究
Author(s)
小原, 恭子
Citation
Issue date
2014-09-04
Type
Thesis or Dissertation
URL
http://hdl.handle.net/2298/31354
Right
小原
恭子
氏の学位論文審査の要旨
論文題目
(Study
翻 訳 開 始 因 子 4E-BPl
fo eht yrotaluger
による白色脂肪細胞分化制御に関する研究
elor
of 4E -BP 1 on white
adipose
eusit
noitaitnerefid
)
翻訳開始因子の 1 つである eIF4E
は
、 mRNA
の 5'末 端 に 存 在 す る キ ャ ッ プ 構 造 に 特 異
に結合することにより翻訳
的に結合してキャップ依存性翻訳開始を促進する o その eIF4E
のキャッフ依存性翻訳開始促進作用を抑制する 4E 結合
開始複合体形成を阻害し、 eIF4E
)の 生 理 的 な 機 能 は 充 分 に は 解 明 さ れ て い な い 申 請 者 が 以 前 に 行 っ た
因 子4( E -BPl
4E-BPl
ノックアウトマウス作製による機能解析により、白色脂肪組織の減少、及び褐色
の
指肪組織の増加が認められ、代謝制御や白色脂肪細胞の分化抑制制御における 4E-BPl
の機能解明を行った 口
機能が示唆された 本 研 究 で は 、 脂 肪 細 胞 の 分 化 に お け る 4E-BPl
4E-BPl
ノックアウトマウスよりマウス繊維芽 (MEF)
細胞を樹立し、 4E -BPl
の欠損に伴
って発現が変化する分子の同定を行った また、同定された分子の遺伝子ク口一二ングを
行い、細胞への発現ベクタ一導入により強制発現し、細胞の形質がどのように変化するか
検討した さらに、白色脂肪細胞前駆細胞(以下、 H W 細胞と略す)、褐色指肪細胞前駆
細胞(以下、 HB 細 胞 と 略 す ) を 用 い て 、 白 色 脂 肪 細 胞 分 化 及 び 褐 色 脂 肪 細 胞 分 化 に お け
る 4E-BPl
の役割を明らかにするため解析を行った
4E-BPl
欠損 MEF 細胞の解析により、肝臓の脂質代謝制御やエネルギ一産生・ミトコン
ドリア生合成を制御する PPAR
yrotavitcaoc
1 hpla a (PGC-lα)
の発現増加が見出された o 逆
を強制発現すると PGC-lα
発 現 低 下 が 認 め ら れ た o 4 E-BPl
の発現は HB 細胞
に 4E-BPl
よりも H W 細胞で上昇していた 。 さらに、 H W 細 胞 が 白 色 指 肪 細 胞 に 分 化 す る 際 に は HB
細胞が褐色脂肪細胞に分化する場合よりも 4 E -BPl
の発現が上昇していた D また、 PG Cl- α
の発現は H W 細胞よりも HB 細 胞 で 上 昇 し て い た 。4E-BPl
遺伝子過剰発現 H W 細胞では
PGC-lα
の発現を低下するが、 4E -BPl
遺 伝 子 過 剰 発 現 HB 細 胞 で は PGC ・α
1 の発現に変化
は、白色脂肪組織における PG Cα
l- の発現抑制制
は認められなかった。以上より、 4E -BPl
御に機能し、褐色指肪細胞への分化を抑制している可能性が示唆された 。この現象は白色
脂肪組織においてのみ観察され、褐色脂肪細胞では認められなかった
審査では、 1 ) 4E-BPl
ノックアウトマウスの樹立の方法、 2) 4E-BPl
ノックアウト
)3 4E-BPl
欠損による
マウスの表現型(低血糖、白色脂肪組織の減少、代謝冗進)、
UCPlmRNA
など PGC-lα
以外の遺伝子発現変化、 4) 4E -BPl
欠損による PGClαmRNA
の
による PGClα
発現制御、 5) 4E-BPl
欠損による eIF4E リン酸化冗進、 )6
翻 訳 及 び 4E-BPl
4E-BPl
による脂肪細胞分化への作用、など実験手技、実験結果、及び考察内容に関連し
て様々な質問がなされ、申請者からは概ね適切な回答がなされた
本研究は、通常、褐色脂肪組織に特有のエネルギ一産生やミトコンドリア生合成機能元
ノックアウトマウスで増強されているメカニズムと
進 の 際 に 認 め ら れ る 表 現 型 が 4E-BPl
して、 4E-BPl
が PGC-lα
の発現制御を介して白色指肪細胞の褐色指肪細胞への形質転換抑
E に特
制 に 機 能 し て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。また、キャップ結合性の翻訳開始因子 4FIe
のこれまで明らかとなっていた一般的な機能に加
異的に結合して翻訳を抑制する 4E -BPl
え、脂肪細胞分化における特異的機能を明らかにし、翻訳機構制御による新たな代謝制御
経路の可能性を明らかにした研究であり、学位授与に値するものと評価した
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審査委員長
分子遺伝学担当教授
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