透水(2) (透水係数)

土質力学Ⅰ及び演習
透水(2)
(透水係数)
澁谷 啓
教授
2014年5月30日
透水係数
室内での求め方
a) 定水位透水試験
室内での求め方
a) 定水位透水試験
k が大きいときに適切。すぐ、答えが求まる。
k が大きいときに適切。すぐ、答えが求まる。
k が小さいと、単位時間あたりの流量 Q が少ないので、すぐ答えが求まらなし、精度
k が小さいと、単位時間あたりの流量 Q が少ないので、すぐ答えが求まらなし、精度が出ない。
(しかし、現在は電子天秤等を用いることが出来て、Q
の測定精度が向上したので、
(しかし、現在は電子天秤等を用いることが出来て、Q
の測定精度が向上したので、k が小さくて
もこの試験法で OK)
流量: Q  dt  k  A 
k
QL
h A
もこの試験法で OK)
h
 dt
L
流量: Q  dt
k
 k  A
h
 dt
L
QL
h A
1
成層地盤の透水係数
土中の水の流れが問題となる地下水位が高い位置にある地盤は,均一ではなく,
透水性の異なるいくつか層が重なり合って構成されている.
それぞれの土層を流れる水の流量
はダルシーの法則により次の式になる
L
−∆ℎ
∆𝑑1
𝐿
−∆ℎ
𝑞2 = 𝓀2
∆𝑑2
𝐿
−∆ℎ
𝑞3 = 𝓀3
∆𝑑3
𝐿
𝑞1 = 𝓀1
成層地盤全体をマクロ的に見たとき
水平方向の透水係数を𝓀𝐻 とする.
成層地盤全体を流れる水の流量である
−∆ℎ
𝐷=
𝐿
−∆ℎ
−∆ℎ
−∆ℎ
𝓀1
∆𝑑1 + 𝓀2
∆𝑑2 + 𝓀3
∆𝑑3
𝐿
𝐿
𝐿
𝓀𝐻
𝓀𝐻 =
𝓀1 ∆𝑑1 + 𝓀2 ∆𝑑2 + 𝓀3 ∆𝑑3
𝐷
成層地盤の透水係数
成層地盤の土層に直交して水が流れる場合に
𝜐 = 𝓀𝑉
∆ℎ1 =
−∆ℎ
−∆ℎ
−∆ℎ
−∆ℎ
= 𝓀1
= 𝓀2
= 𝓀3
𝐷
∆𝑑1
∆𝑑2
∆𝑑3
𝓀𝑉 −∆ℎ
∆ℎ
𝐷 𝓀1
∆ℎ3 =
 水平方向では,
最も透水係数の大きい土層のそれが支配的になる
 鉛直方向では,
最も透水係数の小さい土層のそれが支配的になる
∆ℎ2 =
𝓀𝑉 −∆ℎ
∆ℎ
𝐷 𝓀2
𝓀𝑉 −∆ℎ
∆ℎ
𝐷 𝓀3
𝛥h=𝛥ℎ1 +𝛥ℎ2 +𝛥ℎ3
𝓀𝑉 =
𝐷
∆𝑑1 ∆𝑑2 ∆𝑑3
+
+
𝑘1
𝑘2
𝑘3
2
成層地盤の透水係数
C)成層地盤の透水係数
成層地盤の例: a) 河川堆積
静水時に堆積した粘土層
洪水時に堆積した砂層
b) 盛土
盛り立て時により、土質が異なる。粘性土が多い層。砂分が多い層。
河川
鉛直方向の平均透水係数
堤防
kv と、各層の透水係数との関係は?
*砂層の中に、k が特に小さい粘土層があれば、その粘土層(透水係数 kc)のため、実質的に不透水に
なる。 大略 kv= kc となる。
→この粘土層の存在を見逃すと、鉛直方向の平均透水係数 kv を著しく過大評価する。
3
鉛直方向の平均透水係数
kv と、各層の透水係数との関係は?
*砂層の中に、k が特に小さい粘土層があれば、その粘土層(透水係数 kc)のため、実質的に不透水に
なる。 大略 kv= kc となる。
→この粘土層の存在を見逃すと、鉛直方向の平均透水係数 kv を著しく過大評価する。
水平方向の平均透水係数
kh と、各層の透水係数との関係は?
*粘土層中に、k が特に大きい砂層があれば、その砂層(透水係数 ks)のため、実質的に透水性になる。
大略 kh= ks となる。
→この砂層の存在を見逃すと、水平方向の平均透水係数 kh を著しく過小評価する。
例)ダム:河川堤防の支持地盤の透水性の評価の問題。
●従って、成層地盤の平均的透水特性は、通常非常に異方的(kh >> kv)である。
(1)水平方向の平均透水係数 kh
二点間の head 差と平均動水勾配 i 
h0
L
層 i=1 - n で共通。
h0
L
→ q1, k1, d1
→ q2, k2, d2
平均的に見て、
→ qi, ki, di
d
q  kh  i  d
→ qn, kn, dn
q=q1+q2+ ・・・・qi + ・・・・qn= (k1・d1+ k2・d2+ ・・・・+ ki・di ・・・・・+ kn・dn)・i= d  k h  i
4
k1・d1+ k2・d2+ ・・・・+ ki・di ・・・・・+ kn・dn
「距離 L の間の水平方向の平均透水係数
kh」= --------------------------------------------------d
→ k が非常に小さい層は、厚さが大きくても影響は小さい。
→ k が非常に大きな層の影響は、厚さが小さくても影響は大きい(例、 ki   ならば k h   )
。
(2)鉛直方向の平均透水係数 kv
A
h0
q1, k1, d1
h1
q2, k2, d2
h2
qi, ki, di
d
hi
hn-1
qn, kn, dn
hn
q
5
h0 - h1
q= k1-----------・A
(q・d1)/k1= (h0 - h1)・A
d1
hi-1 - hi
q= ki-------------・A
(q・di)/ki= (hi-1 - hi)・A
di
hn-1 - hn
q= ki-------------・A
dn
(q・dn)/kn= (hn-1 - hn)・A
+
q(d1/k1+・・・・ di/ki+・・・・dn/kn)= (h0 - hn)・A
一方、
h0 - hn
q= kv-------------・A
(q・d)/kv= (h0 - hi)・A= q(d1/k1+・・・・ di/ki+・・・・dn/kn)
d
従って、
d
「距離 L の間の鉛直方向の平均透水係数 kv」= -----------------------------------d1/k1+・・・・ di/ki+・・・・dn/kn
→ k が非常に大きな層は、厚さが大きくても影響は小さい。
→ k が非常に小さな層の影響は、厚さが小さくても影響は大きい(例、 k i  0 ならば k v  0 )
。
6
透水係数の値
粒子径 D が小さいほど 、e が大きい。しかし、異なる粒径の土の透水係数を大まかに比較すると、
●68 頁。
k の値は、D102 にほぼ比例している。
粘土とシルトの境界: D= 0.002 mm
砂と礫の境界:
D の比: 103。
D= 2.0 mm
D2 の比: 106。
k の比: 106 以上
中央遮水壁(τf が最大で k が最小が良い)
中央遮水壁の上流・下流面間の head 差 200 m
H = 200 m
中央遮水壁の平均幅 B = 50 m
大略値として、i= 200m/50m= 4
k= 10-8 cm/sec の意味。 →
v: 流速= 4 x 10-8 (cm/sec)= 1.26 cm/year:
-2
k= 10 cm/sec の意味。 → v: 流速= 4 x 10-2 (cm/sec)= 144 m/hour:
事実上の不透水。
事実上の透水。
●k が 10 倍変化したら大変な差である。
a) しかし、k は、粒径の変化に非常に敏感に反応。
→従って、一様な地盤でも k の正確な推定は難しい。
b) しかも、実際の地盤は一様ではない。特に、他と k が大きく異なる水平方向の薄い層の存在と
その連続性を把握するのが難しい。
→粘土層の中の、k が特に大きい砂層の影響。
→砂層の中の、k が特に小さい粘土層の影響(東京湾横断道路川崎側人工島の場合)
。
7
浸潤面を持つ地下水の流れ
浸潤面とは,地下水が空気と接する面のことである
つまり,その面より上は不飽和状態であり,水の流れは存在しない
2次元の浸透流を
1次元の浸透流に
近似する式
h≈𝓏
∆𝑠 ≈ ∆𝓍
流量は, Q =
Dupuit(デュピュイ)の仮定
𝓀
𝐻2 − 𝐻22
2B 1
地下水の揚水
井戸によって地下水を汲み上げたとき,揚水量によって井戸の水面が変化する.
井戸の水位は徐々に下降する.
ある一定時間経過すると水面が変化しなくなる定常状態に達する
重力井戸
周辺地盤に浸潤面が存在する井戸のことを重力井戸と呼ぶ
𝒾=
𝒹ℎ :動水勾配
𝒹𝑟
周辺地盤から井戸に
流入される水の量
水位:
Q = 2π𝑟ℎ𝓀
𝒹ℎ
𝒹𝑟
:半径
揚水量:
Q = π𝓀
ℎ22 − ℎ12
𝑟
𝑙𝑛 𝑟2
1
8
地下水の揚水
掘り抜き井戸
周辺地盤に浸潤面が存在しない井戸のことを掘り抜き井戸と呼ぶ
D:滞水層の厚さ
周辺地盤から井戸に向かって流れる水の流速:
井戸に流入する水の量:
揚水量:
𝜐=𝓀
𝒹ℎ
𝒹𝑟
Q = 2π𝑟𝐷𝓀
Q=
𝒹ℎ
𝒹𝑟
2π𝓀 ℎ2 − ℎ1 𝐷
𝑟
𝑙𝑛 𝑟2
1
浸透圧と浸透破壊
透水では,透水量を求める他に,透水により浸透圧およびその影響を考えることが必要
試料内の有効応力がゼロの状態では,砂粒子同士は接触しておらず,
水中に浮遊し,沸騰したような状態になるので,ボイリングと呼ばれる
ボイリングは浸透による地盤の破壊現象であり,
地盤の支持力がゼロになるので工学的な重要な問題である
9
浸透圧と浸透破壊
ボイリングが生じたときの動水勾配(限界動水勾配と呼ぶ):𝒾𝒸
𝑟𝑠
−1 𝐺 −1
𝑟𝑤
𝑠
𝒾𝒸 =
=
1+e
1+e
𝐺𝑠 :比重
𝑟𝑠 :土粒子の単位体積重量
 ボイリングは砂質土地盤に特有な現象
 粘性土地盤は浸透圧によって地盤がふくれ上がるヒービンぐという現象がある
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