抗TNF-α抗体製剤に 続くもの

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アドバイス
有害な抗原・細菌
抗TNF-α抗体製剤に
続くもの
TNF-α
IL-6
IL-1β
樹状細胞
抗 IL-12/23 p40 抗体
ウステキヌマブ
マクロ
ファージ
形質細胞
IL-12
Th0
IL-23
IL-6
CTL
粘膜内遊走
抗インテグリンα4(β7)抗体
ナタリズマブ
ベドリズマブ
血管内皮
Th1
Th17
IFN-γ
IL-12
MAdCAM1
インテグリン
α4β7
図 S - 6 抗TNF-α抗体製剤に続く抗体製剤と作用機序
CTL: 細 胞 障 害 性 T 細 胞,IFN: イ ン タ ー フ ェ ロ ン,IL: イ ン タ ー ロ イ キ ン,MAdCAM:mucosal addressin cell
adhesion molecule,Th:ヘルパー T 細胞,TNF:tumor necrosis factor
はじめに
ナタリズマブ , ベドリズマブ
抗 TNF-α抗体製剤は,IBD に対し高い有
腸管炎症の際の白血球の粘膜内遊走には,
効性を示し,IBD の治療ストラテジーを大
トファシチニブ
今後の展望
活性化白血球上に発現するα4β7インテグ
JAK(Janus-activated kinase)1 お よ び
代表的な抗 TNF-α抗体製剤に続く薬剤を
きく変えた。しかし,抗 TNF-α製剤の無効
リンと腸管粘膜内の血管内皮細胞に発現す
JAK3 に対する低分子化合物であるトファシ
示したが,これら以外にも IL-6,IL-17,IL-
症例や効果減弱例が存在するため,それらに
る ICAM(intercellular adhesion molecule)
チニブは,リンパ球の生存,活性化,分化,
18,IL-21 などに対する抗体製剤や,プロテ
続く薬剤が待望されている。抗 TNF-α製剤
-1 や MAdCAM(mucosal addressin cell
アポトーシスに関わるサイトカインシグナル
インキナーゼ C や NF-κB に対する低分子化
に続く抗体製剤,低分子化合物のうち代表的
adhesion molecule)-1 への結合が関与して
を制御し,
炎症を抑制すると考えられている。
合物の開発が進められており 5),今後の臨床
なものを以下に示す。
。ナタリズ
いると考えられている( 図 S - 6 )
潰瘍性大腸炎患者を対象とした第Ⅱ相臨床試
応用が期待される。
マブはα4 インテグリンに対するヒト型モノ
験で有効性が示されている 。
ウステキヌマブ
クローナル抗体で,クローン病患者の寛解導
ウ ス テ キ ヌ マ ブ は,IL-12, IL-23 共 通 の
ブによる免疫抑制下には JC ウイルスの活性
p40 サブユニットに対するヒト型モノクロー
化による進行性多巣性白質脳症の発症が報告
ナ ル 抗 体 で,IL-12, IL-23 お よ び そ の 下 流
されている。α4β7 インテグリンに対するヒ
の炎症誘導性サイトカインである IFN-γ,
ト型モノクローナル抗体であるベドリズマブ
IL-17 の阻害により,抗炎症性効果を発揮す
3)
ると考えられている( 図 S - 6 )。クローン病
病に対する第Ⅲ相臨床試験が終了しており,
患者に対する第Ⅱ相臨床試験で,抗 TNF-α
効果・安全性の両面で抗 TNF-α抗体製剤に
抗体製剤の効果が不十分な患者に対する臨
続く生物学的製剤として期待されている。
入および効果が示されている 2)。ナタリズマ
床的有効性が示されている 。
1)
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4)
については,潰瘍性大腸炎およびクローン
参考・引用文献
1)Sandborn WJ et al ., N Engl J Med . 2012; 367: 1519-28.
2)Sandborn WJ et al ., N Engl J Med. 2005; 353: 1912-25.
3)Parikh A et al ., Inflamm Bowel Dis. 2012; 18: 1470-9.
4)Sandborn WJ et al ., N Engl J Med . 2012; 367: 616-24.
5)Löwenberg M et al ., Curr Gastroenterol Rep . 2013; 15: 311.
(飯島英樹)
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