ADP1613 を測定してみよう 其の一

The Intelligent Technology Company
ADP1613 を測定してみよう 其の一
昇圧コンバータ
文書管理番号:ELS100-00004
アナログ技術者への道
( アナログ超初心者からの挑戦 )
ELS100-00004
ADP1613 を測定してみよう 其の一
目次
1.
はじめに .............................................................................................................. 3
2.
題材は? ............................................................................................................. 3
3.
電源トポロジーと動作波形 ..................................................................................... 4
4.
シミュレータを利用し動作波形を確認 ...................................................................... 5
5.
電源トポロジーとリップルの関係............................................................................. 8
6.
昇圧コンバータのイネーブル/シャットダウン制御の注意点 ..................................... 10
7.
この課題で学んだこと.......................................................................................... 11
改版履歴 .................................................................................................................... 12
参考文献 .................................................................................................................... 12
ver. 1.0 2014 年 9 月
2/12
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1.
はじめに
この資料はアナログ初心者の私が、先輩社員の指導を受けアナログ製品を学んでいく様子を示したもので
す。本資料では、私が分からない点や疑問に思った点を中心に記載しておりますので、これからアナログ製品
に携わっていく方のご参考になれば幸いです。
2.
題材は?
今回題材にするのは昇圧コンバータの ADP1613 です。
この資料では降圧、反転、昇圧コンバータをシミュレーションで比較しながら動作確認を行っております。
次回以降で ADP1613 評価ボードを使用した測定を予定しています。
◆ADP1613 の概要
ADP1613 は昇圧型のコンバータです。
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3.
電源トポロジーと動作波形
ADP2300 で学んだ降圧、反転コンバータ、そして今回学ぶ ADP1613 の昇圧コンバータについて、
まずは電源トポロジーと動作波形(スイッチング電圧とインダクタ電流)をまとめてみました。
◆電源トポロジーと動作波形
動作は以下の通りになります。
VSW
◆降圧型
インダクタに流れる電流の向きはかわりません。
VOUT
IL(ON)
VIN
VOUT
L
CIN
IL(OFF) COUT
IC
D
VIN
t
IL
RL
ILoad
t
スイッチ OFF 時、L(インダクタ)は電流を保持する方向に起電力を発生させ、D(ダイオード)を通じ
IL(OFF)の電流が流れ出力します。
VSW
◆反転型
VIN
インダクタに流れる電流の向きはかわりません。
VIN
IL(ON)
t
IL(OFF)
-VOUT
CIN
L
D
COUT
IC
-VOUT
IL
RL
ILoad
t
スイッチ OFF 時、L(インダクタ)は電流を保持する方向に起電力を発生させ、D(ダイオード)を通じ
IL(OFF)の電流を引き込みます。
VSW
◆昇圧型
VOUT
インダクタに流れる電流の向きはかわりません。
IL(OFF)
VIN
L
CIN
IL(ON)
VOUT
D
COUT
IC
VIN
t
IL
RL
ILoad
t
スイッチ OFF 時、L(インダクタ)は電流を保持しようとするので蓄えたエネルギーを放出し、コンデンサ
(COUT)にチャージします。
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4.
シミュレータを利用し動作波形を確認
前ページでは簡単な動作波形を示しましたが、もう少し詳しく動作を確認するため、シミュレータの助けを借り
各電圧、電流がどうなっているか見ていきたいと思います。
作成した回路図中のコンポーネントはなるべく理想となる様に選定し、動作確認を行っています。
(動作を理解しておくと、異常時の確認に役立つと思います。)
◆降圧型(バックコンバータ、ステップダウンコンバータ)
VO:出力電圧
IL(ON)
VIN
VOUT
L
CIN
IL(OFF) COUT
IC
D
IL:インダクタ電流
VIN=10V
RL
ILoad
IC:コンデンサの電流
D=50%
ILoad:負荷電流
VIN=10V、D=0.5 で確認してみます。
シミュレーション結果
電流
デバイスの電流制限値を超えない様、注意してください
IL は電流方向が一定なので、
“正”の電流値になります。
必ず ILOAD 中心に振幅します。
充電
IC はコンデンサへの充放電を
放電
繰返すので 0V を中心に“正”
電圧
“負”を繰返します。
IC と IL の傾きは同じなので、
VF 分
D=50%
ON 期間
⊿IL を測定すればコンデンサ
OFF 期間
の電流値が分かります
⊿VRIPPLE = ⊿I×((1 / (8 × fsw × COUT) + ESRCOUT)ですが
ESR が支配的だとすると、
⊿IL=0.5A
0.5A
グラフより⊿IL=0.5A と読取れます。シミュレーション
では COUT の ESR を 20mΩとしているので
リップル電圧は計算上、
0.5A×20mΩ= 10mV になります。
VO を拡大しリップルを確認します。
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Vripple=10mV
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◆反転型(インバーティングコンバータ)
VIN
IL(ON)
IL(OFF)
-VOUT
CIN
L
D
COUT
IC
VIN=10V
RL
ILoad
D=50%
VIN=10V、D=0.5 で確認してみます。
シミュレーション結果
デバイスの電流制限値を超えない様、注意してください
電流
入出力条件によって大きく変動するので注意してください
IL は電流方向が一定なので、
“正”の電流値になります。
充電
IL は ILOAD より大きな電流が流
れます。
放電
IC はコンデンサへの充放電を
電圧
繰返すので“正”“負”と、電流
の向きがかわります。
D=50%
ILmax を測定すればコンデンサ
ON 期間 OFF 期間
の電流値が分かります
ILmax=3.3A
グラフより ILmax=3.3A と読取れます。シミュレー
ションでは COUT の ESR を 20mΩとしているので
リップル電圧は計算上、
3.3A
3.3A×20mΩ= 66mV になります。
Vripple=66mV
VO を拡大しリップルを確認します。
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◆昇圧型(ブーストコンバータ)
IL(OFF)
VIN
VOUT
L
CIN
D
COUT
IC
IL(ON)
VIN=5V
RL
ILoad
D=50%
VIN=5V、D=0.5 で確認してみます。
シミュレーション結果
デバイスの電流制限値を超えない様、注意してください
電流
入出力条件によって大きく変動するので注意してください
IL は電流方向が一定なので、
“正”の電流値になります。
IL は ILOAD より大きな電流が流
充電
れます。
放電
IC はコンデンサへの充放電を
電圧
繰返すので“正”“負”と、電流
の向きがかわります。
D=50%
ON 期間
ILmax を測定すればコンデンサ
OFF 期間
の電流値が分かります
ILmax=3.3A
グラフより ILmax=3.3A と読取れます。シミュレー
ションでは COUT の ESR を 20mΩとしているので
リップル電圧は計算上、
3.3A
3.3A×20mΩ= 66mV になります
Vripple=66mV
VO を拡大しリップルを確認します。
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5.
電源トポロジーとリップルの関係
リップルについてもう少し詳しく見てみます。
◆シミュレーションにて負荷電流を変えて確認してみます。
R2 の抵抗値を 3Ω、6Ω、12Ωとし、それぞれの出力リップルを確認します
結果
出力リップル
降圧型
負荷電流に影響しない
反転型
負荷電流に影響する
昇圧型
負荷電流に影響する
R2 の抵抗値を 3Ω、6Ω、12Ωとし、
反転、昇圧コンバータの出力リップルは
負荷電流値を変えてシミュレーション
負荷電流に影響されますので注意してください。
降圧型:出力リップルは負荷電流の影響を受けません。
IL は ILoad 中心に振幅します。
IL,ILoad (R2=3Ω)
⊿IL=0.5A
IL,ILoad (R2=6Ω)
⊿IL=0.5A
⊿IL=0.5A
IL,ILoad (R2=12Ω)
リップル電圧は⊿IL×ESRCOUT で求められますが、
ESR が支配的と考えると、
⊿IL は変わりませんので、
負荷電流 ILOAD が変わってもリップルに影響しません。
リップル
VO (R2=12Ω)
Vripple=10mV
Vripple=10mV
VO (R2=6Ω)
VO (R2=3Ω)
Vripple=10mV
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反転型:出力リップルは負荷電流の影響を受けます。
IL は ILoad より大きな電流が流れます。
IL,ILoad (R2=3Ω)
ILmax =6.5A
ILmax =3.2A
IL,ILoad (R2=6Ω)
ILmax =1.8A
IL,ILoad (R2=12Ω)
リップル電圧は ILmax×ESRCOUT で求められますが、
負荷電流が増えると ILmax は増します。
結果、負荷電流が出力リップルに影響を与えます。
リップル
Vripple=130mV
Vripple=64mV
VO (R2=3Ω)
VO (R2=6Ω)
VO (R2=12Ω)
Vripple=36mV
昇圧型:出力リップルは負荷電流の影響を受けます。
IL は ILoad より大きな電流が流れます。
IL,ILoad (R2=3Ω)
ILmax =6.5A
ILmax =3.2A
IL,ILoad (R2=6Ω)
ILmax =1.8A
IL,ILoad (R2=12Ω)
リップル電圧は ILmax×ESRCOUT で求められますが、
負荷電流が増えると ILmax は増します。
結果、負荷電流が出力リップルに影響を与えます。
リップル
Vripple=36mV
Vripple=64mV
Vripple=130mV
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VO (R2=12Ω)
VO (R2=6Ω)
VO (R2=3Ω)
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6.
昇圧コンバータのイネーブル/シャットダウン制御の注意点
ADP1613 にはイネーブル/シャットダウン制御(3pin:EN)端子があります。しかし、昇圧コンバータではシャッ
トダウン時は注意が必要です。
◆昇圧コンバータの注意点
特に低スタンバイ電流を必要とするアプリでは注意が必要です。
シャットダウン時の対策例
※ADP1606/07 の様に、True shutdown 機能を持った昇圧コンバータもあります。
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7.
この課題で学んだこと
ここまでで、一旦 区切らせて頂きます。
今回の課題では、電源トポロジーを比較し各電源回路の違いをまとめることができました。しかし、動作につ
いては、よく考えれば分かることではありますが、なかなか身につかないもので、降圧型は?昇圧型は?と言
われても、すぐには回路と動作が思い出せません。このあたりは経験して身に着けていくしかないかと思います。
ということで、次回は ADP1613 評価ボードを使用した測定を予定しています。
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改版履歴
Version
改定日
改定内容
1.0
2014 年 9 月
・新規作成
参考文献
 ADP1613 データシート
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