Document 589648

様式第4号(第3条関係)
論
氏
名
文
要
旨
野上晋之介
論文の要旨
目的:下顎骨関節突起骨折に対する治療法は外科的治療法と保存的治療法に大別さ
れるが、その選択基準はいまなお議論されるところである。当科では下頸部骨折、
基底部骨折に対しては侵襲を伴うが社会復帰が早期に見込める外科的治療法を選択
する。一方で、上頸部骨折、頭部骨折に対しては侵襲を伴わないが社会復帰まで時
間を要する保存的治療法を選択している。保存的治療の開口訓練時の疼痛を軽減さ
せ治療を円滑に進めるため、近年われわれは顎関節洗浄療法を併用してきた。本研
究では、高位の関節突起骨折に対する顎関節洗浄療法の意義を明確にするために、
ヒ ト 顎 関 節 滑 液 中 の 炎 症 性 サ イ ト カ イ ン で あ る イ ン タ ー ロ イ キ ン ( interleukin=IL)
-6(IL-6)の 発 現 と MRI に お け る Joint Effusion と の 相 関 関 係 に つ い て 検 討 し た 。
対 象 と 方 法 : 対 象 は 下 顎 骨 関 節 突 起 骨 折 患 者 23 名 25 関 節 ( 平 均 年 齢 : 42.5 歳 ) と
し た ( 高 位 骨 折 : 16 関 節 、 低 位 骨 折 : 9 関 節 )。 臨 床 診 断 に は 、 臨 床 所 見 、 断 層 お よ
び 単 純 X 線 所 見 、 CT 所 見 、 MRI 所 見 を 用 い た 。
顎 関 節 滑 液 採 取 方 法 と し て は 希 釈 法 を 用 い た 。パ ン ピ ン グ マ ニ ピ ュ レ ー シ ョ ン 時 に 、
関 節 包 外 へ の 局 所 麻 酔 後 に 、約 2ml の 生 理 食 塩 水 を 22 ゲ ー ジ の 注 射 針 を 用 い て 後 外
側 よ り 上 関 節 腔 に 穿 刺 し 、 10 回 パ ン ピ ン グ を 行 っ た 後 に 滑 液 を 採 取 し 、 遠 心 に て 細
胞成分を除き、その上清を検体とした。
本 研 究 で は 2 種 の 炎 症 性 サ イ ト カ イ ン ( IL-1β ・ IL-6) の 検 出 を 行 っ た 。 各 サ イ ト
カ イ ン の 活 性 は 、 Enzyme-linked Immunoabsorbant Assay(ELISA) 法 に よ り 測 定 し
た 。 Assay kit は Quantikine human immunoassay kit(R and D Systems 社 、
Minneapolis, MN)を 用 い た 。
結 果 : MRI に お い て 25 関 節 中 17 関 節 ( 68%) に Joint Effusion を 認 め た 。 高 位 の
関 節 突 起 骨 折 16 関 節 で は 15 関 節( 94%)に Joint Effusion を 認 め た 。Joint Effusion
を 認 め た 高 位 の 関 節 突 起 骨 折 15 関 節 で は 8 関 節 ( 53%) に IL-1β が 検 出 さ れ 、 14
関 節 ( 93%) に IL-6 が 検 出 さ れ た 。 そ の 濃 度 の 平 均 値 は IL-1β と 比 較 し て IL-6 は
有意に高かった。
Joint Effusion を 認 め た 群 は 認 め な か っ た 群 と 比 較 し て 、 IL-6 が 有 意 に 高 率 に 検 出
さ れ た 。 ま た 、 高 位 の 関 節 突 起 骨 折 は 低 位 の 骨 折 と 比 較 し て 、 IL-6 が 有 意 に 高 率 に
検 出 さ れ た 。さ ら に 、Joint Effusion の 程 度 と IL-6 の 濃 度 に 相 関 関 係 が 認 め ら れ た 。