電波(ミリ波・サブミリ波)観測 その1

電波(ミリ波・サブミリ波)観測 その1
電波観測の概要・目的
観測装置の概要(単一鏡)
電波望遠鏡の光学系
(ビームパターン・ビーム伝送系)
[1]
[2]
いろいろな電波望遠鏡
角分解能
単一鏡
名大なんてん4m鏡
=
波長
/
口径
JCMT15m鏡
回折限界で決まる
アレシボ300m鏡
グリーンバンク100m鏡
干渉計 = 複数の望遠鏡をつなげて大きな電波望遠鏡を構成
SMA6m鏡×8素子
基線長 ~500m
VLA25m鏡×27素子
基線長 ~36km
ALMA 7m・12m鏡×66素子以上
基線長 ~10km
NANTEN2 サブミリ波望遠鏡
(口径 4m)
[3]
分子が放射(吸収)する線スペクトル
[4]
電気的な偏り
+と-の電気をもった
分子が回転
+と-の電気が振動
電波の放出
L2
 2 J ( J  1)
 E
E
2I
2I
L:角運動量、I:慣性モーメント
J:全角運動量子数
量子力学で回転エネルギーは量子化
離散的なエネルギー準位
上の回転準位から下の回転
準位に落ちると
J  J 1
電波が出る
J
2 J ( J 1) 2 ( J 1) J 2 J
E 


I
2I
2I
J
E  h →  
2 I
E
J-1
電波で見た天の川=分子雲の分布
なんてん望遠鏡(@ラス・カンパナス)による
宇宙空間の一酸化炭素(CO)から放射される電波の観測
[5]
線スペクトルから分子(ガス)の運動がわかる
[6]
ミリ波大気観測装置
この中に超伝導受信機
がある
7 [7]
パラボラ鏡
(10cm)
線スペクトルデータから高度分布を求める (1)
[8]
運動学的なスペクトル線幅 = ドップラー幅
スペクトル線の幅と圧力の関係
v
  
c
ドップラー幅 ∝ ν(T/M)1/2
量子力学的なスペクトル線幅 = 圧力幅、自然幅
圧⼒幅 ∝ PTx
高度 (km)
気圧 (hPa)
上の準位の平均的な滞在時間(⊿t)
・自発放射の遷移確率
・衝突による遷移確率
大気の密度(~圧力)が高いと衝突による
遷移確率が大きくなり、支配的になる
 高密度 ほど⊿t小さくなる
ハイゼンベルグの不確定性関係から
E t  
線幅 (MHz)
一方
E  h
 
E
1

h 2t
線スペクトルデータから高度分布を求める (2)
スペクトル線の幅と圧力の関係
圧⼒幅 ∝ PTx
線幅 (MHz)
高度 (km)
気圧 (hPa)
ドップラー幅 ∝ ν(T/M)1/2
[9]
オゾンスペクトルの解析例
[10]
つくばミリ波分光計で観測された
オゾンスペクトルと鉛直分布
Nagahama et al. (1999)
電波望遠鏡を用いた日本で初めてのオゾン計測
名古屋大学:
電波天文学での星間分子スペクトル観測
=> 高感度超伝導受信器の開発
世界最高感度の達成
4メートル電波望遠鏡による
オゾン計測 (1986)
電波望遠鏡では長期間連続観測ができない
1990年ごろから
大気観測専用の観測装置作りを始めた
[11]
惑星大気の電波観測
地球型
木星型(ガス惑星)
木星型(氷惑星)
・地球の形成過程は?
・太陽系の形成過程は?
・系外惑星に生物は存在するか?
[12]
ESAのヴィーナスエキスプレスの
Webページより
http://www.esa.int/esa-mmg
・非磁化惑星における太陽
(風)の影響は?
火星
大阪府立大、前澤先生提供
線スペクトルから惑星大気の温度分布がわかる
[13]
線スペクトルから
温度がわかる
火星 SMA干渉計 Clancy et al.. より
[14]
1.電波分光観測システムとビーム伝
送系
電波望遠鏡のしくみ
電波望遠鏡のしく
み
[15]
基本的な仕組みは
光の望遠鏡と同じ。
なんてん望遠鏡は、
カセグレン方式の
反射望遠鏡
クーデ系
ナスミス焦点
ナスミス=横に取り出す
クーデ=ナスミス軸が
望遠鏡の駆動軸と一致
高度角が変わっても
受信機の位置が変化しな
い
主鏡面:パラボラ=放物
面
副鏡
双曲面
観測システムの概要
大気分子からの
電波信号
FRF
[16]
電流
超伝導受信器
FIF
4K
電圧
15K
FLO
局部発振器
光学系 ヘテロダイン
受信器
中間周波系
| FRF  FLO | FIF
183GHz
181GHz 2GHz
分光計
[17]
開口とビームパターン
離散的な開口(アンテナ)
2つの無指向性アンテナを並べてその出力の和
を取ってみる

d
d
E 0sin(t  kd sin  ) E 0sin(t  kd sin  )
 2E 0sin t cos(kd sin  )
d

4
のとき
2


 k   ,   2 


位相差から指向性(感度の角度依存性)が生まれ
る
[18]
連続開口とビームパターン
アンテナを増やし、
間隔を狭くする
 (位相差)
単一開口アンテナ
(ふつうのパラボラ)
極限
 (位相差)
和から積分に
方向の強度は位相差を考慮して足し合わせ
a
E ( )  
2
a
2
E (x ) exp(ikx sin  )dx
2 

k 

 

が小さければsin ~ 
E (x )  0
x  a 2 
として積分範囲を∞にのばし
kxkxと置き換えると

E ( )   E (k x ) exp(ik x )dk x

 方向の感度は開口面の電場分布のフーリエ
変換に他ならない
開口分布と
ビームパターン
これが単一鏡の
ビームパターン
遠方界:無限遠、または
十分遠いとき
フラウンホーファー回折
開口面電場分布の
フーリエ変換
端の電場強度が強いとサ
イドローブが高くなる
ガウシアンはサイドロー
ブが低いがビームサイズ
が大きくなる。
[19]
[20]
ビームは位相と振幅で決まる
近傍界:有限距離だけ離れた場合、
フレネル回折
基本はフレネル-ホイヘンスの原理
R
Wikipediaより
球面波の重ね合わせ
a
E (x , y )  
2
a
2


E (x , y ) exp ik R 2  (x   x ) 2  (y   y ) 2
dxdy
R


2
2
2


(
,
)
sin

(

)

(

)
E
x
y
k
R
x
x
y
y
E (x , y )   a2
dxdy

R
2
a
平面だと簡単に積分ができる
例:電波フレネルレンズ
1
r1 : 
4
3
r2 : 
4
5
r3 : 
4
7
r4 : 
4
プログラムで
for ~ nextループを
4回回せば電解強度
分布が求まる
1

2

3

2
[21]
[22]
ビーム伝送光学系
NANTEN2望遠鏡の光学系
曲面鏡の組み合わせ
主鏡(M1):放物面鏡
副鏡(M2):双曲面鏡
M3,M4,M5 :平面鏡
M6
:楕円面鏡
鏡面が曲面だとちょっと面倒
これが曲面に
なる
任意の2点間の距離を
計算するのが面倒
・ガウスビーム近似計算を用
いる。
・よくできたソフト(GRASP)を
用いる。
[23]
ビーム能率とアンテナの指向性
[24]
ビームパターン Pn(θ,φ):パラボラアンテナの感度を角度の
関数で表す。感度のピーク(通常はパラボラの光軸上の感
度)は1に規格化。
全ビーム立体角 = ΩA

2

0
A  

Pn ( , )dd
主ビーム立体角 = ΩM
M 

Pn ( , )dd
 si delobe
M
主ビーム能率 =
A
開口能率
有効開口面積:Ae
[25]
実際に電波の受診使っている相当面積
物理的開口面積:Ap
実際のアンテナの面積
Ae
1
開口能率 :  A 
Ap
A  sotblsf loss
so スピルオーバー
t テーパー能率
bl ブロッキング能率
sf 表面粗さ
loss オーム損失など
開口能率が大きいほどアンテナ
を有効に使っている
開口能率
有効開口面積:Ae
[26]
実際に電波の受診使っている相当面積
物理的開口面積:Ap
実際のアンテナの面積
Ae
1
開口能率 :  A 
Ap
テーパーとスピルオーバ
ー
A  sotblsf loss
so スピルオーバー
t テーパー能率
bl ブロッキング能率
sf 表面粗さ
loss オーム損失など
  D 2
開口能率
有効開口面積:Ae
[27]
実際に電波の受診使っている相当面積
物理的開口面積:Ap
実際のアンテナの面積
Ae
1
開口能率 :  A 
Ap
ブロッキング
A  sotblsf loss
so スピルオーバー
t テーパー能率
bl ブロッキング能率
sf 表面粗さ
loss オーム損失など
副鏡や支柱(ステー)で
鏡面が隠される
開口能率
有効開口面積:Ae
[28]
実際に電波の受診使っている相当面積
物理的開口面積:Ap
実際のアンテナの面積
Ae
1
開口能率 :  A 
Ap
A  sotblsf loss
so スピルオーバー
t テーパー能率
bl ブロッキング能率
sf 鏡面粗さ
loss オーム損失など
鏡面粗さ
 16 2 2 
sf  exp  
 2 

σ:鏡面のでこ
ぼこのrms値
開口能率とビーム能率の関係
[29]
温度Tで抵抗Rで発生する電力:WR
WR  kT
温度Tの黒体放射強度:IBB
I BB 
2kT
2
アンテナで受ける温度Tの黒体放射強
度:WBB
熱平衡状態では、WRとWBBが釣り合う
Ae  A  
2
WBB
1
kT
 I BB  A Ae  2  A Ae
2

(½は1方向の偏波成分だけ受信するため)
部門セミナ - 30
ここまでで講義終わり。
[31]
ビーム伝送光学系
ガウスビーム近似 波面光学的な取り扱い
E(0)
ω(z)
ω0
z
E(0)/e
等位相面と
曲率半径
z=0
ビームウエスト
0
z=z
等位相面
z=0
電界強度分布
ω(z)
ω0
断面強度分布図
E(0)/e
E(z)/e
E(0):中心強度
E(z):中心強度
*E(0)>E(z)

E z (r)
r2 
 exp  2 
E z (0)
  ( z) 
E(0)
E(z)
E(0)/e
O
ω(0)
E(z)/e
r
O
ω(z)
r
[32]
ガウスビームの伝播
収束ビームは1点に収束せず、ビームウェストでのビームサイズの広がり
をもつ。
 z   0
 z 

1  
2 
 0 
   2
r ( z )  z 1   0
  z





2




ω(z)
ω0
2
z
z=0
ビームウエスト
z=z
等位相面
z=0
ある波長λに対してビームウェストの大きさω0
を決めれば、ビームウェストから任意の距離z
ω(z)
ω
断面強度分布図
におけるビームサイズωと曲率半径rが一意的
E(0)/e
に決まる
E(z)/e
0
0  
  2 

1  
 r 
  r  2 
z  r 1   2  
    
2
E(0):中心強度
*E(0)>E(z)
パラボラ主鏡面は、入射平面波(r=∞)に対し
てビームウェストになっている
E(0)
無限遠
z→∞ では
O
E(z)
E(z):中
E(0)/e
ω/z→λ/(πω
0)
E(z)/e
c.f. ω/z~λ/D
ω(0) r
O
ω(z)
エッジレベルで20dBぐらい
ビーム伝送光学系の設計
[33]
例)南極用小型ミリ波
分光計
放物面鏡 等価なレンズ光学系に置き換え
(パラボラ)
設計:
各光学コンポーネント(鏡)における
曲率半径とビーム径を合わせる。
ホーン
楕円鏡
楕円鏡
拘束条件:
(1)ビームウェストの位置とビーム径
(2)鏡の物理的サイズ = 物理的な干渉
[34]
放物面鏡、楕円鏡
2 fp
入射波と反射波では鏡面上でのビームサイズは
同じ。曲率半径をrからr’に変える。r, r’は
点Pから楕円の焦点f, f’までの長さ。
前ページの第2式からわかるようにω0が有限で
ある限り、rよりzは短い( ω0 0の極限でr=z)。
つまり、楕円の焦点とビームウェストの位置は
異なる。
放物面鏡は平面波(曲率半径
∞)を任意の曲率半径ρに変換
する。
y2
z
4fp
θ=0なら   f p
θ=90°なら   2 f p
[35]
ホーンと設計
ω0
R
ω
l slant  R H
H 
D
2
 0  H
z H  RH
Ω=1.302(円錐)
Ω=1.554(コルゲート)
 H
1  
 R H
2




主鏡でのωとRを決める
2
  R  2 
H 
1  

2 

  H  
ビームウェストの位置z
とω0が決まる
ビームウェストの大きさ
がω0になるようにホーン
を決める
組み立てと実測評価
• 短冊を動かすことでビームパターンとビーム半径を
測定(E面とH面の2方向)
[36]
光学系 ~ビーム測定~
放物面鏡
PLM
[37]
回転鏡
ビーム測定器の開発
(2009 GCOE 若手研究経費)
楕円鏡②
新光学系
楕円鏡②の
4軸(x-y-θ―Φ)
調整機構
昭和基地向け改良型小型ミリ波分光放射計
BIAS供給
IF出力
冷却黒体
強度較正系
回転ミラー
x-y-θ-φ
精密調整ステージ
新コルゲートホーンと
超伝導SISミクサマウント
高精度放物面鏡と楕円鏡
[38]
[39]
組み立てと実測評価
E面方向
H面方向
ビーム
GRASPによる計算(■と▲) (大阪府大 木村氏による)
定性的に傾向を再現。  GRASP は有効!
問題はホーンの設計にあったことが判明。
計算結果の
非対称な
ビーム構造
の一例
[40]
GRASPによる光学系の再設計
(GRASPによる計算)
鏡から任意の位置でのビーム形状が計算可能
EM2_161.8068_H
EM2_161.8068_E
0.006
0.006
y = m1+m2*exp(-2*(M0-m3)*(M0...
値
エラー
m1
1.6864e-5
1.2243e-5
m2
0.0053283
5.6274e-5
m3
-0.51998
0.040988
m4
6.8021
0.084905
カイ2乗
1.2056e-6
NA
R
0.99602
NA
0.005
0.004
0.003
y = m1+m2*exp(-2*(M0-m3)*(M0...
値
エラー
m1
7.7435e-6
2.8166e-6
m2
0.0050495
1.2609e-5
m3
-3.8279e-8
0.010121
m4
7.1092
0.021006
カイ2乗
6.3172e-8
NA
R
0.99978
NA
0.005
0.004
0.003
0.002
0.002
0.001
0.001
0
0
-0.001
-20
-0.001
-15
-10
-5
0
5
10
15
-20
20
-15
-10
-5
0
5
10
15
20
H面 (ほぼ対称)
E面 (若干非対称)
ビーム径の変化(250GHz)
30
25
ビーム径(mm)
ほぼ期待どおりの
特性をもつ光学系
を設計できた。
20
ω(mm)
E面(mm)
H面(mm)
15
10
5
0
0
300
600
900
1200
ホーンからの距離(mm)
1500
1800