S2544

第115回 スライドカンファレンス 2014.11.1
S2544 皮膚腫瘍
服部結1), 仙谷和弘1), 松尾佳美, 2) 安井 弥1)
1)広島大学大学院医歯薬保健学研究院 分子病理学
2)広島共立病院 皮膚科
症例
症例:30歳代女性
現病歴:以前より腰背部に黒褐色斑がありその表面に疣贅様の
隆起もみられた。近医で冷凍凝固を行い、一旦脱落した
が、その後増大し1.5cm大の紅色腫瘤となったため紹介
受診となった。皮膚腫瘍を疑い、切除術を施行した。腫瘍
は肉眼的に一部色素斑を伴う紅色腫瘍であった。
臨床写真
鑑別診断
• Spitz nevus
• basal cell carcinoma
• eccrine poroma
• eccrine porocarcinoma
HE組織所見
HE組織所見
HE組織所見
HE組織所見
HE組織所見
HE組織所見
Fontana-Masson染色組織所見
HE組織所見
HE組織所見
鑑別診断
• balloon cell nevus
• balloon cell melanoma
• metastatic renal cell carcinoma
• sebaceous carcinoma
免疫染色
HMB-45
Ki-67
S-100
p53
Ki-67
Ki-67
HER2
免疫染色結果のまとめ
CAM5.2
(-)
CK7
(-)
CK20
(-)
• balloon cell melanoma
CEA
(-)
• metastatic renal cell carcinoma
HMB-45
(+)
S-100
(+)
p53
(+)
• balloon cell nevus
• sebaceous carcinoma
診断
診断
Balloon cell melanoma
【pT4a】
(Breslow thickness 10.5mm)
HE組織所見
HE組織所見
悪性黒色腫 (Malignant melanoma)
メラノーマの病理組織亜型
・表在拡大型
・悪性黒子型
・末端黒子型
・結節型
(superficial spreading melanoma ; SSM)
(lentigo maligna melanoma ; LMM)
(acral lentiginous melanoma ; ALM)
(nodular melanoma ; NM)
特殊型
・amelanotic melanoma
・desmoplastic neutropic melanoma
・pedunculated (polypoid) melanoma
・verrucous (-kelatotic) melanoma
・balloon cell melanoma
・primary dermal melanoma
・clear cell sarcoma
・malignant blue nevus
・epidermotropic metastatic malignant melanoma
・animal-type (macrophagic) melanoma
・minimal deviation melanoma
・nevoid melanoma
・melanoma arising from congenital melanocytic nevus
Balloon cell melanoma
臨床的特徴
・悪性黒色腫の中で最も稀である(英文では16例)
・予後に関しては他の悪性黒色腫と同様腫瘍の厚さによる
・ほとんどの症例が無色素性であるため、診断時には進行例として
みつかり、死亡率は高いとする報告が多い
病理学的特徴
・50 %以上のfoamy cellをもつものが皮膚balloon cell melanomaとさ
れる
・Balloon cell nevus との鑑別はmaturationがみられない点、
核の多形性、核異型、核分裂像がみられる点で鑑別する
・メラニンがほとんどみられない
・原発巣よりも転移巣でballoon cellが多くみられる
考察
・本症例は原発巣で90%以上の腫瘍細胞がballoon cell
の形態を示しており、非常に稀な症例である。
・Fontana-Masson染色でballoon cellの部分でメラニンの染色はみら
れなかった。報告では細胞質内の空砲はpremelanosome由来とさ
れ、メラニン生合成 の過程に異常があると考えられる。
・p53、Ki-67はともにnevusとmelanomaの鑑別診断、あるいは予後予
測因子として決定的なものではないが、過剰発現していればある
程度日常診断上は役に立つとされる。本症例ではp53、Ki-67はび
まん性に過剰発現しており、診断の一助になった。