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Title
Studies on the Relationship between Lactation and Reproductive
Physiology in Dairy Cows( 内容と審査の要旨(Summary) )
Author(s)
遠藤, なつ美
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(獣医学) 甲第390号
Issue Date
2013-03-13
Type
博士論文
Version
publisher
URL
http://repository.lib.gifu-u.ac.jp/handle/123456789/48016
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
(27)
氏名(本(国)籍)
主 指
導
遠
教
員 名
藤
なっ美(静岡県)
教授
東京農工大学
学
位
の
種
類
博士(獣医)
学
位
記
番
号
獣医博甲第390号
日
平成25年3月13日
学位授与年月
学位授与の要件
学位規則第3条第1項該当
研究科及び専攻
連合獣医学研究科
加茂前
秀
夫
獣医学専攻
研究指導を受けた大学
学
位
論
文
題
東京農工大学
目
Studies
Relationship
the
on
Reproductive
between
Physiologyin
Dairy
Lactation
and
Cows
(乳牛における泌乳と繁殖生理の関係に関する研究)
審
査
委
貞
論
主査
東京農工大学
教
授
田
谷
副査
帯広畜産大学
教
授
松
井
副査
岩手大学
教
授
橋
爪
副査
東京農工大学
教
授
加茂前
副査
岐阜大学
教
授
村
文
の
内
容
の
要
瀬
善
一
基
純
善
一
秀
夫
哲
磨
旨
近年,乳牛の泌乳量は改良の結果急激に増加し,半世紀の間に1.5倍の9,000kgにも達し
ている。その間,乳牛の繁殖成続は低減し続け,分娩後の初回授精受胎率は0.6倍の40%前
後に低下した。このことから泌乳と関連した変化が乳牛の繁殖生理に生じている可能性が考
えられた。そこで本研究では,泌乳中期の乳量水準中程度(30kg/day前後)の泌乳牛と対照
として非泌乳牛を用いて泌乳牛における繁殖生理事象について検討した。
まず,発情周期における黄体と卵胞の消長ならびに血梁中プロジエステロン(P4)とエスト
ラジオールー17β(E2)淡度を泌乳牛と非泌乳牛で比較し,それらとLHのパルス状分泌パター
ンとの関連について検討した。その結果,連続した2発情周期に渡って直腸検査および超音
波画像検査を連日行って調べた卵巣の変化は,黄体と卵胞いずれも泌乳牛が非泌乳牛よりも
大きく発育することが認められた。同機に調べた血中ホルモン淡度は,P。浪度は黄体初期に
は泌乳牛が非泌乳牛よりも低いが,黄体開花期には泌乳牛が非泌乳牛よりも高いことが認め
られた。E2濃度は発情周期を通じて両者に差はみられなかった。さらに,第2次発情周期の
排卵後2,4,6,8,14日に15分間隔で8時間採血して調べたLHパルス頻度は,泌乳牛が総
じて非泌乳牛よりも多いことが認められた。以上のことから,発情周期中の黄体ならびに卵
胞の発育と黄体開花期のP。浪度は泌乳牛が非泌乳牛より大きく,高いことが明らかとなり,
これらにはLHパルス頻度の増加が関与していることが推測された。
-184-
次に,黄体退行から排卵までの周排卵期における卵巣ステロイドホルモン,LⅣ洩度の変化
および発情徴侯の発現状況を泌乳牛と非泌乳牛で比較検討した。その結果,黄体退行を認め
た翌日から排卵までの間に3時間間隔で採血して調べた血中E2,P4およびLH淡度の推移は,
泌乳牛と非泌乳牛で差はなかった。また,黄体退行開始から排卵までの日数およびE2ピーク
から排卵までの時間に両者に差はみられず,LBサージのピークから排卵までの時間は両者の
全頭いずれも27時間であった。さらに,その間8時間間隔で観察した発情徴侯の発現・消
退状況においても両者に差はなかった。
続いて,黄体開花期(排卵後11∼14日)におけるP4の分泌レベルと末梢レベルにおける動
態とLH分泌パターンを,P4代酎と給餌との関連を含めて,泌乳牛と非泌乳牛で比較検討した。
血中ホルモン濃度は,後大静脈と頚静脈に留置したカテーテルから15分間隔で12時間採血
して調べた。・給餌は,採血開始後6時間に1日給与量の1/2量を与えた。その結果,12時間
の頻回採血時間において,後大静脈血中の平均P4濃度は,泌乳牛と非泌乳牛に差はみられな
かったが(49.0±29.2と53.3±51.9ng/ml,平均値±SD,P〉0.1),頚静脈血中の平均P.濃度
は泌乳牛が非泌乳牛よりも高かった(6.4±1.8と5.6±1.4ng/ml,P〈0.01)。調べた12時間
における
LHパルス頻度は泌乳牛の方が非泌乳牛よりも多かった(7.0±1.4
と 4.3±1.9
pulses/12h,Pく0.05)。後大静脈血中P.濃度は両者ともに給餌前に比べて給餌後に増加した。
しかし,頚静脈血中P4濃度は泌乳牛では給餌前に比べて給餌後に低下したが,非泌乳牛では
低下しなかった。以上のことから,泌乳牛では給餌後の栄養代酎の増加に伴って肝臓のP。代
謝が増加する結果,末梢血中P4濃度が低下することが示唆された。また,泌乳牛におけるLH
パルス頻度の増加が,黄体からのP4分泌を刺激していることが推測された。
そこで,泌乳牛の黄体開花期におけるLロバルス頻度の増加が黄体からのP4分泌を増加させ
ている可能性について検証した。すなわち,黄体開花期(排卵後11∼14日)の泌乳牛に性腺刺
激ホルモン放出ホルモン(GnRH;酢酸ゴナドレリン2・5JLg/ml;GnRH群,n=4)あるいは生理
食塩液2ml(対照群;n=3)を1時間間隔で6回静脈内注射し,投与前と後の各々6時間にわた
り,後大静脈と頚静脈に留置したカテーテルから血液を12分間隔で12時間採取して血中P。
とLH沸度を調べた。その結果,GnRH投与後6時間ではLHパルス頻度はGnRH群が対照群よ
りも2倍前後多くなり(5.3±0.5と3.0±0.O
pulses/6h,Pく0.05),後大静脈血中の平均P.
浪度は対照群よりも高く(97.7±16.9と51.8±33.8ng/ml,Pく0.05),頚静脈血中P4濃度も対
照群より高くなった(7.0±2.0と5.4±1.4ng/ml,Pく0.05)。以上のことから,LHパルス頻
度の増加が黄体のP。分泌を刺激し,後大静脈および頚静脈血中P4淡度を増加させていること
が強く示唆された。
以上のように,本研究から,発情周期中の卵胞と黄体の発育,黄体初期から黄体開花期に
おける末梢血中P。浪度とLHパルス頻度,さらに給餌後の末梢血中P4淡度の推移に泌乳牛と
非泌乳牛で差があることが明らかとなり,泌乳に関連する代謝生理状態が視床下部一下垂体一
卵巣軸の内分泌機能に克進的影響を及ぼしていることが明らかになった。
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審
査
結
果
の
要
旨
乳牛においてこの半世紀の間に泌乳量は急激に増加して1.5倍の9,000kgに
達し,逆に,繁殖成績は低下して分娩後の初回授精受胎率は0.6倍の40%前後と
なっている。このことから泌乳が乳牛の繁殖生理に影響を及ぼしている可能性
が考えられる。本研究では,泌乳と繁殖生理との関係を泌乳中期の乳量水準中
程度(30・kg/day前後)の泌乳牛について非泌乳牛を対照として検討した。
先ず,発情周期における卵巣と性ホルモン濃度の変化を調べたところ,泌乳
牛では,黄体と卵胞が大きいこと,血中プロジエステロン(P4)濃度が黄体初期に
は低く,黄体開花期に高いこと,黄体形成ホルモン(LH)のパルス頻度が多いこ
とが明らかとなった。このことから,LHのパルス頻度の増加が黄体,卵胞,黄
体開花期のP4濃度の増大に関与していることが推測された。
次に,黄体退行から排卵までの周排卵期における血中P。,エストラジオール
ー17β(E2),LH濃度の推移および発情徴候の発現状況を比較検討したところ,泌
乳牛と非泌乳牛に差は認められなかった。
続いて,黄体開花期のP4濃度の推移を分泌レベルとして後大静脈血および末
梢レベルとして頚静脈血について12時間,給餌との関連を含め七,比較検討し
た。その結果,分泌レベルのP。濃度は泌乳牛と非泌乳牛に差はないが,給餌後
・に泌乳牛,非泌乳●牛共に増加すること,末梢レベルでは泌乳牛が非泌乳牛より
も高く,給餌後に泌乳牛では給餌前に比べて低下したが,非泌乳牛では低下し
なかった。これらのことから,泌乳牛では給餌後の栄養代謝の増加に伴って肝
臓のP4代謝が冗進する結果,末梢血中P4濃度が低下する・可能性が示唆された。
そこで,泌乳牛の黄体開花期に性腺刺激ホルモン放出ホルモンを1時間間隔
で6回注射してLHパルス数の増加を誘起してP4分泌の関係を検討したところ,
LHパルス頻度は生理食塩液を注射した対照群の2倍前後と多くなり,分泌レベ
ルおよび末梢レベルのP4淡度が共に対照群よりも高くなった。このことから,
LHパルス頻度の増加が黄体のP4分泌を刺激し,P4淡度を増加させていることが
強く示唆された。
以上のように,本研究から,泌乳牛と非泌乳牛において卵胞と黄体の発育,
黄体初期から黄体開花期における末梢血中P4浪度とLHパルス頻度に差がみられ,
泌乳に関連する代謝生理状態が視床下部一下垂体一卵巣軸の内分泌機能に冗進的
影響を及ぼしていることが明らかになった。
以上について,審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合獣医学研究
科の学位論文として十分価値があると認めた。
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基礎となる学術論文
目:Comparisonbetweenlactatingandnon-1actatingdairycows
1)題
on
著
者
follicular
growth
endocrine
patterns
hormonein
the
and
of
ovarian
estrous
development,and
corpusluteum
steroids
andluteinizing
cycles
Kamomae,H・
名:Endo,N.,Nagai,K.,Tanaka,T・and
Science
学術雑誌名:AnimalReproduction
巻・号・頁・発行年:134(3-4):112∼118,2012
目:Profiles
2)題
著
者
ovarian
dairy
non-1actating
to
Reproduction
and
ovulationinlactating
cows
Kamomae,H・
名:Endo,N.,Nagai,K.,Tanaka,T.and
学術雑誌名:Journalof
hormone
steroids,1uteinizing
fromluteolysis
signs
estrous
and
of
Development
and
巻・号・頁・発行年:58(6):685∼690,2012
目:Changesinplasmaprogesteronelevelsin
3)題
cava
and
secretion
non-1actating
著
者
jugular
the
pattern
vein
after
dairy
the
巻・号・貢・発行年:59(2)
hormone
andluteinizing
feedinginlactatingand
cows
Kamomae,H・
名:Endo,N.,Nagai,K.,Tanaka,T.and
学術雑誌名:Journalof
caudalvena
Reproduction
and
Development
∼,2013(発表予定)
ー187-