ラテックス凝集法による前立腺特異抗原(PSA)測定試薬の基礎検討

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ラテックス凝集法による前立腺特異抗原(PSA)測定試薬の基礎検討
◎北林 佐梨 1)、藤本 一満 1)
ファルコバイオシステムズ 総合研究所 1)
前立腺特異抗原(PSA)は、前立腺腫瘍マーカーとして従来より
釈しみたところ、83ng/mL 以上で吸光度は減少した。装置
化学発光免疫法等で測定され方法間差の比較的小さい項目
にプロゾーンチェック値を設定する事でプロゾーンは検出できた。
である。今回、汎用自動分析装置対応のラテックス凝集法を原理
⑥相関性:アーキを(x)、LZ を(y)とし、患者試料 1,965 検体の
とする PSA 測定試薬の基礎性能及び従来法との相関をみた。
相関をみたところ y=0.999x+0.21、r=0.993、10ng/mL 以下の
【試薬及び機器】検討試薬は栄研化学の LZテスト‘栄研’PSA
1,893 検体では y=1.022x+0.16、r=0.993 と良く一致していた。
(LZ)、装置は日本電子の BM8030。対照試薬はアボットのアーキ
⑦乖離原因物質:両試薬で 3ng/mL 以上乖離した 2 検体
テクト・PSA(アーキ)、装置はアボットの ARCHITECT i2000 とした。
【結果及び考察】①精度:3 種の管理血清を n=20 で同時再
(アーキ:1.1、0.3、LZ:4.12、3.91ng/mL)について希釈測定し
たところ、LZ は回収率が悪かった。ゲル濾過クロマトグラフィーに
現性をみたところ、平均値 2.15 で CV2.6、平均値 3.97 で
て精査したところ、2 検体とも分子量(MW)約 191,000 の物
CV1.1、平均値 9.93ng/mL で CV1.1%と良好であった。②直
質が存在し、IgA(MW 約 160,000)と PSA(MW 約 38,000)が
線性:高濃度試料を 10 段階希釈し、理論値±5%を直線性あ
結合した量と一致したことから乖離原因物質は IgA 結合
りとしたところ 50.0ng/mL まで直線性を認めた。③共存物
PSA と推測された。
質の影響:アスコルビン酸 50mg/dL、Bil-F ・ C 各 20mg/dL、
【結語】ラテックス凝集法による PSA 測定は、基礎性能および
ヘモグロビン500mg/dL、乳び 3000ホルマジン濁度の影響をみたとこ
ろ、無添加血清値±10%以内の変動であった。④最小検出感
相関性は良好であった。10ng/mL 以下の検体において約
度:低濃度試料を 10 段階希釈し 2.6SD 法でみたところ、最
のスクリーニング試薬として使用可能と考える。
小検出限界 0.226、実効感度(CV10%以下)0.688ng/mL であっ
た。⑤プロゾーン現象:約 10,000ng/mL の試料を 2~512 倍希
0.1%の割合で異常反応を示す検体が出現したが、前立腺癌
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