NCネットワークサイトを活用した メタルワン ブランド訴求

平成25年度
経済連携促進のための産業高度化推進事業
(素形材産業のベトナムとの連携(進出)の在り方に関する調査研究)
調査報告書
平成26年2月
株式会社NCネットワーク
目次
1.
2.
3.
4.
5.
6.
ベトナム概要
1.1. 概要
1.2. 人口
ベトナムの経済
2.1. GDP
2.2. CPI
2.3. 為替
2.4. 自動車普及予測
2.5. 貿易収支
2.6. 2013年の輸出入状況
対外直接投資
ベトナムの素形材産業
投資家にとっての課題
5.1. インフラ
5.2. 労働力市場
5.3. 投資優遇策
5.4. 輸入税撤廃
まとめ
2
ベトナム概要
国名: ベトナム社会主義共和国
面積: 32.9万平方km
•日本の0.88倍
•世界65位(日本60位)
•ASEANの約7%
人口: 9,000万人(2013年平均)
•世界14位(日本10位)
•ASEAN全人口の約15%
GDP: 1,417億ドル(2012年)
首都: ハノイ(政治の中心)
ホーチミン(経済の中心)
公用語:ベトナム語
宗教: 仏教(大乗仏教)約80%
政体: 社会主義共和
3
ベトナムの人口比率
人口(2013年調査)
・人口:9,248万人 <男性:49.96% 女性:50.04%>
・人口密度:295.16人/k㎡
高齢者・若者の割合
4
(資料)Index Mundi – Vietnam Demographics Profile 2013
ベトナムの人口比率
ベトナムの人口構造は今まだ山型である。
しかし、若年人口の減少傾向は否定できない。
短期的には、ベトナムは人口ボーナスを得られ
る国である。
5
ベトナムの経済
6
各国のGDP
• 2012年ベトナムのGDPは1,558.2億ドルで、ラオスとカンボジアより高かったが、タイ、マレーシア等の約半分程しか無い。
単位:億ドル
2003
2004
ベトナム
427.17
494.24
576.33
663.72
774.14
991.3
1,060.15
1,159.32
1,355.39
1,558.2
ラオス
20.23
23.66
27.36
34.53
42.22
54.44
58.33
71.81
82.54
94.18
カンボジア
46.58
53.38
62.93
72.74
86.39
103.52
104.02
112.42
128.29
140.38
タイ
1,426.4
1,613.4
1,763.52
2,070.89
2,469.77
2,725.78
2,637.11
3,189.08
3,456.72
3,659.66
インドネシア
2,347.72
2,568.37
2,858.69
3,645.71
4,322.17
5,102.45
5,395.8
7,091.91
8,463.41
8,780.43
839.08
913.71
1,030.66
1,222.11
1,493.6
1,736.03
1,683.34
1,995.89
2,240.95
2,501.82
インド
6,183.57
7,215.86
8,342.15
9,491.17
12,387
12,241
13,654
17,109
18,728
18,417
マレーシア
1,102.02
1,247.49
1,435.33
1,626.93
1,935.53
2,309.88
2,022.51
2,475.34
2,892.59
3,050.33
フィリピン
2005
(資料)IMF - World Economic Outlook(2013年9月版)
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
7
GDP
• 1997年のアジア通貨危機以降、成長率は一時鈍化するも、内需と外需の両輪で持ち直している。
• グローバル経済危機後も堅調を維持。
• 2010年後、経済の成長ステージは「後発途上国」から「中進国」へ。
• 2011年、世界経済の遅い回復、輸出の困難により、成長率は低下した。尚、金融引き締めの影響で、鉱工業、建設部門の中の
建設(4.91%)やサービス部門の中の不動産(2.39%)の伸びが大きく鈍化した。
• 2012年、GDP成長率は引き続き低下し、5.3%となった。各企業の企業活動が停滞し、約55,000社が倒産した。2013年、政府は
経済回復策及びインフレ抑制策に於いて努力し続け、預金金利を6%、貸出金利を12~13%に下げた。このことで企業活動が回復
し、GDP成長率は2012年を上回る5.4%を達成した。
第2次ベトナムブーム
GDP(億ドル)
実質GDP成長率(%)
2008年:グローバル金融危機
2007年:WTO加盟
(資料)IMF - World Economic Outlook(2013年9月版)、ベトナム統計総局 – 2013年の経済・社会状況報告
8
一人当たりのGDP推移
• 2012年の一人当たりGDPは1,540ドルであり、10年間で3.498倍に拡大した。
• 一人当たりGDPは増加傾向。9,000万人の国内消費市場は発展途上であり、今後の経済発展に伴う大きな伸びが
期待できる。それらにより、ベトナムは投資家にとっての潜在市場となり、外資が増加しつつある。
• 2013年、一人当たりGDPは1,960USDが予想される。
単位:ドル
(資料)IMF - World Economic Outlook(2013年9月版)、ベトナム統計総局 – 2013年の経済・社会状況報告
9
CPI
• ベトナムのCPIは高く、特に2008年と2011年のCPIは群を抜いていた。ベトナムでの食品・原材料の値上がり、及び
電気・浄水の値段を上げる政府の決定により、2011年のCPIは更に高騰した。
• 2012年、政府はインフレ抑制策を実施し始め、CPIは2011年の19%から6.8%に減少、インフレ目標が達成した。しかし
金融引き締めの影響で、各企業の企業活動は停滞した。
• 2013年、インフレ抑制策が続き、農業の豊作、市場の消費力の回復が遅く、CPIは引き続き低下。年末時点、CPIは6%
となった。
単位:%
(資料)IMF - World Economic Outlook(2013年9月版)、ベトナム統計総局 – 2013年の経済・社会状況報告
10
為替
• 2008年の世界経済危機により、ベトナムの輸出入、及び国内市場は大きな影響を受けた。為替市場の流動性を保証する為に、
国家銀行は連続して主導的に銀行間相場を調整した。
• 2008年から2010年まで、ドン-ドル相場は約5%ドン安に動いた。
• 2011年以降、ドン-ドル相場は安定を維持しており、変動の程度は1%以内である。
2002年~2013年 為替の推移
(資料) The World ‘s Favourite Currency Site - http://www.xe.com/currencycharts/?from=USD&to=VND&view=10Y
11
自動車普及予測
• ベトナム人の収入の増加とともに自動車普及率も増えており、2020年~2025年にモータリゼーション段階に入ると予想
されている。自動車産業は展開しているが、ほとんどは組立品であり、約80%の部品は輸入されている。
2018年に、ベトナムは自動車完成品の輸入税撤廃されることが決まっており、国内の自動車産業は輸入品との激しい競
争が予想される。
単位:台/1000人
モータリゼーション
段階に入る
12
貿易収支
• ベトナムの輸出入規模は拡大している。今日に至るまで、貿易赤字が続いているが、2012年上四半期にて赤字幅
が改善され、年間統計によると、2013年黒字化を実現した。2013年の貿易黒字は約88.7億ドルとなった。
単位:億ドル
(資料)ベトナム総計総局 - 2012年の総計年鑑、2013の貿易収支報告
ベトナムの貿易収支
13
2013年の主要輸出品
• 携帯電話は好調を維持し、ベトナムの輸出に大きく貢献している。2012年と比較すると、67.1%伸び、急成長している。
輸出構造のうち、低下した唯一の製品は原油である。
製品
輸出高(億ドル)
2012年比較
携帯電話
212.44
▲67.1%
縫製品
179.46
▲18.9%
コンピューターなど、電子製品・部品
106.01
▲35.3%
製靴製品
84.09
▲15.8%
原油
72.77
▼11.4%
水産製品
67.17
▲10.3%
機械設備
60.14
▲8.6%
その他
539.26
合計
1,321.34
▲15.4%
14
(資料)ベトナム税関局 http://www.customs.gov.vn/Lists/ThongKeHaiQuan/SoLieuThongKe.aspx?Group=S%E1%BB%91%20li%E1%BB%87u%20th%E1%BB%91ng%20k%C3%AA
2013年の主要輸入品
• 最も多く輸入されているものは機械設備と材料である。
• 外資系企業はベトナムの輸出入への貢献が大きい。2013年、外資系企業の輸出高は809.12億ドル、輸入高は744.28
億ドルで、全国の輸出入結果の約60%を占めた。
製品
輸出高(億ドル)
2012年比較
機械設備
186.87
▲16.5%
コンピューターなど電子製品・部品
176.92
▲34.9%
布
83.97
▲19.3%
携帯電話
80.48
▲59.6%
石油・ガソリン
69.84
▼22%
鉄
66.59
▲11.6%
プラスチック材料
57.14
▲18.9%
縫製用備品
37.25
▲17.9%
その他
562.17
合計
1,321.25
▲16.1%
15
(資料)ベトナム税関局 http://www.customs.gov.vn/Lists/ThongKeHaiQuan/SoLieuThongKe.aspx?Group=S%E1%BB%91%20li%E1%BB%87u%20th%E1%BB%91ng%20k%C3%AA
2013年の主要輸出入市場
• 国別の輸出入価格の上位はアメリカ、日本、中国、韓国である。
輸出
国・地域
輸入
価値(億ドル)
国・地域
価値(億ドル)
アメリカ
238.69
中国
369.54
日本
136.51
韓国
206.97
中国
132.59
日本
116.11
韓国
66.31
台湾
94.23
マレーシア
49.25
タイ
63.11
ドイツ
47.29
シンガポール
57.02
アラブサウディ
41.38
アメリカ
52.31
その他
609.29
その他
361.96
合計
1,321.34
合計
1,321.25
16
(資料)ベトナム税関局 http://www.customs.gov.vn/Lists/ThongKeHaiQuan/SoLieuThongKe.aspx?Group=S%E1%BB%91%20li%E1%BB%87u%20th%E1%BB%91ng%20k%C3%AA
対外直接投資
17
ベトナムへのFDI構造
• ベトナムへのFDIはますます増加し、2013年の登録総額は216億ドルとなり、2012年同期に比べ、54.5%増えた。
2013年の一番大きなプロジェクトはSamsung、LGなどである。FDIの登録総額は2,230億ドルで、1.5万件にのぼる。
• これまでに最も投資が多いのは日本、シンガポール、台湾である。2013年だけ計算すると、第1位は韓国(37.521億ド
ル)、次いでシンガポール(30.14億ドル)、中国(22.766億ドル)、日本(12.95億ドル)であった。
単位:億ドル
2013年11月までの国別ベトナムへのFDI
*資料:投資計画賞 海外投資局 http://fia.mpi.gov.vn/news.aspx?ctl=news&p=2.39&mID=8
単位:件
18
日本からの対ベトナムFDI
•ベトナムは1990年代前半以降、日系企業の投資先として最も注目される国となっており、対ベトナムFDIは徐々に増えて
いる。特に、2008年、76億ドル投資となった。2009年世界同時不況のため、ベトナムへの投資は急低下したがその後、日
本のFDIは徐々に回復した。2011年の東日本大地震の影響は殆どなかった。2012年には、日本からのベトナム投資は他
国を退け、一位となった。
単位:億ドル
日本からの対ベトナムFDIの推移
単位:件数
*資料:JETRO - http://www.jetro.go.jp/world/japan/stats/fdi/; 投資計画賞 海外投資局 http://fia.mpi.gov.vn/news.aspx?ctl=news&p=2.39&mID=8
19
日本の対越直接投資(分野別)
• 日本のFDIは製造業への投資が最も多く、約1,200社弱の日系企業がある。日系企業の企業活動はベトナム経済の
発展だけではなく、ローカル企業の成長及び社会環境の改良にも貢献している。
単位:億ドル
≈≈
*資料:投資計画賞 海外投資局 http://fia.mpi.gov.vn/news.aspx?ctl=news&p=2.39&mID=8
単位:件
≈
20
ベトナムの素形材産業
21
1.1. 鋳造①
政府は鋳造をベトナムの工業化に当たる必要な産業と見なし、高い関心を寄せている。
中期的な鋳造産業発展計画では、2015年までの生産高は9.98億ドル、輸出高は5,000万ドルに達すること
を目指している。また、2025年までに30,78億ドルの生産高、6,19億ドルの輸出高を目標としている。
鋳造企業を新設しようという、資本投資や技術投資の計画もされており、2025年までに15.37億ドルの資本
金を想定し、23件の投資プロジェクトが計画されている。
また、現在、ローカル企業のほか、日本、台湾などの外資系企業も少数ではあるが鋳造産業に進出してい
る。これらの外資系企業の主要ターゲットは主に国外、あるいはベトナムにおける外資系企業である。
一方で、大多数のベトナムローカル企業は国内市場に向けての製造を行っている。メインターゲットの国籍
や企業規模によって要求品質や価格は大きく異なり、国内市場ばかりに対応してきたベトナムローカル企
業が、外資系企業に習い、国外の顧客や国内の外資系企業の仕事に対応しようとしても、技術的に対応
出来ないといった側面もある。
ベトナム国内での鋳造産業の育成に関する動きがあるものの、技術面や経営面で不慣れのため、外国か
らのニーズに対応することはすぐには難しいであろう。今はその下地を作るという段階である。
22
1.1. 鋳造②
実際の鋳造の現場はどのようになっているか。鋳造企業は統計上は全国で約500社とされているが、実
態としては全国に非常に多くの鋳造企業が存在する。各地に鋳造村があり、家族経営の零細企業等が多
い(例:銑鉄、鉄鋼で鋳造するMy Dong村(ハイフォン市、)Y Yen村(ナンディン省)等。 銅鋳造のNgu Xa村
(ハノイ市)、Dai Bai村(バクニン省)等。)これらの企業の多くは代々経験則で引き継がれてきた技術を継
承しており、専門的な知識は持たず、農業工具、フライパン等の生活用品を製造する場合がほとんどであ
る。ハイフォン市のMy Dong村で行った企業発掘調査の折には50社の鋳造企業のうち、工業製品を製造
している企業は5社程度であった。
このように、ベトナム地場に鋳造企業は多いが、工業製品に応えられる企業数は割合として非常に少な
い。なお、古い技術や工法を使うために環境汚染を引き起こす例もある。このような状況であることから、
日本からの調達ニーズに応えられる企業はほぼ無い。
これらの企業の鋳造工場では、一般的には型を土間置きにして作業員が鉄を手で流し込むという作業、
いわゆる手込めをしている企業が多い。また、フラン樹脂鋳型技術はまだ一般化されていない。これらの
事情から、ベトナムローカル企業の鋳物は生産性が低いうえに不良率が高いと言われている。
23
1.1. 鋳造③
土間置き(ハイフォン市における2社)
24
1.1. 鋳造④
ほとんどの鋳造企業が前述のような状況である中、ベトナムにおける外資系企業、又はアメリカ、ヨーロッ
パー、日本、東南アジアなど向けに製造販売をしているベトナムローカル企業もある。2010年の統計によ
ると、モーターカバー、Dieselエンジンなどの機械部品が3,500~4,000万ドル、その他の部品が142,4万ドル
輸出された。古くはマンホールの蓋などを多く輸出していたが、近年ではトラック、エレベーター、機械など
の部品が輸出され始めた。
外国企業とビジネスを行っているような少数の企業では、自動造形設備の投資をしている場合もある。
しかし全体から見るとこれは稀なケースであり、ほんの数社程度である。設備に関連して各工程について
注視すると、電気炉の普及が進んだため、溶解のレベルは上がってきている。しかし造型は、砂管理・設
備とも遅れており結果として品質が低く、不良が多い。ベトナムローカル企業は総じて、各工程の専門的な
知識を持たず、本格的な設備導入もこれからであり、日本との技術格差は大きい。専門技術及び品質管
理について技術的支援が必要とされている。
ベトナムの鋳造業界はDiesel Song Cong、VEAMなどの国営大手企業が牽引をしている。民間企業の成
長も見られるが、日本などの工業製品向けの要求を満たすには至らない。技術向上のための難しい案件
や、多品種少量などへの挑戦を望む企業もいるが、現状としては対応が難しいというのが実情である。
25
1.2. ダイカスト-鍛造-熱処理
・
ダイカスト
外資系企業のベトナム進出に於いてダイカスト分野は最も多い分野の一つである。なかでも、日系企業、
台湾系企業、アメリカ系企業が多い。それらの外資系企業は海外向けに四輪車などの量産企業であり、
技術・設備・管理とも優れている。一方、ローカル企業は鋳造同様技術レベルが低く、製造している製品は
ポンプのカバー、建築用アルミ棒など、簡単な物に限定され、発展途上である。オートバイ部品をダイカス
トできるローカル企業もわずかである。
・
鍛造
鋳造と同じように、ベトナムの鍛造産業は発展途上のレベルである。鍛造村が非常に多いが、工業製品向
けの鍛造企業は鋳造より非常に少なく、Diesel Song Cong、Fomeco、EMTCなど、限られた国営企業のみ
行っている。オートバイ部品を中心に製造しており、海外へ輸出することもまだ初期段階である。
・
熱処理
熱処理を行っている企業は多いが、海外企業の要求に応えられる企業は少ない。ローカル企業の品質は
安定しない為、熱処理は日系企業にしか依頼できない現状であると多くの日系企業が感じている。
26
2.素形材産業について①
裾野産業全体を見ると、どの産業でも大きな問題は現地調達率の低さである。稼働している企業数は多
いが、外国市場に対応できる企業は極少数である。素形材産業も同じ状況である。
JMIC実行「タイ・ベトナム素形材業界の技術水準評価」の調査によると、鋳造・ダイカスト・鍛造産業で営
業を行っている日系企業とローカル企業の能力の違いは以下の通りである。
グラフ. 素形材産業における日系企業とベトナムローカル企業の相違
1.00=180点満点
(※)資料:NPO法人 熟年ものづくり国際協力センター タイ・ベトナム素形材業界の技術水準評価
27
2.素形材産業について②
前ページのグラフを見ると、専門技術・設備・管理に於いては、日本企業との格差が大きい。ベトナム
ローカル企業はレベルが高い機能部品は取り扱っていないことが分かる。産業基盤の低さは想像以上で、
日系企業の多くは不満を抱えている。
製品管理面、製造環境面の問題は根深い。ほとんどの中小企業は管理・安全・環境に関する意識を持っ
ていない。これは大手国営企業であってもその傾向があり、工場が汚くても製品を作れる、作った製品は
売れる、という考え方を持っている社長は少なくない。資本金が少なく、企業が成長してから工場管理に投
資しようという考えも多く、逆説で考えると、企業が成長するまでは管理は放っておくという考えも少なから
ずある。この意識の持ちようも、ベトナムローカル企業の成長の遅さの要因であろう。5Sは製品の品質に
繋がるという認識は持ち始めたものの、5S、現場改善はなかなか発展しない。
また、人材に於ける問題もある。素形材産業に関わる大学、研究機関が少なく、業界団体もほとんどな
い。関連産業も未発達で教育も行われていない。ベトナムに進出した各企業はまともな人材を得にくく、本
国に頼らざるを得なく、事業展開に非常に苦労する。農業出身の従業員は安全意識を持たず、鋳造産業
に絶対必要な装備はもとより、作業服を着用せずに裸で仕事をする人も多く見られる。
28
2.素形材産業について③
素形材向けの材料はほとんど輸入品である。
ベトナムの製鉄産業は急成長しており、鉄の生産量も年々上がっているが、これは主に建築用鉄である。建築用鉄の工
場はベトナム内需に100%応えられている。一方、工業用鉄は現地調達が難しい。そのため、2013年、ベトナムは945万ト
ン(66.59億ドル相当)の鉄、323.5万トン(12.48億ドル相当)の鉄スクラップを輸入した。以下のグラフを見ると、工業用鉄に
関する生産力と実際の需要の差がいかに大きいが分かる。
アルミ、銅等も同様な状況であり、材料の現地調達が難しい為に生産コストは高い。
単位:万トン
(資料)製鉄協会総合
生産力
単位:万トン
消費量
29
投資家にとっての課題
1.インフラ
30
工業団地
ベトナムでの各工業団地
2011年まで、約260の工業団地が稼働してい
る。工業団地は多いが、細かなサービスが行
き届いていない等の弱点を持つ工業団地も多
い。
31
港
ベトナムでの港システム
• 全国で大きな港は49所。
• 全国の港のシステムは5グループ
に分けられる。
南部の港システム
グループ5の
港システム
32
南部での港の企画
2020年までの南部の港計画:
(2190/QD-TTg 24/12/2009決断に従う)
• 地域の各港を改善。
• 関連交通システムを改善。
(現在、陸路システムは各港の開発に
追いついたが、鉄道は遅れをとってい
る。)
南部での関連交通システム
33
空港


全国で30空港が稼働している。
その内、国際空港は10カ所。
Dong Nai省でのLong Thanh国際
空港を計画中。
Long Thanh国際空港の地域企画図
34
鉄道
ベトナムの鉄道システム
• 全国の鉄道の総距離は2,639,876km。
• 中国、カンボジア、タイ、マレーシアの
鉄道を接続。
• 鉄道の幅:1,000mm、1,435mm
• 最大速度:80km/h
35
鉄道計画


鉄道:
南北高速鉄道:計画中
ホーチミン市での地下鉄:メトロの3/7線は建設中
電車:
ハノイ:
• Cat Linh – Hao Nam – Yen Lang – Nga Tu So – Ha Dong線:
建設中
• Song Nhue - 第3地帯:2012年の第4期から建設
ホーチミン市:
• Bach Dang – 西発着場
• Nguyen Van Linh – 国道2 号線
• Quang Trungソフトウェアー公園 – Nguyen Oanh
36
鉄道計画
ホーチミン市でのメトロルート企画マップ
37
高速度道路

建設中:
Noi Bai – Lao Cai(北部)
Cau Gie – Ninh Binh(北部)
Da Nang – Quang Ngai(中部)
Ben Luc – Long Thanh(南部)
Ho Chi Minh – Long Thanh – Dau Giay(南部)

計画中:
Noi Bai – Mai Dich(北部)
Ninh Binh – Thanh Hoa(北部)
Thanh Hoa – Ha Tinh(中部)
Trung Luong – My Thuan – Can Tho(南部)
38
インフラ建設時の問題
全国のインフラ建設時の問題:
資金
敷地獲得
建設品質
例:Noi Bai – Lao Cai高速度道路の敷地開放は難しい
39
電力①
水力発電
ベトナムの発電所システム
• 現在:59か所
• 東南アジアでの最大水力発
電所であるSon Laを建設中、
2013年に稼働予定。
火力発電
• 現在:37か所
• ベトナムでの最大規模の火
力発電所であるVung Ang 1は
2014年に建設、2020年までに
稼働予定。
太陽発電
家庭で架設。家庭需要しか満
たさない。
原子力発電
Ninh Thuanプロジェクトは2014
年に建設開始。2020年までに
稼働予定。
40
電力②
2006~2020年までの500/220KV電線システム
電力の産量:2011年
• 国内で生産:1037.66億kwh
• 中国から輸入:49.59億kwh
電線システム:
• 110kv: 13,144km
• 220kv: 10,015km
• 500kv: 3,890km
EVNが電力供給を独占
EVN料金表
4:00~9:30
11:30~17:00
月~土曜日
通常時
20:00~22:00
0.061USD
4:00~22:00
日曜日
9:30~11:30
月~土曜日
ラッシュ
17:00~20:00
0.109USD
22:00~4:00
0.038USD
日曜日
その他
月~日曜日
41
投資家にとっての課題
2.労働力市場
42
労働力提供①:
ベトナムの教育システムについて
中学卒業後に進路が分かれる
又、大学進学率は高くない。
「職業教育」
(i) 職業訓練短期大学
(ii) 中等職業訓練校
(ii) 職業訓練センター
中等専門学校
年齢
22才
「大学教育」
専門短期大学
大学・大学院
18才
「普通教育」
高校
15才
中学校/中学・高校
教育の学校
11才
小学校/諸学・中学
教育の学校
6才
「幼稚教育」
3ヶ月
幼稚園*
(*)資料:教育法ーベトナム教育・訓練省(MOET)、2010年の教育統計(MOET)、Ministry of Labour, Invalids and Social Affairs (MOLISA)
*3種がある:3ヶ月から3才、3才から6才未満、両方対象の幼稚園
校数
43
労働力提供②:専門教育
• ベトナムでは大学、短期大学が多い。大学、短期大学はほぼハノイ、ホーチミンなど大都市に集中しているが、
専門高等学校はどの地域でも何校か存在する。
• 教師のレベルは教育レベルによって違う。博士、マスターが多いが、実力を持っていない教師も少なくない。
学校の教育能力は大きな問題とされており、理論的知識のみを教え、卒業した学生は実際の経験及びソフトスキ
ルを持たないという懸念がある。
大学-短期大学-専門高等学校数
単位:% N = 658
N = 704
N = 714
大学-短期大学-専門高等学校の教師数(2012 – 2013年期)
N = 715
単位:%
大学
N = 18,302
N = 25,643
N = 61,674
その他
専門高等学校
大学・短期大学
短期大学
マスター
専門高等学校
博士
(*)資料:教育訓練省
44
労働力提供②:専門教育
ハノイの教育機関分布マップ
• 例としてハノイの教育機関分布のマップを挙
げる。教育機関は都市部に集中して分布し
ている。
• 教育の質は全般的に低い。前時代的な理論
を教えたり、実習や実地研修等が無く、実際
の現場では役に立たないケースが多い。
• 企業のニーズを取り入れた教育を実施する
学校も増えているが、全体としては多くない。
• 現場で働きたがらない若者が増えている。
大学卒業し、オフィスで働きたがる傾向がある。
受験に失敗すると浪人する若者が多くなった。
• 卒業後、就職活動に失敗すると、自営業に
走るなど、安きに流れる傾向もある。
45
労働力提供③:専門教育
• 教師と生徒の比率はかなり低い。以下のグラフを見ると、平均の比率は1教師/30生徒であるが、国営学校で1教師/
100生徒に対し、7~8教師/1生徒の比率の民間学校もある。学生は競争が高くても国営学校に入りたいという現状であ
る。
単位:万人
(*)資料:教育訓練省
46
労働力提供④:日本語人材
• 日本語人材の提供は3種類がある。
• 日本語を勉強する人が増えており、奨学金
を受けて日本へ留学する人も多くなっている。
• 日本の教育が世界でもトップレベルと評価さ
れている。
• 又ベトナム人の収入が増えたり、子供養育
への関心が高なるにつれ、日本、アメリカ、
イギリスなどの先進国へ留学に行かせる家
族が多くなっている。
• 日本語教育機関は増加傾向である。
ハノイ、ホーチミンなど、大都市に於け
る有名な大学だけではなく、地方の大
学・短期大学も日本語を教育している。
加えて、日本語センターの設立も多い。
国内での
勉強
日本語
人材
日本への
留学生
日本への
実習生
日本へ実習に行く人が増えている。
理由は以下の3つである。
• 日本から戻った後、日系企業で働く機
会に恵まれやすい
• 実習生向けの制度は待遇が良い。
• 手続きが分かりやすい。
47
労働力提供④:日本語人材
• ベトナムから日本への留学生は増加傾向にあり、2010年5月1日までの統計によると日本に留学してい
るベトナム人は3,597人と、2009年より12.4%高かった。
• この留学生はベトナムに戻り、日本語に関係した仕事を通じて日越交流への貢献を期待されている。
日本への留学生数(2010年5月1日)
国(地域)名
中国
韓国
台湾
ベトナム
マレーシア
タイ
アメリカ
インドネシア
留学生数(人)
86,173
20,202
5,297
3,597
2,465
2,429
2,348
2,190
構成比(%)
60.8
14.2
3.7
2.5
1.7
1.7
1.7
1.5
ベトナムから日本へ留学生数推移
国(地域)名
フィリピン
イギリス
カナダ
ロシア
カンボジア
ブラジル
オーストラリア
エジプト
留学生数(人)
524
452
358
358
333
324
318
300
構成比(%)
0.4
0.3
0.3
0.3
0.2
0.2
0.2
0.2
ネパール
1,829
1.3 サウジアラビア
300
0.2
バングラデシュ
モンゴル
ミャンマー
1,540
1,282
1,093
1.1 ラオス
0.9 イラン
0.8 スウェーデン
275
235
212
0.2
0.2
0.1
208
199
4,351
141,774
0.1
0.1
3.1
100.0
スリランカ
フランス
ドイツ
インド
777
705
554
546
0.5 ウズベキスタン
0.5 シンガポール
0.4 その他
0.4
計
(*)資料:JASSO http://www.g-studyinjapan.jasso.go.jp/ja/modules/pico/index.php?content_id=25
単位:人
48
労働力提供④:日本語人材
• ベトナムからの実習生・研修生は留学生同様に多く、各国中第2位である。2013年、ベトナムの技能実習生(2号)は
4,671人であった。
• 日本で実習したほとんどの実習生は帰国後、ベトナムの製造業で働いている。日本で勉強した日本語、技術、仕事
に対する責任感から一生懸命働きたいという意欲に、日系企業が期待をかけている。
単位:人
日本へ技能実習(2号)移行申請者(国籍別)
50,000
40,000
25,000
≈
(*)資料:JITCO http://www.jitco.or.jp/about/statistics.html
49
労働力提供④:日本語人材
日本語教育については、高等学校や大学といった学校教育ではなく、政府や企業などが設立した教育
機関において日本語を学習している人が日本語学習者の半数を超えている。特にホーチミンに於いては、
日本語を学習する者の数は約1.3万人にも達しており、単純に学校教育の日本語だけの勉強でなく工学技
術や情報技術、ビジネスマインド、歴史・文化などを組み合わせたさまざまな内容の日本語教育が行われ
ている。学習熱は年々高まっており、環境も豊かになってきている。
「ベトナムにおける日本語教育と日系ビジネスの人材育成に関する考察」によるとベトナム国内には約
100箇所の教育機関があると言われている。その中に、28校の大学、10校の中学校・高校があり、ほとん
どはハノイ、ホーチミン市に集中している。大学、日本語学校以外では、日本へ留学、実習に行きたい人
向けの留学・人材派遣会社も自社の日本語教育センターを築いて、日本語を教えている。
ベトナムでは、日系企業への求職や転職あるいは職場での昇給やキャリアアップを目的として、継続し
て日本語を学習する者が増加している。一方、大学新卒者においては、ビジネス日本語の活用の面で、
実際の企業における実務で使える能力に達する者は少ないのが現状である。
例:ハイフォン市で行ったJICAの「ハイフォン市での日本語教育に関する調査」によると、日本語人材はハ
イフォン市における日系企業の悩みとなっている。日本語学校では日本語しか教えていない為、日本語が
上手であっても、働くためのマインドや、日本的な考え方は分からないケースが多い。その為、日系企業で
すぐに仕事に就ける人材育成がなされていない現状である。
(*)資料:ベトナムにおける日本語教育と日系ビジネスの人材育成に関する考察
50
労働力提供④:日本語人材
以下は、日本企業の経営者が持つ、日本語人材に関するイメージの例である。
日本企業の経営者が持つ、日本語人材に関するイメージの例
No
イメージ例
1
自分で考えない。
2
言われたことしかやらない、できない。
3
指示内容の理解度が低く、指示と異なることをしたり、会話や行動がかみ合わないことが多い。
4
結果のみの報告で、詳細説明ができない。「壊れた」「不良が出た」等。
5
日常会話はできても専門用語はできない。
6
組織で働くという概念が無い。親が組織で働く姿を見ていない。
7
管理能力が欠如している。
8
目的を達成するプロセス、将来のビジョンなどが作れない。
9
日本語なら日本語だけ。仕事はできないケースが多い。
(*)資料:JICAハイフォン ハイフォン市での日本語教育に関する調査 2013
51
労働力提供④:日本語人材
こういった背景の中、日本企業及び日系企業からは、日本語によるビジネススキル、ビジネスマナー、技
術などを習得したエンジニアを確保したいといったニーズがある。これを受け、学校教育では公的機関を
中心とした中等教育による日本語教育、及び学校教育以外の民間機関を中心とした社会教育による日本
語教育が活発に行われている。
またベトナムでの日本語学習者の大幅な増加を受けて、JICAや国際交流基金といった政府系の組織・
団体以外にも、それぞれの教育機関が提携する企業や団体などから日本人教員を派遣しているケースが
多く見られる。加えて、ベトナム人日本語教員も増加しており、教員の量的・質的拡大を図るため、2005年
に日本語教育師範課程が国家大学・外国語大学に設置されている。
しかしベトナムに於いて、様々な日本語教育機関の大幅な増加とは裏腹に、適切な教材が不足してい
るというソフト面の問題、あるいは教育を行う施設・設備が不十分であるハード面の問題が見られる。授業
で用いる教材や教授法に関する情報の不足、教師数不足や教師の日本語能力が不十分であるといった
教育を提供する側の能力の問題、日本語学習者数の増加に日本語教師の育成が追いついていない問題
等、枚挙にいとまがない。解決すべき問題は多い。
(*)資料:ベトナムにおける日本語教育と日系ビジネスの人材育成に関する考察
52
最低賃金
最低賃金( 182/2013/NĐ-CP による)
4つの地域に区分され、それぞれに賃金が異なる。
第1の地域
VND 2,700,000 (約13,400円)/月
第2の地域
VND 2,400,000 (約11,900円)/月
第3の地域
VND 2,100,000 (約10,400円)/月
第4の地域
VND 1,900,000 (約9,400円)/月
・第一の地域:Thang Long, Noi Bai, Dai Tu, Tu Liem, Quang Minh, Cai Lan, Tan Thuan, Bac Cu Chiの工業団地などがある省
(ハノイ及びホーチミン市の区部)
・第二の地域:Nomura, Do Son, Song Cong Ⅰ – Song Cpng Ⅱ, Minh Hung, Minh Thanh, Duc Hoaの工業団地などがある省
(ハノイ及びホーチミン市の郡部)
・第三の地域:Phuc Dien, Dai An, Pho Noi B, Binh Minhの工業団地などがある省
・第四の地域:Quynh Phong, Nguyen Duc Canh, Dinh Tram, Dak To, Long Ducの工業団地などがある省
53
ワーカー賃金の他国との比較
政情不安、治安回復の遅れ、労働コストの上昇、インフラ未整備等の問題を抱える他のASEAN諸国と比べても、ベトナム
は比較的優位性があり、 “安価な人件費”と“安定した政治情勢”という特徴があるため外資企業投資対象の筆頭にある
中国の「プラスワン」の動きとして、海外進出先として注目されている。近年では中国の労働コストの急激な上昇により、中
国からベトナムにシフトする会社も多数ある。
国名
ベトナム
広州
大連
タイ
インドネ
シア
マレーシア
フィリピン
インド
バングラ
ディッシュ
ミャンマー
米ドル
95.8
248.5
145.5
241.1
131.3
290.5
194.8
187.4
57.4
16.3
(資料)JETRO – アジア・オセアニア主要都市/地域の投資関連コスト比較第21回
54
投資優遇策
55
日越協力の枠組み
•
ベトナム・日本間の戦略的パートナーシップ(2009)
•
日越投資保護協定-BIT(2004年12月)
•
日越経済連携協定-JVEPA(2008)
•
日越二重課税防止協定(1995年9月)
•
アセアン・日本協定(2008年12月)
•
日越共同イニシアティブ(2003)
•
環太平洋戦略的経済連携協定-TPP(交渉中)
•
日越協力の枠組みにおける工業化戦略(2013/7決定1043/QD-TTg)
(*)資料:ベトナムにおける日本語教育と日系ビジネスの人材育成に関する考察
56
法人所得税
2013年6月19日付けで法人所得税を改正
•
2013年までの法人所得税25%
•
2014年1月1日から2015年まで:22%を適用
•
さらに、2016年1月1日からは、20%に引き下げ
•
売上高200億ドン以下及びに常用従業員200人以下の中小企業(SMEs)に対する法人所得税率:
2013年7月1日から20%、2016年1月1日からは17%を適用
•
ハイテク、バイオ・テクノロジー、環境保護、新材料の生産、農村・農業など分野に対しては、優遇税制
を拡大
•
経済社会的に困難な地域における工業団地に対する優遇措置:最初2年は免税、次の3年は50%減少
•
生産・経営活動にかかる、報告料・宣伝料・セール・中間手数料・受付料・祝典・会議などの総費用は、
法人所得税の計算時に、最大15%控除可能。
(*)資料:2013年6月19日付けに法人所得税
57
輸入税撤廃
58
輸入税撤廃
2013年11月15日付けに通達 号164/2013/TT-BTC
2014年1月1日からの輸入税:
•
国内で生産不可能な材料(2,963項目):現在税率を維持する。
•
国内で生産可能な材料:2%から3%に上げる。
•
輸出税を負担しなければならないが輸入もある鉱産:0%から3%に上げる。
•
WTO加盟によリ税率を減少しなければならない製品に対して、2014年時点の確約税率より0.5~1%低
い場合、確約税率まで上げる。割り当て制度によって輸出する製品に対して、5~10%上げる。
•
ASEANから輸入する各種の自動車の輸入税は0%になる。
等
(*)資料:2013年11月15日付けに通達 号164/2013/TT-BTC
59
日越経済連携協定による輸入税撤廃
2008年12月25日に署名した日越経済連携協定(JVEPA)
2018年までに、日本から輸入する製品の輸入税を7%に下げる。
日本からの輸入にかかる関税を10年以内に88%削減し、16年間以内では93%削減することを目指す。
対象品
削減税率
期間
LED用部品
3%へ
2年間
デジタルカメラ
10%へ
4年間
テレビ
40%へ
8年間
自動車用減速機
10~20%へ
10年間
自動車用モーター及び
モーター用部品
3~12%へ
10~15年間
自動車用ブレーキ
10%へ
10~15年間
自動車用各種のねじ
5%へ
2年間
鉄プレート
0~15%へ
15年間
(*)資料:ベトナムにおける日本語教育と日系ビジネスの人材育成に関する考察
60
日本投資家向けの優遇策
日本投資家は信頼が高い。決算が遅れないことや、取引が始まると長く続く等の評価があるためである。
そのために日本企業とのやり取りを望む企業、銀行が多い。また、多くの地方政府も日本企業誘致のため
に、政策の一貫性、インフラ、人材育成環境、行政の手続き等の改善に努める方針である。
又、日系企業を中心としたローカル事業主の工業団地も増えている。稼動しているBa Thien II工業団地
(ビンフック省)、Trang Due工業団地(ハイフォン市)、Long Hau工業団地(ロンアン省)などに加えて、2014
年Phu My 3工業団地(ブンタウ省)の工事もスタートされた。ジャパンデスクを設置し、日本からの投資の
誘致を積極的に行っている地方や銀行もある。
61
まとめ
ベトナムは経済面での不安定要素や産業や教育の未発達等、将来を不安視するための要素が多い国
である。素形材業界でも、現時点に於いて多くの仕事が溢れており、日系企業が新たに進出すれば間違
いなく事業が成功するとは言いにくい環境である。他の裾野産業、とりわけ表面処理や塗装、熱処理等の
業界もやはり進出後の成功がイメージしにくく、進出は勇気のいる決断である。装置のための投資が人一
倍かかる分野であるがゆえに、慎重にならざるを得ない。素形材産業を始めとし、これらの業種の進出が
少ないのも理解できる。
一方で、ベトナムは将来に期待を持てる国でもある。人口は9,000万人を超え、ASEANの中でもインドネ
シアに次ぐ大国である。若い世代も多く、人口ボーナスもまだ続く。10年後には一人当たりGDPが3,000ド
ル水準に達し、積極的な消費活動が期待できるし、モータリゼーションも起こるだろう。また、2015年以降
のASEAN経済共同体発足後には、ASEAN全域への物の供給も狙える場所に位置するため、ベトナム発
近隣諸国への製品の供給も可能であろう。
現時点の不安点を重視した判断をするか将来性に期待を重視するか、経営者の判断によるが、少なくと
も現在のベトナムは投資環境として十分とは言い難く、人材教育や労働者の定着率、道路の整備や電力
不足等課題は少なくはない。
ニーズをうまく読み取ったビジネス展開を行う事で、業種や分野によっては先駆者となり得る魅力を、ベト
ナムは有していると考えられる。
62