第 1 回 入試で使える数学小技 正射影ベクトル(数学 B)

第 1 回 入試で使える数学小技
○正射影ベクトル(数学 B)
光
・正射影ベクトルとは?
b
直感的にはベクトルの影と思えばよい.
右の図のように, a と b の 2 つのベクトル
を考える.
a
a に垂直な方角から光を当てたとき, a
に沿った b の影ができるはずである. この影を
この正射影ベクトルを b′ とすると,
b′ =
b の a 上の正射影ベクトル という.
(a ⋅ b)
,
b′ =
(a ⋅ b) ⋅ a
a
2
となる.
a
( )
※ a ⋅ b は a と b の内積である.
証明
b
右図のように b の始点を a 上に重なる
b
θ
ように平行移動し, a と b のなす角を θ
b cos θ
とすると,
b′ = b ⋅ cos θ … ①
θ が鈍角の場合, cos θ < 0 なので長さの場合は絶対値をつける.
cos θ =
(a ⋅ b) であるから,①より
a⋅b
b′ = b ⋅
(a ⋅ b) = b ⋅ (a ⋅ b) = (a ⋅ b)
a⋅b
a⋅b
となる.
a
また, a と同じ方向を向いた長さ 1 のベクトルは
1
a
⋅ a であるから,
a
(ⅰ) a と b′ が同じ方向を向いている場合
b ′ = b′ ⋅
1
⋅a =
a
(a ⋅ b)
⋅
a
1
⋅a =
b
(a ⋅ b)
2
a
⋅a
θ
a
(ⅱ) a と b′ が逆の方向を向いている場合
b ′ = − b′ ⋅
1
a
⋅a = −
(a ⋅ b)
a
⋅
1
⋅a = −
a
a
b′
b
(a ⋅ b)
2
θ
⋅a
a
b′
( )
(ⅱ)となるのは θ が鈍角のときより cos θ < 0 であるから (a ⋅ b ) < 0
(a ⋅ b) ⋅ a となる.(証明終)
であるから,どちらの場合も b′ =
(ⅰ)となるのは θ が鋭角のときより cos θ > 0 であるから a ⋅ b > 0
2
a
・使いどころ
この正射影ベクトルの公式の最大の特徴は,
ベクトルの長さと内積が分かるだけで求めることができる
ということである.
ベクトルの長さと内積が与えられている問題はもちろん, 成分が与えられている
問題では,外積と合わせて非常に便利な公式である.
※外積については第 2 回にて説明する.
a
入試例題
∆OAB において, OA = a , OB = b , a = 3 , b = 2 , a ⋅ b = t とする.点 A から
直線 OB に垂線 AP を下ろし,点 B から直線 OA に垂線 BQ を下ろし,直線 AP と直線
BQ の交点を R とする.
(2)
OP を t と b で, OQ を t と a で表しなさい.
(2013 大分大学 抜粋)
[解答]
O
(2) OP は a の b 上の正射影ベクトルより,
OP =
(a ⋅ b) ⋅ b = t b
2
b
Q
P
2
R
OQ は b の a 上の正射影ベクトルより
OQ =
(a ⋅ b) ⋅ a = t a
2
a
3
比較のため, 一般的な解法を次ページに載せる.
A
B
正攻法
OP は b と平行であるから, k を実数として
OP = k b … ①
と表される.このとき
AP = −OA + OP = − a + k b
AP ⊥ b より
AP ⋅ b = 0
(− a + k b)b = 0
2
− a ⋅b + k ⋅ b = 0
− t + 2k = 0 より k =
t
2
これを①に代入して
OP =
t
b
2
OQ も同様にして求めるので省略する.