参照触媒Ag/CeO 2 によるPM酸化特性と混合状態のキャラクタリゼーション

参照触媒Ag/CeO2によるPM酸化特性と混合状態のキャラクタリゼーション
(豊田中央研究所)○山崎 清、 榊原雄二
【要旨】
1.参照触媒Ag/CeO2を用いて4種類の手法によるルースコンタクトでのPM酸化挙動を検討し
た結果、試料瓶の中スパチュラで撹拌する手法により最も安定したPM酸化活性が得られた。
マイクロスコープによる観察の結果、本手法では試料全体で均等な混合状態が得られるた
めと推定した。
2.マイクロスコープ観察による数μm∼数十μmオーダーの混合状態がPM酸化挙動と良く相
関することを確認した。
3.実機性能を検討するため、内製触媒CeO2-Agを用いて触媒付DPFのPM酸化挙動を上記の
ルースコンタクトと比較した結果、触媒付DPFでの触媒とPMとの混合の度合いはスパチュラ
撹拌のルースコンタクトよりも若干低いことが示唆された。
【実験方法】
1.粉末試料
使用機器: 固定床流通型反応装置(ヘンミ計算尺)、四重極質量分析計でCO2、CO濃度を測定。
実験条件: 触媒/PM混合試料10mgに30mL/分のO2(20%)/Heを供給し、5℃/分で昇温。
使用試料: 触媒:PM重量比10:1、標準PM(PrintexV)は開き目75μmの篩にかけて使用。
・スパチュラ撹拌; 試料瓶の中スパチュラで10分間撹拌し、蓋をして手で30秒間振り混ぜ。
・超音波照射; ガラス製試料瓶の中に入れ、水位1cmの超音波洗浄機の中で60分間照射。
・水中超音波照射; ガラス製試料瓶に水位1cmの蒸留水を注入し、水位1cmで60分間超音波
照射後、110℃で一晩乾燥。
・エタノール超音波照射; 蒸留水の代わりエタノールを使用し、同条件で超音波照射、乾燥。
2.混合状態観察
使用機器: デジタルマイクロスコープ(キーエンスVHX-600)を使用、最高倍率1000倍。
3.触媒付DPF
使用機器: 模擬PM発生装置(CAST)、C3H8の燃焼により中心粒径90nmのPMを発生。
固定床流通型反応装置(ベスト測器)、非分散型IR分析計でCO2、CO濃度を測定。
実験条件: 体積35mLの触媒付DPFに前処理として15L/分のN2を供給し500℃で15分加熱し、
200℃まで冷却後、15L/分のO2(10%)+H2O(10%)/N2を供給し10℃/分で昇温。
使用試料: 内製CeO2-Agを50g/Lコートした触媒付DPFに、0.73g/L、1.6g/LのPMを捕集。
【結果と考察】
1.PM酸化挙動
表1.標準触媒のTig、TmaxおよびT50
水中超音波照射
スパチュラ撹拌
エタノール
超音波照射
タイト
コンタクト
超音波照射
PMのみ
図1.標準触媒上のPM酸化挙動
Tig(℃)Tmax
(℃)T50
(℃)
538
532
スパチュラ Run#1 394
撹拌
Run#2 383
539
536
Run#1 401
547
548
超音波照射
Run#2 425
569
559
Run#1 305
402
401
水中
超音波照射 Run#2 304
393
396
446
429
エタノール Run#1 274
超音波照射 Run#2 285
473
446
タイトコンタクト
261
380
375
PMのみ
447
592
589
(1)いずれのルースコンタクトでもほぼ一つのCO2生成ピークが観察され、PM酸化評価手法とし
て利用可能と考えられる(図1)。メインピークより低温でのCO2生成は、CeO2担体からのCO2
脱離や残余エタノールと判断し、PM酸化開始温度(Tig)を求めた(表1)。
(2)得られたPM酸化活性(Tig)の序列は、超音波照射<スパチュラ撹拌<水中超音波照射
≦エタノール超音波照射、となった。
(3)2回試験したところ(Run#1、2)、スパチュラ撹拌で最も再現性の高い結果が得られた。
2.触媒-PM混合状態解析
(a)スパチュラ撹拌
・ 肉眼では均一
・ どの視野(1000倍)も
触媒/PMは均等に混合
・ 約10∼20μmのPM塊
(b)超音波照射
・ 肉眼でも分離部分あり
・ 視野により触媒/PM割合
にバラつき
・ 約10∼数100μmのPM塊
(c)水中超音波照射
・ 肉眼でも分離部分あり
・ 視野によりバラつき
・ 100μm以上のPM塊と
数μmのPM微粒子
(d)エタノール超音波照射
・ 肉眼では均一
・ どの視野もPMが多い
・ 多量の数μmのPM微粒子
と数十μmのPM塊
50μm
50μm
50μm
50μm
50μm
50μm
50μm
50μm
50μm
50μm
50μm
50μm
(e)タイトコンタクト(参考)
・ 肉眼では均一
・ 数μmの触媒/PM微粒子
が均等に混合
50μm
50μm
図2.デジタルマイクロスコープによる標準触媒とPMとの混合状態の観察
(4)スパチュラ撹拌では試料全体で均等な混合状態が実現されていた。これが再現性の高い
PM酸化活性が得られる原因と推定される。
(5)触媒とPMの塊や粒子の大きさに基づく混合の度合いの序列は、超音波照射<スパチュラ
撹拌<水中超音波照射≦エタノール超音波照射<タイトコンタクト、と見なすことができ、
PM酸化活性の序列とほぼ一致した。従って、数μm∼数十μmオーダーの触媒とPMとの混
合状態/接触面積がPM酸化挙動に寄与すると推定される。
(6)触媒とPMとの混合状態の数値化が必要と考えられる。映像解析ソフトを適用する予定。
3.触媒付DPFでの検討
表2.CeO2-Ag触媒付DPFのTig、TmaxおよびT50
PM捕集量
1.6g/L
PM捕集量
0.73g/L
触媒なし
DPF
Tig(℃)Tmax
(℃)T50
(℃)
0.73g/L 311
437
442
触媒付DPF
1.6g/L 316
470
466
触媒なしDPF
419
645
627
表3.CeO2-Ag触媒上のTig、TmaxおよびT50
図3.CeO2-Ag触媒付DPFのPM酸化挙動
Tig(℃)Tmax
(℃)T50
(℃)
スパチュラ撹拌
270
356
358
超音波照射
349
492
484
水中超音波照射 247
357
357
エタノール超音波 246
305
306
PMのみ
447
592
589
(7)CeO2-Ag触媒付DPFでは、PM捕集量により最大PM酸化温度(Tmax)や50%PM酸化温度
(T50)の値は変化するが、Tigの値はほぼ一定であった(図3、表2)。
(8)Tigの値を用いてルースコンタクトと比較すると(表3)、触媒付DPFでの触媒とPMとの混合の
度合いはスパチュラ撹拌より若干低く、超音波照射と同程度であることが示唆される。