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THz Materials
THz用材料とコンポーネンツ
テラヘルツ(THz)域は、
電磁スペクトルのマイクロ波と中赤外間、
およそ0.1~10THz( ~3mm、~30μm、3cm -1 ~300cm -1 )を
指します。
THz域は皮膚、
プラスチック、
衣類、
紙製品などの有機材料にも
使用可能です。
これは、
フォトンエネルギーが低いためダメージ
を引き起こす電離放射線(X線など)を放出しないからです。
THz波は金属には浸透しないので、薬品製造などのプロセス・
品質管理と共に、
THzイメージングでも有用です。
また最近では
安全管理、パッケージ検査、半導体の機能チェック、化学組成
解析、生化学開発においても注目され、なかでも分光、防衛
イメージング、セキュリティにおいて大きな期待を担って
図1 THz域における5㎜厚HRFZ-Siの透過率と反射率
います。
不純物濃度が低い場合、誘電率は殆ど実値で、高周波用誘電率
THzアプリケーションでは、高い透過率を持つ材料として
誘電率の実数部は負の値となり、虚数部は無視できなくなり
高抵抗フロートゾーンシリコン(High Resistivity Float Zone
Silicon: HRFZ-Si)が最も広く使用されています。これと平行
して、他の材料についても検証を行いました。使用したのは
ABB FTIR分光器、Bomem DA3、Bruker IFS 125HR(精度は100
μm以下では2-3%、100μm以上では4-5%)です。近赤外での
計測はPerkin ElmerのLambda-9
(精度<0.5%)
を使用しました。
1. 結晶
THz域において、
非常に重要な結晶はシリコン、
水晶、
サファイア
です。
とほぼ同じです。不純物濃度のレベルが高くなるにつれて、
ます。誘電率は複雑性を表し、シリコンはTHz波に損失係数は
下記式で求めることが出来ます。
tanδ=1/(ω*ε *ε *R)
ω は円振動数
εv は真空の複素誘電率(8.85 x x10-12F/m)
εo はシリコンの誘電率(11.67)
R は特定の抵抗率
例 え ば 、1 T H z 時 の 1 0 k O h m * c m の H R F Z - S i の 損 失 係 数 は
1.54*10-5となります。
1.1 High Resistivity Float Zone Silicon (HRFZ-Si、
高抵抗シリコン)
人工ダイアモンドの他に、高抵抗シリコンは、NIR(1.2um)から
MM(1000um)までの高帯域で使用可能な等方性結晶材料
です。
ダイアモンドと比較して、
高抵抗シリコンは成長も加工も
安価に行うことが可能です。
さらに、
THz用機器用など、
比較的
大きなサイズを得る事が出来ます。
THzアプリケーションでは
1000umまでの透過率が50~54%(3,000や8,000umでも対応
可能)のHRFZ-Siを供給しています。
HRFZ-SiはTHz域のロスが小さく、図2にあるように、HRFZ-Si
のTHz波形は空気中の波形に似ています。これはHRFZ-Siの
図2 空気中とHRFZ-Siの透過THz信号
吸収を示しています。
10
誘電率を示したものです。
104
-10
102
100
ε2
依存します。図3は、異なる不純物濃度の1THzでのシリコンの
0
ε1
シリコンの複雑な絶対誘電率は伝導率(自由担体濃度など)に
10-2
-106
1010 1012
1014
1016
10-4
18
20
10
10
-3
図3 1THz時の異なる不純濃度のNタイプシリコンの実値
(実線、ε1 )と虚数(点線、ε2 )
THz Materials
THz用材料とコンポーネンツ
1.2 水晶
50μm以上で最適な材料はzカットの水晶です。zカット水晶
は可視光も透過するため、ガイド光を使った調整が簡単に
行えます。偏光状態も変えず、液体ヘリウムのラムダポイント
以下までの冷却が可能です。
図5 異なる厚さのサファイア透過率
2 ポリマー
数あるポリマーの中には、テラヘルツ域において比較的低い
反射と高い透過性をあわせ持つものがあります。
最適な材料は
PE(ポリエチレン)、ポリプロピレン(PP)、テフロン、TPX(ポリ
図4 1.0mm厚水晶の透過率
エチルメンテン : PMP)などです。長波長側ではポリマーの
透過率は無構造でフラットです。短波長、特に200μm以下
では固有振動と不均一性が高まるため散乱光が増加します。
波長(um)
no
ne
0.589
1.544
1.553
また、ポリマーは短波長側では徐々に白濁してしまいます。
6.0
1.32
1.33
2.1 ポリエチルメンテン(TPX)
10.0
2.663
2.571
TPXはポリマーの中でも最軽量で、
UV、
VIS、
FIRにおいて透過性
30.0
2.5
2.959
を持っているのでHeNeなどの可視光をガイド光として使用
100.0
2.132
2.176
可能です。屈折率は約1.46で、波長によっての変化はあまり
200.0
2.117
2.159
ありません。
333.0
2.11
2.156
波長(um)
水晶は複屈折結晶のため、偏光特性が重要な場合は注意が
n
0.633
1.463
24
1.4568
必要です。xカットの水晶は、THz用L/2、L/4波長板に使用され
ています。供給可能なサイズは : Z軸成長結晶 : X : >100mm、
Y : >150mm、Z : 35mmまで X軸成長結晶 : X : 30mmまで、
Y : >100mm、Z : >125mm Z軸、X軸とも左右回転が可能です。
1.3 サファイア
60
1.4559
300
1.46
667
1.46
1000
1.4650
3191
1.466
サファイアは可視域とサブミリ域において透過性を持って
TPXはmm波長までの損失が非常に低く、
優れた耐熱性、
殆どの
います。
また、
下記グラフからも分かるように、
結晶のオリエン
市販薬剤(有機/無機)への高い耐久性を持っています。
テーションや測定の正確さなどには依存しません。計測サン
プルは1~5mm厚で、600μm以下では厚さに依存することが
100
90
80
近くなります。
70
Transmittance, %
分かります。薄いサンプルの場合、透過率は短波長での飽和と
60
50
40
30
20
10
0
0
20
40
60
80
100 120 140
400
800 1200 1600 2000
Wavelength, μm
図6 2mm厚TPXの透過率(THz域)
THz Materials
THz用材料とコンポーネンツ
100
他の材料と比較して、TPXはTHz域において優れた光学特性を
90
有しています。
80
100
60
1
80
40
2
70
30
20
10
0
1
2
3
90
50
Transmittance, %
Transmittance, %
70
0
5
10
15
20
25
Wavelength, μm
3
60
50
40
1
2
3
30
20
図7 2mm厚TPXの透過率(NIR & MIR域)
TPX
T(a=0)=93,2% n=1,462
PICARIN T(a=0)=91,8% n=1,52
HDPE
T(a=0)=91,4% n=1,54
10
0
100
TPX
PICARIN (TSURUPICA)
HDPE
0
200
400
600
800
1000 1800
1900
2000
Wavelength, μm
Transmittance, %
80
図10 TPX、Picarin、HDPE、それぞれ2mm厚の透過率
60
2.2 ポリエチレン
(PE)
PEは光弾性結晶材料です。熱安定性は110℃まで、-45から
40
-120℃まで冷却可能なグレードもあります。
PEは優れた誘電体
特性、
耐薬品性、
放射線抵抗性を持っていますが、
逆にUV照射、
20
0
脂質、
油脂に対しては安定性がよくありません。
PEは生物学的
0,0
0,2
0,4
0,6
0,8
1,0
1,2
1,4
1,6
1,8
2,0
Wavelength, μm
図8 2mm厚TPXの透過率(UV & VIS & NIR域)
TPXの標準仕様
に不活性で製造が簡単です。
密度
(23℃)
は0.9から0.925g/cm3、
変形応力限界
(23℃)
は8-13MPa、
伸縮性
(23℃)
は118-350MPa、
屈折率は~1.54で波長によってもあまり変りません。通常、
光学部品としてはHDPE(High-density polyethylene)を使用
密度(g/cm3)
0.83
します。厚みが大きなレンズやウィンドウに加えて、
ポラライ
引張強度
4100psi~28.3MPa
ザーやゴーレーセルのウィンドウにもHDPE薄膜フィルムを
引張弾性係数
280000psi~1930.5MPa
使用します。
破断点強度
10%
曲げ強度
6100psi~42.1MPa
90
曲げ弾性率
210000psi~1447.8MPa
80
融点
240℃
水の吸収(ASTM-D 1228)
< 0.01%
酸素透過性(100um厚)
x 24h
120,000cm3/m2 x d x MPa
TPXは硬質でレンズやウィンドウなど、様々な光学部品への
Transmittance, %
透湿性(25um厚、40℃、90%RH) 110
g/m2
100
70
60
50
40
30
20
10
0
加工が簡単に行えます。THz域では透過率が高く、10umの
0
100
150
200
300 400
500 600
700 800
900
Wavelength, μm
励起域は透過率が低いため、特にCO2励起のモレキュラー
レーザーのアウトプットウィンドウとして使用されています。
50
図11 THz域、2mm厚HDPE透過率
100
90
Transmittance, %
80
70
60
50
40
30
20
10
0
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
22
24
30 40 50
Wavelength, μm
図9 屈折と透過依存性(***)
図12 NIR&MIR域、2mm厚HDPE透過率
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THz用材料とコンポーネンツ
HDPEは可視域の透過率が良くないため、ガイド光を使用して
PTFEは1~7μmの範囲においての透過率が優れたているの
のアライメントはできません。
で、IRポラライザーに利用されています。結晶のポラライザー
HDPEのTHz域透過率は温度に依存しないためクライオス
に比べて初期コストが安いため、IRセンサーなどの大量生産
タットウィンドウに適しています。屈折率に対する温度係数
に適しています。
は6.2 x
10-4K-1
(8-120K域において)です。
100
90
90
80
80
70
Transmittance, %
Transmittance, %
100
70
60
50
40
50
40
30
20
30
10
20
0
10
0
60
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
Wavelength, μm
0,0
0,2
0,4
0,6
0,8
1,0
1,2
1,4
1,6
1,8
2,0
図16 NIR&MIR域、~0.1mm厚PTFE透過率
Wavelength, μm
図13 VIS&NIR域、2mm厚HDPE透過率
PTFEの一般特性
引張強度
3900psi~26.7MPa
引張弾性係数
80000psi~551.6MPa
引張破断伸び
300%
曲げ強度
破断なし
曲げ弾性率
72,000psi
圧縮強度
3,500psi
圧縮弾性率
70,000psi
●まとめ
図14 屈折率と温度依存性(***)
TPX、PE、PTFEなどの有機材料は200umから1,000umで
80~90%の安定した透過率を持ち、より長い波長でも優れた
2.3 ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン)
透過特性を持っています。シリコン、水晶、サファイアなどの
PTFE( ポリテトラフルオロエチレン-テフロン)は室温では
結晶材料は反射減衰のためTHz域の透過率があまり高くあり
密度:2.2g/cm3の白色の固体です。融点は327℃ですが、-73~
ません。シリコンでは50umからの透過率が50~54%、水晶は
+204℃の広い範囲で問題なく使用可能です。
広い範囲の波長域
120umからの透過率が> 70%、サファイアは350umから
にわたって、屈折率は1.43です。
> 50%程度です。
100
Transmittance, %
80
60
40
20
0
0
20
40
60
80
100
200
400
600
800 1000
Wavelength, μm
図15 THz域、0.1mm厚PTFE透過率