超低インダクタDCRによる検出機能と 高速トランジェント応答性能を備え

超低インダクタ DCR による検出機能と
高速トランジェント応答性能を備えた位相当たり
30A を供給する高効率の PolyPhase 電源
Jian Li / Gina Le
LTC3875 は、現代の高速、大容量データ処理システム、通信システム、
産業用機器、および DC 電力配分システムの電力密度要求を満たす機
能豊富なデュアル出力、同期整流式降圧コントローラです。
LTC3875 の特長は次のとおりです。
3.5V の出力電圧範囲
• 電流検出信号の信号対ノイズ比を高める独自
のアーキテクチャにより、超低 DCR のパワー・
インダクタを使用して効率を最大限に高めつ
レンス(0.6V)許容範囲による高精度のレギュ
レーション
• 6mm×6mm QFN パッケージ内の内蔵ドラ
イバにより、厳しいスペース要件を満足
• 大電流アプリケーションに対応する容易な並
標準的な 4.5V∼14V 入力、デュアル出力の解
は互いに対して 180°
位相のずれた動作を行う
ので、入力 RMS 電流リップルとコンデンサのサ
イズが小さくなります。最大 30A の出力電流を
供給するため、各位相に上側 MOSFET と下側
MOSFET が 1 個ずつ存在します。
LTC3866 と 同 様 に、LTC3875 は 独 自 の 電
列マルチフェーズ動作
つ、スイッチング・ジッタを低減可能
1.5V/30A)
決策を図 1 に示します。LTC3875 の 2 チャネル
• リモート出力電圧検出および ±0.5% のリファ
• 4.5V∼38V の入 力 電 圧 範 囲および 0.6V∼
デュアル出力コンバータ(1.0V/30A および
流 検 出アーキテクチャを採 用して信 号 対ノイ
ズ比を向上しているので、超低インダクタ DCR
• 高速トランジェント応答により、小さな出力容
(1mΩ 以下)の小検出信号による電流モード制
量で高密度の設計が容易
VIN
4.5V TO 14V
図 1.LTC3875 を特長とするデュアル出力
コンバータ(1.0V/30A および 1.5V/30A)
60k
D1
20k
3.57k
CB1 0.1µF
SW1
EXTVCC
BG1
TAVG
M2
715Ω
220nF
RB1 13.3k
+
COUT3
470µF
×2
IFAST
PHASMD
CLKOUT
PGOOD
MODE/PLLIN
BOOST1
220nF
VOUT1
1V
30A
RUN1,2
INTVCC
ENTMPB
TG1
LTC3875
M1
L1
0.25µH
(0.32mΩ DCR)
VIN
ILIM
COUT4
100µF
×2
RA1
20k
1.5nF
220pF
10k
22 | 2014年1月: LT Journal of Analog Innovation
M3
D1, D2: CMDSH-3
L1: WÜRTH 744301025 0.25µH DCR = 0.32mΩ
L2: WÜRTH 744301033 0.33µH DCR = 0.32mΩ
M1, M3: BSC050NE2LS
M2, M4: BSC010NE2LSI
L2
0.33µH
(0.32mΩ DCR)
CB2 0.1µF
SW2
M4
BG2
SNS1–
SNS2–
SNSD2+
TCOMP2
VOSNS2+
VOSNS2–
ITH2
FREQ
TK/SS1 TK/SS2
SELECT PIN ABBREVIATIONS
SNSA1+, SNSA2+: Positive AC Current Sense Comparator Inputs
SNSD1+, SNSD2+: Positive DC Current Sense Comparator Inputs
SNS1–, SNS2–: Negative AC and DC Current Sense Comparator Inputs
60k
270µF
50V
BOOST2
PGND
TRSET2
SNSA2+
0.1µF
D2
TG2
TRSET1
SNSA1+
SNSD1+
TCOMP1
VOSNS1+
VOSNS1–
ITH1
10µF
×4
4.7µF
0.1µF
931Ω
4.64k
220nF
220nF
RB2 30.1k
1.5nF
100k
150pF
10k
RA2
20k
VOUT2
1.5V
30A
COUT1
100µF
×2
+
VOSNS1+, VOSNS2+: Positive Inputs of Remote Sensing Differential Amplifiers
VOSNS1–, VOSNS2–: Negative Inputs of Remote Sensing Differential Amplifiers
TK/SS1, TK/SS2: Voltage Tracking and Soft Start Inputs
COUT2
470µF
×2
設計特集
LTC3875 は、PCB レイアウトを入念に行うことにより、最小 0.2mΩ の
DCR 値を検出できます。さらに、追加の温度補償回路を使用して、広
い温度範囲での高精度な電流制限を保証できます。
御が可能です。この結果、効率が大幅に改善さ
95
れ、ジッタが減少します。電流モード制御により、
90
び簡単な帰還補償を実現します。
LTC3875 は、PCB レイアウトを入念に行うこ
とにより、最小 0.2mΩ の DCR 値を検出できま
す。LTC3875 は、2 つの正側検出ピン SNSD+
および SNSA+ を使用して信号を取り込みます。
EFFICIENCY (%)
サイクルごとの高速電流制限、電流分担、およ
85
80
75
DCRと一致する必要があるのに対して、SNSA+
のフィルタの帯域幅は SNSD のフィルタの帯域
+
幅の 5 倍である必要があります。さらに、追加の
70
VOUT1 = 1V
VOUT2 = 1.5V
VIN = 12V
fSW = 400kHz
SNSD のフィルタ時定数は出力インダクタの L/
+
0
5
10
20
15
ILOAD (A)
25
30
VIN = 12V、VOUT1 = 1.0V/30A、VOUT2 = 1.5V/30A、空気流なし
図 2.2 つのチャネルの効率の比較
図 3.熱試験の結果
高速トランジェント機能のイネーブル後、負荷が
ルしてもしなくても同じトランジェント性能を達
15A 増加したときに、スイッチング・サイクル遅
成できますが、イネーブルした場合には出力容
延が 2.18µs から 1.2µs に減少し、電圧アンダー
量の 20% 低減、電力密度の増加、および総コス
温度補償回路を使用して、広い温度範囲での高
精度な電流制限を保証できます。
効率は超低 DCR のインダクタを使用して最適
化できます。図 2 に示すように、この解決策の強
制連続モード(CCM)での全効率は、1.0V/30A
出 力では 87.3% であり、1.5V/30A 出 力では
89.8% です。図 3 に示すように、空気流がない
場合の過熱点(下側 MOSFET)の温度上昇は
シュートが 95mV から 67.5mV に(29%)減少
トの削減を実現できます。他の非線形制御法と
している様子を図 4 に示します。言い換えると、
比較すると、 LTC3875 が採用している応答方
LTC3875 は高速トランジェント機能をイネーブ
式は線形で、全体の設計が簡単になっています。
57°
C であり、周囲温度は約 23°
C です。
LTC3875 は高速トランジェント応答を特長とし
ており、独自開発のソリューションによってアン
ダーシュートを最小限に抑えます。ピーク電流
図 4.トランジェント状態の比較
(a)高速トランジェント機能をディスエーブル
(b)高速トランジェント機能をイネーブル
モード制御がスイッチング・コンバータで広く採
用されているのは、そのサイクルごとのピーク電
流制限と容易な補償が理由です。ただし、ピー
ク電流モード制御には本質的にスイッチング・
VOUT
50mV/DIV
95mV
VOUT
50mV/DIV
DOUBLING THE CLK
サイクル遅延が伴うので、負荷が階段状に増加
すると出力電圧に大きなアンダーシュートが生じ
ます。LTC3875 では、動的なスイッチング周波
数調整方式の採用によってアンダーシュートを
克服しています。内蔵のトランジェント検出器は
67.5mV
VSW
10V/DIV
VSW
10V/DIV
IOUT
10A/DIV
0A–15A
IOUT
10A/DIV
0A–15A
大きな電圧アンダーシュートを検出できるので、
LTC3875 は約 20 サイクルの間プリセット・ス
イッチング周波数の 2 倍の周波数でパワー段を
動作させることができます。
10µs/DIV
VIN = 12V
VOUT = 1.5V
15A LOAD STEP
10µs/DIV
VIN = 12V
VOUT = 1.5V
15A LOAD STEP
2014年1月: LT Journal of Analog Innovation | 23
VIN
4.5V TO 14V
図 5.コンバータは LTC3875 の 2 つの
チャネルを使用して 60A 定格の 1V 単一
出力を供給
60k
D1
ILIM
20k
L1
0.25µH
(0.32mΩ DCR)
3.57k
INTVCC
PHASMD
CLKOUT
PGOOD
IFAST
MODE/PLLIN
ENTMPB
TG1
LTC3875
CB1 0.1µF
SW1
EXTVCC
BG1
TAVG
M2
715Ω
220nF
VOUT
COUT3
470µF
×2
COUT4
100µF
×2
220pF
LTC3875 は、大電流の解決策向けに 2 相単一
出力コンバータとして容易に構成できます。12V
入力から 1V、60A 出力を生成する降圧コンバー
タを図 5 に示します。必要に応じて、複数の IC
図 6.図 5 に示す 60A 回路例の DC 電流分担
TRSET1
SNSA1+
PGND
TRSET2
SNSA2+
SNS1–
SNS2–
SNSD1+
TCOMP1
VOSNS1+
VOSNS1–
ITH1
SNSD2+
TCOMP2
VOSNS2+
VOSNS2–
ITH2
FREQ
TK/SS1 TK/SS2
715Ω
3.57k
220nF
220nF
RB 13.3k
1.5nF
100k
RA
20k
10k
VOUT
1V
60A
COUT1
100µF
×2
+
COUT2
470µF
×2
VOSNS1+, VOSNS2+: Positive Inputs of Remote Sensing Differential Amplifiers
VOSNS1–, VOSNS2–: Negative Inputs of Remote Sensing Differential Amplifiers
TK/SS1, TK/SS2: Voltage Tracking and Soft Start Inputs
を並列接続して位相を交互に入れ替え、さらな
に示すように、ピーク電流モード制御アーキテク
る大電流に対応できます。
チャのおかげで、動的な電流分担特性も非常に
2 つのチャネル間での DC 電流分担を図 6 に示
します。DCR が 0.32mΩ のインダクタを使用し
た場合、最大負荷時の差は 1.6A 前後です。図 7
良好です。
まとめ
LTC3875 は、信頼性の高い電流モード制御に
よる高い効率、超低 DCR 検出、および強力な
図 7.図 5 に示す 60A 回路例の動的電流分担
内蔵ドライバを 6mm×6mm 40 ピン QFN パッ
ケージで実現しています。このデバイスは、高
い信頼性を確保するため温度補償された DCR
VIN = 12V
VOUT = 1V
30
PHASE CURRENT (A)
M4
BG2
35
検出をサポートしています。高速トランジェント
VOUT
100mV/DIV
応答により、最小出力容量でのトランジェント
応答性能を改善することができます。トラッキ
25
20
ング、マルチチップ動作、および外部同期機能
IOUT
20A/DIV
は、デバイスの一連の特長を充実させています。
15
LTC3875 は、通信システム、データ通信システ
ム、産業用システム、コンピュータ・システムな
10
5
0
L2
0.25µH
(0.32mΩ DCR)
CB2 0.1µF
SW2
SELECT PIN ABBREVIATIONS
SNSA1+, SNSA2+: Positive AC Current Sense Comparator Inputs
SNSD1+, SNSD2+: Positive DC Current Sense Comparator Inputs
SNS1–, SNS2–: Negative AC and DC Current Sense Comparator Inputs
単一出力 2 相大電流コンバータ
D1, D2: CMDSH-3
L1, L2: WÜRTH 744301025 0.25µH DCR = 0.32mΩ
M1, M3: BSC050NE2LS
M2, M4: BSC010NE2LSI
M3
TG2
0.1µF
(入力 12V、出力 1V/6A)
D2
270µF
50V
BOOST2
BOOST1
220nF
+
VIN
RUN1,2
M1
10µF
×4
4.7µF
PHASE 1
PHASE 2
0
10
20
40
30
ILOAD (A)
50
24 | 2014年1月: LT Journal of Analog Innovation
どの大電流アプリケーションに最適です。n
IL1, IL2
10A/DIV
20µs/DIV
60
VIN = 12V
VOUT = 1V
15A LOAD STEP