原子移動ラジカル重合(ATRP)法の原理とその利用

ATRP(Atom Transfer Radical Polymerization)とは
ブロックコポリマー
リビングラジカル重合法の一つで遷移金属錯体を触媒、
有機ハロゲン化合物を重合開始剤とするラジカル重合法。
高分子量かつ分子量分布の狭いポリマーが得られ、また、
複数種のモノマーを用いたり開始剤の構造を変えたりする
ことで、ブロックコポリマーや星型ポリマーなど、さまざまな
ポリマーを合成できる。
反応機構
星型ポリマー
Fig1)Mechanism of ATRP
ATRPでは開始剤(RX)の炭素‐ハロゲン結合に遷移金属錯体(Mtn+/L)が作用し、その金属の
酸化還元に伴い、ハロゲン原子が金属上を移動する。
分散剤
近年、大気汚染問題やVOC (Volatile
Organic Compound)の規制によって溶剤
が水である水性塗料の需要が高まってい
るが、顔料の表面は疎水性の場合が圧
倒的に多く、有機溶剤と比べ水では濡れ
が起こりにくいことから、安定な顔料分散
が困難である。
ATRPの利用
PMMA
(Tg=100~120℃)
Hard Block
粘着剤
PBA
(Tg=-40~-50℃)
Soft Block
アクリル系
ブロック共
重合体の
構造
表:アクリル系ブロック共重合体の特徴
ATRP法によって分子量制御された
アクリル系モノマーから合成された
アクリル系ブロック共重合体
特徴
アクリル系構造
物理的架橋
光学的透明性や多才な粘着性、耐候性、
耐久性、低い粘着性などが要求される
高性能な粘着剤への応用が可能!
低粘度
利点
透明性
耐候性
透湿性
高い生産性
PMMAのTg以下での高い凝集力
リサイクル可能
ホットメルト生産性
高固形分の溶液
上図のような両端の硬いPMMAブロック(ガラス転移温度Tg=100~120℃)、中央の軟ら
かいPBAブロック(Tg=-40~-50℃)からなるアクリレート系トリブロック共重合体の温
度変化における性質を生かして、ホットメルト接着剤として利用する。
ATRPで合成した疎水性部と親水性部をもつ両親媒性
ポリマーを添加することで溶媒が水の場合でも顔料を良
好に分散させることが可能。
ホットメルト接着剤:熱(80~100℃)をかけて融かして接着させる接着剤。硬化が早く、
溶剤を使っていないため安全かつ環境にも優しい。段ボールの接着や書籍の背表紙、
電子部品の固定など工業用に多用されている。