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微分積分学 II 中間テスト(2014 年 12 月 4 日)
学籍番号 氏名 点数 1
下記の問題に関する回答は正しいか正しくないか答えよ. 正しくなければ回答に対する誤りを指摘し,
正しい解答を作成せよ.
x 3 + x 2 y + y3
問題
lim
が存在するかどうか調べ,存在する場合はその極限値を求めよ.
(x,y)→(0,0)
x 2 + y2
3
2 y+y3
3
2 ×y+y3
3
回答 直線 x = 0 (y 軸) に沿って (x, y) を (0, 0) に近づけると, x +x
= 0 +002 +y
= yy2 = y → 0 ((x, y) → (0, 0) の
2
x2 +y2
とき) であることがわかる. 次に, 直線 y = 0 (x 軸) に沿って (x, y) を (0, 0) に近づけると,
x → 0 ((x, y) → (0, 0) のとき) である.
したがって, x 軸に沿った極限と y 軸に沿った極限の 2 通りの値が一致するので, 極限
x3 +x2 y+y3
x2 +y2
lim
(x,y)→(0,0)
=
x3 +x2 ×0+03
x2 +02
=
x 3 + x 2 y + y3
は
x2 + y2
存在し, 極限値は 0 であることがわかる.
解答例 正しくない.「(x, y) → (0, 0) のときの極限値が存在する」ためには,
「どんなふうに (x, y) を (0, 0) に
近づけても同じ値に近づく」ということを言わなければならない。上の回答では,2 通りの近づけ方しかして
いないので,
「極限が存在する」と言い切ることはできない1 。
正しい解答 x = r cos θ, y = r sin θ とおくと,
3
x + x2 y + y3 r3 cos3 θ + r3 cos2 θ sin θ + r3 sin3 θ 3
3
2
0 ≤ =
= |r cos θ + r cos θ sin θ + r sin θ|
2
x2 + y2 r
≤ |r cos3 θ| + |r cos2 θ sin θ| + |r sin3 θ| ≤ r + r + r = 3r → (r → 0).
(x, y) が (0, 0) へとどんな近づき方をしようとも,(x, y) → (0, 0) ⇐⇒ r → 0 であるから, 極限は存在し, 極限値は
x3 + x2 y + y3
lim
= 0 であることがわかる.
(x,y)→(0,0)
x 2 + y2
2
下記の問題に関する回答は正しいか正しくないか答えよ. 正しくなければ回答に対する誤りを指摘し,
正しい解答を作成せよ.
x 2 + y2 + x 4 + y4
問題 2 変数関数 f (x, y) =
に対し, lim f (x, y) が存在するかどうか調べ, 存在する場合は
(x,y)→(0,0)
x2 + y2
その極限値を求めよ.
4
4 θ+r 4 sin4 θ
回答 x = r cos θ, y = r sin θ と変換すると, f (x, y) = f (r cos θ, r sin θ) = 1 + rr2 cos
= 1 + r2 cos4 θ + r2 sin4 θ
cos θ+r2 sin2 θ)
となるので,両辺の絶対値を取って三角不等式を使うと,
0 ≤ | f (x, y)| = |1 + r2 cos4 θ + r2 sin4 θ| ≤ 1 + |r2 cos4 θ| + |r2 sin4 θ| ≤ 1 + r2 + r2 → 1 (r → 0 のとき)
となる2 . したがって,
lim
(x,y)→(0,0)
f (x, y) は存在しない.
θ+r sin θ
解答例 正しくない. まず, f (r cos θ, r sin θ) = 1 + rr2 cos
と修正すべき点がある3 . また, はさみうちの原
cos2 θ+r2 sin2 θ
理は, 例えば 0 ≤ | f (x, y)| ≤ g(r) → 0 (r → 0) が言えた時に, lim f (x, y) が存在して, f (x, y) → 0 (x, y) → (0, 0)
4
4
4
4
(x,y)→(0,0)
であると結論付けられるものであるが,回答ではそのような g(r) が存在しないことがわかっただけで, それだ
けから lim f (x, y) が存在しないという事は出来ない.
(x,y)→(0,0)
正しい解答 x = r cos θ, y = r sin θ と変換すると, f (x, y) = f (r cos θ, r sin θ) = 1 +
2
r sin4 θ となるので,
0 ≤ | f (x, y) − 1| = |r2 cos4 θ + r2 sin4 θ| ≤ |r2 cos4 θ| + |r2 sin4 θ| ≤ r2 + r2 → 0
となる. したがって, はさみうちの原理から極限
lim
(x,y)→(0,0)
f (x, y) は存在し,
lim
(x,y)→(0,0)
r4 cos4 θ+r4 sin4 θ
r2 cos2 θ+r2 sin2 θ
= 1 + r2 cos4 θ +
(r → 0 のとき)
f (x, y) = 1 を得る.
そして直線 y = x に沿った極限を調べてみる,というのは良い発想ですが,y = x に沿った極限も 0 になって,
「3 通りの極限が一
致するから極限値は 0」という誤答がなかなか多くありました. 「2 通りの極限が一致するからと言って極限が存在するとは言えない」
と指摘できているのに,
「3 通りの極限が一致すれば極限が存在する」という方向に頭が働くとは…. 世の中上には上がいるものです.
2
これでわかるのはせいぜい,
「極限が あるとしたら 極限値が 0 以上 1 以下」くらいのこと. 「極限があるかどうか」については
何の情報も得られておらず,まだ真実を何ひとつ掴んではいないのです.
3
ここはすいません. コピペ・タイプミスです. 間違い探し問題ですから問題ないですね. 指摘してくれていれば加点してます.
1
 √2 2

x +y


 log(x2 +y2 )
関数 f (x, y) = 


A
(x, y) , (0, 0) のとき
が原点で連続になるように定数 A の値を定めよ.
(x, y) = (0, 0) のとき
p
0
解答例
lim log(x2 + y2 ) = −∞ と lim
x2 + y2 = 0 から lim f (x, y) =
= 0 である. f (x, y) が原
(x,y)→(0,0)
(x,y)→(0,0)
(x,y)→(0,0)
−∞
点で連続である為には, lim f (x, y) = f (0, 0) を満たさなければならないので, A = 0 である.
3
(x,y)→(0,0)
4 f (x, y) = x3 + xy − 16 y2 − 2y について以下の問いに答えよ.
(1) f x (x, y) と fy (x, y) を計算し, f x (x, y) = fy (x, y) = 0 を満たす点 (x, y) を求めよ.
(2) f (x, y) の極値をすべて求めよ.
解答例 (1) まず, f x (x, y) = 3x2 + y, fy (x, y) = x − 13 y − 2 であるので, f x (x, y) = fy (x, y) = 0 は 3x2 + y = 0 … ➀
と x − 31 y − 2 = 0 … ➁ を意味する. ➁ より, y = 3x − 6. これを ➀ に代入すれば, 3x2 + 3x − 6 = 0 を得る. こ
れを解くと, x = 1, −2 となるので, y = 3x − 6 に代入して, f x (x, y) = fy (x, y) = 0 を満たす点は (x, y) = (1, −3),
(x, y) = (−2, −12) であることがわかる.
(2) f xx (x, y) = 6x, f xy (x, y) = 1, fyy (x, y) = − 31 であるから, 極値の判別式は D(x, y) = 1 + 2x となる.
D(1, −3) = 3 > 0 より, 点 (1, −3) では f (x, y) は極値を取らない.
D(−2, −12) = 1 − 4 = −3 < 0 より, 点 (−2, −12) では f (x, y) は極値を取る. f xx (−2, −12) = −12 < 0 より,
(−2, −12) では極大値 f (−2, −12) = −8 + 24 − 16 × 144 + 24 = 16 を取ることがわかる.
5 4 関数 f (x, y) = e2x−3y について以下の問いに答えよ.
(1) f (x, y) の剰余項を含めて 2 次までのマクローリン展開を求めよ.
(2) f (x, y) は原点で全微分可能であるかを (1) を利用して調べなさい.
(3) 曲線 z = f (x, y) 上の点 (0, 0, 1) における接平面の方程式と法線の方程式を求めよ.
解答例 (1) まず, f x (x, y) = 2e2x−3y , fy (x, y) = −3e2x−3y となるので,
f xx (x, y) = 4e2x−3y ,
f xy (x, y) = −6e2x−3y ,
fyy (x, y) = 9e2x−3y
となる. よって, マクローリンの定理より,
f (x, y) = f (0, 0) + x f x (0, 0) + y fy (0, 0) +
1 2
(x f xx (θx, θy) + 2xy f xy (θx, θy) + y2 fyy (θx, θy))
2!
9
= 1 + 2x − 3y + (2x2 − 6xy + y2 )e2θx−3θy ,
2
0<θ<1
を満たす θ が存在する5 .
9
(2) (h, k) = f (h, k) − f (0, 0) − h f x (0, 0) − k fy (0, 0) とおくと, (1) より, (h, k) = (2h2 − 6hk + k2 )e2θh−3θk である.
2
h = r cos ϕ, k = r sin ϕ とおく6 と,
2
2 (2h − 6hk + 92 k2 ) 2r2 cos2 ϕ − 6r2 cos ϕ sin ϕ + 92 r2 sin ϕ 9
≤ 2r + 6r + r
0≤
= √
r
2
h2 + k 2
また, 0 < θ < 1 と |2r cos ϕ − 3r sin ϕ| ≤ 5r より,
0 < e2θh−3θk = eθ(2r cos ϕ−3r sin ϕ) < e5r .
よって,
2
(2h − 6hk + 29 k2 )e2θh−3θk 9
0≤
< (2r + 6r + r)e5r → 0
√
2
h2 + k 2
(r → 0 のとき)
(h, k)
= 0 であることがわかる7 ので, f (x, y) は原点で全微分可能となる.
√
(h,k)→(0,0)
2
2
h +k
y
(3) 接平面の方程式は z − 1 = 2x − 3y, 法線の方程式は 2x = −3
= z−1
である.
−1
となり,
4
lim
教科書 144 ページの 7 (2) の問題のアレンジです (教科書では (3) だけが問題になっていますが, (1),(2) を付け加えてみました.).
講義では「全微分可能である時に接平面というものが定義できる」と説明しました. ですので接平面の問題を扱うときにはまず先に,
全微分可能であるという事を確かめられないと本来はいけないわけです. この e2x−3y という関数に対しては全微分可能性を示すには
マクローリンの定理が有効なので,この問題は (1) から (3) までの一連の流れができている…ということを注釈として述べておくこ
とにしましょう.
5
0 < θ < 1 が書いてないものは減点されることになっているのが普通です. 特に,今回の場合は 0 < θ < 1 という条件を (2) で使う
のでなおさら重要です.
6
(1) の θ と区別するために別の文字を使用すること.
7
これぞマクローリンの定理の使い道,なのです! (1) だけだとマクローリンの定理の有難味ってあんまりわかんないですよね.
!



1

(x, y) , (0, 0) のとき

 xy sin √ x2 +y2
6 8 関数 f (x, y) = 
について以下の問いに答えよ.



0
(x, y) = (0, 0) のとき
(1) 偏微分係数の定義に従って, f x (0, 0) と fy (0, 0) を求めよ.
(2) f (x, y) は原点で全微分可能かどうか調べよ.
(3) (x, y) , (0, 0) に対して, f x (x, y) を計算せよ9 .
(4) 点 (xn , yn ) = ( 2 √12nπ , 2 √12nπ ) (n = 1, 2, 3, . . . ) を考える. このとき, lim f x (xn , yn ) を求めよ.
n→∞
(5) f x (x, y) は原点で連続か否か答えよ.
f (h, 0) − f (0, 0)
0−0
f (0, h) − f (0, 0)
0−0
= lim
= 0, f x (0, 0) = lim
= lim
= 0.
h→0
h→0
h→0
h
h
h
h
1
(2) (h, k) = f (h, k) − f (0, 0) − h f x (0, 0) − k fy (0, 0) とおくと, (1) より, (h, k) = hk sin √ 2 2 となる. h = r cos θ,
h +k
k = r sin θ とおくと,
(h, k) |hk|
r2 | cos θ sin θ|
≤ √
=
0≤√
≤ r → 0 (r → 0 のとき).
h2 + k2 r
h2 + k2
解答例 (1) f x (0, 0) = lim
h→0
(h, k)
= 0 となるので, f (x, y) は原点で全微分可能である.
√
(h,k)→(0,0)
h2 + k 2
1
1
x2 y
(3) f x (x, y) = y sin p
cos p
− 2
.
2
3/2
2 + y2
2 + y2
(x + y )
x
x
p
1
を (3) に代入すると, f x (xn , yn ) = − ( √12)3 となる (n には無関係). よって,
(4) xn2 + y2n = 2nπ
はさみうちの原理から,
lim
1
lim f x (xn , yn ) = − √ .
n→∞
2 2
1
(5) (1), (4) より lim f x (xn , yn ) = − √ , 0 = f x (0, 0). 故に, f x (x, y) は原点で連続でない10 .
n→∞
2 2
babababababababababababababababababababababababab
学科別得点上位 3 位
• 社会環境工学科:71 点, 66 点, 64 点 • 建築学科:74 点, 66 点, 65 点 • 生命情報学科:72 点, 65 点, 58 点 • システム生体学科:86 点, 83 点, 82 点 • 生物工学科:51 点, 5 点 (受験者は 2 名でした.)
全体の平均点 51.80 点
8
教科書 144 ページの 6 の問題をいくつかのステップに分けたものです.
そして,教科書では f x (x, y) が原点で不連続,ということが書いてありますが, なかなか f x (x, y) が原点で不連続かどうかはすぐ
にはわかりづらいところがあります. 今回はその部分を誘導に従って確認してみる,というのが目的の問題です.
10
すなわち, (x, y) は原点で C 1 級ではない,ということになるわけですね. こういうふうに教科書で省略されていることを埋めてい
くことが大学生の勉強のやり方なのです. これからもがんばってください.
9