2013年度版 - 物質・材料研究機構

2013年度 主要研究成果12件
トピックス
1件
2014年7月
NIMS の主な研究成果
(2013 年度主要な研究成果の発行について)
独立行政法人 物質・材料研究機構
理事長 潮田 資勝
独立行政法人物質・材料研究機構(National Institute for Materials Science)では持続可能社会
の実現に向け、ナノスケールの構造まで制御する「ナノテクノロジー」を駆使した新材料の創製や、
材料機能の高度化などを可能にする研究を進めています。私は平成 21 年 7 月に独立行政法人物質・
材料研究機構(NIMS)の理事長に就任しました。本年は 6 年目となりますが、独立行政法人となっ
て 14 年目、第 3 期中期計画の 4 年目にあたります。
2013 年度における主要研究成果 12 件とトピックス 1 件を選別し、皆様に NIMS の研究内容を紹
介させていただきます。主要成果 12 件は、先端的共通技術領域、ナノスケール材料領域、環境・エ
ネルギー・資源材料領域の 3 研究領域における主要成果として取り上げました。また、平成 24 年度
補正予算で設備導入された「蓄電池基盤プラットフォーム」は、小型蓄電池の試作から材料の分析
評価まで、次世代蓄電池の研究開発に必要なほぼ全ての機能を網羅した最先端の共用インフラであ
り、「戦略的創造研究推進事業 先端的低炭素化技術開発(ALCA)」における「次世代蓄電池研究
加速プロジェクト」と連携し、同プロジェクトで実施される次世代蓄電池の研究開発を優先的に支
援するとともに、国内における機構内外の関連研究開発に対しても幅広い支援業務を行なうもので
あります。そこで、第 3 期中期計画においても NIMS の重要施策のひとつとなるので、本冊子のトピッ
クスとして取り上げました。
NIMS は法人化後、第 1 期から第 3 期中期計画にかけて大きな発展を遂げて来ました。材料科学
分野における論文数や論文引用数では世界でも高く評価されるようになりました。特許出願数、産
業界との共同研究、特許収入などでも顕著な成果をあげています。また、第 2 期中期計画中に文科
省の WPI プログラムに採択された「国際ナノアーキテクトニクス研究拠点」は顕著な成果を挙げつ
つあります。しかし、本来の意味で物質・材料研究における国際的な Center Of Excellence(COE)
となるためには引き続き何年もかけて努力を重ねる必要があります。
国の中核的機関である NIMS の業務として、これまでに、「国際ナノテクノロジーネットワーク拠
点」、「ナノ材料科学環境拠点」、「低炭素研究ネットワーク・ハブ」等の研究拠点を発足させ、研究
者コミュ二ティからの支援・連携要請に応えてきました。日本が東日本大震災を教訓として、国土
強靭化に向けた取組を行っている今、我々は以前にも増して社会のニーズに強力に応える必要があ
ります。特に、社会インフラの長寿命化・耐震化を推進するためにも、信頼性評価・補修技術等に
関する国内外に開かれた研究開発拠点を構築し、産業界のニーズに基づき、実環境を見据えた構造
材料の信頼性研究を総合的に推進する予定です。
今後も、先端的共通技術領域、ナノスケール材料領域、環境・エネルギー・資源材料領域の 3 研
究領域を中心に、国家的ニーズに積極的に対応することを目指すとともに、高度な設備のさらなる
共用化を図り、社会に開かれたイノベーションの場を提供してゆきます。また、若手研究者・技術
者の育成も NIMS の重要な使命であり、国内外の大学と協力して大学院生の教育にも力を入れてゆ
く所存です。
INDEX
研究成果
1
2
3
工業用高分子のメソ多孔体 ……………………………… 1
高性能オイル吸着材としての応用
佐光 貞樹 一ノ瀬 泉
Dyフリーネオジム磁石の開発 ………………………… 3
希少金属を使わずにネオジム磁石で優れた高温特性を実現
秋屋 貴博 セペリ アミン ホセイン 大久保 忠勝 宝野 和博
量子ドットもつれ光子源の開発 ………………………… 5
ひとつぶの光が担う絶対の秘匿性
4 “貼るがん治療”用ナノファイバーの開発
再発・転移がんの予防を目指して
5
6
7
8
9
10
11
12
黒田 隆 間野 高明
…………… 7
荏原 充宏
鉱物カルコパイライトを基にした安全・安価な熱電材料 … 9
遍在する熱から電力を取り出すエネルギーハーベスティングの実現に向けて
辻井 直人 森 孝雄
熱電材料の高性能化を拓く複合効果 ………………… 11
相反する熱電的性質の両立
森 孝雄 プリツリアク アナスターシャ
次世代高効率発電を可能にする鉄基耐熱合金の開発 … 13
NIMS独自の材料設計指針でクリープ強度向上に成功
戸田 佳明 谷 月峰
キラル指示薬を使わない新しいNMRキラルセンシング … 15
安全で安価な医薬品の提供に貢献
ラブタ ヤン 石原 伸輔 ヒル ジョナサン
赤外光とDNAを組み合わせた微量センサー ……… 17
水中の毒性イオンや病原酵素を検出
長尾 忠昭 青野 正和
省エネディスプレイのための薄膜トランジスタ ……… 19
ディスプレイ低消費電力を目指す薄膜
塚越 一仁 生田目 俊秀
素手で使える超小型・超高感度分子検出センサ …… 21
家庭での血液検査と、携帯電話での呼気診断に向けて
吉川 元起
酸化銅(CuO)ナノフラワー排ガス触媒 …………… 23
ナノアーキテクトニクスで銅サビを白金に変える
阿部 英樹 石原 伸輔 有賀 克彦
トピックス
蓄電池基盤プラットフォーム …………………………… 25
次世代蓄電池の研究開発を支える最先端インフラ
魚崎 浩平 久保 佳実
2012年度の運営 (データ集)
2013年度の運営
2013年度運営に関するデータ集 …………………… 27
1. 工業用高分子のメソ多孔体
研究の背景と狙い
工業的な高分子多孔体の製造には、様々な相分離現象が利用できる。しかし、数 10 nm の細孔を有する
メソ多孔体に加工することは、従来技術では不可能であった。本研究では、深冷下での高分子溶液のナノ結
晶化相分離現象を発見することで、汎用のエンジニアリングプラスチックから直径 10 –20 nm の細孔を持つ
メソ多孔体を製造することに世界で初めて成功した。開発されたメソ多孔体は、著しく大きな比表面積を有
し、水中のオイル成分を効率的に吸収する。
研究の内容と成果
温度
1.ナノ結晶化相分離法
相分離を利用した多孔化技術は、高分子材料の高付加価値化のための重要なコア技術として、活発な研究
開発が行われてきた。例えば、リチウムイオン電池のセパレーター、海水淡水化用のプレフィルター、人工
透析用の中空糸膜などは、相分離現象を巧みに利用することで、サブミクロンスケールの細孔を形成させて
いる。しかしながら、工業用高分子から比表面積が大きなメソ多孔体を製造することは、今日でも非常に困
難であり、ブロックポリマーなどの特殊な高分子を用いる必要があった。本研究では、高分子溶液の急速冷
却過程を詳細に研究する中で、溶媒分子が数 10 nm のネットワーク状の多結晶相を形成することを見出し、
新たな多孔化技術としてナノ結晶化相分離法(図 1)を開発した。
高分子を溶媒分子に溶解して得られる濃厚溶液(10 –40 wt%)を、ガラス転移温度以下まで急速に冷却す
ることで、高分子と溶媒分子の両方をガラス状態に固化させる。その後、溶媒分子をその融点以下の低温で
ゆっくりと結晶化させると、溶媒のナノ結晶相と高濃度の高分子相が相互に連通した相分離構造が形成され
る。我々は、低温での溶媒置換と凍結乾燥を行なう独自の固定化法により、高分子のネットワーク構造を保
持したまま溶媒分子を除去することに成功した。ポリスチレンから得られたメソ多孔体は、分岐構造を有す
る太さ約 15 nm のナノファイバーが連結し、ポーラスな 3 次元構造を形成している(図 2)。分岐したナノファ
イバーの隙間には、直径 10-20 nm のメソ細孔が形成されている。このような構造により、高分子メソ多
孔体は、ガスや液体を素早く取り込むことができる。
Tg
連通メソ細孔
(直径 10-20 nm)
(1)
Tm
Tf
Tc
ナノ結晶化
(2)
ガラス化
(1) 急速凍結
(ガラス化)
高分子濃度
(2) 昇温
(ナノ結晶化)
ファイバー構造
(太さ㻌 約15 nm)
(3) 溶媒置換
(メソ多孔体)
100 nm
図1 ナノ結晶化相分離法の模式図
1 ■ 工業用高分子のメソ多孔体
図2 工業用高分子のメソ多孔体
高性能オイル吸着材としての応用
2.高分子メソ多孔体の細孔径制御
ナノ結晶化相分離法を用いることで、アタクチックポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリ
(p-フェニレンエーテル-スルホン)、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルイミド、ポリ塩化ビニルなど
の様々な汎用高分子からメソ多孔体が製造された。高分子の濃度や溶媒を適切に選択すると、直径 200 nm
以上のマクロ孔が多数のメソ細孔で接続された階層的な細孔構造を形成することも可能であった(図 3)。
また、マクロ孔の隙間には、半径 1.9 nm の極小のメソ細孔を形成することもできた。さらに、紡糸法や塗
布法といった伝統的な高分子加工技術と組み合わせることで、ファイバーやシート、ペレットなどの多様な
形状のナノ多孔体を製造できることが実証された。
3.高性能オイル吸着材としての展開
ナノスケールの細孔を有する多孔体は、物質透過や吸着特性に優れており、高性能の分離機能材料として
期待されている。本研究で得られた高分子ナノ多孔体は、300 m2/g を越える著しく大きな比表面積を有し、
水中のオイル成分を効率的に吸収できる。石油随伴水に含まれるクレゾールというオイル成分の吸着実験で
は、20℃で 1 グラム当たり 260 mg を越える吸着量を示す(図 4)。一方、80℃での吸着量は 130 mg/g と小
さく、顕著な温度依存性が確認された。比較実験に用いた市販の活性炭(または高分子吸着材)では、20℃
と 80℃の吸着量の差は、最大でも 60 mg/g に留まった。即ち、高分子メソ多孔体の吸着では、従来の 2 倍
以上の大きな温度依存性を有し、オイルの濃縮に利用できることが明らかになった。
300
メソ細孔
吸着容量の
大きな温度依存性
吸着量 (mg/g)
20ºC
130 mg/g
200
100
80ºC
マクロ細孔
0
図3 階層的な細孔構造(メソ/マクロ細孔)
0.0
0.5
1.0
濃度 (wt%)
1.5
図4 水中に溶解したクレゾールの吸着特性
発 表 文 献
1)S. Samitsu, R. Zhang, X. Peng, M. R. Krishnan, Y. Fujii and I. Ichinose: Nature Communications 4(2013)2653.
2)佐光貞樹、藤井義久、一ノ瀬泉:プラスチックス 5(2014)68.
3)PCT/JP2011/053035
期待されるイノベーション
石油や天然ガスの開発では、オイル成分を含んだ大量の汚染水を浄化するための低コストで効率的な水処理システムが求め
られている。開発されたオイル吸着材は、吸着容量の大きな温度依存性を有するため、穏和な運転条件での油/水分離プロセ
スの設計を可能にするコア材料として有望である。
お問い合わせ先
高分子材料ユニット 佐光貞樹、一ノ瀬泉
ホームページ:NIMS homepage, http://www.nims.go.jp/mfo
メールアドレス:
NIMS 研究成果 ■ 2
2. Dyフリーネオジム磁石の開発
研究の背景と狙い
ハイブリッド自動車や大型風力発電機に欠かせないジスプロシウム(Dy)含有ネオジム磁石。本研究では、
結晶粒のサイズを焼結磁石よりも 1 桁以上微細化した熱間加工ネオジム磁石に低融点のネオジム銅合金の拡
散処理を行って微結晶を磁気的に分断することにより耐熱性を改善するとともに、その際の体積膨張を拘束
することにより十分な磁力を確保、Dy を一切使わずに、4 %Dy を含有する従来のネオジム磁石と同等の耐
熱性を持つ磁石を開発した。
研究の内容と成果
1.ネオジム磁石の結晶粒径と保磁力
ネオジム磁石は、ハードディスクドライブや携帯電話など
の小型電子機器、MRI などの医療機器などに使われている世
界最強の磁石である。ハイブリッド自動車や風力発電機など
近年急速に拡大している用途では 200℃の温度で減磁されな
い磁石が要求される。
高性能なネオジム磁石の大部分は粉を焼き固めてつくる焼
結法で製造されている。ネオジム磁石には、結晶粒径が微細
であるほど保磁力が高まる性質があるが、現在達成可能な結
晶粒径は、実験室レベルで約 1 ミクロンであり、それによっ
て約 2 テスラの保磁力がジスプロシウム(Dy)を用いずに得
られているが、さらに高い保磁力が必要とされている。
図1 ジスプロシウムを使わないネオジム磁石の
結晶粒径と保磁力
図2 熱間加工ネオジム磁石と焼結磁石の微細組
織の比較。熱間加工ネオジム磁石は板状の磁石粒
子が重なった構造であり、磁石粒子の粒径は焼結
磁石に比べて一桁以上小さい。
2.低温共晶合金拡散法
一方、急冷凝固粉を熱間加工すると約 0.3 ミクロンの
微細な結晶粒が強く一方向に配列した超微細結晶ができ
るが、通常 1.5 テスラ程度の保磁力しか得られていない。
図 1 に示されるように、焼結磁石の保磁力の結晶粒径依
存性に従うなら、熱間加工磁石の保磁力は 2.5 テスラを
上回ると推測されるが、微結晶粒子が磁気的に結合して
おり、微細結晶の特徴が活かしきれていない。そこで、
各結晶粒を磁気的に分離することを目的として、磁石表
面から 500℃程度で融解する非磁性のネオジム銅共晶合
金を浸透させるプロセスを考案した 1)。図 3 の例では、
ネオジム銅合金の浸透処理によって各磁石粒子が良く分
離され、保磁力が 1.5 テスラから 2.3 テスラまで高まるこ
とを確認した。
3 ■ Dy フリーネオジム磁石の開発
図3 浸透処理前後の熱間加工ネオジム磁石の組織変
化。明るい領域が粒間に浸透したネオジム銅合金、グ
レーの領域がNd2Fe14B磁石粒子1)
希少金属を使わずにネオジム磁石で優れた高温特性を実現
3.バルク磁石への低温共晶合金拡散法の応用
当初、小さな磁石にしか応用できないと思われていた低温共晶拡散法
を厚さ 5.6 ミリの熱間加工磁石に適応したところ、ネオジム銅合金の浸
透に伴い保磁力が増大すると同時に、一方向に磁石の体積が膨張するこ
とが観測された 2)。一方、ネオジム銅合金の過剰な浸透による磁力の希
釈も起こってしまう。そこで、磁石の膨張を抑制する拘束冶具を用いな
がら拡散処理を行ったところ、高い磁力を保ちながら微結晶の磁気結合
の分断により保磁力を向上できることを実証した 3)。今回開発した方法
を用いて作製した微結晶磁石では、保磁力の温度依存性も改善される。
その結果、200℃での保磁力、最大エネルギー積ともに 4 %Dy を含む
焼結磁石よりも高いことが実証された。
図5 作製した磁石の微細組織の比較
図4 通常の拡散法と変形拘束拡散
法を行った場合の減磁曲線の比較。
図6 今回得られた高特性磁石の保磁力およびエネルギー密度の温度変化。
一般に市販されている焼結磁石のデータも併せて示した3)。
発 表 文 献
1)H.Sepheri-Amin,T.Ohkubo,S.Nagashima,M.Yano,T.Shoji,A.Kato,T.Schrefl,K.Hono:ActaMater.61
(2013)
6622.
2)T.Akiya,J.Liu,H.Sepehri-Amin,T.Ohkubo,K.Hioki,A.Hattori,K.Hono:J.Appl.Phys.115(2014)17A766.
3)T.Akiya,J.Liu,H.Sepehri-Amin,T.Ohkubo,K.Hioki,A.Hattori,K.Hono:ScriptaMater.81(2014)48.
期待されるイノベーション
希少金属の Dy を用いずとも、4% Dy 含有焼結磁石を上回る特性を
ネオジム磁石の微細組織制御で達成できることを実証した。保磁力(耐
熱性)は右図に示すようにさらに改善する必要があるが、そのための指
導原理は確立された。結晶の微細化により耐熱性が向上することから、
室温保磁力が現行の Dy 含有焼結磁石よりも小さくても、目指としてい
る高温特性(200℃で 0.8 テスラ以上)を達成できると期待される。
本研究は、JST, CREST「元素戦略を基軸とする物質・材料の革新的機能の創出」研究領域(研究総括:玉尾皓平)におけ
る研究課題「ネオジム磁石の高保磁力化」の一環として行われた。
お問い合わせ先
磁性材料ユニット 宝野和博
ホームページ:http://www.nims.go.jp/units/u_magnetic/index.html
メールアドレス:
NIMS 研究成果 ■ 4
3. 量子ドットもつれ光子源の開発
研究の背景と狙い
インターネットへの社会の依存度が高まり、情報セキュリティの確保が一層重要になってきている。量
子暗号通信は、絶対的な機密性が保証される次世代の通信技術であり、各国で研究開発が進められている。
一方、これまでは、光ファイバーの損失のため、たかだか数 10 キロメートルの間の伝送に限られていた。
より遠距離の間の情報伝送には、量子中継と呼ぶ特殊な中継プロトコルの実現が待望される。そのための最
重要な技術課題が、量子もつれ光子源の開発である。
研究の内容と成果
量子もつれ光子対は、光の偏光に相関がある 2 光子のペアである。相関の強さは(常識的な理解ができる)
古典論の枠を超え、いわゆる「シュレディンガーの猫」の状況になっている。2 光子の間には、相互作用が
ないにも関わらず、空間をまたいだ相関がある。この効果(非局所相関)を活用することで、遠方に量子情
報を再現する操作(量子中継操作)が可能となる。
図1 量子中継の原理:上図は、これまで行われ
てきた量子通信。伝送距離は数 10kmに限られ
ていた。下図は、量子中継を用いた遠距離通信。
発信者と受信者の中間で量子もつれ光子対を発生
する(①)。発信者の光子と、もつれ光子の一方と
で干渉を計測(②)その結果に応じて、もう片方
の光子偏光を変化させる(③)と、元の光子の状
態を再現できる(④)。すなわち、発信者の情報が
遠隔地で回復する。
量子もつれ光子対の発生は、カルシウムなどの孤立
した 1 原子を用いて実現できる。3 つの量子準位の
間で遷移(原子カスケード)が起こるとき、2 個の
光子が発生し、その光子対は相関を持つ。
人工的な原子である半導体量子ドットを用い
て、孤立原子と同様に、量子もつれ光子の発生が期
待できた。しかし、通常の量子ドットは、その形
が完全には円くなく、量子相関を妨げていた。我々
は、成長基板として、従来と異なる(111)面を用い
ることにより、対称性が高い量子ドットを実現し、
量子もつれ光子の発生に成功した。
5 ■ 量子ドットもつれ光子源の開発
図2 楕円形の量子ドットから発する光子は、もつれないが
(左)、三角形状の量子ドットから発する光子は量子的にもつ
れあう(右)
ひとつぶの光が担う絶対の秘匿性
図3 NIMS 独自の液滴エピタキシー法で作
製した(111)A 基板上のガリウム砒素量子
ドット。試料表面の縦横 500 nm を、原子
間力顕微鏡で走査した。(111)A 面の表面
原子の配列を反映し、量子ドットの形は正三
角形となる。
図4 我々のもつれ光子源と、これまで報告
された光子源との性能比較。縦軸のタングル
は量子性の強さを示し(理想極限は 1)、横
軸の線形エントロピーは状態混合の強さを示
す(理想極限はゼロ)。抜きん出た性能を持
つことがわかった。
発 表 文 献
1)T. Mano, et al.: Appl. Phys. Express. 3(2010)065203.
2)T. Kuroda, et al.: Phys. Rev. B 88(2013)041306(R).
3)G. Sallen, et al.: Nature Commun. 5(2014)3268.
4)N. Ha, et al.: Appl. Phys. Lett. 104(2014)143106.
期待されるイノベーション
半導体ベースの量子もつれ光子源の開発に成功。今後は、微細加工技術と組み合わせ高速電流駆動素子に展開、誰もが使え
るもつれ光子源を実現する。
お問い合わせ先
先端フォトニクス材料ユニット 黒田 隆、 間野高明
ホームページ:http://www.nims.go.jp/units/u_photonics/
メールアドレス:
NIMS 研究成果 ■ 6
4.“貼るがん治療”用ナノファイバーの開発
研究の背景と狙い
がんは過去 30 年以上わが国の死亡原因の第 1 位となっているが、その多くの死因は再発・転移がんとい
われている。近年がん組織が正常組織に比べて熱に弱いことを利用した温熱療法が新たな治療法として注目
を集めている。そこで本研究では、がんの局所再発防止をめざした貼る温熱療法用のナノファイバーメッシュ
の開発を行った。
研究の内容と成果
1.温熱療法と化学療法
近年、がん細胞が正常な細胞と比べて熱に弱いことを利用したがんの温熱治療法が注目を集めているが、
温熱療法は薬効の向上や疼痛緩和などにも効果があるため、化学療法などとの併用にも高い期待がよせられ
ている。そこで本研究では、患部に直接貼布可能な温熱ナノファイバーメッシュを開発した。このメッシュ
は、体外から交流磁場を加えることで発熱すると同時に、抗がん剤を放出するため、温熱療法と化学療法を
同時に行うことができる(図 1)。具体的には、磁性ナノ粒子と抗がん剤を含有した温度応答性ナノファイバー
メッシュを作製した。このファイバーに交流磁場を印加したところ、含有した磁性ナノ粒子の自己発熱によっ
て、ファイバーが加熱した。また、自己発熱で生じた熱に応答して、温度応答性高分子が脱水和するため、
内部の水とともに内部の抗がん剤を外部に放出させることができた。すなわち印加する交流磁場の ON-OFF
によって自己発熱と抗がん剤の放出を同時に実現することができた。
図1 ナノファイバーメッシュを用いた“貼るがん治療”。温熱療法は薬効の向上にも効果があるため、化学療法と併用するこ
とで相乗効果が期待できる。
7 ■“貼るがん治療”用ナノファイバーの開発
再発・転移がんの予防を目指して
2.がんのサイズが縮小
種々のがん細胞を用いてこのファイバーの抗癌活性を調べたところ、交流磁場の印加によってがん細胞増
殖が大幅に抑制できることが明らかとなった。わずか 5 分間の交流磁場印加を 2 度行うだけで、約 70%の
がん細胞が減少した。図 2 には、肺線がん細胞を用いた動物実験の結果を示す。担がんマウスの皮下にファ
イバーを移植後、週に 1 度 15 分の交流磁場照射を 2 か月間続け、がんの大きさを比較した。その結果、治
療をしていないコントロール群ではがんの大きさが 5 倍以上大きくなったのに対し、治療をした群では 10
分の 1 以下にまでがんが縮小した。
コントロール
ファイバー+
磁性粒子
(交流磁場)
ファイバーのみ
抗がん剤のみ
ファイバー+
磁性粒子+
抗がん剤
ファイバー+
抗がん剤
ファイバー+
磁性粒子+
抗がん剤
(交流磁場)
図2 ナノファイバーメッシュを担がんマウスの皮下に移植後、週に1回15分の交流磁場照射を2か月間続けた。
発 表 文 献
1)Y.-J. Kim, M. Ebara and T. Aoyagi: Adv. Func. Mater. 23(2013)5753.
2)Y.-J. Kim, M. Ebara and T. Aoyagi: Angew. Chem. Intl. Ed. 51(2012)10537.
3)特願 2013-003341、PCT/JP2014/050306
4)朝日新聞 31 面(2013 年 6 月 27 日)など紙面 8 件に掲載
期待されるイノベーション
今やわが国の国民医療費は 37 兆円を超えているが、このような状況を打破するためのライフイノベーションとして、安全・
安価で汎用性のある「材料」を基本とした治療方法の開発は不可欠である。特にがんの死因の大部分を占める転移がんを早期
に根絶することで、高額な薬剤費・治療費を削減できるだけでなく、がん患者の生存率を大幅に向上させ患者の社会復帰が期
待できる。
お問い合わせ先
生体機能材料ユニット 荏原充宏
ホームページ:http://www.nims.go.jp/bmc/group/smartbiomaterials/
メールアドレス:
NIMS 研究成果 ■ 8
5. 鉱物カルコパイライトを基にした安全・安価な熱電材料
研究の背景と狙い
エネルギーの 60%が廃熱として捨てられており、廃熱を電力として回収する熱電変換技術に期待が高まっ
ている。しかし、変換効率の向上が課題となっており、また高い性能を示す熱電材料はテルル、アンチモン、
鉛などの希少元素・毒性元素が多く含まれるという問題がある。本研究では、安全で豊富に存在する鉱物カ
ルコパイライトをベースにした材料で、良好な熱電特性を発現することに成功した。
研究の内容と成果
熱電変換は、半導体に温度差を与えると電圧が発生するゼーベック効果を利用して、廃熱から電力を回収
する技術である。エネルギーの大部分が廃熱として捨てられており、これを有効利用できる熱電変換技術は
魅力的である。また熱電変換は、低騒音、長時間信頼性などのメリットを有する。しかしエネルギー変換効
率の低さが問題であった。熱電材料の性能を表す指標 ZT が 1 の材料に 300℃の温度差を与えると、エネル
ギー変換効率は 11%程度となる。ZT が 1 を超える材料は Bi-Te 系などしかなく、これまで熱電変換技術は
宇宙探査機用電源など、限られた分野でしか実用化されていなかった。
しかしながら、化石燃料の枯渇に対する危機意識や地球温暖化問題への対応のため、熱電変換が再び注目
されている。1990 年代後半から、ナノ構造化による量子閉じ込めや、熱伝導と電気伝導の独立制御など、
新しい研究の指針がアメリカで相次いで打ち出され、それによる材料開発が急進展したことも受けて、現在、
熱電材料研究は世界的に加速化している。その結果、従来用いられてきた Bi-Te 系に加えて、スクテルダイ
ト(CoSb3)系、AgPbGeTe 系、ZrHfNiSn 系、Zintl 相 Sb 化合物など、多くの物質で 1 を超える ZT が観測
されている。
これらの新材料は、様々な応用の可能性を持っているが、広範囲への適用には問題も抱えている。図 1 は
元素の地殻中存在密度を示したものである。高い効率を示す熱電材料の多くが、Bi、Sb、Te、Pb、Co、Ge
など、希少なレアメタルや毒性元素を主要成分として含んでいることがわかる。さらに、空気中で不安定な
化合物も多い。そのため、豊富に存在し、毒性がなく、大気中で安定な熱電材料の開発が望まれる。しかも、
廃熱の大部分は室温から 300℃までの低温であり、居住空間にも広く分布している。このような身近に遍在
する熱を回収して、ワイヤレスな IC やセンサー、モバイル機器の電源として利用しようという「エネルギー
ハーベスティング」が現在非常に注目されている。この場合、熱源がコストレスであることを考えると、変
換効率(ZT)よりも出力因子(パワーファクター、S2/ρ )が重要な意味をもつ。そこで我々は、安全・安価な
グリーンな元素で構成され、室温付近でも高い出力因子を持つ熱電材料の開発を目指して研究を開始した。
図1 地殻中の元素の相対存在密度
9 ■ 鉱物カルコパイライトを基にした安全・安価な熱電材料
図2 合成されたカルコパイライ
ト系熱電材料
遍在する熱から電力を取り出すエネルギーハーベスティングの実現に向けて
我々が着目したのはカルコパイライト(黄銅鉱)として知られる CuFeS2 である。
図 2 に作成した試料の写真を示す。試料は金属光沢を有し、大気や水に対して安定
である。また銅、鉄、硫黄など、豊富で安全な元素のみにより構成される。このよ
うに、
鉱物に着目すると安全・安価な半導体の候補物質を多く見い出すことができる。
さらに、カルコパイライトは鉄イオンが磁性をもった天然の磁性半導体でもあ
る。磁性半導体では、図 3 のように、磁気イオンと電子スピンが強く相互作用し、
キャリアの有効質量が増大する。このような場合、大きなゼーベック係数が発現す
ることが期待できる。我々は、このように磁性イオンを含む半導体を用いることに
より、高い出力因子が得られるのではないかと考えた。
図3 磁気モーメント
と電子スピンの模式図
図 4 に、キャリアドープを行ったカルコパイライト試料のゼーベック係数を示す。
特筆すべきことに、キャリア濃度を増加させても、室温付近で―200 〜―300 μV/K の
高いゼーベック係数が観測されている。これは我々が期待した磁性半導体の効果であると考えられるが、
より詳細な研究が必要である。図 5 にこれらの試料の出力因子を示す。室温から 600 K の低温域において、
1 mW/K2m 程度の良好な出力因子が観測された。この値は現在用いられている Bi-Te 系に及ばないが、我々
の研究はまだ改善の余地があり、さらなる特性向上は可能であると考えている。しかも、カルコパイライト
系は安全・安価・安定な材料であり、室温付近で高い出力因子を示すという特徴は、我々の生活圏内に分布
する熱を利用するエネルギーハーベスティングに適合する。今後、より詳細な研究を行っていく予定である。
図4 カルコパイライト系材料のゼーベック係数
図5 開発した材料の出力因子
発 表 文 献
1)N. Tsujii, T. Mori: Appl. Phys. Exp. 6(2013)043001.
2)N. Tsujii, T. Mori, Y. Isoda: J. Elec. Mater. 43(2014)2371.
期待されるイノベーション
鉱物カルコパイライトを基にして室温付近で良好な熱電出力因子の発現に成功した。カルコパイライトは資源的に豊富で毒
性がないため、安全・安価・安定な熱電材料というメリットをもつ。自動車や工場での廃熱発電のほか、これまで利用されず
に捨てられてきた室温近傍の廃熱から電力を回収し、モバイル機器やセンサーなどの電源として利用するエネルギーハーベス
ティングへの応用が期待できる。
お問い合わせ先
量子ビームユニット 辻井直人
ホームページ:NIMS homepage, http://www.nims.go.jp/jpn
メールアドレス:
NIMS 研究成果 ■ 10
6. 熱電材料の高性能化を拓く複合効果
研究の背景と狙い
日本で使用する石油・石炭・ガスなどの 1 次エネルギーの約 3 分の 2 にあたる莫大なエネルギーの多くが
廃熱として捨てられているのが現状である。固体のゼーベック効果のよって廃熱の一部を有用な電気に変換
できる熱電変換材料の開発は社会に大きな恩恵を与え得る。我々は、熱電変換材料の広範囲実用化を長年阻
んで来たゼーベック係数と電気伝導度のトレードオフ関係を凌駕する知見を得た。
研究の内容と成果
熱電材料の性能を表す指数として ZT = a2*σ
*κ-1T が用いられるが、優れた熱電材料の条件
としては、電気伝導度(σ)は高いのに熱伝導度
(κ)は低いこと、そしてゼーベック係数(a)が
大きいが電気伝導度も高いこと(いわゆるトレー
ドオフに反すること)が必要であり、性能を単
純に上げることが容易でないことが分かる。
熱伝導度と電気伝導度の関係に関してはナ
ノ構造化によるフォノンの選択散乱で高性能
化が得られる指針ができて来ている(“Thermoelectric Nanomaterials”, ed. K. Koumoto and T.
Mori,(Springer, Heidelberg, 2013))。しかし、
ゼーベック係数と電気伝導度のトレードオフ
関係に関しては依然難しい問題であった。我々
は NIMS のシーズ材料の高性能化研究をとおし
て、このトレードオフ関係を凌駕する知見を得
た。
まず始めに、シーズ材料に関して、我々はあ
りふれて毒性のない元素を主成分として、温度
安定性の良い無機材料を高機能化するために、
クラスターやカゴ状などの特徴的な原子のネッ
トワーク構造に注目してきた。特にホウ素をネッ
トワーク構造の骨格とする化合物において、以
前ボロンカーバイドが中高温で良好な p 型の熱
電特性を示し、数少なく一時期米国で実用化さ
れた熱電材料であった。しかし、世界的に研究
されたが、モジュールを合理的に組むために必
要な良好な n 型カウンターパートが見出され
ず、熱電応用は伸びなかった。我々は、架橋サ
イトを導入することによるネットワーク構造の
制御により、待望のボロンカーボンの n 型カウ
ンターパート材料を見出した(図 2)。
11 ■ 熱電材料の高性能化を拓く複合効果
図1 熱電材料の必要性
図2 ボロンカーバイドのn型カウンターパート
相反する熱電的性質の両立
しかし、新規 n 型材料の熱電性能はまだ十分ではな
く、更なる高性能化が望まれている。本研究では、化合
物群の代表として YB22C2 N において、遷移金属ドーピ
ングを行った。その結果、2 種類の遷移金属 Co と V に
関して、ゼーベック係数を増強する効果があることを発
見した。さらに適度な熱処理によって、ゼーベック係数
の絶対値を 180%増大できることを見出した(図 3)。単
結晶が得られないために詳細な結晶構造解析がまだであ
るが、遷移金属の一部が結晶格子の中に本質的にドーピ
ングされ、電子状態を変化させていることが示唆され
る。通常はそれに伴いトレードオフ関係より電気伝導が
減少するが、本研究においては、図 4 のように電気伝導
度の〜 10,000%近い増大を同時に実現した。
この結果は、トレードオフ関係を大きく凌駕するもの
であるが、メカニズムとして図 5 のポンチ絵のようなこ
とが考えられる。遷移金属が本質的にドーピングされ
ゼーベック係数を増強することにより、試料本体の電気
伝導度は低減していると考えられる。しかし、遷移金属
が試料中に(原子構造レベルではなく)ナノ・ミクロ構
造レベルでシーディングされ、高電気伝導パスをちょう
ど形成し、電気伝導度の大幅な上昇が得られたと提言で
きる。現在詳細機構を解明中である。
この成果の意味するところとして、我々は、本研究で
電気伝導度とゼーベック係数の大幅増大を同時に実現す
ることに成功し、長年熱電の実用化を阻んで来たトレー
ドオフ関係を凌駕する複合効果を実現した。これは広範
囲に熱電変換材料の高性能化の道筋を示す成果と考えら
れる。
図3 遷移金属ドープと熱処理を施したYB22C2 N
のゼーベック係数
図4 遷移金属ドープしたYB22C2 Nの抵抗
図5 発見した複合効果のイメージ
発 表 文 献
1)A. Prytuliak and T. Mori, J. Electron. Mat., 40(2011)920-925 .
2)A. Prytuliak, S.Maruyama, and T. Mori, Mat. Res. Bull., 48(2013)1972-1977.
3)T. Mori, “Boride Thermoelectrics; High temperature thermoelectric materials”, in: Modules, Systems, and
Applications in Thermoelectrics, ed. D. M. Rowe,(CRC Press, Taylor and Francis, London, 2012)14-1 14-18.
期待されるイノベーション
本研究により、ドーピングと熱処理を組み合わせることにより、電気伝導度の〜 10,000%近い増大とゼーベック係数の
180%の増大を同時に実現することに成功した。これは従来の熱電の実用化を阻んで来たトレードオフ関係を大幅に破る成果
であり、
複合効果を実現することに成功したことが示唆され、
広範囲に熱電変換材料の高性能化の道筋を示す成果と考えられる。
お問い合わせ先
無機ナノ構造ユニット ネットワーク構造物質グループ 森 孝雄
ホームページ:http://www.nims.go.jp/group/g_inorganic-nanostructure/index.html
メールアドレス:
NIMS 研究成果 ■ 12
7. 次世代高効率発電を可能にする鉄基耐熱合金の開発
研究の背景と狙い
化石燃料の節約や二酸化炭素排出量削減のため、火力発電プラントのエネルギー効率向上が求められてお
り、そのためには、蒸気タービンを回す蒸気の高温高圧化が有効である。しかし、プラントの高温構造部材
に使用されている既存耐熱鋼の高温強度が足らないため、既存の火力発電プラントのままで、蒸気条件の向
上は不可能である。
金属材料は原子の拡散や転位の移動により、高温では低応力でも塑性変形が時間と共に進行し破断に至る
(クリープ変形)ため、火力発電プラントでは高温構造部材の 10 万時間(約 11 年 5 ヶ月)後のクリープ破
断強度が、蒸気条件を決める指標となる。よって、火力発電プラントのエネルギー効率向上には、高温クリー
プ強度を高めた新しい耐熱材料の開発が急務である。
研究の内容と成果
析出強化型フェライト耐熱鋼の開発
近年の火力発電プラントで使用されている 9 〜 12%クロ
ムフェライト耐熱鋼は、転位密度の高いラスおよびブロッ
ク構造の中に微細な炭窒化物を析出させた焼戻しマルテン
サイト組織で強化されている。しかし、高温で長時間使用
中に、ラス構造の回復や析出物の凝集粗大化が起こり、ク
リープ強度が急激に低下することが問題になっていた。
それに対し NIMS では、既存鋼よりもクロムを多く添加
し、熱処理により転位密度を少なくしたフェライト母相(結
晶構造が体心立方構造の相)を、主に鉄とタングステンで
構成される金属間化合物で析出強化した新しい耐熱鋼(図
1)を開発した。図 2 に開発鋼と既存鋼の 3 温度におけるク
リープ破断強度を、ラーソン・ミラー・パラメータ(LMP)
で整理して示した。このパラメータは、クリープ試験温度
の違いを補完し、同じ基準でクリープ破断時間を比べられ
るようにした値である。図中の垂直線は、650℃と 700℃の
10 万時間に相当する LMP 値である。これより、開発鋼の
10 万時間クリープ破断強度は、650℃で 130MPa、700℃で
45MPa と推測でき、長時間クリープ強度を既存鋼の 2 倍に
向上させることに成功した。
この開発鋼は、クロムが既存鋼よりも多く添加されてい
るために、火力発電プラントの高温構造部材に必要な耐水
蒸気酸化特性も、既存鋼より優れているが実証されている。
また、線膨張係数等や、製造性 ・ 経済性も既存鋼と同程度
であると考えられ、次世代高効率火力発電プラントの高温
構造部材として期待される。
図1 金属間化合物(写真中の白い粒子)により
析出強化された新しいフェライト耐熱鋼の電子顕
微鏡写真。左下は拡大写真を示す。
図2 開発鋼と既存鋼のクリープ破断強度をラー
ソン・ミラー・パラメータで整理して示す。
発 表 文 献
1)M. Shibuya, Y. Toda, K. Sawada, H. Kushima, K. Kimura: Mater. Sci. Eng. A, 592(2014)1-5.
2)Z.H. Zhong, Y.F. Gu, Y. Yuan, Z. Shi: Mater. Letters, 109(2013)38-41.
3)Z.H. Zhong, Y.F. Gu, Y. Yuan, Z. Shi: Metall. Mater. Trans. A, 45(2014)343-350.
13 ■ 次世代高効率発電を可能にする鉄基耐熱合金の開発
NIMS独自の材料設計指針でクリープ強度向上に成功!!
スーパー鉄 ・ ニッケル(SINM)合金の開発
蒸気条件が 700℃以上では、主要構成元素が鉄である耐
熱鋼の耐用温度をはるかに超えているため、格段に優れた
高温機械特性を持つニッケル基超合金を使用する必要があ
る。しかし、CCA617, Nimonic 263, IN740 等の既存のニッ
ケル基超合金は、ニッケルに加えてコバルトやモリブデン
とタングステンの希少元素の含有量が多くコストが非常に
高い。さらに、製造加工性に乏しく大型部品の製造が困難
である。
NIMS ではニッケル基超合金の開発で蓄積してきた知見を
基に、析出強化型オーステナイト(結晶構造が面心立方構
造の相)系鉄-ニッケル基合金(SINM 合金)を提案した。
この合金には比較的多くの鉄(最大 35%)が含まれ、母相
中に微細で硬質な金属間化合物を均一に析出 ・ 分散させる
ことによって強化されている(図 3)。さらに、結晶粒界お
よび粒内の両方で炭化物粒子の析出によって強度を向上さ
せている。SINM 合金の 750℃で 160MPa におけるクリープ
破断寿命は 1 万時間を超えており、LMP 法により外挿した
10 万時間後のクリープ破断強度は 730℃で 100 MPa と予想
される(図 4)。これは、既存の鉄-ニッケル基合金で最も
高強度の、GH2984 の耐用温度より 50℃も高い。さらに、
材料コストがニッケル基超合金 CCA617 の半分でありなが
ら、SINM 合金はそれに匹敵する強度を示した。
SINM 合金は、熱間/冷間加工性(図 3 左上)、耐酸化お
よび高温耐食性、経済性も優れていることから、高温構造
部材として有望な候補合金と考えられる。
図3 金属間化合物(写真中の白い粒子)により
析出強化されたSINM合金の電子顕微鏡写真。左
上は熱間加工後の合金を示す。
図4 SINM合金と既存合金のクリープ特性をラー
ソン・ミラー・パラメータで整理して示す。
期待されるイノベーション
現 在 開 発 中 の 700 ℃ 級 二 段 再 熱 型
先進超々臨界圧(A-USC)プラントの
高温構造部材(図の青緑部分)に上記
2 種類の NIMS 開発合金が応用されれ
ば、720℃- 35MPa の蒸気条件で発
電が可能となる。
するとエネルギー効率は 42%から
46%に向上し、大型火力発電プラント
1 基あたり、年間で約 18 万トンの石炭
が節約でき、約 42 万トンの二酸化炭素
排出量が削減できる。
お問い合わせ先
先進高温材料ユニット 戸田佳明、谷 月峰
ホームページ:NIMS homepage, http://www.nims.go.jp/jpn
メールアドレス:
NIMS 研究成果 ■ 14
8. キラル指示薬を使わないNMRキラルセンシング
研究の背景と狙い
核磁気共鳴分光法(NMR)は鏡像異性体を区別することが出来ないことから、NMR でキラル化合物の光
学純度を定量するためには、キラル活性な指示薬を加えて、構造異性体へと誘導することが必要不可欠であ
ると考えられていた。この常識に反して、今回の成果では、構造異性体形成を経なくても、NMR でキラル
化合物の光学純度を簡便に定量することが可能であることを実証した。この発見は、従来法の常識を破るブ
レークスルーであると同時に、医薬品の合成や品質管理などに広く利用される可能性を秘めている。
研究の内容と成果
多くの製薬には光学不斉(キラル)な化合物を用い
るが、光学純度の評価が十分でないと重篤な薬害を引
×毒
き起こす可能性がある(図 1)。そのため、光学純度
の確認は必要不可欠な行程である。しかし原理上、核
磁気共鳴分光法(NMR)のみでは光学不斉を検知す
ることができないため、補助剤としてキラルな指示薬
O
HN
O
◎薬
O
N
O
を使う必要があるが、指示薬自身の光学不斉が目的物
(S)
の光学純度の測定を妨げる場合があった。
O
O
N
NH
O
O
(R)
図1 サリドマイドのキラル構造と生理活性
今回の成果では、それ自体には光学不斉が無いにも関わらず、目的物の光学純度を NMR 測定で検出する
指示薬 OxP(ポルフィリン誘導体)を世界で初めて開発した。独自開発された指示薬は、光学不斉な目的物
と水素結合錯体を形成すると(図 2)、その磁気異方性に影響されて NMR スペクトルに分裂を引き起こす。
目的物の光学純度をスペクトルの分裂幅から簡単に定量することができる(図 3)。この発見は、NMR で光
学純度を測るためにはキラルな物質を加えて、鏡像異性体(エナンチオマー)を構造異性体(ジアステレオ
マー)へ誘導することが必要不可欠であるという長年信じられてきた常識を覆すものである。
混合
+
OxP
図2 OxPとイブプロフェンの構造体形成
15 ■ キラル指示薬を使わない NMR キラルセンシング
キラル化合物
(イブプロフェン)
1:1の構造体
安全で安価な医薬品の提供に貢献
図 3 に OxP を 用 い た キ ラ ル セ ン シ ン グ
の 実 例 を 示 す。OxP の 1H-NMR ス ペ ク ト
ルに注目すると、キラルな分子の光学純度
(ee%)に応じて、分裂することが示され
た。図 3 右に示したように、キラルな分子
の種類に関わらず、分裂幅(Δδ)と光学
純度(ee%)には常に直線関係がみられる
ことから、キャリブレーションを適度に行
うことによって、光学純度を簡便に定量す
ることが可能であることが証明された。
図3 OxPを用いた光学純度の定量例
さらに、今回開発した OxP は優れた万能性を有しており、図 4 に例示したカルボン酸、エステル、アミン、
ケトン、アルコールなどの多種多様な分子の光学純度を定量することができる。
図4 OxPを用いた光学純度の定量が実証されたキラル化合物の例
発 表 文 献
1)J. Labuta, S. Ishihara, T. Šikorský, Z. Futera, A. Shundo, L. Hanyková, J. V. Burda, K. Ariga and J. P. Hill: Nat.
Commun. 4(2013)2188.
2)特願 2013-137744
期待されるイノベーション
安価で、スピーディーかつ信頼性の高いキラルセンシングを実現し、効率的な創薬や医薬品の品質管理に貢献します。
お問い合わせ先
超分子ユニット Jan Labuta, Jonathan P. Hill
ホームページ:http://www.nims.go.jp/super/HP/home.htm
メールアドレス:
環境再生材料ユニット 石原伸輔
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NIMS 研究成果 ■ 16
9. 赤外光とDNAを組み合わせた微量センサー
研究の背景と狙い
赤外分光法は高感度で簡便なため広く使用されているが、水中の微量物質の検出には向かない。この弱点
を克服できれば、材料分析だけでなく、医療応用や環境計測への道が大きく広がる。金のナノギャップにお
けるプラズモン増強効果と特殊な分子配列構造を持つ DNA 分子を組み合わせることで、環境水中の毒性イ
オンや病原酵素などを簡便・迅速に検出する方法の開発に成功した。
研究の内容と成果
結晶や分子等の物質は、赤外帯域の周波数で振動しており、その振動数を計測することで、物質の種類の
同定や、その状態をモニターすることができる。赤外分光法は大気中のガスセンシングなどに広く応用され
ているが、水中の微量分析を行う際は水自身の大きな信号に阻まれて、感度の高い計測が困難であった。当
ユニットでは金ナノギャップ構造を用いることで、水の信号を抑え、ギャップに入った検出対象の信号を選
択的に増強する方法を開発してきた。本研究では、特殊な DNA 塩基配列構造を持たせた捕獲用の分子を用
い、金ナノギャップ構造にコートすることで、選択的にターゲットとなる物質を捕捉し、水中に混ざった微
量のターゲット物質を検出することに成功した。その検出限界は ppt(ppm のさらに 100 万分の一あるいは
一兆分の一)
以下に達し、
赤外光を用いたイオンや生体分子のセンシングとしては世界最高クラスを記録した。
1.湖沼の環境水からの毒性イオンの検出
原発事故による放射性物質、アジア大陸からの PM2.5、火山活動や鉱山からの水銀蒸気など、大気中に放
出された汚染物質は大気中を移動し、降雨などを経て湖沼へと流れ込む。このような汚染物質は国境を越え
て拡散するため、微量の汚染を早期に検出することが望まれており、このため高感度な水質検査技術が必要
とされている。ここでは、金によるナノスケールギャップに赤外電磁場を集中させ、ギャップ内の DNA 分
子の振動状態変化を強く増幅して検出することで、霞ヶ浦の水に溶かした水銀(Ⅱ)イオンを ppt レベルの
濃度で計測することに成功した 1)。
図1 特殊な分子配列構造を持たせたDNA分子を水銀捕捉分子として用い、Auナノギャップ中の赤外電場増強を用い
て水銀イオンの捕捉による信号を高感度に検出できる。
17 ■ 赤外光と DNA を組み合わせた微量センサー
水中の毒性イオンや病原酵素を検出
2.赤外増強分光による病原酵素の高感度計測
図 2 に赤外電場増強を示す Au ナノギャップ構造と電場強度の計算結果を示す。この構造に赤外光を照射
すると、可視や近赤外光に比べて大幅に高い強度の電場がナノギャップ全体にわたって生じる 2, 3)。この赤
外光の強い振動電場と、赤外帯域の周波数で振動する分子とが強く相互作用して、強い赤外吸収が生じる。
図 3 の様に DNA 分子を用いて血液凝固を引き起こす病原酵素 Thrombin 分子をナノギャップ中に捕捉する
ことで、Thrombin 酵素の分子振動の赤外吸収スペクトルが増強され、高感度な検出ができた 4)。
図2 Auナノギャップ膜における電場増強の様子。
赤外光(波長4μm)を照射すると強い電場がナノギャップ全
体にわたって生じる。(シミュレーション)
図3 血液凝固を引き起こす病原酵素Thrombin
を選択捕捉するDNA分子(DNA-TBA 15)と
捕捉されたThrombin分子の模式図。
発 表 文 献
1)C. V. Hoang, M. Oyama, O. Saito, M. Aono, T. Nagao: Scientific Reports 3,(2013)1175 .
2)特開 2008-228904、特許 5476574
3)D. Enders, T. Nagao, A. Pucci,T. Nakayama, M. Aono, Physical Chemistry Chemical Physics 13,(2011)4935.
4)T. Nagao, C.V. Hoang, M. Ohyama, O. Saito: Nanomaterials for Water Management: Signal Amplification for
Biosensing from Nanostructures(Pan Stanford Publishing)in press.
期待されるイノベーション
物質との相互作用が強い赤外光のメリットを生かした簡便で高感度なセンシング技術が実現し、早期の環境汚染検出や医療
診断が可能となる。
お問い合わせ先
ナノシステム構築ユニット 長尾忠昭、青野正和
ホームページ:NIMS homepage, http://www.nims.go.jp/units/u_nano-system-organization/index.html
メールアドレス:
NIMS 研究成果 ■ 18
10. 省エネディスプレイのための薄膜トランジスタ
研究の背景と狙い
現在の生活に必要な様々な情報を入手するために、日々ディスプレイを活用している。このディスプレイ
で消費される電力が、ディスプレイの高精細化と情報機器の急増に伴って、増大している。消費電力の抑制、
さらには削減には、画素を駆動する薄膜トランジスタの高性能化が効果的である。
本研究では、高性能薄膜トランジスタを低温で作製する材料開発に成功した。
研究の内容と成果
背景と課題:
現在、ネットワークに接続可能な情報端末は 70 億台を超え、さらに増えている。この情報端末には、必
ずディスプレイが接続されている。これらの情報端末は、昨今、高精細化の傾向がとまらない。また、重要
な情報提供源であるテレビも 4K もしくは 8K と精細度が向上している。このフラットパネルで最も大きな
電力を消費している部位は、画面を明るくするために必要なバックライトである。
これらのディプレイの多くは液晶表示素子であり、薄膜トランジスタが画素のスイッチに使われている。
高精細化に際して、フラットパネルの画素トランジスタを高性能化して縮小しないと、画面を透過する光が
薄膜トランジスタや配線にさえぎられてしまって、画面が暗くなって見難くなる。現行ディスプレイでは、
おおよそ半分の面積がさえぎられている。このために、バックライト輝度を上げることになるが、これに伴っ
て、大きく電力が余計に浪費されてしまう(図 1)。携帯端末で使われている中小型ディスプレイでは、端
末の充電頻度を高めてしまう問題を生じさせ、大型では社会の電力を浪費する。実際に、昨今の 4K テレビ
の消費電力は 300-400W に達する。さらに、駅や空港、デパートの案内板などが大型電子パネルが増え、自
動販売機の商品見本も電子ディスプレイとなっている。家電製品の電子化に伴うインターフェースのタッチ
パネル化も多くなり、ディスプレイの消費電力総量は急増している。この消費電力を下げるために、バック
ライト光を遮る薄膜トランジスタを縮小し、光を効率よく使える様にしなければならない。
図1 フラットパネルの画素イメージ。画素の
透明電極ITOを、バックライト光が透過し、カ
ラーフィルターを通して発色する。ディスプレ
イの高精細化は画素サイズの縮小によってなさ
れるが、画素を縮小した際に、薄膜トランジス
タTFTや配線も縮小しなければ、光がさえぎら
れる割合が増えてしまう。特に大型ディプレイ
では、マスターガラスの温度歪みなどの問題に
よって、低温で形成できるアモルファスシリコ
ンが使われているが、移動度が低いためにTFT
サイズが大きい。このために、光の透過が小さ
い。結果として、バックライトの輝度を上げな
ければならず、消費電力が莫大になってしまっ
ている。ディスプレイの高精細化で、エネル
ギー消費が増大し続けている。
19 ■ 省エネディスプレイのための薄膜トランジスタ
ディスプレイ低消費電力を目指す薄膜
成果の内容:
我々は、NIMS オリジナルの“酸化インジウムに酸化ケイ素を添加したアモルファス薄膜”を開発し、薄
膜トランジスタとしての適性を調べている(図 2:SilicondopedMetalOxideThinFilmTransistor(SiMOxTFT))。酸化インジウムと酸化ケイ素の粉末を混合して焼結したスパッタターゲットを用いて、薄膜を形
成し素子を造った。この薄膜の特徴は、他の酸化物半導体の形成温度(おおよそ 500℃)よりも圧倒的に低
い 250-300℃で形成できることであり、薄膜の物理的・電子的安定性も高い。さらに、酸化膜特有のオフリー
ク電流も従来のシリコン系 TFT よりも 3 桁低い。そのうえで、アモルファスシリコンよりも移動度が 1 桁
高いことで、TFT サイズを 1/10 よりも小さくすることが出来る。これによって、バックライト光を遮る部
位が激減し、バックライト消費電力を大幅に削減することができる。大まかな見積もりでは、消費電力半減
も可能である。さらに、小さくなった TFT によって、パネル内の余計な寄生容量や配線との容量も減少し、
全体の消費電力削減効果がきわめて大きい。
消費電力を削減するだけでなく、移動度の向上によって高速で高品質の表示が可能となります。また、製
造プロセスで使われる各種薬品やガスの耐性が高いために、最もシンプルな構造でシンプルな作成プロセス
によって TFT を造れるために、製造コストも大幅に抑制できる材料です。
図2 試作簡易薄膜トランジスタの概略図。アモルファスInSiOを
チャネルとして、ソース・ドレイン電極(TiもしくはMo)を形成
することで動作する。InOxに対するSiO2添加量は、10wt%前後。
アプリケーションと製造プロセスによる要求に合わせて、耐性温度
と移動度を適合させるために、添加量を調整することができる。
図3 チャネル長4ミクロンで試作したInSiO薄膜トランジスタの光
学顕微鏡イメージ。次世代大型ディスプレイに適応可能なチャネル
長でTFTが十分に動作する検証に成功した。
発 表 文 献
1)S.Aikawa, P.Darmawan, K.Yanagisawa, T.Nabatame, Y.Abe, K.Tsukagoshi: Applied Physics Letters 102(2013)
102101.
2)N.Mitoma,S.Aikawa,X.Gao,T.Kizu,M.Shimizu,M.-F.Lin,T.Nabatame,K.Tsukagoshi:AppliedPhysicsLetters104
(2014)102103.
期待されるイノベーション
大型ディプスレイやテレビの省エネ化を実現します。現在の数 100W も消費しているフラットパネルの消費電力の半減を
目指します。社会に普及しつつある様々なディスプレイで消費されてしまうエネルギーを情報の質を低下させることなく、効
率よくセーブすることが出来るようになります。
お問い合わせ先
MANA パイ電子エレクトロニクスユニット 塚越一仁
ホームページ:http://www.nims.go.jp/pi-ele_g/
メールアドレス:
MANA ファウンドリ 生田目俊秀
メールアドレス:
NIMS 研究成果 ■ 20
11. 素手で使える超小型・超高感度分子検出センサ
研究の背景と狙い
医療・環境・セキュリティーなどの分野では、超高感度で標的分子を検出するセンサの実用化が切望され
ている。これを実現可能な性能を有するナノメカニカルセンサには、世界的に大きな期待が寄せられている。
しかしながら、一般的にナノメカニカルセンサは、「センサ信号の読み取り」と「標的分子を吸着する感応
膜の被覆」に、特殊な大型装置が必要であったため、実用化が困難であった。
これに対し、最近開発したナノメカニカル膜型表面応力センサ(Membrane-type Surface stress Sensor,
MSS)では、前者の問題を解決することに成功していた。今回、後者の問題を解決する画期的な被覆方法を
見いだすことに成功し、いつでも・どこでも・だれでも使える超小型・超高感度センサが実現した。
研究の内容と成果
従来のナノメカニカルセンサは、標的分子の吸着によって印加される「たわみ」を、レーザーなどの光学
的な手法によって読み取るカンチレバー構造を利用していた。これは、測定に特殊な大型装置が必要である
だけで無く、測定可能な「たわみ」を得るために、センサ素子の片面に感応膜を被覆する必要があり、感応
膜の被覆にもインクジェットなどの特殊な装置が必要であった。そのため、センサ素子材料のシリコンを被
覆する方法として、長年培われてきたシランカップリングなどの標準手法の適用も困難であった。
これに対し本研究では、センサ素子がバルクシリコン部分に囲まれた、独特の MSS 構造に着目すること
で、MSS ではセンサ素子の両面に感応膜を被覆しても十分な感度が得られることを見いだし、有限要素解
析と実験によって実証することに成功した。これにより、これまで特殊な大型装置が必要であった、感応膜
の被覆から測定までの一連の操作を、全て素手で行う事が可能になった。このように、特殊な装置が一切不
要な、簡便なセンサでありながら、感度を含むあらゆる項目において、従来型のセンサを凌ぐ性能を発揮す
ることが可能である。
従来型の光読み取りカ
ンチレバーセンサ
MSS
片面被覆
図1 MSS の 構 造 と 配 線 図。 感 応 膜
(Receptor Layer)が被覆された中央円
形メンブレン上に、標的分子が吸着する
と、メンブレンが変形する。この微小な
変形を、ピエゾ抵抗(赤色・青色部)が
埋め込まれた周囲 4 つの細幅部分によっ
て電気的に読み取る。
感度が高い
特殊装置必要
感度が高い
特殊装置必要
感度がゼロ
特殊装置不要
感度が高い
特殊装置不要
両面被覆
図2 従来型の光読み取りカンチレバーセンサとMSSに対し、そ
れぞれ片面・両面に感応膜(緑色帯)を被覆し、標的分子(緑色
丸)が吸着した様子を横から見た様子。MSSは、特殊装置を必
要としない両面被覆の場合でも高い感度を示す。
1 mm
図3 各種MSSチップの写真と拡大写真。
MSS素子間隔は約1 mm。そのため、例えば
1 cm×1 cm に100チャンネル集積すること
が可能。
21 ■ 素手で使える超小型・超高感度分子検出センサ
家庭での血液検査と、携帯電話での呼気診断に向けて
図4 感応膜の被覆から標的分子の測定まで、全ての操作を素手で行う事が可能になった。標
準96穴プレートにも対応。
図5 USBのみで駆動・測定可能なシステ
ムの例。このように簡便なシステムでありな
がら、大型冷蔵庫ほどの大きさの特殊装置を
必要とする従来のセンサシステムの性能を、
感度を含む全要素で凌駕。原理的には、電気
抵抗値の変化を読み取るだけであるため、特
殊な装置は一切不要。チップを含む全システ
ムを、携帯電話の中に組み込むことも可能。
現在、より簡便な読み取り装置を開発中。近
日中に、センサチップを含め、測定に必要な
全要素をまとめたキットの、全世界への提供
を検討中。
発 表 文 献
1)G. Yoshikawa, F. Loizeau, C. J. Y. Lee, T. Akiyama, K. Shiba, S. Gautsch, T. Nakayama, P. Vettiger, N. F. de Rooij,
and M. Aono, Langmuir 29(2013)7551.
2)G. Yoshikawa, T. Akiyama, F. Loizeau, K. Shiba, S. Gautsch, T. Nakayama, P. Vettiger, N. F. d. Rooij, and M. Aono,
Sensors 12,(2012)15873.
3)G. Yoshikawa, T. Akiyama, S. Gautsch, P. Vettiger, and H. Rohrer, Nano Letters 11,(2011)1044.
4)特願 2010-118859(+PCT), 特願 2012-094299(+PCT), 特願 2013-119299(+PCT), 特願 2013-096690
期待されるイノベーション
「本当に使える」超小型・超高感度センサの実現。本センサシステムの応用例:
・簡易迅速血液 / 体液検査
・携帯電話による呼気診断
お問い合わせ先
MANA 吉川元起
ホームページ:http://y-genki.net/
メールアドレス:
NIMS 研究成果 ■ 22
12. 酸化銅(CuO)ナノフラワー排ガス触媒
研究の背景と狙い
燃焼機関(ガソリン自動車・火力発電など)による安定的なエネルギー供給と健康・安全な持続可能社会
を両立させるため、鉱物資源に乏しい従来の貴金属系排ガス触媒に代わり、豊富・安価なユビキタス元素を
材料とする「貴金属フリー排ガス触媒」の開発が喫緊の課題である。
研究の内容と成果
貴金属元素の課題:用途の集中と資源の偏在
貴金属鉱山の分布
現在、白金をはじめとする貴金属元素は、自動車排気ガス清浄化のための触媒材料として年間産出量の 50
%以上が消費されている(用途の集中:左図)と同時に、鉱物資源の供給を実質上南アフリカ共和国のみに
依存している(資源の偏在:中央および右図)。一方、発展途上国における大気汚染の深刻化に伴い、排ガ
ス触媒の需要が急速に高まっている。将来的な貴金属資源枯渇・価格不安定化のリスクを前に、高価・希少
な貴金属元素の代わりに安価・豊富なユビキタス元素を材料とする「貴金属フリー排ガス触媒」の開発・普
及が喫緊の課題である。
貴金属フリー排ガス清浄化触媒:酸化銅(CuO)ナノフラワー
4
白金ナノ粒子
Price (yen/gram)
価格(円/グラム)
NO清浄化率(%)
10
3
10
2
10
1
白金
10
0
10
10
酸化銅
-1
反応時間(分)
NIMS 独自開発のボトムアップ合成法を駆使し、材料のナノ構造を制御することによって、貴金属元素を
一切含まないにもかかわらず、自動車排気ガス中の主要毒性成分である一酸化窒素(NO)に対し当重量の
白金ナノ粒子触媒を上回る清浄化活性を示す酸化銅(CuO)ナノフラワー触媒を創製した(左図・中央図)。
CuO ナノフラワーは、安価・豊富な銅材料(白金比単価 1/1000;白金比年間産出量× 10000)を原料にし
ていることから、貴金属系排ガス触媒の代替材料として有望である(右図)。
23 ■ 酸化銅(CuO)ナノフラワー排ガス触媒
ナノアーキテクトニクスで銅サビを白金に変える
活性発現メカニズム:高触媒活性{001}ファセット
CuO{001}面
CuO ナノフラワーは、厚み数 10 ナノメートルの花弁状ナノ単結晶体から構築される(左図)。NIMS 独自
開発の FIB-SEM 装置を駆使し、花弁状ナノ結晶体を面垂直方向に切断・断面透過電子顕微鏡観察を行った
結果、花弁状ナノ単結晶体は高表面エネルギーファセットである CuO{001} 面で覆われていることが明らか
となった(中央図)。密度汎関数法(DFT)理論計算の結果、CuO ナノフラワーにおいては、排ガス中に含
まれる一酸化炭素(CO)の表面吸着・脱離によって CuO{001} 面に形成された酸素欠損(vacancy)が NO 分
子や N2O 分子から酸素を引き抜くことによって、NOx 清浄化反応サイクルが連続的・高効率に促進される
ことが分かった(右図)。
表紙掲載
発 表 文 献
1)F. M. Auxilia, S. Ishihara,* S. Mandal, T. Tanabe, G. Saravanan, G. V. Ramesh, N.
Umezawa, T. Hara, Y. Xu, S. Hishita, Y. Yamauchi, A. Dakshanamoorthy, J. P.
Hill, K. Ariga,* H. Abe* Adv.Mat. 2014, in press(下記 URL から無料ダウンロード
可).
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adma.201306055/abstract
2)特開 2013-240756:「ナノ単結晶板材集積触媒及びその製造方法」
期待されるイノベーション
自動二輪など小型ディーゼル/ガソリン車の需要が高い発展途上国を中心にマーケットを展開。
わが国の輸出産業競争力強化と同時に、地球大気環境の浄化に寄与する。
お問い合わせ先
環境再生材料ユニット 阿部英樹、石原信輔
超分子ユニット 有賀克彦
メールアドレス:
NIMS 研究成果 ■ 24
トピックス 蓄電池基盤プラットフォーム 目的
蓄電池はモバイル社会を支えるキーデバイスであるとともに、電気自動車や太陽光発電などの低炭素化技
術にとっても欠くことのできない基盤技術である。特に後者においては、従来の数倍以上のエネルギー密度
や数分の一以下の低コスト化が求められており、現状のリチウムイオン電池の延長上では解決が困難である
と考えられている。そのため、従来技術の壁を突破する画期的な新電池の開発が強く求められている。
蓄電池基盤プラットフォームは、そのような次世代蓄電池の研究開発を支援するために、平成 24 年度補
正予算で設備導入されたものであり、最先端装置群をアンダーワンルーフに設置し、共用インフラとして全
国の研究者に提供することを目的としている。
本事業は NIMS が中核機関となり、産業技術総合研究所(関西)および早稲田大学の 3 者で実施する(図
1)。また、「戦略的創造研究推進事業 先端的低炭素化技術開発(ALCA)」における「次世代蓄電池研究加
速プロジェクト」と連携し、同プロジェクトで実施される次世代蓄電池の研究開発に対して優先的に支援し
ていく。
図1 蓄電池基盤プラットフォームの実施体制
NIMS 蓄電池基盤プラットフォームの概要
NIMS 蓄電池基盤プラットフォームは、小型蓄電池の試作から材料の分析評価まで、次世代蓄電池の研究
開発に必要なほぼ全ての機能を網羅した最先端の共用インフラである。すべての設備はナノグリーン棟内に
集中的に配置され、質、量ともに世界トップレベルを誇るユニークな研究施設である。
図2 NIMS蓄電池基盤プラットフォームのあるナノグリーン棟(並木地区)と設備一覧
25 ■ 蓄電池基盤プラットフォーム
- 次世代蓄電池の研究開発を支える最先端インフラ -
スーパードライルーム
蓄電池の研究開発に不可欠な超低湿度環境を実現するために、80 m2 のスーパードライルームが設置され、
電池試作や電池特性評価を自由に行なうことができる。また、スーパードライルーム内には FTIR、ラマン、
小型 SEM、レーザー顕微鏡等の評価装置も導入されており、その場で電池を解体して分析評価することも
できる。
図3 スーパードライルーム(501実験室)の内部
給気露点−90℃以下(水分量0.1 ppm以下)の世界
トップレベルのドライルーム。低露点環境を保つた
め、定員は5名としている。
最先端分析評価装置
大型設備としては、TEM, SEM, FIB-SEM, TOF-SIMS, XPS, HAXPES, AES, SPM, XRD, LC/MS, GC/
MS, ICP/MS など最先端の各種評価装置群を取り揃えている。また、試料の多くがリチウムを含有するため、
大気非曝露下での試料搬送や低ダメージ化が必須要件であり、そのための特殊なアタッチメント類を整備す
るとともにノウハウの蓄積を行っている。
図4 分析装置への大気非曝露試料搬送システ
ム
各装置には、低ダメージ化のために低温ステー
ジやGCIBが付属している。
お問い合わせ先
蓄電池基盤プラットフォーム 実施責任者 魚崎浩平
NIMS 蓄電池基盤プラットフォーム長 久保佳実
ホームページ:http://www.nims.go.jp/brp/
メールアドレス:
NIMS 研究成果 ■ 26
2013年度運営に関するデータ集
● 論文被引用数
● 常勤職員数の推移
● 特許出願・実施料収入の推移
● 外部資金等の獲得状況
● 科学研究費補助金の採択率と獲得状況
● 機構の組織(平成25年度末現在)
27 ■ 2013年度運営に関するデータ集
2013年度運営に関するデータ集
論文被引用数
論文被引用数ランキング (Materials Science)
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Rank
Institution
S25&ESU
Jan. 2009 – Dec 2013
Citations
Rank
Institution
1
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4,886
2
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3,990
84,716
4GIOI
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3,204
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3,026
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2,517
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2,443
10
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2,370
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12
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31
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Citations
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16,664
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II
12,916
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JKLI 11,349
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10,676
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CII7,240
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II4,516
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16,629
常勤職員数の推移
NIMS 研究成果 ■ 28
特許出願・実施料収入の推移
国内
600
ランニングロイヤリティー
516
511
492
500
416
246
131
327
330
297
115
131
341
304
177
141
322
124
285
212
160
164
163
163
450
250
187
百
万
円
200
10
150
H20
H21
H22
H23
H24
H25
436
314
90
64
60
100
0
H19
9
300
50
H18
23
323
350
56
396
158
400
)
220
100
実
施
料
収
入
(
110
270
0
一時金
550
500
特 400
許
出
願 300
件
数 200
外国
68
22
40
20
22
42
H18
H19
H20
373
353
177
H21
H22
H23
H24
H25
外部資金等の獲得状況
公募型研究
受託研究
民間等の研究資金等
11,000
10,000
9,000
6,000
5,000
5,719
725
56
952
84
700
7,487
6,395
948
39
669
33
764
24
4,000
3,000
800
715
受託研究
747
239
600
民間等の研究資金等
743
20
703
685
240
266
500
241
226
12
6
450
453
24年度
25年度
10
16
件数
獲得額(
百万円)
7,000
10,389
7,587
8,000
公募型研究
400
9,353
300
6,806
6,500
5,693
4,931
433
488
493
22年度
23年度
200
2,000
100
1,000
0
21年度
22年度
29 ■ 2013年度運営に関するデータ集
23年度
24年度
25年度
0
21年度
科学研究費補助金の採択率と獲得状況
申請
採択
新規
採択率(NIMS)
450
438
29.1
400
379
1,000
25.0
286
282
採
20.0 択
率
獲
800
得
額 700
15.0 %
600
88
10.0
102
95
50
384
616
300
480
406
430
323
200
5.0
814
534
百
万 500
円 400
85
59
442
)
150
857
481
609
(
200
848
900
( )
20.1
1,097
1,100
30.1
20.6
25.1
100
1,089
30.0
350
350
300
件
数 250
継続
35.0
500
100
0
0.0
0
21年度
22年度
23年度
24年度
21年度
25年度
22年度
23年度
24年度
25年度
機構の組織(平成 25 年度末現在)
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NIMS 研究成果 ■ 30
◆本書の複製権・翻訳権・上映権・譲渡権・公衆送信権(送信可能化権を含む)は、
物質・材料研究機構が保有します。
◆本書に関するご意見・お問合せは下記担当までお願いいたします。
発行:独立行政法人 物質・材料研究機構
2014年 7 月 4 日発行
担当者:企画部門評価室/田沼 繁夫
〒305-0047 茨城県つくば市千現 1 - 2 - 1
電 話:029-860-4801
FAX:029-859-2040
E-mail:
物質・材料研究からイノベーションを目指して