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1.業務概要
1.1 業務目的
水産庁においては、藻場造成等の豊かな海の森づくりの推進に取り組んでいるところで
ある。一方、地球温暖化は加速的に進行しており、温暖化対策に向けた一層の取組強化が
求められている。
藻場造成に係る CO2 排出をできるだけ抑える観点から、コンクリートの代替として CO2 削
減・固定に資する貝殻やスラグ等を活用した人工石材、ブロック等を利活用した藻場造成
が期待されているが、現状では、基質材の品質確保、経済性等の観点からの実用化レベル
の普及には至っていない。
そこで、鉄鋼スラグ水和固化体、鉄鋼スラグ炭酸固化体、貝殻混じりセメント固化体を
対象に実用化に向けた各種技術開発を行なう。さらに、これらより得られた知見を普及し、
温暖化対策に寄与することを目的とする。
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1.2 業務内容
1.2.1 CO2 排出削減・固定に資する基質材の開発
(1)品質確保に関する実証調査
過年度に設置された鉄鋼スラグ炭酸固化体試験用供試体を回収し、断面構造の構造変化
の有無を観察する。
(2)材料強度に関する検討
過年度事業において検討された、貝殻混じりセメント固化体が藻礁として有すべき所定
の材料強度を満足するような貝殻置換率の決定方法を明確化する。
(3)コスト縮減技術の開発
過年度事業において設置された鉄鋼スラグ炭酸固化体プレートの劣化状況を把握すると
ともに、コスト縮減技術として実用化が期待できるものを明らかにする。
1.2.2 CO2 排出削減・固定に資する基質材の効果等の検証
過年度事業にて設置した選定基質材を調査し、被度及び株数の変化率を指標とした増殖
効果の評価を行う。また、評価終了後は設置構造物を撤去・処分する。
1.2.3 ガイドラインの作成
CO2 排出削減・固定に資する基質材の利活用のためのガイドラインを作成する。
1.2.4 ワーキンググループの運営
専門的知見を持つ技術者等によるワーキンググループを組織し、基質材に関する増殖効
果、品質確保・安全性やコスト縮減、ガイドラインの作成等についてワーキンググループ
にて検討を行うこととする。
ワーキングメンバー構成を表 1.1 に示す。
表 1.1 メンバー構成(敬称略,五十音順)
氏名
所属
石村 忠昭
(社)マリノフォーラム21 技術参与
清水 英久
漁港漁場新技術研究会
松本 剛
鉄鋼スラグ水和固化体研究会
横尾 正義
鉄鋼スラグ水和固化体研究会
2
3
平成20年度
平成21年度
平成22年度
貝殻混じりセメント固化体
の材料強度を確保するため
の配合の決め方の明確化
貝殻混じりセメント固化体
に着目し、藻礁として有すベ
き材料強度について検討
(3)材料強度に関する検討
選定した基質材の普及に
向けた製造技術や材料供給
方法等について検討
(4)CO2排出削減・固定に資
する基質材の普及に向け
た検討
現地調査
(冬季)
コスト縮減技術として実用化が期
待できるものを明らかにする
コスト縮減技術の要素技術の1つ
として設置した鉄鋼スラグ炭酸固
化体プレートに対する接着面の劣
化状況を把握(夏~秋季の1季)
各要素技術の技
術開発の視点沿っ
たコスト縮減技術
の実用性の検討
被度及び株数の変化率を指
標とした増殖効果の評価
現地調査
(夏~秋季の1季)
被度の変化率を指標とした
増殖効果の暫定評価
現地調査(冬季)
現地調査(春季)
現地調査(冬季:3月)
現地調査(冬季:3月)
現地調査
(春季)
各ブロック上へ、比較検証用
のアラメ・カジメ幼体を移植
(2月)
左記での選定基質材に対し
て、同一形状のブロックを製
作し、モデルサイトへ設置
(1)選定基質材の増殖効果の
検証
各要素技術に応じたブロック等を
製作し、モデルサイトへ設置、製作
工数等の把握
①鉄鋼スラグ水和固化体
②鉄鋼スラグ炭酸固化体
に着目
※4つの要素技術を選定
(5)コスト縮減技術の開発
●設置構造物の撤去・処分
各ブロック直上部の海水を採
取し、pHを計測しアルカリ溶
出の影響を把握
(2)選定基質材の海域環境へ
の安全性の検証
CO2排出削減・固定に資する基質材の効果等の検証
現地調査に係わる事項
ガイドラインの作成・完成
ガイドラインの目次(案)の検
討・一部執筆(作成可能部分)
各ガイドラインの構成概要の
検討
「CO2排出削減・固定に資する基質
材の利活用のためのガイドライン
(仮称)」の作成
豊かな海の森づくりによるCO2固
定等推進ガイドライン作成に向
けた検討
図 1.1 CO2 排出削減・固定に資する貝殻、スラグ等の基質材の品質確保やコスト縮減等にかかる技術開発 3 ヶ年フロー
供試体を回収し、断面構造
の構造変化の有無を観察
鉄鋼スラグ炭酸固化体に
対する長期海水暴露試験用
供試体の製作・モデルサイト
への設置
(2)品質確保に関する実証
調査
選定素材の既往知見の収集・整理
①鉄鋼スラグ水和固化体
②鉄鋼スラグ炭酸固化体
③貝殻混じりセメント固化体
以上、3素材を選定
(1)CO2排出削減・固定に資する
基質材 の選定等
モデルサイトの選定
CO2排出削減・固定に資する基質材の開発
1.3 業務フロー
本業務は 3 ヵ年に亘る業務の 3 年目に当たる業務である。業務全体のフローを図 1.1 に
それぞれ示す。