テーマ10 合金・めっき・主成分

------テーマ10 合金・めっき・主成分-----厳選正誤問題
Q1
ハーバー・ボッシュ法,オストワルト法,接触法は,いずれも鉄を主成分
とする触媒を用いている。○or×
Q2
ガラスの主成分は,ケイ素原子と酸素原子がつくる四面体構造をもつ
二酸化ケイ素である。○or×
Q3
鉄の原料である鉄鉱石には,主成分がFe3O4の赤鉄鉱や,主成分がFe2O3
の磁鉄鉱がある。○or×
Q4
アルミニウムは,酸化アルミニウムが主成分のボーキサイトを原料と
して製造される。○or×
Q5
酸化アルミニウムは,ルビーやサファイアの主成分である。○or×
Q6
石灰石,大理石の主成分は,炭酸カルシウムである。○or×
Q7
動物の歯や骨の主成分は硫酸カルシウムである。○or×
Q8
5円硬貨の素材には,真鍮とよばれる銅とスズの合金が用いられている。
○or×
Q9
青銅(ブロンズ)は銅とスズとの合金で,白銅は,銅とニッケルとの合金
である。○or×
Q10
ジュラルミンはアルミニウムに少量の鉄,亜鉛,マンガンを添加した合金
である。○or×
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Q11
ニクロムは,ニッケルとクロムとの合金で,はんだは,鉛とスズとの
合金である。○or×
Q12
鉄にクロムやニッケルを添加してつくられる合金を一般にステンレス
鋼という。○or×
Q13
人工的にアルミニウム製品の表面を酸化させ,酸化アルミニウムの
被膜をつくったものをアルマイトという。○or×
Q14
鉄を亜鉛でめっきしたものは,鉄をスズでめっきしたものより腐食
されにくい。○or×
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テーマ10 合金・めっき・主成分①
テーマ10は,合金・めっき・主成分についてです。
ある金属に他の金属または非金属を混合したものを合金といいます。
合金は腐食を防ぐ有力な方法の一つで,合金にすることによって,
単体では得られない優れた特性を持った金属材料を得ることができます。
他に,腐食防止として金属の表面を他の金属で覆い内部を保護するめっきが
あります。
合金では,鉄Fe,アルミニウムAl,銅Cuの3つが特によく狙われます。
また,ある慣用名をもった物質の主成分を問う問題もよく出題されるので,
合金・めっき,主成分をつなげてまとめて覚えましょう。
◎ それでは,主成分に関する問題から見ていきましょう。
Q1 ハーバー・ボッシュ法,オストワルト法,接触法は,いずれも鉄を主成分と
する触媒を用いている。→ ×
解説
鉄を主成分とする触媒を用いるのはハーバー・ボッシュ法だけです。
ハーバー・ボッシュ法は,鉄を主成分とする触媒(四酸化三鉄Fe3O4)を用い,
高温・高圧下で水素と窒素からアンモニアを製造する方法で,この反応は次のよう
に表されます。
N2 + 3H2 → 2NH3
→
オストワルト法は,白金Ptを触媒として,アンモニアNH3を一酸化窒素NOに酸化し,
さらに二酸化窒素NO2にしたのち,これを水と反応させて硝酸HNO3を製造する方法
です。
接触法は,酸化バナジウム(Ⅴ)V2O5を触媒として,二酸化硫黄SO2を三酸化硫黄
SO3に酸化したのち,これを水と反応させて硫酸H2SO4を合成する方法です。
覚えておきたい工業的製法の触媒
ハーバー・ボッシュ法 …… 鉄を主成分
オストワルト法 …… 白金Pt
接触法 …… 酸化バナジウム(Ⅴ)V2O5
Q2 ガラスの主成分は,ケイ素原子と酸素原子がつくる四面体構造をもつ二酸化
ケイ素である。→ ○
解説
二酸化ケイ素SiO2は,石英やケイ砂や水晶の主成分で,ケイ素原子と酸素原子が
交互に共有結合で連なった共有結合の結晶です。
テーマ10 合金・めっき・主成分②
Q3 鉄の原料である鉄鉱石には,主成分がFe3O4の赤鉄鉱や,主成分がFe2O3の
磁鉄鉱がある。→ ×
解説
赤鉄鉱の主成分は, 赤褐色の酸化鉄(Ⅲ)Fe2O3で,鉄が湿った空気中で生じる赤さび
の主成分でもあります。
一方,磁鉄鉱の主成分は黒色の四酸化三鉄Fe3O4で,鉄を空気中で強熱したときに
生じる黒さびの主成分でもあります。
Fe の酸化物
化学式と名称
色
ポイント
酸化鉄(Ⅱ)FeO
黒色
Fe2O3の還元で生じる。
酸化鉄(Ⅲ)Fe2O3
赤褐色
赤鉄鉱・赤さびの主成分。
四酸化三鉄Fe3O4
黒色
磁鉄鉱・黒さびの主成分。
不動態の表面に生じる物質。
この2つが
重要!
Q4 アルミニウムは,酸化アルミニウムが主成分のボーキサイトを原料として
製造される。→ ○
解説
アルミニウムAlの製造には,原料であるボーキサイトから主成分である
酸化アルミニウムAl2O3を取り出し,この酸化アルミニウムに氷晶石を混合して,
溶融塩電解(融解塩電解)する方法が用いられます。
Q5 酸化アルミニウムは,ルビーやサファイアの主成分である。→ ○
解説
酸化アルミニウムAl2O3はアルミナとよばれ,アルミナの結晶はかなり硬く,
ルビーやサファイアの主成分です。
テーマ10 合金・めっき・主成分③
Q6 石灰石,大理石の主成分は,塩化カルシウムである。→ ×
解説
塩化カルシウムではなく,炭酸カルシウムCaCO3です。
他に.卵の殻,貝殻,真珠,珊瑚の主成分も炭酸カルシウムです。
炭酸カルシウムはセメントやガラスの原料であり,塩酸などの酸を加えたり,
加熱すると二酸化炭素を発生します。
■ 炭酸カルシウムに塩酸を加える。
CaCO3 + 2HCl → CaCl2 + H2O + CO2
弱酸の遊離反応
■ 炭酸カルシウムを加熱する。
CaCO3 → CaO + CO2
Q7 動物の歯や骨の主成分は硫酸カルシウムである。→ ×
解説
硫酸カルシウムCaSO4ではなく,リン酸カルシウムCa3(PO4)2です。
リンは古くは骨や歯から製造されてしましたが,現在ではリン鉱石に含まれる
リン酸カルシウムをケイ砂とコークスと混ぜて電気炉で強熱し,発生するリン
蒸気を水中で凝縮させて製造しています。
覚えておきたい主成分
石英,ガラス,けい砂,水晶 …… 二酸化ケイ素SiO2
岩塩 …… 塩化ナトリウム NaCl
石灰石.大理石,卵の殻,貝殻,真珠,珊瑚 …… 炭酸カルシウムCaCO3
赤鉄鉱,赤さび …… Fe2O3
磁鉄鉱,黒さび …… Fe3O4
ボーキサイト,ルビー,サファイア …… 酸化アルミニウムAl2O3
ホタル石 …… フッ化カルシウムCaF2
動物の骨や歯 …… リン酸カルシウムCa3(PO4)2
にがり …… 塩化マグネシウムMgCl2
漆喰 …… 水酸化カルシウムCa(OH)2
テーマ10 合金・めっき・主成分④
◎ Q8∼12は,合金に関する問題です。
Q8 5円硬貨の素材には,真鍮とよばれる銅とスズの合金が用いられている。
→ ×
解説
真鍮(しんちゅう)は黄銅ともよばれ,銅Cuと亜鉛Znとの合金です。
黄色の光沢をもち,さびにくく加工しやすいので5円玉や楽器などに用いられます。
一般に,銅はそれ自身では柔らかいので,硬度を高めるために合金の形で利用され
ます。
Q9 青銅(ブロンズ)は銅とスズとの合金で,白銅は,銅とニッケルとの合金
である。→ ○
解説
青銅は銅とスズSnとの合金で10円硬貨に,白銅は銅とニッケルNiとの合金で
50円,100円硬貨に用いられています。
また,500円硬貨は銅と亜鉛ZnとニッケルNiとの合金である洋白(洋銀)が用いられ
ています。
銅の合金と硬貨
五円
50
黄銅 …… Cu,Zn
10
青銅 …… Cu,Sn
100
白銅 …… Cu,Ni
500
洋白 …… Cu,Zn,Ni
Q10 ジュラルミンはアルミニウムに少量の鉄,亜鉛,マンガンを添加した合金で
ある。→ ×
解説
ジュラルミンは,アルミニウムに少量の銅,マグネシウム,マンガンを添加した
合金で,軽量で強度が高く航空機の機体などに利用されています。
テーマ10 合金・めっき・主成分⑤
Q11 ニクロムは,ニッケルとクロムとの合金で,はんだは,鉛とスズとの合金で
ある。→ ○
解説
ニクロムは,ニッケルNiとクロムCrとの合金で,電気抵抗が大きいため,電熱器の
発熱体などに用いられます。
はんだは,鉛PbとスズSnとの合金で,鉛とスズの融点は金属の中では比較的低い
ですが,ハンダの融点はさらに低くなり,主に金属どうしの接合に用いられます。
合 金
名称
成分
Cu,Sn
鋳造性に富む。
黄銅(真鍮)
Cu,Zn
金色,腐食しにくく,加工しやすい。 5円硬貨,金管楽器
白銅
Cu,Ni
腐食しにくく,展性・延性に富む。
洋白(洋銀)
Cu,Zn,Ni
銀白色,加工しやすい。
500円硬貨,食器,楽器
ステンレス鋼
ジュラルミン
Fe,Cr,Ni
Al,Cu,Mg
さびにくい。
軽くて強度が大きい。
食器,台所の流し台
航空機の機体
ニクロム
Ni,Cr
抵抗が大きい。
はんだ
Pb,Sn
融点が低い。
青銅(ブロンズ)
特徴
用途
10円硬貨,銅像,鐘
50円,100円硬貨
電熱器
金属の接合
Q12 鉄にクロムやニッケルを添加してつくられる合金を一般にステンレス鋼と
いう。→ ○
解説
鉄はさびやすいのが欠点で,これを克服するための工夫の一つとして合金を
用いることがあります。鉄に約20%のクロムCrと約10%のニッケルNiを含む
合金であるステンレス鋼は,腐食されにくいので,食器や台所用品,構造材など
として広く利用されています。
テーマ10 合金・めっき・主成分⑥
Q13 人工的にアルミニウム製品の表面を酸化させ,酸化アルミニウムの被膜
をつくったものをアルマイトという。→ ○
解説
アルミニウムは酸にも強塩基にも反応して水素を発生する両性元素で,
空気中に放置すると,金属表面に緻密な酸化被膜が生じ,それ以上は酸化
されなくなります。この状態を不動態といいました。
この不動態をアルミニウム製品に人工的につけたものがアルマイトです。
ゴロ合わせ暗記法
不動態
Fe Ni Cr Al
手 に 黒 蟻(あり) 動かない
※Crはあまり問われない。
アルミニウムに関する用語
ボーキサイト …… アルミニウムの原料鉱石(主成分Al2O3・nH2O)
アルマイト …… アルミニウムの表面に人工的に緻密な酸化被膜をつけたもの
アルミナ …… 酸化アルミニウムAl2O3の別称
ジュラルミン …… アルミニウムを主原料とする合金
テルミット …… アルミニウム粉末と酸化鉄(Ⅲ)の混合物
◎ Q14は,めっきに関する問題です。
Q14 鉄を亜鉛でめっきしたものは,鉄をスズでめっきしたものより表面が腐食
されにくい。→ ×
解説
鉄Feを亜鉛Znでめっきしたものはトタン,スズSnめっきしたものはブリキとよば
れます。
傷がついていないときは,表面はトタンのほうがブリキよりも腐食されやすくな
ます。これは,亜鉛の方がスズよりもイオン化傾向が大きい(陽イオンとなって溶
けやすい)ためです。
しかし,表面に傷がついて下地の鉄が露出したときには,鉄はブリキのほうがトタン
よりも腐食されやすくなります。
これは,トタンの場合,鉄に比べて亜鉛の方がイオン化傾向が大きいため,傷がつ
いても亜鉛が優先的に酸化され,鉄の腐食が防がれますが,ブリキの場合,鉄に
比べてスズの方がイオン化傾向が小さいため,傷がつくと鉄が優先的に酸化
(陽イオンとなって溶ける)されてしまうためです。
テーマ10 合金・めっき・主成分⑦
トタン
イオン化傾向 Zn>Fe
鉄はさびにくい!
H 2O
傷つく
Zn
Zn
2e Fe
−
Fe
ブリキ
Zn2+
Zn
イオン化傾向 Fe>Sn
鉄はさびやすい!
H 2O
Sn
傷つく
2+
Sn 2e− Fe
Sn
Fe
Fe
トタンとブリキの覚え方
Fe に:Sn(スズ):ブリキ, Zn(アエン):トタン
会え た
鉄ちゃん すず きに
金属の腐食を防ぐためにはいくつかの方法がありますが,
入試では次の3つをおさえましょう。
①合金(ある金属元素に他の金属元素または非金属元素を混合したもの)
例:ステンレス鋼
②めっき(腐食しやすい金属の表面を他の金属で覆い内部を保護する方法)
例:ブリキ,トタン
③不動態(金属の表面に緻密な酸化被膜が覆った状態)
例:アルマイト