2015年2月 平時の住宅政策のあり方と住宅復興政策について(検討メモ)

平時の住宅政策のあり方と住宅復興政策について(検討メモ)
都市研究センター副所長兼研究理事
佐々木
晶二
1.はじめに
「大災害の時には、その時点で抱えてい
る社会問題が凝縮して前倒しで発生する」
というのは、本年1月 20 日の阪神・淡路
大震災 20 年事業のコンファレンス第六分
科会での関西大学の越山先生の発言である。
また、筆者は、地域防災計画、事前復興
(図表-1)
計画、巨大災害発生、応急対策、復旧事業、
復興事業は、環状のサイクルを描くと考え
ている(図表-1)
。
このため、災害復興対策としての住宅政
策を考えるうえで、まず、前提となる平時
の住宅政策のあり方を考察する必要がある。
2.そもそも平時の住宅政策の課題は何か。
(1)住宅政策の政策目標
住生活基本法では第3条から第6条にか
けて、住宅政策の理念が規定されている。
このうち、第5条の住宅購入者の利益の
擁護、増進の規定は、情報の非対称性を前
提にした政策の必要性を述べており、この
点については、住宅性能保証制度や住宅瑕
疵担保制度など充実が図られている。
第4条の居住環境の問題は、外部経済
性・不経済性の問題として引き続き重要な
課題である。
第6条の住宅の確保に配慮を要する者の
対策、あるいは、第3条の「居住者の負担
能力の考慮」などは、いわゆる市場では解
決できない「配分」の課題と理解する。
(注
1)
なお、住宅政策のうち、いわゆる持家を
供給することによってトリクルダウンが生
じて全体の住宅の改善、居住環境の改善が
図られるという仮定が強く批判されている
現状も十分留意する必要がある。(注2)
また、住生活基本法では明確ではないが、
従来住宅政策の対象外と考えてきた、防災
対策、エネルギー政策、福祉政策などの政
策課題への貢献という点も重要と考える。
以上の考察を前提にして、現時点で、住
宅政策の重要な政策目標を整理すると以下
のとおりと考える。
ア
国民の健康で文化的な生活の基盤とな
る居住の安定
イ
良好な居住環境の確保
ウ
災害に強い、エネルギー消費の少ない、
福祉を支える、など、他の政策課題との
連携
(2)現時点で住宅政策に対する課題
以下、日本社会に係わる住宅政策の代表
的な課題を列記する。
(居住の安定関連)
・従来、法律で住宅確保要配慮者として
明示されている「低額所得者、被災者、
高齢者、子どもを育成する家庭」に加
え、パラサイトシングルなど正規雇用
につけない若年、中年低所得労働者へ
の対応
・低所得者層の増加に対して適切な場所
で必要な量を確保できない公営住宅の
あり方
・住宅での孤独死の防止、地域の見守り
体制の確保
(良好な居住環境の確保)
・人口減少、世帯減少社会に対応した新
築の抑制と、リノベーションなど既存
住宅の活用、中古住宅の流通促進
・大都市圏など郊外団地での空き家問題、
農山村集落の集落消滅可能性の問題へ
の対応
・将来の大規模修繕、建て替えについて
不確実性のある高層の区分所有建物に
対する制度的手当
・町屋、古民家など歴史的な価値ある住
宅の保存、利活用
(他の政策課題との連携)
・福祉政策側の地域の住まいへの依存傾
向に対応した住宅政策側の対応
・住宅の耐震性、断熱性などの省エネ機
能、バリアフリー対応など住宅の機能
改善
・木造密集市街地の問題
3.今後の住宅政策を構築する上での制約
4.今後の住宅政策の展開方向
要因
今後の住宅政策の展開方向は以下のとお
今後の住宅政策を再構築するにあたって、
り。
政策当局が常に留意すべき社会経済情勢は
以下のとおり。
ア
住宅政策と都市政策との一体化
都市計画制度は欧米では居住環境の改
ア
超高齢社会、人口減少、世帯減少社
会
善を大きな目的としており、そもそも一
体的に住宅政策と都市政策は運用する必
新たな新築住宅へのニーズが減少する
要がある。特に、急激な人口減少社会を
とともに、空き家への対応が重要になっ
迎え、当該都市ごとに空き家の存在量を
てくる。また、超高齢社会においては、
踏まえてどの程度の新築戸数を許容すべ
福祉政策との地域での連携が極めて重要
きかの政策判断は、都市計画マスタープ
になる。
ランに位置づけて、土地利用規制に反映
させて初めて実効性があがるものになる。
イ
国、地方公共団体での厳しい財政難、
住宅政策担当の職員減
国、地方公共団体の財政難、さらに住
宅政策担当職員が減少するで、優先順位
さらに、住宅政策と福祉政策、防災政策
などとの連携を円滑に進める上でも、基
盤整備や土地利用規制などを担当する都
市政策部局との連携が重要となる。
をつけて、かつシステムとして効率的に
住宅政策を実施する必要がある。
なお、多くの市町村で現実に公営住宅
管理担当以外の住宅政策担当者が存在し
ないことを踏まえると、都市政策と一体
ウ
首都直下地震、南海トラフ巨大地震の
発生可能性、エネルギー制約
巨大地震に対応して耐震性、耐火性、
的に住宅政策を実施することによって、
担当市町村が存在しないという問題を当
面解決することができる。
対津波性のある住宅ストックを増やすと
ともに、エネルギー制約の観点からでき
るだけエネルギー消費の少ない、エネル
ギー自立型の住宅を目指す必要がある。
イ
公営住宅と持家・民間賃貸住宅の間に、
家賃補助の社会住宅を位置づけ
日本では政策的な対応をしている賃貸
住宅は原則として公営住宅しか存在しな
いが、諸外国では政策的に家賃軽減を行
っている国が多い。
(図表-2)
(図表-2)欧米大都市と東京での施策住宅の割合
(単位:%)
持家
市場家賃
家賃軽減
公営住宅
その他
ロンドン
50
25
11
13
1
ニューヨーク
32
30
32
6
0
東京
44
43
7
4
2
(備考)一般財団法人 森記念財団都市整備研究所「2030 年の東京」(平成 26 年 12 月)のデ
ータを用いて筆者が加工した。
一方で、日本の公営住宅では高い応募
福祉政策サイドで、地域包括ケアとし
倍率となっていることから、入居したも
て中学校区単位での地域での住まいと医
の勝ちとなって必要な財政支援が厚く特
療施設、介護施設などの連携施策を推進
定の者に集中する傾向を持っている。
してきている。
このため、民間の賃貸住宅に対して家
これに対応して、中学校区単位ぐらい
賃補助をする仕組みの導入が検討課題と
で、住宅の居住者が共助で助け合って、
なる。しかし、生活保護における住宅扶
地域共同体を組織化し、この主体が福祉
助との関係の整理、公共事業関係費の中
以外の公共交通や防災、公共施設、公共
で家賃補助が予算化できるかといった、
建築物の管理などを自立的に実施してい
制度化するにあたっての課題がある。
く取組を一層促進する。
このため、とりあえず、民間賃貸住宅
特に、現在、住宅の空き家の目立つ高
の借り上げ公営住宅について、より対象
度成長期に開発した郊外の住宅団地や高
住戸を柔軟に設定するとともに、借り上
齢化が進んだ農山村集落においては、地
げ公営の場合の家賃設定の柔軟化、大規
域共同体組織が音頭をとって、住宅をリ
模な住宅を借り上げる場合のシェアハウ
ノベーションして、シェアハウスとし、
スやコーポラティブハウス形態の借り上
さらに、医療、福祉施設のサービスを行
げ住宅を許容するなど、民間賃貸住宅の
う居宅介護事業所や診療所、デイケアセ
ストックを効率的に活用し、市場家賃よ
ンターの立地促進を図るとともに、それ
り家賃を下げて、
より広い住宅困窮者
(若
の障害となる規制緩和を実施する。
者・非正規規雇用・低所得のケースも含
む)の対応を実施する。
このような地域の社会関係資本(注3)
を活性化する取組は一度災害が起きたと
きの復興を下支えし、そして地元住民意
ウ
福祉政策との連携、特に中学校区単位
見をとりまとめる力、地区防災計画を策
での地域共同体組織による居住サービス
定する推進力として活躍することも期待
の提供
している。
エ
市町村第一主義の徹底とUR都市再生
ンションの所有者が管理組合をつくると
機構の住宅政策主体としての位置づけ強
いう現在の法制度では、確実に修繕積立
化
金が確保できる担保がなく、また、積立
住宅政策は都市政策と一体となって、
住民の主体的参画を持って進めるべき政
金の増額などへの意思決定が平常時であ
っても困難である。
策なので、市町村が第一義的に責任を持
また、高齢化が進んで、相続人がなく
って行うべきと考える。現実には、市町
て所有者が死亡した場合には、管理費が
村で住宅政策を担う体制や職員が不足す
確保できないなど、現在の建物区分所有
る場合には、都道府県が補完するという
法を前提とする法制度だけでは、分譲マ
位置づけが望ましい。
ンション、特に超高層マンションでは将
なお、現時点では、UR都市機構は、
来世代にとって負の遺産となりかねない。
住宅政策の位置づけが不明確になってい
このため、まず、修繕積立金などなど
るが、古い賃貸住宅ストックが公営住宅
管理運営のルールである標準契約約款の
階層を受け止めている事実を尊重し、こ
法制度的義務づけや、将来、空き室だら
れが継続的に低所得者層など公営住宅層
けで管理不能となったマンションの収用
を受け止めることができるよう、公営住
による処理の仕組みの創設を検討する。
宅に準じる位置づけをUR賃貸住宅に付
さらに、現在の区分所有と居住者の権
与する。この際には、UR都市機構が現
利は実質同じとしつつ、建物・土地を住
在禁止されている市場家賃での賃貸住宅
宅組合所有又は住宅保有会社の所有にし
供給を再開することによって、内部補助
て、居住者は建物存在期間に継続する借
によって、古い賃貸住宅のリノベーショ
家権、内装変更権を持つといった新しい
ンやシェハウス化などを可能とし、UR
マンション所有形態を検討すべきである
賃貸住宅の家賃の軽減を実現すべきと考
(注4)
。なお、当面、組合所有等の建物
える。UR都市機構が大都市圏に保有す
の特殊借家権の取得資金については、当
る賃貸住宅が、現状のように民間売却さ
面、民間金融機関の融資が期待できない
れるのではなく、今後長期的に公営住宅
ので、住宅金融支援機構が貸し付けるこ
を補完する役割を果たせるよう、工夫を
とも検討する。
こらすべきと考える。
5.阪神・淡路大震災、東日本大震災での
オ
建物修繕積立金など管理運営のための
規定整備、立体的住宅改良事業、組合・
会社所有形態マンション
住宅復興の取組と課題
(1)概要
区分所有の住宅、いわゆる分譲マンシ
阪神・淡路大震災、東日本大震災での
ョンで高密度・高層化しているマンショ
住宅復興に係わる施策とその後の恒久制
ンは、大都市だけでなく、地方都市の駅
度、残された課題の整理表は別表のとお
前などに立地が進んでいるが、多数のマ
りである。
家賃補助をする民間賃貸住宅など、経済
(2)重要と考える論点
ア
都市政策と住宅政策の一体化
住宅復興計画を策定する上で、人口フ
レーム、住宅フレームを過大に設定しな
いよう、都市計画サイドと連携するとと
もに、復興計画に明確に位置づける。
仮設住宅、災害公営住宅、自力再建住
状況に応じた多様な政策住宅を提供する。
建築技術上も、高層化をさけ、地域の
見守りがしやすいような中低層の災害公
営住宅等の供給を都市計画と連携しつつ
供給する、
エ
する地域共同体組織の平時からの活
宅、民間賃貸住宅、社会住宅などの立地
動支援
の土地利用計画を事前復興計画として策
地域での共助の取組としての地域
定する(応急段階から土地の取り合いを
共同体活動について、福祉、公共交通、
防ぐ、面的整備事業で住宅建設が遅れな
防災、施設管理など多様なサービス提
いようにする)
。
供が可能となる体制、組織的位置づけ、
また、市街地整備事業の進捗に併せて、
当初の活動支援などを平時から行い、
自力再建希望が増えることが予想される
地域共同体組織の活性化を図る。
ことから、継続的なニーズ把握と市街地
また、復興事業の実施に当たっては、
整備事業地区の縮小の取組を行う。
イ
地域包括ケアセンターなど福祉施設
の立地に際し、新しい住宅団地の中に
仮設住宅の合理化、本設住宅との連携
福祉施設を計画するなど、住宅政策、
仮設住宅が除却まで考えると財政負
都市政策の計画との連携ができるよ
担が大きく、非効率である。このため、
う調整を事前段階から行っておく。
大量に一時に仮設住宅供給する場合には
フレハブ仮設もやむをえないと考える。
しかし、その場合でも、できるだけ地元
工務店を活用して木造仮設を混ぜること、
みなし仮設の活用(ただし、被災者のケ
アが欠けないような取組とセット)
、高齢
者と若者世帯との混住化など、孤独死を
防ぐ取組を実施する。
ウ
災害公営住宅、社会住宅など、自力再
建以外の手法の複線化
災害公営住宅を新規に建設するだけで
なく、民間空き家の借り上げ災害公営、
将来的には(予算制度のめどがつけば)
地域包括ケアなどのサービスを実施
オ
住宅政策を担当する職員、専門家の
応援態勢、UR都市機構の位置づけの
強化、民間事業者の供給体制の活用
内閣総理大臣が、国土交通省とも連
携して、被災市町村に対する、職員派
遣の斡旋を行う。
UR都市機構は仮設住宅の建設から、
災害公営住宅の建設、UR賃貸住宅の
建設について、主体的に取り組めるよ
う、内閣府所管の防災・復興機関と位
置づけるなど制度的な位置づけを強
化する。
地元の工務店などが建設する民間
住宅を災害公営住宅として市町村が
の規模から考えて、増額することには財
買い上げること、または、借り上げ公
政当局の抵抗が大きく、赤字国債で対応
営住宅とするため市町村が賃借する
することは次世代へのつけおくりとの批
こと、さらに、社会住宅として民間賃
判もまぬがれない。当面、現在の300
貸住宅に家賃補助すること、CMRと
万円という上限額を前提にしつつ、地域
しての民間事業者の発注支援業務を
の共助の仕組みであるフェニックス共済
位置づけることなど、復興時の混乱が
の加入を全住宅所有者に義務づける方向
想定される住宅供給体制について、民
を検討すべきと考える。
間事業者の役割をきちんと位置づけ
る。
この場合には、結果として主に国の財
政支出の減少につながるので、国税とし
て保険料相当額を徴収する仕組みが適当
カ 区分所有建物の管理の持続可能性の
と考える。
確保とそれが不十分な場合の高層マン
ションの抑制
いわゆる分譲マンションは、現時点
の法制度では、将来、大規模修繕や建
て替えなどが困難で、特に超高層マン
ションなど規模が大きい場合には、負
の遺産となることが予想される。その
ため、制度的な対応を事前に行った上
で、高層分譲マンションの供給を都市
計画上許容する。仮に、高層マンショ
ンについての大規模修繕や建て替えを
円滑する制度が整備されていない段階
で発災した場合には、都市計画制度を
活用して、できるだけ高層マンション
6.まとめ
今後の巨大災害からの住宅復興政策を考
える上では、そもそも平時での住宅政策を
今後どうあるべきかという論点や課題を検
証した上で、その論点や課題が集中して巨
大災害時には発生すると考えた上で、政策
を立案する必要がある。
この試みが成功したかどうかについては、
まだ、自信がないが、このような分析をし
ている事例はまだ乏しいので、いろいろご
批判を頂きつつ、住宅復興政策の検討を期
していきたい。
の建設を抑制する。
被災した分譲マンション対策として
は、滅失の特例を活用しつつ、最終的
には、立体的な不良住宅として収用で
きる制度設計を準備しておく。
キ
共助の仕組みとしての住宅共済制度
の位置づけ
被災者支援法など生活再建の仕組み
は、今後の大規模災害に伴う財政支出
(脚注)
注1)ロナルド・H・コースの取引費用と情
報の非対称性がない場合には、交渉により
外部不経済の発生をおさえ公平な財の配
分ができるという議論は承知しているが、
住宅については、取引費用、情報の非対称
性は大きいと想定されるので、いずれも政
策的な関与が必要と考える。ロナルド・H・
コース『企業・市場・法』(東洋経済新報
社)参照。
注2)平山洋介『住宅政策の何が問題か』
(光
文社新書)参照。
注3)パットナム『孤独なボーリング』(柏
書房)参照。
注4)住宅共同組合が所有するマンションの
実例はスウェーデンで主流であったが、最
近はスウェーデンでも区分所有形態のマ
ンションが建築されてきている。水村容子
『スウェーデン「住み続ける」社会のデザ
イン』(彰国社)参照。
(参考文献)
1)平山洋介ほか『住まいを再生する』(岩
波書店)
2)塩崎賢明『復興<災害>』
(岩波新書)
3)額田勲『孤独死』
(岩波現代文庫)
4)小矢部育子ほか『第3のすまい』(エク
スナレッッジ)
5)仁科伸子『包括的コミュニティ開発』
(御
茶の水書房)
6)宗野隆俊『近隣政府とコミュニティ開発
法人』(ナカニシヤ書房)
7)板垣勝彦「災害公営住宅と被災者の生活
復興」
(自治研究第90巻第4,5,6号)
8)大水敏弘『実証・仮設住宅』(学芸出版
社)
別表 阪神・淡路大震災と東日本大震災での住宅復興、都市復興施策の整理表
阪神・淡路大震災
東日本大震災
現時点での恒久的枠組み
今後の課題
・ハード中心ではなく、ソフトも重視して、復興の本
来目的である生活再建と経済の復興を実現する
災害の全体像と対応
の基本方針
・戦後最大の都市直下地震
・国土交通省都市局、住宅
局対応で対応可能
・戦後最大のトラフ地震、津
仕組みを充実、体系整理
波災害
・地域共同体組織や避難計画などの地区防災計
・国土交通省都市局、住宅
画を前提として、土地利用規制やハード整備とい
局だけでなく、河川局、港湾
ったボトムアップ型の制度体系
局、農林水産省など多省庁
・仮設住宅など応急対策と復興対策、災害予防
にわたる対策が必要
対策のシームレスな制度体系
・住民主体、市町村第一主義の復興計画策定、
計画調整
・災害救助法の規定のみ
仮設住宅
・プレハブに加えて、木造仮
・東日本大震災での単価
・プレハブ建築協会の緊急
設を建設
の特例など災害の都度の
対応による戸数確保
・コミュニティ施設の併設も一
特例が積み上がっている
・現地仮設を認めず
部実施
が、今後の災害への事前
・みなし仮設の多用
明示的なルールができて
いない
・災害救助法の中で仮設住宅の扱いは建築基準
法など規制の問題、木造仮設、本設への移行と
いった技術的課題あり
・空き家が多い現状では、みなし仮設をバウチャ
ーのように対応する方策も検討すべき
・みなし仮設の場合の手続きの簡素化も重要
・本設の公営住宅などとの土地の取り合いがおき
ないような事前復興計画も重要
阪神・淡路大震災
東日本大震災
現時点での恒久的枠組み
今後の課題
・人口減少社会では、都市政策と連携して適切な
人口フレーム、住宅フレームの位置づけをするこ
とが重要
・住宅金融支援機構の低利
・住宅金融公庫の低利融資
住宅対策
・災害公営住宅の建設補助
かさ上げ
・災害公営住宅の家賃補助
・空き家を借り上げた災害公営住宅、被災した住
融資
・住宅金融支援機構の低
宅の修繕費の補助など、より既存住宅を活かした
・災害公営住宅の建設補助
利融資
対策に転換すべき
のかさ上げ
・災害公営住宅の建設補
・災害公営住宅もできるだけ見守りがしやすいよ
・災害公営住宅の用地費補
助のかさ上げ
う、中低層、地方部では木造戸建てなど設計上の
助
・災害救助法の住宅修繕
工夫が必要
・災害公営住宅の家賃補助
の現金給付は活用事例が
・災害公営住宅も将来管理が難しくなるので、居
・災害公営住宅の払い下げ
少ない
住者に時価で払い下げるなど、将来管理負担を
禁止期間の短縮
考えた制度設計が必要
・自力再建に伴い課題となる二重ローン対策につ
いての制度的な対応策の検討
・災害救助法の住宅修繕の実施
・巨大災害の場合の国と都道府県の財政負担と
弔慰金(死亡の場合 500 万
生活支援
円未満、障害者 250 万円未
満)
被災者支援とのバランスをどう考えるか
同左
・住宅共済などの互助の仕組みを制度的にきち
んと導入するか
・総合的な再検証が必要
阪神・淡路大震災
東日本大震災
現時点での恒久的枠組み
今後の課題
・防災集団移転促進事業で
は、生活関連施設も住宅団
地の移転対象になる・県の
移転計画作成権の創設・運
用上の差し込み型の住宅団
地を許容・移転先の住宅団
・住宅団地の用地取得の円滑化のための一団地
地の収用施設対象化、事業
の住宅施設みなしは、戸数でなくて防災集団移転
認定の迅速化、・住宅団地
高台移転
問題なし
の造成と災害公営住宅の計
防災集団移転促進事業、
画の連携の不十分な箇所あ
県の移転計画作成権、住
り・防災集団移転での移転
宅団地の収用施設対象
促進区域での災害危険区域
化、事業認定の迅速化
について、敷地単位で指定し
た市町村があり、法律上は
違法とはいわないが不適
切、このような運用をさせな
い仕組み(防災集団移転促
進事業を所管する都市局と
建築部局との連携の強化)
が必要
促進事業の移転先の住宅団地一般とすべき(戸
数はもともと防災集団移転促進事業の予算上の
要件のため)・土地収用委員会の手続きの簡素
化(不明裁決等の先行的な実施)を行うべき・住
宅団地の計画にあたっては、生活関連施設の計
画、災害公営住宅の計画、コミュニティバスなど
公共交通機関の計画を一体的に行うことが必要
阪神・淡路大震災
・制度的手当なし
造成宅地
・擁壁の崩れた地区を道路
区域に含めて災害復旧事
業として実施
液状化対策
・宅地では問題なし
東日本大震災
現時点での恒久的枠組み
今後の課題
・復興交付金の中に任意事
・使い勝手の改善
業として、造成宅地滑動緊急
・宅地の基準が住宅保証制度と宅造法で異なる
対策事業を位置づけ
ことの調整
・公共施設を中心として行う事業手法の技術検証
・市街地液状化対策事業の
が先か?
創設
・必要があれば強制力をもった制度検討
・URが積極的に計画調整ができるよう、受託だけ
でなく、自ら施行権限も付与すべき
・UR の大規模災害時の臨時の定員の確保も重
URの業務特例
・住宅供給等のための本来
・復興計画に定められた業
業務としての受託可能
務の本来業務化
同左
要
・応急仮設建設など総合的な復旧・復興事業を実
施できるよう、大規模災害時での応急復旧・復興
実施部隊としての内閣府所管による位置づけも
検討
・同左の業務・CMR として市
民間事業者の役割
・土木・建設工事の請負業
者の役割
町村の発注業務を支援・民
間事業者の建築物の買い取
りによる災害公営住宅を供
給
同左
CMR業務の正式な位置づけ
阪神・淡路大震災
東日本大震災
現時点での恒久的枠組み
今後の課題
・復興推進計画(規制緩
和)、復興整備計画(事業計
画)、復興交付金計画が並
立
・市町村が主体性をもって、国、県の実施する公
・「特区」という名称が復興基
共土木施設(防潮堤等)の計画調整を行う仕組み
本法段階で先行したため、
が必要
特区に三つの計画は入って
・国が直轄調査を行う場合には、都市局、住宅
いる複雑な体系
・これとは別に第一次補正で
復興計画
・法令上の位置づけなし(兵
都市局の直轄調査を実施、
庫県と県内各市町作成)
これにより整備手法が固定
化したきらいあり
・人口フレームについての国
からの指示がなかったため、
各市町村が楽観的で過大な
フレームを設定
・事業進捗に併せて事業地
地区外での自主再建が増え
ているのに、円滑に事業規
模の縮小ができていない
局、農村、漁港を一体的に計画する調査内容とす
・市町村の復興計画、県の
べき
復興方針、国の復興基本
・人口フレームについては、原則、社会保障・人口
方針という体系の明確化
問題研究所の市町村別人口フレームを用いるよ
う、国が基本方針に明記すべき
・できるだけ頻繁に市町村民の意向調査を実施し
て、随時復興計画の内容を変更(事業区域の縮
小など)を行うことを被災市町村に義務づける仕
組みも必要
阪神・淡路大震災
東日本大震災
現時点での恒久的枠組み
今後の課題
・本来、法定事業を実施す
るかどうかを判断する期間
として2年間の猶予を与え
る制度であり本来の仕組
みとして利用されることが
重要・法定事業をするかど
・土地区画整理事業の区域
うかを決めていない地域を
と同じ区域どりで同時決定・
被災市街地復興推進
地域
神戸市は自主条例で土地
区画整理事業、市街地再開
発事業の区域より広い地域
を届けて勧告制度でおさえ
る自主条例を制定
広くかけて2年間で検討す
・土地区画整理事業の区域
る、結果として、法定事業
・都市計画区域外での活用できる制度設計を準
と同じ区域どりで同時決定
でなく任意事業、個別の建
備(準被災集落復興推進地域?)
て替え対応になっても地区
計画を定めれば良いの
で、いわゆる法定事業を
予定する区域に限定する
制度ではなく、幅広く可能
性のある区域を決定する
という運用意識を持つこと
が重要
阪神・淡路大震災
東日本大震災
現時点での恒久的枠組み
今後の課題
・建築制限は、住民手続き等の近年の充実から
みて、2ヶ月で十分なのか、3ヶ月程度に一般的
に伸ばすべきではないか、ただし、8ヶ月も住民手
続き、議会手続きなしに建設規制を延長するのは
・8ヶ月まで建築制限の延長
違憲のおそれもあり望ましくない
(違憲の疑いあり)
土地利用規制
・2か月の建築制限
・災害危険区域の防災集団
移転促進区域での災害危険
区域を指定、
・2ヶ月の建築制限
・発災後3ヶ月程度で被災市街地復興推進地域
に移行すべき
・災害危険区域は、制限の内容や住民手続きな
どの点で問題があり、防災地区計画などの都市
計画、準地区計画(都市計画区域外を想定)の仕
組みとし、きちんとした都市計画基準を同時に策
定すべき
阪神・淡路大震災
東日本大震災
現時点での恒久的枠組み
今後の課題
・土地区画整理事業、市街地再開発事業は人口
減少社会、定常経済では事業の成立性が落ちる
ので、全面買収型の手法で、先行的、速攻的に
・土地区画整理事業で住宅
事業を実施すべき・そのためには、抵当権や地権
給付ができる仕組みの創設
者の不明な場合の、収用委員会手続きの迅速な
(活用されず)・第二種市街
実施の仕組みが必要・土地区画整理事業を実施
地再開発事業の面積要件
するにしても、現道を尊重して権利調整を素早く
の緩和・土地区画整理事業
市街地整備
実施できるような換地設計が必要・土地区画整理
に一般会計の補助制度の
・土地区画整理事業の盛り
創設(盛り土は尼崎築地地
土の補助対象化・全面買収
・一団地の復興拠点施設
区で課題となったが補助対
方式の津波復興拠点整備事
(予算措置は未定)
象外)・市街地再開発事業
業の創設
の補助率かさ上げ・土地区
画整理事業で無理な道路
拡幅などの道路計画・市街
地再開発事業の規模が過
大
事業を担当する専門家が道路をたくさん新設する
事業計画、道路を拡幅する事業計画という発想
から転換する必要がある・現道を尊重した道路設
計を行えば、抵当権をそのまま換地に移転する
土地区画整理事業手法は使い道がまだあるは
ず、その際に、土地区画整理事業と一戸建ての
住宅建設を一体的に行う被災市街地復興土地区
画整理事業の実施の検討、課題があれば事前に
法改正を行う・市街地再開発事業は東京都心、ブ
ロック中心都市以外では平時でも事業継続性が
ないので、適用に慎重であるべき
阪神・淡路大震災
・兵庫県と神戸市に復興基
金
復興基金
・基金運用は地方公共団体
に委ねたため、柔軟な被災
者支援が可能となった
東日本大震災
現時点での恒久的枠組み
今後の課題
・運用利回りが低いため基金
・金利が低い間は、復興交付金の効果促進事業
は設けず
のような部分の柔軟な使い方を目指す
・補助金として、取り崩し型の
・金利が高くなれば、阪神・淡路型の復興基金を
基金設置
創設する
・住民参加手続きを実施し、それを受けて復興計
画を定めることが重要
・都市計画手続きによる住
住民参加手続き・住民
民参加
の主体的な活動
・神戸市などまちづくり協議
会の伝統を活かした対応
・被災地であっても、拙速にならず、住民の理解を
・復興推進計画等について
住民手続きの規定なし
・まちづくり協議会など地元
発意型の組織が地元にほと
える、そのための地元協議会の立ち上げ支援が
・復興計画に住民参加手
重要
続きの規定を明記
・平時から地域共同体組織を立ち上げて、防災や
地域高齢者の見守り、福祉サービスの提供など
んど存在しなかった
の総合的な地域サービスを提供する仕組みの構
築を、単なる復興政策、防災政策の枠を越えて、
総合的に実施すべき
市町村の職員体制
・神戸市など職員が充実し
・総務省、国土交通省など
た地域での被災であったた
が、市町村を支援する事務
・内閣総理大臣の職員斡
・内閣総理大臣が必要があれば、総務大臣、国
め、職員不足は大きな問題
職員、技術系職員の他県、
旋の規定を明記(法的責
土交通大臣などの指示して、復興人材の派遣、
にならず
市町村からの調整、斡旋を
任を明確化)
調整を行うべき
・富島町ではURが支援
実施
阪神・淡路大震災
東日本大震災
・個別の派遣費用の国全額
補助(地域活性化本部事務
専門家の役割
・復興基金を活用した専門
局所管)・ただし、市町村の
家派遣
推薦が必要であり、地元住
民の要望に十分応えきれな
かった
現時点での恒久的枠組み
今後の課題
・復興計画策定にあたって、市町村が地元の反対
意見にも耳を傾ける姿勢を持つこと、その意識を
国も市町村に喚起すること・反対意見との通訳の
役割としての専門家の派遣について、市町村の
理解を求めることが重要・国も、例えば、市町村
の推薦がなくとも、学会などの推薦で派遣するこ
とも検討
・復興計画作成段階で、市町村が市街地整備部
局と商工業部局など他部局と十分に調整
産業支援
・貸工業の整備など
・商店街や中小企業のグル
・商業、工業、漁業など、復興段階では私有財産
ープ補助などと市街地整備
に対して全額補助的な支援が行われるが、平時
との連携が不十分
への経営移行という観点では、初期投資が大きく
・例えば、仮設住宅と仮設商
なりすぎ問題が生じるおそれがある
店街も連携してない、
・復興段階でも全額補助ではなく、建物や設備に
ついては無利子融資など、事業採算性を意識し
た支援措置を講じるべき