小麦奨励品種 「シラネコムギ」 について

小麦奨励品種「シラネコムギ」について
1 試験のねらい
栃木県の小麦の奨励品種はこれまで農林61号、フgホコムギ、農林50号の3品種であった。
そして、冬期聞の寒さの厳しい県北部中山間地帯では、’本来適品種とされる農林50号が晩生で
倒伏しやすいことから、県中南部向けの農称61号やフクホコムギが作付られてきた。しかし、
これらの品種は寒害や凍霜害に弱く、収量・品質とも不安定であり、.耐寒・耐凍霜害性の良質・
早生・強秤品種が強く望まれてきた。こうした要望にこたえるため、昭和55年度∼60年度に
かけてこの品種を検討した。
2 試験の経過
未晶種は長野県農事試験場により育成された品種で、昭和44年度に行れ后北陸49号x東海
80号の交配から選抜固定されたものである。本県では昭和55年度より配布を受け、奨励品種
決定調査予傭試験、本試験、現地試験等で各種栽培特性、地域適否を検討してきた。また“粉の
品質にっいては昭和59年産、60年産の収穫物について製粉協会に依頼して評価を行った。
これらの結果、成績が良好であったので、昭和61年度に奨励品種に採用し牟。
3 特 性
(1)形態的特性
叢性(冬の間の草型)はやや葡匂し、成熟期の株は閉じていて穂揃いは極めて良い。程の太
さは農林61号程度の中であり、程質はやや剛に属する。程長は農林61号より短く、穂長及
び穂数は同程度である。粒の形は中、粒の大きさはやや大で、粒色は赤褐色である。千粒寧、
4重は農林61号と同程度かやや重い。
(2)生態的特性
播性程度はWで、茎立性は農林61号より遅く中に属し、凍霜害を受ける危険性は少ない。
出穂期は農林61号より1∼2日遅いが、成熟期は同程度かやや早い。耐寒性、耐雪性・耐凍
上性は農林61号より優っている。また、耐倒伏性も優り強である。穂発芽性は難である。う
どんこ病にはやや強いが、赤さび病、赤かび病については農林61号と同程度である。
13)収量及び品質
収量は農林61号と同程度かやや多収である。外見品質は同程度かやや良い。
粒の硬軟は中、粒質は中間質である。製粉歩留やミリングスコア等の製粉特性や粉の色、小
麦粉生地の特性および製麺適性は総じて農林50号に優り、農林61号と同程度である。
4 普及地帯及び栽培上の留意点
(1)普及地帯は県北部中山問地帯で、普及見込面積は800haである。
(2)耐寒性・耐凍上性は優れるが、適期播種により穂数の確保に留意する・
(3〕多肥で多収の傾向があるので、せき薄地では短桿、穂数減にならないよう施肥等に留意する。
(刎赤さび病、赤かび病にっいては農林61号と同様、強いとはいえないので、うどんこ病とあ
わせて防除に努める。
一1一
表1
生育・収量調査成績
出穂成熟桿長穂長穂数寒 倒赤さうど赤か子実対標4重千粒
試
験
地
本
場
黒
磯
分
場
品種名
ん二 重準比 重外見品質
期 期
月日.月日.㎝㎝本/1㎡害 伏0病病び病Kg/a % 9 ・9、
シラネコムギ 5.6 6,24 95 9.1 501
一1.0 0.8 0.5 1.0 55.8工 111 775 33.0中中
8.9
5..4
6,24 100
505 −3.7 0.7 0.9 2.0 50,4 1007743ユ.7中中∼中下
農林61号
農林50号 5.6 6,26 94 9.2 552 −4.1 1.3 0.4 1.3 52,1 10374025.7下上
−2.2 2.7
フクホコムギ 5.2 6.20 92 9.1 471
0 1.3 54.7 10976231.5中下
シラネコムギ 5,17 7. 1 84
8.54051.0.0.1.0
0 −40.0 112762,37.9上下
0.5 − 35.7
883844.01.3」1.0
5,16 7. 3 89
100.757 372中キ
農林61号
0.5’ 一一 37.3
9.2 438 1.0 1.3 1.0
1047383115下中∼下下
農林50号 5,177.4 86
注1.本場は畑標準昭55」∼60年度平均、ただしフクホコムギは昭57∼60年度平均。
2.黒磯分場は畑標準昭58∼6ρ年度平均。ただし、寒害は59年度の成績で主として12月の降雪
につづく.1月の低温乾燥による凍上害ρ
表一2
幼穂分化程度調査成績
幼程長’
品種名
試験地
シラネコムギ
黒磯分場 農林61号.
市
黒 磯
(木綿畑)
場
本
(標準畑)
幼穂長
農林50号
シラネコムギ
農林61号一
シラネコムギ
農林61号
農林50号
幼穂分化程度
㎜
㎜
6
W一後
1.3
2.2
.44
5
5
25
8’
16
9
1.7
w後㌻㎜
1.4
孤一後
2.1
皿一中
1.8
㎜
1.9
㎜前∼中
1.9
㎜一前
注1.・調査日本場昭和61年4月7目二他は4月4日。
2.’調査方法 各々10個体の主秤にっいて分解調査。
3.黒磯分場の農林61号*印は2個体幼穂凍死。
4.幼穂分化程度 W∼㎜ 小穂分化期 D(∼X頴花分化期
表一3
製粉製麺特性調査成績
製粉特性
品種名
留ミリン
グスコ
%ア
シラネコムギ 66,482.4
農林61号 64石80.6
農林50号 65,083.0
フクホコムギ 651880.3
粉の性状
灰分たん 色 アミロ
製 麹 適.性
合計
色外観 食 感 食妹
(匂い(、、)(2。)術鮒幣協)
白質R46R55グラム
% % % %B.u
0.3711458,373.3638 22.3 14 7,518.8 8−7
0.37 11,0 57,6 72.9 510
17.5 14 7 17.5’ 7 7
点
ゆで
めん
歩留
(1b0)
%
77.6 341
70.0 333
0,33 1ユ.1’57.5 7−32 330
17.5 14 7 17.5 7 7
70.0
0■39 10,1 57,8 72.9 3’35
20−0 「・16 7 17.5 6.5 7
74刀
342
330
注ユ.製粉特性、粉の性状は昭58,59年度本場畑標準栽培における収穫物について製粉協会で分析し
た結果の平均。
2 製麺適性、ゆでめん歩留は上記のうちL59年度1年の成績。
㍗1講簸幾1讐11嶽簸鰭無(蓋ふづ
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