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当院保育プロジェクトの
活動について
甲府共立病院 内科
車谷容子
よろしくお願いします。甲府共立病院の車谷と申します。
今日はこのような機会をいただきまして、大変光栄に思っております。
子育てしながら安心して働き続けるために、というタイトルで、当院の取り組みに
ついてお話しさせていただきたいと思います。
はじめに
 当院では、2005年から女性医師の妊娠・出産
が相次いだことをきっかけに、子育て支援策を
整備してきた。
 当初は女性医師の個々の要望に対応する形で
あったが、2012年からは保育プロジェクトとして
全職種を対象とした活動に拡大した。
 当院の保育プロジェクトの活動のうち、病児保
育と学童保育について紹介する。
保育園の場所
当院の保育体制ですが、こちらが病院で、徒歩3分ほどのところに認可保育園があり、
平日はそこを利用している職員が多いです。
土日祝日は病院から徒歩1分ほどのところにある院内保育園、あたご保育園を利用できます。
ここに病院が見えていますが、院内からも中が覗けるほどの距離にあります。
保育プロジェクト

メンバー:副事務長、副総師長、女性医師、看護師、
総務課担当者

委託保育園:社会福祉法人宮前保育園

取り組み:2012年2月~
子育て中の職員にアンケートをとり、要望を把握して、
できるところから対応
・病児保育 ・学童保育
あたご保育園は、社会福祉法人として様々な保育事業に取り組んでいる保育園に
委託して運営しています。
保育プロジェクトでは、まず子育て中の職員にアンケートをとって要望を把握し、
この保育園と交渉を重ねて、病児保育と学童保育を実現させることとしました。
病児保育
まず、最も要望の多かった病児保育について紹介いたします。
病児保育利用規程(抜粋)
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
目的:病児の保育・看護と保護者の就労の保障
対象:正職員の子ども 生後3ヶ月~小学6年生
定員:3名 2疾患まで(隔離の要否により変動)
インフルエンザやノロなどの感染症も可

場所:あたご保育園、女性医師休憩室など


期間:月~金曜日8時~18時 土曜日8時~14時
費用:70円/1時間 200円/4時間 400円/8時間

昼食は栄養課から提供可(おやつ付500円)
こちらは病児保育の利用規程です。
通常、学童保育の対象は小学3年生までですが、小学校高学年であっても具合が悪い時に家に一
人でおいておくのは心配、との声があり、病児保育の対象は小学6年生までとしました。
疾患はインフルエンザやノロなどの感染症であっても特に制限していませんが、二次感染が起きて
は困るので、定員や保育場所を決めるのに頭を悩ませました。
同じ病原体の感染とわかっている場合は一緒に保育できるので、とりあえず定員は2疾患までとし、
保育場所の選択肢をいくつか作りました。
利用料は通常保育と同じとし、昼食は栄養課と交渉して提供してもらえることになりました。
利用方法

希望者はあらかじめ総務課に登録しておく
(緊急連絡先、成育歴、予防接種、病歴、常用薬、アレルギー、食事制
限等の情報を提出)

小児科医の診察を受け、病児保育の許可を得る(保護者が医師の場
合は保護者の判断でよい)

委託保育園に連絡し、保育を依頼(朝6:30から連絡可能)

指定の時間に指定場所に子どもを預ける
預ける際に昼食の注文書を記入

子どもの具合が悪い時に、保育園に預けて働くことに抵抗がある職員もいるため、利用者は登録制としました。
あらかじめ小児科を受診し、病児保育の許可を得ることとしましたが、保護者が医師の場合は保護者の判断
で可としました。
保育園も栄養課も、当日朝の連絡で迅速に対応してくれることになり、とても利用しやすいものとなりました。
前日夜までは元気だったのに、朝起きたら熱があった・・・よくあることだと思いますが、そこからお弁当を作っ
たり受診に行ったりしていると当然始業時間には間に合いません。
昼食の心配や、特に医師の場合は受診の手間もなくなったので、朝一から仕事が可能となりました。
あたご保育園
こちらはあたご保育園の中の様子です。
旧女性医師休憩室
2疾患となった場合に利用している女性医師休憩室です。
医局の隣にあり、畳なので、利用しやすい場所です。
病児保育利用実績
30
インフルエンザ流行
手足口病流行
25
20
15
10
5
0
これまでの病児保育の利用人数です。今のところ毎月1回以上利用されており、
今年2月はインフルエンザ、8月は手足口病の流行があり、利用人数も回数も多かったです。
延べ利用
人数
病児保育の様子
病児保育の様子です。
この日は風邪から喘息発作が出てしまった兄弟2人の利用でした。
ちょうど昼食の時間で、保育士は布団を干しているところです。
病児保育の様子
学童保育
次に、学童保育について紹介いたします。
これは、私の長女の学校に学童保育がないため、平日はともかく長期休暇中困る、
ということで、2012年の夏につくったものです。
学童保育利用規程(抜粋)
目的:学童の成長と保護者の就労の保障
 対象:正職員の子ども 小学1~6年生 定員10名
 場所:あたご保育園(2014年夏から2階を利用)
 期間:小学校の長期休暇期間 月~金曜日
 時間:8時~18時
 費用:70円/1時間 200円/4時間 400円/8時間
 昼食は栄養課に注文(400円) 弁当持参も可

春・夏・冬の長期休暇中に実施し、小学校1年生から6年生まで利用できるようにしました。
利用料は通常保育と同じです。
昼食は当初はお弁当持参だったのですが、保護者の要望がつよく、栄養課と交渉して提供
してもらえるようにしました。
1日のスケジュール




8:00 保育開始
9:00 学習時間
10:00 自由遊び、水遊び等
11:30 昼食

12:30 園外保育(公園、図書館、科学館、プール、動物園、
ショッピングセンターなど)

16:30 帰園 自由遊び

18:00 保育終了
1日のスケジュールです。
小学生なので、短時間ですが学習の時間を設け、夏休みの宿題や自主学習などを行っています。
保育士の他、看護学生にアルバイトに来てもらい、園外への外出を多く取り入れています。
保護者が共働きだと、夏休みでもあちこち連れて行ってあげられないので、それを補ってくれる外出
企画はとてもありがたいものです。
2012.7/21 開園式
学習時間の様子です。予備校講師の経験を持つ職員にこの時間だけ来てもらい、
みんなで勉強しています。こちらはバイトの看護学生です。
学習支援
学習時間の様子です。予備校講師の経験を持つ職員にこの時間だけ来てもらい、
みんなで勉強しています。
こちらはバイトの看護学生です。
学習連絡帳
ベランダでの水遊び
夏の水遊びの様子です。今年の夏は特に暑かったので、外のプールに行かない
日は、毎日のようにベランダで水遊びをしていました。
修了証
改善してきたところ
 友の会のボランティア→看護学生のアルバイト
ボランティアでなくアルバイトとすることで、責任
をもって保育してもらうとともに、看護学生対策に
もなる。
 弁当持参→栄養課から提供可
保護者からの要望が強く、栄養課の協力を得る
ことができた。希望により弁当持参でもよい。
 園内と近所のみの保育→園外保育
保育士とアルバイト学生の2名体制としたことで
外出可能となり、活動の幅が大きく広がった。
参加者の感想
児童:新しい友達がいっぱいできて楽しかった。
外出が楽しかった。
先生がよかった。
 保護者:学習時間がとてもありがたかった。
子どもの人間関係が広がってよかった。
臨機応変に預かってもらって本当に助かった。
給食がありがたい。
園内外の活動が充実していて、子どもがひとまわり成長した
と感じた。

参加者の感想です。毎回アンケートをとって改善を重ねており、この夏はかなり好評でした。
学童保育利用実績
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
延べ利用
人数
2012夏
冬
春
2013夏
冬
春
2014夏
学童保育の利用人数です。
開園当初からいろいろ改善を重ねる中で、徐々に利用人数が増えてきています。
考察
近年、女性医師が増えており、子育てしながら働き続けられ
る環境づくりは非常に重要な課題となっている。
 子育て支援策を整備することは、男女問わず誰もが働きや
すい職場づくりに重要なことであり、医師や看護師を始めと
する職員獲得のカギでもある。
 今回、病児保育と学童保育を整備したことで、子育て中の
職員にとって働きやすい職場に一歩前進できたと考えられ
る。

近年、女性医師が増えており、子育てしながら働き続けられる環境づくりは非常に重要な課題と
なっています。
女性が働きやすいということは、男女問わず誰もが働きやすい職場につながると思います。
今回、病児保育と学童保育を整備したことで、子育て中の職員にとって働きやすい職場に一歩
前進できたと考えております。
今後の課題
今後も保育プロジェクトとして子育て中の職員の要望をく
み上げ、できるだけフレキシブルに対応し、働きやすい職
場づくりに貢献していきたい。
 次の課題としては夜間保育を考えている。これから看護
師を中心にニーズを聞いていく予定だが、医師にとって
も当直や呼び出しなどの際に利用できると考えられる。
 今のところ当院単独の事業となっているが、他事業所か
らの利用希望も出ている。県連全体の取り組みにしてい
けると、さらに活動の幅が広がるものと考えている。

当院独自のシステムではありますが、病児保育・学童保育を2本柱とした新しい子育て支援策
を軌道に乗せることができました。
今後も保育プロジェクトとして子育て中の職員の要望をくみ上げ、できるだけフレキシブルに
対応し、働きやすい職場づくりに貢献していきたいと考えております。
発表
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


2010.2 山梨民医連学術運動交流集会
2011.10 全日本民医連学術運動交流集会(東京)
2013.2 山梨民医連学術運動交流集会
2013.10 全日本民医連学術運動交流集会(北海道)

2013.12 日本循環器学会第230回関東甲信越地方会男女共
同参画フォーラム

2014.10 看護介護活動研究交流集会指定報告(青森)
まとめです。
プロジェクト発足から1年で、学童保育・病児保育を2本柱とした新しい子育て支援策を軌道に乗せることができ
ました。
特に病児保育については、先日参加してきた日本循環器学会男女共同参画企画でも、「必要だけどなかなか
できていない制度」として議論の中心になっており、当院の取り組みを紹介したところ、とても注目されました。
今後も子育て中の職員の要求をくみ上げ、できるだけフレキシブルに対応して、働きやすい職場づくりに貢献し
ていきたいと考えています。
また、法人内の他事業所との共同の取り組みにしていけると、さらに活動の幅が広がるものと考えています。
おまけ

新南館医局内の女性トイレには、子ども用のいすが
設置されています!
ご清聴ありがとうございました!