PowerPoint プレゼンテーション

光照射による植物病害の防除法の開発
島根大学
生物資源科学部農林生産学科
准教授 上野 誠
研究背景(植物の病気について)
ウイルス
ウイルス
マ
イ
コ
プ
ラ
ズ
マ
カ
ビ
細菌
フ
ァ
イ
ト
プ
ラ
ズ
マ
カ
ビ
細菌
研究背景(植物の病気について)
菌類(カビ)
菌類(カビ)
80%
70%
10%
10%
細菌
Text in here
ウイルス、ウイロイド、ファイトプラズマetc
 植物の病気の80%はカビによって
起こり、カビが植物に感染するこ
とにより被害がおこる
 植物の病気の防除には化学合成農
薬を用いることが多い
化学的防除
耕種的防除
物理的防除
生物的防除
化学合成農薬の使用は耐性菌の発生を招
き、農薬の効果が失われる危険性があり、
これらを解決する必要がある。
研究背景(植物の病気について)
うどんこ病は少なくとも1万種類の植物で感染が確認されている
植物の重大病害の1つである。
従来のうどんこ病の防除法
 化学合成農薬による防除法
うどんこ病の発生状況
平成13年度
平成22年度
平成23年度
平成13年度
平成22年度
平成23年度
平成13年度
平成22年度
平成23年度
キュウリ
発生面積 延防除面積
6063ha
48215ha
3989ha
32816ha
4343ha
31836ha
ナス
発生面積 延防除面積
2535ha
12458ha
1083ha
8927ha
1363ha
6373ha
イチゴ
発生面積 延防除面積
2289ha
26714ha
1978ha
27558ha
1361ha
24300ha
 紫外光を用いた防除法
 ステロール脱メチル化酵素阻害剤やス
トロビルリン系薬剤に対して耐性を示
す耐性菌が出現していることが報告さ
れている(農薬が効かない「うどんこ
病」が発生する)。
 紫外光は直視しないように注意が必要
出典:農薬要覧(日本植物防疫協会)
これまでの研究で明らかにしていたこと
その後の研究で明らかになったこと
(こ
発れ
表ま
者で
に
よに
る明
学ら
会か
発に
表し
・て
論い
文た
等
あこ
りと
)
の今
新回
技発
術表
植物に赤色光を照射することにより、イネいもち病、キュウリ褐斑病、
トマト疫病、ナス黒枯病などの病気が抑制できる。
赤色光照射
自然光
赤色光照射
自然光
しかし、赤色光を照射しても「うどんこ病」を抑制する
ことはできなかった。
近赤外光を照射すると「うどんこ病」を抑制する
ことができることを明らかにした。
近赤外光が「うどんこ病」の抑制に与える影響
キュウリの種をビニール
ポットに播種して、2~3
葉期まで生育させる。
キュウリうどんこ病菌の胞子を
1×10 5 spores/mlに調整して、噴霧
器を用いてキュウリの葉に噴霧接種
噴霧接種後にキュウリを24時間連続点灯の各光波長の下に保つ
白色
赤色光
青色光
近赤外光
噴霧接種1週間後にキュウリ葉でのうどんこ病の発病度を調査
近赤外光が「うどんこ病」の抑制に与える影響
発病度
白色光
赤色光
青色光
近赤外光
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
近赤外光照射により「キュウリうどんこ病」が抑制された。
近赤外光の照射強度が「うどんこ病」の抑制に与える影響
キュウリの種をビニール
ポットに播種して、2~3
葉期まで生育させる。
キュウリうどんこ病菌の胞子を
1×10 5 spores/mlに調整して、噴霧
器を用いてキュウリの葉に噴霧接種
噴霧接種後にキュウリを24時間連続点灯の近赤外光の各光強度の下に保つ
125μW/cm2
77μW/cm2
59μW/cm2
噴霧接種1週間後にキュウリ葉でのうどんこ病の発病度を調査
近赤外光の照射強度が「うどんこ病」の抑制に与える影響
発病度
125μW/cm2
77μW/cm2
59μW/cm2
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
赤外光の光強度が59μW/cm2以上で
「キュウリうどんこ病」が抑制された。
近赤外光の照射が他の植物の「うどんこ病」の抑制に与える影響
カボチャ、メロンの種子をビニールポットに播種して、
2~3葉期まで生育させる。
カボチャ苗
うどんこ病菌の胞子を
1×10 5 spores/mlに調整して、
噴霧器を用いて葉に噴霧接種
メロン苗
うどんこ病菌の胞子を
1×10 5 spores/mlに調整して、
噴霧器を用いて葉に噴霧接種
噴霧接種後に24時間連続点灯の近赤外光( 59μW/cm2 )の下に
カボチャ苗
メロン苗
噴霧接種1週間後に葉でのうどんこ病の発病度を調査
近赤外光の照射が他の植物の「うどんこ病」の抑制に与える影響
カボチャうどんこ病
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
近赤外光
白色光
近赤外光
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
発病度
発病度
白色光
メロンうどんこ病
キュウリうどんこ病だけでなく、カボチャやメロンの
「うどんこ病」も抑制された。
近赤外光の照射時間が「うどんこ病」の抑制に与える影響
キュウリの種をビニール
ポットに播種して、2~3
葉期まで生育させる。
キュウリうどんこ病菌の胞子を
1×10 5 spores/mlに調整して、噴霧
器を用いてキュウリの葉に噴霧接種
噴霧接種後にキュウリを12時間又は24時間連続点灯の
近赤外光( 59μW/cm2 )の下に保つ
24時間連続照射
12時間ごとに照射
噴霧接種1週間後にキュウリ葉でのうどんこ病の発病度を調査
近赤外光の照射時間が「うどんこ病」の抑制に与える影響
発病度
24時間連続照射
12時間ごとに照射
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
近赤外光の24時間連続照射により
「キュウリうどんこ病」が抑制された。
近赤外光(LED)の照射が「うどんこ病」の抑制に与える影響
キュウリの種をビニール
ポットに播種して、2~3
葉期まで生育させる。
キュウリうどんこ病菌の胞子を
1×10 4 spores/mlに調整して、噴霧
器を用いてキュウリの葉に噴霧接種
白色光
近赤外光
近赤外光(パルス照射)
噴霧接種1週間後にキュウリ葉でのうどんこ病の発病度を調査
近赤外光(LED)の照射が「うどんこ病」の抑制に与える影響
白色光
近赤外光
近赤外光(パルス照射)
近赤外光照射(LED:740nm)により、うどんこ病が抑制された
近赤外光(LED)の照射が抵抗性遺伝子の発現に与える影響
白色光
近赤外光(740nm)
キュウリの種をビニール
ポットに播種して、2~3
葉期まで生育させる。
病害遺伝子の発現調査
白色光
PR遺伝子
近赤外光
白色光
近赤外光
胞子
胞子
アクチン
近赤外光照射により、うどんこ病菌に直接的な殺菌作用を示すこと
なく、キュウリに抵抗性を誘導することにより発病が抑制された。
まとめ
 近赤外光の照射により、キュウリ、カボチャ、メロンのうど
んこ病が抑制できた。
 うどんこ病の防除には24時間の連続照射(光強度は59
μW/cm2 以上)が必要であった。
 LED( 740nm )を用いた実験でもうどんこ病の防除は可能で
あったが、パルス照射による効果は低かった。
 LED( 740nm )を照射したキュウリでは、キュウリの病害抵
抗性に関わる抵抗性遺伝子の発現が増加していた。
従来技術とその問題点
環境に配慮した農業に注目が集まり、農薬の使用を
減らした農作物栽培が求めれており、新たな防除法
を開発する必要がある。
過度な農薬散布により、農薬が効かない薬剤耐性菌
が出現する可能性がある。
農業人口の減少や農業者の高齢化に伴い、病害防除
に利用している農薬を散布するための労働力が不足
している。
新技術の特徴・従来技術との比較
従来技術では、赤色光、緑色光及び紫外光(UV-B)の
植物への照射により、植物の病気を抑制できること
が知られていた。
赤色光は、うどんこ病には利用が難しく、防除に利
用可能な光は紫外光(UV-B)のみが知られていた。
新技術では、近赤外光の照射により、植物の病害抵
抗性を高めることにより、うどんこ病を防除できる
ことが明らかになった。
本技術を用いることにより、耐性菌の出現リスクの
減少や農作業の効率化を進めることが期待できる。
想定される用途と業界
農作業効率を高めたハウス・施設栽培
農業資材メーカー
農薬使用を減らした苗生産
苗生産企業
農業用光源の製造・開発

光源製造企業
実用化に向けた課題
病害防除のための効率的な照射時間や照射方法を引
き続き検討し、より効果の高い波長について検討す
る必要がある。
他の病害に対する近赤外光の効果を実証する必要が
ある。
他の波長の光との組み合わせにより幅広い病害抑制
効果を検証する必要がある。
実際の栽培現場での実証試験を行う必要がある。
企業への期待
植物病害防除に最適な照射強度や照射時間をコント
ロールするための光センサー等に関わる企業との共
同研究を希望
照射装置の電源確保のために太陽光発電等に関わる
企業との共同研究を希望
LED、HEFL及び低電力型蛍光灯などの省エネルギー
型の光源開発企業との共同研究による病害防除用の
光源の開発を希望
本技術に関する知的財産権
 発明の名称:青果栽培方法
 出願番号:特願2012-104390
 出願人:国立大学法人島根大学
 発明者:上野誠・木原淳一
問い合わせ先
島根大学研究機構産学連携センター 連携企画推進部門
准教授 丹生 晃隆
T E L :0852-60-2290 FAX:0852-60-2395
e-mail:[email protected]
島根大学研究機構産学連携センター 知的財産創活部門
教授 阿久津 敬治
T E L :0852-60-2290 FAX:0852-60-2395
e-mail:[email protected]