チベット・エベレストBCの山旅 朝日に輝くチョモランマ 8848 m 冒険家

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道標平成16号
MRC創立六〇周年記念
チベット・エベレストBCの山旅
チョモランマBC五、二〇〇mに立って
谷口 俊司
MRC創立六〇周年記念のセレモニーの当日深夜
に関空を発ち、バンコックでトランジット、カトマ
ンズで一晩泊まり翌日チベットのラサに入った。
︵二〇〇七年十月十三日︶
高度順応のためラサで観光中心に、三泊してラウ
ンドクルーザー︵四駆︶で舗装道路四〇%後は物凄
い凸凹道を揺られて、三泊四日して待望の﹁チョモ
ランマBC﹂五、二〇〇mに、殆んど歩くことなく
して到達した。
こう述べてしまうと何とも無味乾燥で、これから
是非行って見たいと、また拙文を読んでいただく方
に失礼に当たるので、道中の出来事や素晴らしいチ
ベットの大自然を織り交ぜながら精一杯の文筆能力
を発揮して綴って見たいと思います。
中国もネパールも政争国難で一触即発
この道標の記事を読まれるころは、北京五輪が無
難に開催されて、苦汁の中で幕引きがなされたのか
どうか疑問と心配が霧散する時期のように思われます。
ダライ・ラマ十四世を中心にしたチベット仏教と、
北京中央政府との対立は、今回の五輪聖火リレーと
更には執筆中に﹁四川大地震﹂が発生して数万人
の犠牲者が報道されています。
中国政府もまさに四面楚歌の﹁大国難﹂で胡錦濤
主席の力量を問われる正念場を迎えた。
他方お隣のネパールでは王制が打破され、連邦共
和制に移行し、選挙で台頭著しい共産党毛沢東主義
派を中心に、内戦も治まり、やっと貧しい農業と観
光立国から脱皮して、産業経済の発展に苦難の道が
開かれるか、問題山積の国内事情である。
冒険家﹁三浦雄一郎さん﹂と会う に変更して、世界最高令七十六歳の登頂を目指して
強い規制に合い、ネパール・カトマンズからの登頂
すというお話でしたが、例の聖火リレーの中国側の
五月にはチベット側からチョモランマ登頂を目指
夜としては最高の前祝いとなった。
た感激で、明日に迫ったチョモランマBCに立つ前
な全員で記念撮影を快諾して頂き、一同天にも昇っ
さんに、シガールホテルでお会いして、ご覧のよう
峰滑降を成し遂げた、プロスキーヤーの三浦雄一郎
界的にも有名なエベレスト大滑降と世界七大陸最高
先ず最初に報告したいことは、何んと言っても世
冒険家「三浦雄一郎さん」と会う
いるとの情報ですが、是非成功して欲しいものであ
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並行して国際世論を巻き込んで、解決に施策を欠き、
底なし沼にはまり込んでいく感じがしてきました。
朝日に輝くチョモランマ 8848 m
道標平成16号
る。今日現在では登頂の素晴らしいニュースは報
道されていない。シーズン的には五月一杯がギリ
ギリである。
ちなみに昨年は登頂成功者は三五〇〇人に達し
たとのことで、今や世界のエベレストも格が落ち
た感さえする。
ラサの街はポタラ宮を筆頭にお寺が中心 ポタラ宮殿はチベット建築の象徴であると共に
かってはダライ・ラマ十四世が居城して、チベツ
ト族から神様仏様と信仰のメッカとなっていた所で
ある。
丘陵に聳える白紅の十三階の建物はまさに重な
ラマ五代目が十七世紀に立てたもので、大小二〇
〇〇の部屋と三十四間の仏殿を、金銀宝石をちり
ばめ、木と石を中心にした建築土木の粋はさすが
に素晴らしい世界遺産である。
今回のチベツト自治区の暴動は僧侶が中心に動
いたと報道されているが、ラサの街には赤橙の法
衣をつけた僧侶が溢れている。
北京や上海の街程でもないが、しかしそれは見
事な整備された近代都市と思われるほどの街に
なっている。
現地の通訳を通しての話であるが、北京政府の
ラサに対する資本投下は物凄く、チベット族優遇
セラ寺の問答中の僧侶達
その事実の裏付けは、地方山間部に入っても輝
思った。
真実はよく分からないが満更嘘でもないように
奉納してしまい、手元にはお金が無いとのこと、
教に対する信仰が厚いため、すぐにお布施として
更にチベット族は生活が苦しくてもチベツト仏
い生活が続くとのこと。
金で酷使され、地方から出てきていれば尚更厳し
れて、労働者に成り切っているとのこと、安い賃
心をなしていて、チベット族は土地も建物も取ら
政策が働いているが、実際は中国漢族が経済の中
よく整備されたラサの町並み
く立派なお寺が林立している、まったくの驚きで
ある。
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る楼閣、広々とした殿堂、輝かしい屋根、ダライ・
燦然と輝くポタラ宮殿はチベットの象徴
道標平成16号
〇六年七月に開業して物凄い人気で、殆んど切
る。
抜四〇〇〇m以上のところを走る超近代鉄道であ
ラサから青海省ゴルムドまで全長一一四二 ㎞海
中国の新幹線 青蔵鉄道は閑散として
これからの高度との闘いが始まることを認識させ
と酸欠でフラフラして、もう酸素の有り難さと、
いきなり超高度に車で登ってきたので、少し動く
触れ、唯々感嘆するのみであった。
秘境のチベットで酸性雨も公害も無い本物の姿に
の大自然に遭遇して、湖の青さ、悠然とした雪山、
尊敬しないではいられない。
も勝利してきたことと思うと、対した先祖の力と
何百年もの変化の激しい大自然と闘い、風水害に
年は遅れていると思われるほどであるが、これで
しかし農耕手法は、それはそれは大昔の一〇〇
けられたが???
広大な田舎は農牧とお寺
が、そのお寺の豪華さは長年の地元からの多大の
途中の観光はお寺の拝観か、市場の見学である
われた。
の写真で見るように、貧しさは感じないように思
で見られたが、衣服は結構な身支度で、子供も右
家族が田畑に出て懸命に耕作している姿が随所
符が手に入らないということであるが、なんとそ
興奮の中でこれからの五日間が体力勝負のチョ
初めて雪山の見えるカムバ峠
ところどころに集落があり、のんびりとした牧歌
モランマの山旅への挑戦である。
高度順応のラサの滞在を終えて、いよいよチョ
的な外見上は裕福な生活が出来ているように見受
した駅前広場と駅舎には驚くのみである。
られた。
江牧の子供たち
のラサ駅に行ってみると、犬猫一匹いない閑散と
手前ヤムドク湖 雪山ニンジンカンサ 7200 m
モランマBCに向けて三台のラウンドクルーザー
で出発し、最初にカムバ峠四七九四mでチベット
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近代的なラサ駅…乗降客は夕方からとか!
道標平成16号
お布施奉納金で、建立され運営されているものと
推察するが、寺院の作りも立派であるが中の仏像
たるや大きさと豪華さには計り知れないものがあ
る。
地域の住民の最大の信仰を支えるチベット仏教
の威力と言いましょうか、今世界を震撼させてい
るイスラム教の信徒の振る舞いにも匹敵するので
はと、無宗教の小生にとってはまだまだ理解しが
たい領域と兜を脱いだテーマである。
ラサの大昭寺も七世紀に建てられ十七世紀に補
修され、数々の仏像を中心に当時の文化の水準の
高さには敬服する。
建物の広さと豪華さ、仏像の大きくて金銀宝石で
飾られている姿は、日本の仏像とは比較にならな
いほど金と時間を掛けた力作である。
砂塵と道なき道のドライブだ
ラサからチョモランマBCまでの七〇〇 ㎞は舗
装道路四〇%で、BCに近づくほど揺れにゆれて
の凸凹道である。
荷物を担いでのトレッキングの方が遥かに益し
であるが、とても距離的に叶うものではない。
皆さんマスクをして完全防備で対応して旅慣れ
をしていて、砂塵も揺れもケセラセラと凄い日本
西蔵江牧…上海から 5000 kmの看板
の老人力に、 ガイドやドライバーの眼にはどう
映っていたのでしょうか???
食事は和風中華の特別食
チベット・ラサ料理も漢族の経営する食堂であ
るため、四川料理に似たとても辛い料理が沢山出
てきました。
最初のうちは食欲も進みましたが、だんだんと
元気が無くなり、FGHのアジュンさんが自ら惣
菜を用意させて、にわかコックで日本人好みの料
理を作ってくれたのには感激、感謝、感涙した。
この特別食がなければ、脱落者が何人かでたの
ではないでしょうか???
チョモランマBC到着後の当日の夜は大変惨め
な宿と食事で、感激もしばしのお預けとなってし
まったが、翌日の夜シャンムでよいホテルと、美
人ママさんのいる料理店で、しっかり食べて飲む
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ギャンツェンの白居寺も写真のように色鮮やか
で、寺院を感じさせない美術的な建物である。
チベット・シャンム打上げパーテ
白居寺…仏像八塔・塔高 32 m・108 座殿
道標平成16号
ことが出来て、一同最高に盛り上がりました。
改めてここにアジュンさんにお礼を申し上げる
と共に、カトマンズに帰ってからのFGHでの家
族総出の接待には感激ひとしお!!
BC到着の感激の文面前に感激の打ち上げ式の一
こまを入れてしまいました。
まぁぁぁ素人のつたない作品ですから御免!
チョモランマ万歳!!バンザイ!!
その時刻八時三十分︵実際は六時半︶気温はマ
イナス十五∼二十度と寒さと酸素の薄い悪条件の
中で、カメラの操作で指先がしびれて凍傷寸前で
あった。
勿論殆んどのカメラはダウンで、人間も酸欠高
山病を恐れて三十分の滞在で、直ぐに下山したが、
記念石の収集も寒さと酸欠で無我夢中の中で拾い
集めた。
︵☆︵笑︶♪︶
いつしか海外の世界の山に興味を持ち、ここに世
界最高峰のBCで迎えた道のりは遠いようでもあ
り、ふと省みれば、もう七〇歳を越えて人生の第
四コーナーに差し掛かっていた。
残念なことにはBC滞在三十分で夕日に輝く雄
姿をゲット出来なかったことと、一番の元気者の
Siさんが途中高山病で下山してしまったことが、
の車の旅、世界最高峰のチョモランマの雄姿を瞼
BCからヤルレ更にはシャンムで中国国境越え
中国国境越えは厳しい監視の眼
返す返すも悔やまれる。
に焼き付けて、ジーンと来る感激に涙したひと時
で税関の厳しい眼が光っていて撮影禁止。
日本を出発して八日目の朝、ラサから七〇〇㎞
であった。
途中でりんごを積んだ大型トラックが山道カー
た。
トラック事故で半日も足留めに遭う
ル側は酷い物で凸凹道の連続で、これには閉口し
い道路が完成するのではと??? しかしネパー
ぎ込み大土木工事が進んでいて、ここ一二年でい
ネパール国境までの中国道路は、相当予算もつ
空しく半日経過してやっと開通した。
ブで脱輪横転寸前の事故で、全員の荷揚げ応援も
山登りを始めて、国内の日本百名山を完登して、
登山家野口健さん撮影HPより借用
夕日に輝くチョモランマの雄姿
チョモランマBC五、二〇〇mだ!
朝日が丁度チョモランマ八、八四八mの頂に当
たり、我々のいるBCは未だ薄暗い筆舌に尽くし
難い神々しい幻想の一瞬でした。
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チョモランマBC 5200 m万歳バンザイ!!
道標平成16号
誰だかわかりますか???
カトマンズ郊外ダクシンカリの奥寺訪問
左から二人三人目アジュンさん親子
中国・ネパール友宜橋
厳しい監視の眼からも望遠レンズでゲットして
国境の﹁友宣の橋﹂を撮影した。
ポカラ宮殿前広場で見事な仮装コンテスト
ラサ空港に到着!ここで海抜 3650 m
全員元気で二〇〇七年十月二十八日朝 帰国
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