の区分法からみた近年の気候変化 Koppen

Koppen の区分法からみた近年の気候変化
梅津
Ⅰ
恵子
はじめに
近年,二酸化炭素濃度の増加に伴う地球の温暖化が進行していが,温暖化に伴って熱の
南北輸送のシステムである大気大循環が変化することが指摘されている。すなわち,地球
温暖化の影響は気温のみに限られるものではなく,降水帯の移動や降水量の変化をも引き
起こすのであって,いわゆる気候の変化を出現せしめると考えられている。そこで本研究
では,世界各地の近年の気候変化の実体を明らかにしようとした。
解析資料は世界の 432 測定局における気象観測資料である。本研究では,はじめに 1980
年平年値を用いて Koppen の方法によって世界各地の気候を区分した上で,1990 年平年値
を用いて気候区分を行い,両者の変化について考察した。次に,これら気候の変化を,降
水量および気温の変化を基にして検討した。
Ⅱ
世界の気候区とその変化
1980 年平年値の気候と 1990 年平年値の気候とで変化がみられたのは 20 地点で,本研
究で解析対象としている 432 地点の 4.6%にあたる(図 1)
。変化した地点の内訳は,BS
気候へ変化したものが 8 地点,Aw 気候へが 4 地点,Cf 気候へが 4 地点,BW 気候へが 2
地点,Af 気候へが 1 地点,Dw 気候へが 1 地点である。地域毎に変化の特徴をみると,ア
フリカで変化のみられた 5 地点は,全て BS 気候への変化である。東南アジアでは赤道付
近で Af 気候から Aw 気候へ変化したものが 2 地点で,冬季に乾燥季を持つ Aw 気候の領
域が拡大している。南アメリカでも 2 地点で AW 気候へ変化しており,冬季に乾燥季を
もつ Aw 気候の領域が拡大している。北アメリカでは Cf 気候地域の周辺部で気候変化が
認められ,Cs 気候から Cf 気候に変化したものが 1 地点,BS 気候から Cf 気候に変化した
ものが 1 地点で,Cf 気候の領域が拡大している。
以上の気候変化がみられた 20 地点における気温と降水量とを検討したところ,気候の
変化が,降水量(およびその年変化)の変化に起因するものが 9 地点,気温の変化に起因
するものが 1 地点,気温と降水量の両者の変化に起因するものが 10 地点であった。この
ように近年の気候の変化は,気温のみならず降水量の変化が密接に関係していることがわ
かった。
Ⅲ
降水量および気温の変化
次に,年降水量・7 月降水量・ 1 月降水量の 1980 年平年値から 1990 年平年値への変化
について検討した。年降水量の変化を図 2 に示した。年降水量が増加した地域はユーラシ
ア大陸・北アメリカ・ブラジルで,逆に減少した地域はアフリカ北部・西ヨーロッパ・オ
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図1
1990年平年値から求めたKoppenの気候区分
四角で示したのは1980年平年値の気候から変化した地点
図2
1990年平年値の年降水量の1980年平年値からの増減
ーストラリア南部である。7 月の降水量は,西ヨ−ロッパ・中国・インド・アフリカの中
央部から北部・ オ−ストラリア西部で減少し,ユ−ラシア大陸の北部・アフリカの南部
では増加している。1 月の降水量は,北アメリカの海岸部・アフリカ・オ−ストラリア東
部で減少し,ユ−ラシア大陸北部・南アメリカの東南部・オ−ストラリア西部では増加し
ている。
緯度圏別に降水量の変化をみると,低緯度を中心として大きな変化が認められる。赤道
から北緯 30 度では降水量は大きく減少している。これに対して,赤道から南緯 20 度では
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降水量は大幅に増加している。特に赤道から南緯 10 度では,65.8mm の増加で,全ての
緯度帯で最も大きな変化が認められる。北半球では 30 ∼ 50 度ではほとんど変化なし, 50
∼ 70 度では増加,70 度以北では微増傾向である。南半球では 20 度以南では降水量が減
少しており,高緯度ほど減少が著しい。このように年降水量の変化は南北両半球で逆傾向
にある。
最後に,気温(年平均気温・7 月平均気温・1 月平均気温)の変化について検討した(図
3)。年平均気温については,西ヨーロッパ・ユーラシア大陸・アフリカ中央部および南部
で上昇し,中国・北アメリカ東部で低下している。7 月平均気温については,アフリカ・
西ヨーロッパ・南アメリカ南東部で上昇し,中国・黒海付近・北アメリカ南東部で低下し
ている。1 月平均気温については,中国・ロシア・カナダ西部・アフリカ南部で上昇し,
北アメリカ南東部・東ヨーロッパで低下している。
図3
1990年平年値の年平均気温の1980年平年値からの増減
緯度圏毎に検討すると,年平均気温では,北緯 50 ∼ 70 度および南緯 20 ∼ 40 度の緯度
帯で比較的大きな気温の上昇が認められる。7 月平均気温では,北緯 60 ∼ 70 度では比較
的大きな気温低下が認められ,年平均気温の上昇とは逆関係である。また北緯 10 ∼ 30 度
では大きな気温の上昇が認められる。1 月平均気温では,北緯 50 ∼ 60 度および南緯 40
∼ 50 度の緯度帯で比較的大きな気温の上昇が認められ,ほぼ年平均気温の変化に対応し
ている。
Ⅳ
まとめ
以上,Koppen の気候区分法を中心として,1980 年平年値から 1990 年平年値にみられ
る気候の変化について検討したが,その結果以下のことが明らかになった。
(1) 1980 年平年値と 1990 年平年値の Keppen の区分法による気候で変化がみられたの
は,本研究で解析対象とした 432 地点の 4.6%にあたる 20 地点である。
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(2)
これら気候変化がみられた 20 地点では,気候の変化が,降水量(およびその年変
化)の変化に起因するものが 9 地点,気温の変化に起因するものが 1 地点,気温と降水量
の両者の変化に起因するものが 10 地点であった。気候変化の内容をみると,湿潤気候か
ら乾燥気候に変化したのが 6 地点で最も多い。
(3)
降水量については低緯度で大きな変化が認められる。赤道∼北緯 30 度では降水量
は大幅に減少しており,これは夏季の降水量の減少によるところが大きい。一方赤道∼南
緯 20 度では大幅な降水量の増加が認められるが,これは夏季の降水量の増加によるとこ
ろが大きい。
(4)
気温については,北緯 50 ∼ 70 度および南緯 20 ∼ 40 度の緯度帯で比較的大きな
気温の上昇が認められる。
三澤研究室 1996 年度卒業論文要旨
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