WP D 「金融サービス、会計及び税制」

 日・EU ビジネス・ラウンドテーブル
日・EU 両政府への提言
【仮 訳/Tentative translation】
2014 年 4 月 8 日~9 日 東京
ワーキング・パーティ D
金融サービス、会計、税制
ワーキング・パーティ・リーダー:
BNP パリバ
特別顧問
ジャン・ルミエール
野村證券株式会社
代表執行役副社長
尾崎 哲
仮訳/ Tentative translation
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)
略称・略語一覧表
略語 意味
FSB Financial Stability Board
金融安定理事会
CFTC US Commodity Future Trading Commission
米国商品先物取引委員会
BCBS Basel Committee on Banking Supervision
バーゼル銀行監督委員会
IOSCO International Organization of Securities Commission
証券監督者国際機構
BEPS Base erosion and profit shifting
税源浸食と利益移転
APA Advance Pricing Agreement
事前確認制度
FTT Financial Transaction Tax
金融取引税
仮訳/Tentative Translation
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はじめに
日本および欧州は持続的な経済成長をとり戻す必要性に迫られている。G20 加盟国
の首脳は、金融セクターにおける信頼性、安定性および透明性を促すため、規制改
革を実施することで合意しており、このような改革の構築および実施に向けたグロ
ーバルでの取り組みは、国際的な整合性を確保するために、金融安定理事会によっ
て厳重にモニタリングされている。これまで提案された規制や健全性政策は、シス
テミックな危機の再発を防止し、説明責任を向上させ、健全な金融セクターが実体
経済活動を下支えすることで最終的には経済の回復に寄与すると期待されている。
各国政府および世界の監督機関が、規制や政策の導入・実施において、また、それ
ぞれ異なった環境や慣行を抱える市場に与える影響を完全かつ累積的に評価する上
で、さらに整合性および効率性を確保する上で、協調的なアプローチを取ることは
必要不可欠である。これらの共通の政策目標は世界的に事業を行う企業にとって効
率的な資源配分と、全ての参加者にとって公平な競争の場を確保することであるた
め、税制等、金融規制の域を超えた分野にも当てはまることである。日本と欧州は
一致団結して現在の厳しい状況を乗り越え、最も効果的に経済回復を達成させるべ
きである。
上述の記載内容は、本提言書内でワーキング・パーティ D が選択した提言項目に反
映されている。
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日本・EU 両産業界からの提言
WP-D / # 01** / EJ to EJ 金融市場改革と金融規制に対する提言
金融市場改革と新規制導入は、その実体経済への影響度を充分に考慮し、特にグロ
ーバルな企業活動や資源の効率的な配分を阻害することのない様に、監督機関によ
る協調が必要である。
< 直近の進捗評価 >
2013 年 7 月、欧州委員会(EC)と米国商品先物取引委員会(CFTC)は、クロスボー
ダーのデリバティブ取引に係る、共通の理解に基づいた取り組み、すなわち、クロ
スボーダー取引にかかる規制の不整合、矛盾、重複を回避すべく、慎重に協力を行
っていくことを表明した。
2013 年 9 月、バーゼル銀行委員会(BCBS)及び証券監督国際機構(IOSCO)は、清算
集中されないデリバティブ取引に係る証拠金規制に関する最終報告が公表され、企
業活動への影響を最小化するため、証拠金対象取引金額に上限が設けられた。
< 背景 >
強固な金融システムの構築のための金融市場改革と新規制導入が進捗しているが、
金融市場と金融業界が持続可能な経済活動とグローバル経済の再生に貢献できるよ
う適切で効果的に設計される必要がある。
欧州および日本の監督当局にとどまらず、金融業界や事業会社などの市場参加者は、
流動性の低下やヘッジコストの上昇などを回避すべく、域外規制を含む米国規制に
対して協調して行動していくべきである。
WP-D / # 02** / EJ to EJ
BEPS行動計画に対する提言
BEPS(Base Erosion And Profit Shifting:税源浸食と利益移転)の行動計画におい
て、企業の国際的な活動を阻害することのないよう、過度な開示要件や租税回避防
止規定は避けるべきである。
<背景>
国際社会で BEPS(Base Erosion And Profit Shifting:税源浸食と利益移転)の問題
が議論されている。OECD はこの問題に取り組むため、行動計画を公表し、7 月の
G20 財務大臣・中央銀行総裁会議で支持を受けた。
経済のグローバル化やデジタル化に対応するために、OECD の非加盟国を含んで、
現行の国際課税制度の見直しを図ることは基本的に意義のあることである。他方、
行動計画は、多国籍企業に対し、関係する全ての政府に必要な税務情報を開示する
ことを求めている。過度なタックス・プランニングとは無縁な企業も含め、一律に
こうした義務が課されれば、事務負担が過剰となるばかりか、かえって二重課税が
発生するおそれもある。また、過度な租税回避防止規定の導入は企業の事業活動を
阻害する。
仮訳/Tentative Translation
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WP-D / # 03* / EJ to EJ
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税制に対する提言
日本と EU 加盟国は、2 カ国間租税条約を見直し、関連会社間の配当、金利、ロ
イヤルティ支払いに対する源泉税を免除し、また移転価格税制適用の際、対応的
調整と仲裁を可能にする規定を導入すべきである。
企業の移転価格税制遵守コストを削減するために、書類要件と解釈を簡素化する
方向で統一するべきである。日本と EU 加盟国間の双務、多国間の APA(事前
確認制度)取得を容易にすべきである。
直接投資を推進するために、事業投資から得られるキャピタルゲインに対し法人
税非課税とする、投資資本参加免税制度導入を検討すべきである。
<直近の進捗状況>
租税条約の見直しについては限定的ながら進捗が見られるが、移転価格税制及び投
資資本参加免税制度についての進捗は見られない。
<背景>
日 EU 間の直接投資を促進するためには、利益に対する二重課税の回避および APA
を含む移転価格税制にかかわる遵守コストを引き下げることは、重要である。
外国投資に関わるリスクに報いるため、事業への投資から得られる受取配当および
売却時の株式譲渡利益を、法人税非課税とする投資資本参加免税制度は、直接投資
を促進するために、一層の効果を期待できる。
WP-D / # 04** / EJ to E 金融取引税に対する提言
欧州委員会が公表した「強化された協力(enhanced cooperation)」の下での金融
取引税(FTT)の導入指令案について、特に広範な金融取引が対象となることおよ
び域外適用の影響に関して引き続き非常に強い懸念を表明する。例えば、指令案で
は居住地原則と発行地原則に基づく一方的な税制の導入を提案しているが、幾重に
も課税されるリスクがある。
もし FTT が導入された場合、取引コストは増加し、ひいては取引量の減少、市場流
動性の低下が発生する。課税対象となる資産の種類が広範であるため、流通市場の
影響を受け資金調達コストが大幅に増加し、さらに、金融市場での企業等による正
当なヘッジ取引に悪影響を与えることになる。流通市場での流動性低下により、最
終的には発行市場へも影響が及ぶ可能性がある。
< 直近の進捗評価 >
本提言に関する進捗はない
< 背景 >
欧州委員会は、2011 年 9 月、少なくとも一方の金融機関が EU に拠点を有する場合、
金融機関間の金融商品取引に対して金融取引税を課す提案を公表したが、EU 全加盟
国での共通した FTT システムの導入は合理的な期間内に達成され得ないとし、導入
を断念している。2013 年 2 月 14 日、欧州委員会は EU 加盟 11 カ国による「強化さ
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れた協力(enhanced cooperation)」の下で、金融取引税の導入を図る指令案を採
用した。
WP-D / # 05** / EJ to J 日本政府の財政健全化に対する提言
日本および世界経済の持続的な成長に資するための国際公約であるプライマリーバ
ランス目標達成に向けた具体策、工程表の早期策定を望む。経済成長による税収増、
社会保障の抜本的改革を含む歳出抑制の具体策を織り込み、2020 年度までの具体的
道筋を示し、財政再建を着実に進めるべきである。
<背景>
財政の健全化は日本経済への信用回復に不可欠であり、世界経済に与える影響も大
きい。継続的なプライマリーバランスの赤字は、金利の急騰や急激な財政緊縮を引
き起こすリスクを抱えており、日本経済に大きな影響を与える。社会保障改革や税
制改革は財政健全化と経済発展の鍵となる。
WP-D / # 06* / EJ to J 海外からの直接投資促進のための税制整備の提言
日本の経済成長のためには、海外の優れた 人材や技術を呼び込み、雇用やイノベー
ションの創出を図るべく、海外からの直接投資を誘致促進することが必要である。
そのためには、ビジネス環境のグローバル化として、法人実効税率の引下げや償却
資産の固定資産税の縮減・廃止などを進めるべきである。
<背景>
少子高齢化が急激に進展している日本経済において、国内企業の再生とともに、海
外からの直接投資による活性化効果に対する期待も大きい。アジアにおける投資先
として魅力ある国とするために、ビジネス環境のインフラの一つとして、税制のイ
コール・フッティング化が欠かせない。
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