「IT人材白書2014」概要 - IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

「IT人材白書2014」概要
2014年4月
独立行政法人情報処理推進機構
IT人材育成本部
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はじめに
「IT人材白書」は、情報処理推進機構(IPA)が年に1度実施している、IT関連産業における人材動
向、産学におけるIT教育等の状況、IT人材個人の意識を把握すること等を目的とした調査の結果を
取りまとめた書籍。本資料は、IT人材に関する白書として6冊目となる「IT人材白書2014」の概要。
刊行している「IT人材白書」とそのタイトル
・IT人材白書2013
(2013年3月)
強みを活かし多様化の波に乗れ ~グローバルIT人材、WEB人材に求められるスキルとは~
・IT人材白書2012
(2012年5月)
行動こそが未来を拓く
・IT人材白書2011
(2011年5月)
未来指向の波を作れ
・IT人材白書2010
(2010年5月)
岐路に立つIT人材
~進むクラウド、動かぬIT人材~
~今、求められる人材のイノベーション~
~変革期こそ飛躍のチャンス~
・IT人材白書2009
(2009年5月)
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2
p.2
1.「IT人材白書2014」の全体構成
2.「IT人材白書2014」のポイント
3.IT業界における課題
4.IT人材の過不足感と人材活用(ダイバーシティ、人材流動)
5.新たな重要分野のIT人材
6.産学連携と実践的教育
7.その他(別途調査結果より)
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p.33
1.「IT人材白書2014」の全体構成
~目次~
 第1部 IT人材の重要性とIT人材白書について
第1章 はじめに
第2章 調査結果のポイントとメッセージ
第3章 わが国のIT人材の全体像
 第2部 IT人材の現状と動向
第1章
第2章
第3章
第4章
IT人材を取り巻く環境変化とIT人材動向
求められるIT人材
IT人材の重視する能力と仕事に対する意識
国家試験の結果に見るわが国のIT利活用力
 第3部 2013年度 調査結果
第1章
第2章
第3章
第4章
IT企業におけるIT人材の動向
ユーザー企業におけるIT人材の動向
教育機関におけるIT人材育成動向
IT人材動向
 第4部 他調査から見るIT人材~特別調査~
第1章 産学連携実践的IT教育の有効性評価
第2章 アジアにおけるIT人材の状況
 第5部 IT人材関連施策
第1章 政府のIT人材施策
第2章 情報処理推進機構(IPA)の施策
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p.44
1.「IT人材白書2014」の全体構成
~実施調査内容~
2013年度実施調査一覧
対
象
企
業
・
教
育
機
関
向
け
概要編中
マーク
調査名
アンケート
方法
IT人材動向調査
(IT企業向け調査)
郵送
IT企業 2,957社
790
IT企業
IT人材動向調査
(ユーザー企業向け調査)
郵送
上場企業(IT企業除く) 2,978社
348
ユーザー企業
IT人材動向調査
郵送
ウェブビジネス企業 974社
123
ウェブ企業
郵送
教育機関(大学院、大学学部、高専、専門学
校)の情報系学科 494学科・専攻
206
教育機関
(ウェブビジネス企業※向け調査)
情報系学生・教育動向調査
(教育機関向け調査)
調査対象
回答数
IT業務に従事するIT人材 計3,014名
IT技術者動向調査
ウェブ
個
人
向
け
他業種動向調査
ウェブ
- IT企業IT技術者
(1,006名)
- ユーザー企業IT技術者 (1,004名)
- 組込み技術者
(503名)
- ウェブ技術者
(501名)
製造業、卸売業・小売業、金融業・保険業、
医療、福祉、情報通信に勤務するIT技術者
以外の人材 1,001名
3,014
IT人材
1,001
(非掲載)
※ 本白書では、「ウェブビジネス」を顧客に対するサービスやサービスを提供する手段としてインターネット及びインターネット関連技術を用いているビジネスと定義している。
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p.55
2.「IT人材白書2014」のポイント
「IT人材白書2014」のメッセージ
「作る」から「創る」へ、「使う」から「活かす」へ
~価値を生み出すプロの力~
調査分析における重点項目
 多重構造からの脱却(ビジネスシフトの課題)/事業ビジョン創造
 グローバル展開・グローバルガバナンスを担う人材育成
 人材の流動性の向上、ダイバーシティ(人材の多様性)の向上
 新たなビジネスを牽引・創造する人材育成
 環境変化に即した技術力の強化(IT融合、情報セキュリティ、アジャイル開発etc.)
◆IT利活用力(リテラシー)調査
・・・・・(ITパスポート試験結果からの分析)
◆CeFIL実践的IT教育修了生の追跡調査
・・・・・(実践的IT教育の成果と課題)
◆アジア共通統一試験((ITPEC)応募者の現状 ・・・・・・(職種、所属企業等の比較)
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6
2.「IT人材白書2014」のポイント
「IT人材白書2014」のメッセージ

グローバル展開や新ビジネスの進展、サービス志向などの多様化するニーズに対して、スピード感
があり、付加価値の高い提案と対応を行うことが求められている。従来型の受託開発に甘んじること
IT企業
なく、強みを活かした事業へのシフトが求められる。
「作る」だけではなく価値を「創る」ためには質の高い人材が不可欠である。人材が自ら学び育って
いける環境の整備や、ダイバーシティや人材流動を意識した人材の活用が不可欠である。

グローバル展開や新ビジネスの進展、IT と事業の融合によって従来の事業分野間の壁が崩壊し、
新たな市場が誕生するなど、企業が置かれた環境は大きく変化している。IT を「使う」だけでなく、
ユーザー企業
事業に「活かす」武器とするとの認識を持った経営が求められる。IT を事業や業務改革に取り込む
目利き力を持つ人材育成が不可欠であり、そのための役割定義を行う必要がある。また、ダイバー
シティや人材流動を意識した人材の活用が必要である。

教育機関
材育成の継続こそが鍵である。

IT人材個人
IT エリート教育(高度ICT 人材育成)は、企業と教育機関の協力の成果であり、着実に効果を上げ
ている。価値創造の担い手として、多様化するIT 環境やニーズに対応した、基礎力と視野を持つ人
多様化するIT 環境やニーズを意識し、専門力を身に付け、新たな価値創造プロセスの担い手とな
れ。今いる会社がすべてではない。視野を広げれば、国内海外問わず先進的な取り組みを行う企業
が見えてくるだろう。自己の未来を拓くため、自ら磨き成長せよ。「価値を生み出すプロの力」は、これ
からのIT を背負うIT 人材に向けたメッセージである。
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7
3.IT業界における課題
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8
3.IT業界における課題
変革の意識を持っているのか
IT企業のビジネスシフトの実態
「IT人材白書2013」より

昨年度の「IT人材白書2013」では、IT企業、ユーザー企業に今後事業(利用)拡大の意向を尋ねた結果として、IT企業で高い割
合となった「システム受託開発」に対して、ユーザー企業は「IDCサービス(ハウジング、ホスティング、Haas・IaaS等)」「Saas・
PaaSサービス」の割合が高いことから、受託開発からITサービス利用へ継続的にシフトしていることを示している。
0%
IT企業
25%
業務改革・システムコンサルティング
IT投資評価・システム監査
50%
ユーザー企業
ハードウェア関連(組込み)ソフトウェア開発
19.0%
IDCサービス(ハウジング、ホスティング、HaaS・IaaS等)
14.4%
ASPサービス(SaaS・PaaS以外)
ASPサービス(SaaS・PaaS以外)
SaaS・PaaSサービス
データベース/専門情報提供
(WEB上で提供されないもの)
12.2%
7.4%
5.5%
5.9%
上記以外
無回答
41.1%
30.3%
40.2%
19.0%
18.1%
12.2%
19.5%
14.6%
WEB上での物品販売/Eコマースサイトの開発・運営
5.7%
14.6%
WEB上での広告配信
2.5%
12.2%
WEBサイト構築(デザイン)・WEBコンテンツ制作受託
13.8%
WEB関連のその他サービスの利用
2.3%
19.0%
3.8%
データベース/専門情報の提供
(WEB上で提供されないもの)
4.4%
6.7%
教育研修サービス
7.1%
技術者派遣
PC/ハードウェア・記憶装置等製造
30.3%
9.9%
その他運用サービス等
(遠隔監視サービス、受託計算サービス等)
上記以外のITアウトソーシングサービス
(ネットワークアウトソーシング等)
ビジネスプロセスアウトソーシング
(コールセンター運営、データ入力等を含む)
情報提供WEBサイトの開発・運営
(各種ポータルサイト、ニュース等)
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、
ソーシャルアプリケーション等の利用
11.2%
教育研修サービス提供
31.8%
SaaS・PaaSサービス
18.4%
WEBサイト構築(デザイン)・WEBコンテンツ制作の請負
20.4%
ハードウェア関連(組込み)ソフトウェア開発
13.3%
14.3%
技術者派遣
17.4%
PC/ハードウェア・記憶装置等製造
0.0%
上記以外
2.0%
17.9%
N=564
主要事業 今後の拡大意向
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無回答
100%
15.7%
パッケージソフトウェアの導入・カスタマイズ
23.4%
75%
12.2%
パッケージソフトウェアの購入
31.0%
IDCサービス(ハウジング、ホスティング、HaaS・IaaS等)
50%
16.9%
システム受託開発
49.3%
パッケージソフトウェア導入・カスタマイズ
WEB上でのその他サービス提供
業務改革・システムコンサルティング
システムインテグレーション
30.1%
パッケージソフトウェア開発・販売
WEB上での広告販売・提供
25%
IT投資評価・システム監査
5.3%
システム受託開発
WEB上での物品販売/Eコマースサイトの運営
0%
100%
27.1%
システムインテグレーション
その他運用サービス等
(遠隔監視サービス、受託計算サービス等)
上記以外のITアウトソーシングサービス
(ネットワークアウトソーシング等)
ビジネスプロセスアウトソーシング
(コールセンター運営、データ入力等を含む)
情報提供WEBサイトの運営
(各種ポータルサイト・ニュース等の提供)
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、
ソーシャルアプリケーション等の提供
75%
6.7%
4.4%
0.3%
26.8%
N=343
利用の拡大を考えているもの
9
3.IT業界における課題
変革の意識を持っているのか


IT企業のビジネスシフトの実態
「IT人材白書2014」では、ユーザー企業のサービス化へのシフトが進む中でIT企業がどのように捉えているか、より深堀して分
析した結果を示す。
ユーザー企業においては、クラウドサービスなどの「サービス利用」が着実に拡大している一方で、IT企業における受託開発(開
発・運用・SI)の割合が依然として高く、IT企業における今後の新規/拡大予定(ユーザー企業は利用予定)の事業内容(枠A、
枠B)でも、IT企業とユーザー企業でギャップがある。
IT企業
ユーザー企業
IT企業とユーザー企業の今後3年間の新規/拡大予定の事業内容
(枠A) IT企業で新規/拡大予定傾向の強い事業 (枠B)ユーザー企業で今後利用ニーズの高い事業
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3.IT業界における課題
変革の意識を持っているのか
IT企業のビジネスシフトの実態

今年度の調査にあたって、受託開発を実施するIT企業を「従来型受託開発」と「提案型受託開発」に分けて分析する(表1)。
「従来型受託開発」は、自社の強みを発揮し難く、厳しい価格競争に晒される可能性が高い。そのため、今後、自社の強みを活か
した「提案型受託開発」や、「その他のサービスビジネス」への変化の実態を調査する。

現在、何らかの形で「従来型受託開発」を実施している割合は7割に上るが、この中で「従来型受託開発」以外の「提案型受託開
発」、「その他」を今後は拡大していきたいとする企業の割合は高い。

IT企業では、将来拡大予定として「従来型受託開発」からは脱却し、自社の強みを活かした「提案型受託開発」や「その他サービ
スビジネス」へシフトする意向が確認できる。
(表1) 受託開発の型
従来型
IT企業
提案型
従来型
受託開発
従来型&提案型
受託開発
“発注者の意向に沿う形の再委託もある”形態の受託開発
“自社が得意な技術・業務分野を生かした”受託開発
提案型
受託開発
70.8%
IT企業の受託開発実施企業の将来拡大予定
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11
3.IT業界における課題
変革の意識を持っているのか
IT企業のビジネスシフトの実態

次に、“従来型の受託開発以外の事業実施の現状”について、受託開発の売上に占める「一次請け比率」の階層別で分析すると 、
一次請け比率の低い(0-20%)、二次請けなどを中心とする企業では、一次請け比率の高い階層と比べて、「提案型」や「その他
サービスビジネス」などの「従来型の受託開発以外の事業実施の計画はあるが、実行できていない」とする企業の割合は高い
(35.9%)(①)。

また、“従来型の受託開発以外の事業実施の現状”について、「事業を実施しておらず、検討をしていない」と回答した企業(赤塗
箇所の回答群)の検討していない理由として、「新たな事業に係る投資ができない」の割合が多く、特に一次請け比率の高い(80100%)企業では、「必要性を感じていない」と回答する企業の割合(53.4%)が高い(②)。
「ビジネスシフト」とは
IT人材白書2014では、「受託開発を行う
IT企業における事業内容の変化」と定義
IT企業
1
低
高
低
2
高
従来型受託開発以外の事業実施状況【IT企業】
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3.IT業界における課題
変革の意識を持っているのか
IT企業のビジネスシフトの実態

“従来型受託開発以外の事業を実施する人材育成”の状況については、一次請け比率に関わらず「検討を行っていない」と回答
する企業の割合が高い。その理由は、一次請け比率に関わらず「ビジネスモデルを具体化できていない」と答えた割合が突出し
て高い。

ビジネスモデルを確立していなければ、求められる人材像も見えてこない。そのため、人材育成への着手も困難になっているもの
と考えられ、事業の継続・発展に欠かせない競争力の源泉である人材を育成するためには、経営者としての明確なビジョンが求
められる。
IT企業
低
高
低
高
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13
3.IT業界における課題
変革の意識を持っているのか
(参考情報)
IT企業のビジネスシフトの実態
IT企業
<IT企業の売上に占める受託開発の比率>
従業員規模別
(一次請け、一次請け以外(二次請けなど)をすべて含む比率)

従業員規模100名以下の企業では、「売上比率0-20%」の企業が3割強。

従業員規模101名以上の企業では、「売上比率0-20%」は1割5分~2割強。

なお、受託開発の売上比率が「80-100%」を占める企業は、その割合は企
業規模による傾向は見られない。
低
高
IT企業の売上における受託開発比率 【従業員規模別】
IT企業
<受託開発を行う人材育成状況の比較>
(従来型・提案型別)
 「従来型受託開発」のみを実施している企業は、提案型のみを実施する企業
に比べ、「人材が活躍できる場を与えている」とする企業が少ないのは当然
の傾向ではあるが、「人材育成の検討を行っていない」とする企業の割合も
相対的に高く、人材育成に関しては、従来型のみの受託開発企業は着手に
至っていない状況であると言える。
従来型と提案型の受託開発を行う人材育成状況の比較 【IT企業】
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3.IT業界における課題
世界で戦えるIT人材に求められるもの
グローバル動向

企業活動のグローバル化が進行する中で、IT人材においてもグローバルへの対応が欠かせなくなっている。IT企業、ユーザー
企業に対して、グローバル展開状況とグローバルIT人材に求められる能力について尋ねた結果を示す。

ユーザー企業の約7割が海外での事業活動を実施と回答。ITに関するグローバルマネジメントは、「戦略策定・企画」を除き、
本社(国内)ではなく、各地域での実施が中心である。

IT企業は、各サービスはいずれも海外展開実績が10%以下だが、今後、拡大の兆しあり。
IT企業
ユーザー企業
ユーザー企業の海外事業活動実施状況
海外展開実績と計画
IT関連マネジメントの国内・海外の役割分担
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15
3.IT業界における課題
世界で戦えるIT人材に求められるもの
グローバル動向

ユーザー企業は、IT企業に比べて、「質」「量」とも不足していると答えた企業の割合が高く、IT企業には「量」の不足を挙げる
企業の割合が高い。

「グローバルIT人材」に普遍的に求められる能力は、「コミュニケーション力」「語学力」(基本能力)であると言えるが、特徴的な
相違点は、ユーザー企業の「海外現地拠点の業務に関する知識」と「リーダーシップ」、IT企業の「技術力」である(業務別適応
能力)。

相違点の前者はITを活用した業務の効率化や改革を行うために必要であり、後者はIT人材に普遍的に求められる能力であると
同時に、グローバル化の流れの中でも武器になる。
「グローバルIT人材」の人材像
IT企業
ユーザー企業
IT企業
海外展開実施を担うリーダー人材
IT業務のグローバル化を担うリーダー人材
ユーザー企業
グローバルIT人材の「質」と「量」の確保状況
グローバルIT人材に対して求める知識や能力の比較
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4.IT人材の過不足感と人材活用(ダイバーシティ、人材流動)
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4.IT人材の過不足感と人材活用(ダイバーシティ、人材流動)
IT人材の「量」の過不足感

IT企業の量的な人材の不足感は、「大幅に不足している、「やや不足している」は過去5年間、年々増加傾向にある。「大幅に
不足している」については、2012年度調査(前回)から約7ポイントも増加している。

ユーザー企業は変化が見られないが、「やや不足している」まで含めると、過去5年間は高い水準の不足感で推移している。
IT企業
ユーザー企業
ユーザー企業のIT人材の「量」に対する過不足感【過去5年間の変化】
IT企業のIT人材の「量」に対する過不足感【過去5年間の変化】
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4.IT人材の過不足感と人材活用(ダイバーシティ、人材流動)
人材の多様化による強みは何か
ダイバーシティ(多様性)マネジメントの現状
 人材不足に対する対策の一つとして、ダイバーシティ(多様性)の推進がある。その現状を把握するため、IT企業に対し、IT人
材における女性比率を尋ねた結果を示す。
 女性比率別に見た、IT企業の人材の不足感は以下の通り。女性比率の高い企業は「大幅に不足している」の割合が少ない
傾向にある。このことから、女性の人材活用は、人材確保に一定の成果をもたらしていると思われる。
IT企業
IT企業における人材の不足感 【女性比率別】
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4.IT人材の過不足感と人材活用(ダイバーシティ、人材流動)
人材の多様化による強みは何か
ダイバーシティ(多様性)マネジメントの現状
IT企業
 さらに、IT企業の事業内容別に女性比率を調査
したところ、事業内容によって、女性比率に違い
があることがわかる。
 女性比率が高い事業内容には、「IDCサービス
(ハウジング、ホスティング等)」、「パッケージソ
フトウェア開発・販売」、「パッケージソフトウェア
導入・カスタマイズ」、「ウェブサイト構築(デザイ
ン)・ウェブコンテンツ制作の請負」などがある。
 一方、「開発、運用、SI」や「技術者等の人材派
遣」など、従来型の事業を事業内容とする企業
では、女性比率が低い。
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IT企業の女性比率【事業内容別】
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4.IT人材の過不足感と人材活用(ダイバーシティ、人材流動)
人材の多様化による強みは何か

ダイバーシティマネジメント(多様性)の現状
2010年度調査と比較して、企業のダイバーシティの取組みに大きな変化は見られないが、企業やIT人材が考える今後、ダイバー
シティを推進するための課題は、「当事者自身(女性、外国人)の意識・能力」から、「経営層の意識」や「勤務先の支援・サポート制
度」へと変化している。
2013年度
2010年度
IT企業
IT人材
女性社員の活動躍進における重要な課題とダイバーシティ推進の課題
(上段:IT企業、下段:IT企業IT技術者)
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4.IT人材の過不足感と人材活用(ダイバーシティ、人材流動)
IT人材を如何に確保するか
IT人材の流動の実態

IT人材数に占める中途採用したIT人材数の割合から推計して、IT企業、ユーザー企業において年間で約3万8千人(3.5%)のIT
人材数規模で流動していると推定される。

中途採用したIT人材の直前の勤務先は、IT企業、ユーザー企業ともに「IT企業」の割合が最も高く、同業も含めて、企業はIT企業
に属する人材を多く獲得している。

事業戦略に沿って必要となる人材を確保するためには、新卒採用による中長期的な人材育成とともに、適材適所の人材配置が
必要となり、社内および社外からの人材の流動を高めることが求められる。また、人材流動により様々なバックグラウンドを有す
る人材が集まることで、ダイバーシティが生まれ、新たなビジネスを創出へとつながっていく可能性がある。
IT企業
ユーザー企業
2012年度に中途採用した人材数÷IT人材数 (a)
中途採用(キャリア採用)
の割合
ウェブ企業
中途採用された
IT人材推計数
「IT人材白書2014」
IT人材推計数 (b)
(a)×(b)
IT企業
(N=754)
3.4%
819,000人
28,000人
ユーザー企業(IT部門)
(N=321)
3.6%
276,000人
10,000人
ウェブビジネス企業
(N=105)
27.1%
-
-
1,095,000人
38,000人
合計
中途採用したIT人材の
最も多い直前の勤務先
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5.新たな重要分野のIT人材
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5.新たな重要分野のIT人材
猛スピードで変化する
ウェブ業界で働くということ
ウェブビジネス動向とウェブ技術者

ウェブビジネスに携わるIT人材(インターネット専門職) と既存のIT人材(SE) の求人倍率の比較を下記に示す。転職市場におい
て、「SE」の求人倍率は大きな伸びはないが、インターネット専門職の求人倍率は、2010年と比較して約5.1倍と増加し続けている。

ウェブビジネス企業において人材不足を感じている事業内容は「スマートホン・タブレットアプリ開発」「ウェブビジネスコンサルティ
ング、データ分析」「ウェブサイト構築(デザイン)・ウェブコンテンツ制作の請負」が突出して高い。
ウェブ企業
インターネット専門職とSE求人倍率の比較
(株)リクルートキャリア社内調べ 有効求人人数÷有効登録者数(2013年7月現在)
現在実施している事業のうち人材不足を感じている事業
【ウェブビジネス企業】
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5.新たな重要分野のIT人材
猛スピードで変化する
ウェブ業界で働くということ

ウェブビジネス動向とウェブ技術者
新しいビジネス領域であり技術の変化も早い。他のIT人材と比較すると、ウェブビジネスの人材に求められる能力は、「データ解
析(統計)」や「発想力・企画力」、「スピード感」など、ウェブビジネスの特徴を踏まえた「技術力・人間力」を備えた人材育成が必
要と考えられる。
能力区分
ウェブ企業
IT企業
ユーザー企業
今後拡大を予定しているIT人材で重視する「技術力」
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技術力
知識、スキル
人間力(コンピテンシー)
行動特性、社会・対人関係、自己制御等
今後拡大を予定しているIT人材で重視する「人間力」
25
5.新たな重要分野のIT人材
今、求められているIT人材の役割とスキル
IT融合人材
(新事業・新サービスを創出する人材)

「新事業・新サービスを創出する人材」の必要性については、IT企業、ユーザー企業ともに認識はしている(必要性で「はい」が
7割以上)が、人材の確保ができていない。

その育成が進まない理由として、IT 企業、ユーザー企業ともに「人材育成に係る投資ができない」という回答が最も多い。また、
「育成を行う場がない」と回答した割合が、IT 企業、ユーザー企業ともに第2 位となっている。
IT企業
「IT融合人材」とは
2013年度に「IT 融合人材育成連絡会」が設置され、“イノベーションを創出し新事業・新
サービスを生み出す人材”を「IT 融合人材」と位置付け、育成のあり方について議論された。
そこでは「実践的学習の場」の必要性とともに組織の成功体験に基づく固定観念や前例
主義的な価値観など阻害要因の排除の取り組みが重要とされている。
ユーザー企業
「新事業・新サービスを創出する人材」の必要性と確保状況
「新事業・新サービスを創出する人材」の育成が進まない理由
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26
5.新たな重要分野のIT人材
高度化する脅威に対抗できるか

情報セキュリティ人材
企業における情報セキュリティ関連分野での関心事は、日々、メディア等で注目されるウイルスやサイバー攻撃等のいわゆる
「攻撃」の脅威よりも、IT企業及びユーザー企業ともに、セキュリティポリシー、監査、ISMS等の「セキュリティマネジメント(運用・
体制)」が高い結果となっている。
IT企業
情報セキュリティにおける
関心事
ユーザー企業
情報セキュリティにおける
関心事
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27
5.新たな重要分野のIT人材
高度化する脅威に対抗できるか
情報セキュリティ人材
IT企業

情報セキュリティ人材の育成状況は、IT企
業では、「継続的に実施し、活躍できる場
がある」と「育成計画に基づき、着手してい
る」を含めると5割に達するが、残り半数が
実行できていない、又は未検討としている。

ユーザー企業は「検討していない」の割合
が高く、従業員規模別では、1000名以下
の企業では「検討していない」が半数を超
えているなど、情報セキュリティ人材の育
成には殆ど取り組めていないことがわかる。
情報セキュリティ人材育成の取り組み状況
ユーザー企業
「情報セキュリティ人材」とは
IT人材白書2014においては、ITSS(ITスキル標準)とUISS(ユーザー
スキル標準)に定義されている、IT企業やユーザー企業の情報システ
ム部門のIT人材であり、他社に情報サービスを提供する者を指す。
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5.新たな重要分野のIT人材
アジャイル型開発における人材の特徴
開発手法

ウェブビジネスにおいては、要件の変化に柔軟に対応しながら、インターネット販売サイトやSNSなどのウェブシステムの構
築・サービス提供を迅速に行うため、「非ウォーターフォール型」が比較的高い割合で採用されているものと考えられる。

アジャイル型は会社にノウハウが蓄積されていないため、実務や研修で身に着けられず、学習方法としては「独学」が中心と
なっている。
IT人材
最もよく使用する活用手法
開発手法を学習した場所【使用する開発手法別】
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6.産学連携と実践的教育
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6.産学連携と実践的教育
産学連携と実践的教育

情報系学生・教育動向調査 (教育機関向け調査)
教育機関と産業界が今後人材に求める(重視する)能力は、「アプリケーション技術」、「コミュニケーション力」「問題解決力」など
技術力・人間力のいずれでも上位は共通。教育機関の技術力では「統計・アルゴリズム等の基礎理論」や「ソフトウェア工学」がIT
企業に比べて上位にあり、基礎力も重視していることがわかる。
教育機関
IT企業
教育機関と産業界が重視する能力比較 【技術力】
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教育機関と産業界が重視する能力比較 【人間力】
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6.産学連携と実践的教育
産学連携と実践的教育
情報系学生・教育動向調査 (教育機関向け調査)

情報系学科における教育の最終目標としている人材のタイプはやや異なる。大学院・大学学部では、「将来産業界で活躍できる
高度技術系人材の輩出」の割合が高いが、高等専門学校では「将来グローバルに活躍できる人材の輩出」の割合が非常に高い。

実践的科目の実施形態は、「グループ演習」による実践的教育を実施するケースが多く見られる。PBL(Project Based Learning)
が広く普及してきているが、効果的なPBL の実施には適切な指導を行えるチュータや、その補助を行うティーチングアシスタントが
必要であり、その育成が今後の課題と考えられる。
教育機関
実践的科目の実施形態 【教育機関別】
教育の最終目標としている人材のタイプ 【教育機関別】
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6.産学連携と実践的教育
実践的IT教育の有効性
産学連携と実践的教育
(NPO法人高度情報通信人材育成支援センター(CeFIL)追跡調査

CeFILでは、産学連携による大学院の「高度ICT人材育成コース」の修了生の企業入社後の活動内容等について追跡調査を行
なっており、調査報告の結果から抜粋して紹介する。

「修了生」と「同期・同世代」との相対比較では、現在の勤務先上司からは、すべての評価分類において「修了生」が上回る評価
を得ている。
教育機関
ソフトウェア工学関連知識
5
自律エンジン
4
要求分析/システム設計/開発関連知識
3
2
1
技術者基礎力・社会人基礎力
プロジェクト管理、開発管理関連知識
評価
修了生
同期・同世代
同期
業務遂行能力
ITのスキル
ビジネスや業界動向などへの関心
修了生の上司評価 (同期・同世代との相対的評価)
(1. 2 ←劣る
[3:同期・同世代のレベル]
優れる→ 4. 5)
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7.その他(別調査結果より)
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7.その他(別調査結果より)
わが国の「IT利活用力」の実態
「ITパスポート試験」結果に基づく分析

高度なIT人材として、“ITを業務やビジネスに活かすことができる人材”に求められるスキルについて、ITパスポート試験の結果
(社会人)から、勤務先別・地域別・年代別など「IT利活用力」の実態を分析。

勤務先別では、社会人全体と比較して「教育・研究機関」や「製造業」の平均スコアが高い。
※本分析では、「社会人」のIT利活用力を示すため、属性が「学生」の試験結果を含んでいない
勤務先名
スコア
総合
ストラテジ
マネジメント
テクノロジ
教育・研究機関
667
632
640
633
製造業
651
621
631
605
医療・福祉業
639
603
624
589
金融・保険業、不動産業
638
625
631
564
調査業、広告業
633
609
614
573
官公庁、公益団体
632
592
611
589
卸売・小売業、飲食店
630
603
603
579
電気・ガス・熱・水道業
630
591
611
584
ソフトウェア業
625
572
609
589
建設業
620
584
597
570
農業、林業、漁業、鉱業
619
585
593
567
運輸・通信業
615
580
588
570
情報処理・提供サービス業
610
559
590
569
コンピュータ製造・販売業
604
556
568
568
サービス業
596
551
566
554
総計
618
576
595
575
勤務先別 社会人平均スコア
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=分野別上位3業種
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7.その他(別調査結果より)
わが国の「IT利活用力」の実態
「ITパスポート試験」結果に基づく分析

地域別では、社会人の全国平均(618)と比較して、以下の 7都府県の平均スコアが統計的に高い。

年代別では、19歳以下の社会人の平均総合スコアは、他の年代と比べると低く、20歳~24歳とは約60 点の差がある。また、20
代後半で平均的な社会人のスコア(618)に達し、30 代でピークを迎えた後、徐々に低下傾向となっている。
※本分析では、「社会人」のIT利活用力を示すため、属性が「学生」の試験結果を含んでいない
スコア
都道府県名
641
石川県
640
長野県
636
滋賀県
633
京都府
626
兵庫県
626
東京都
625
愛知県
社会人
平均スコア
※
※
都道府県別 社会人平均スコア
(全国平均より統計的に高い県)
年代別 社会人平均スコア(総合スコア)
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7.その他(別調査結果より)
アジアにおけるIT人材の状況
アジア共通統一試験データ

アジア共通統一試験の応募者データを基にアジアにおけるIT人材の状況を概観する。

アジア各国の試験応募者の勤務先別に見えるとおり、ミャンマーやフィリピン以外は「学生」が中心である。

また、業務別割合では、日本と関係を持つ企業で働いているIT技術者が多いフィリピン、ベトナム、ミャンマーについては、応募
者の主な職種は「プログラム開発」である。
「アジア共通統一試験 (IT Professionals Examination)」とは
毎年4月と10月の年2回、日本の基本情報技術者試験相当、ITパスポート試験
相当の試験を実施。共通統一試験を通じて共通の尺度で受験者を評価し、
相互に合格者の認定を実施。実施国は、フィリピン、タイ、ベトナム、ミャンマー、
マレーシア及びモンゴルの6か国。
アジア共通統一試験応募者(基本情報技術者試験)勤務先別割合
アジア共通統一試験応募者(基本情報技術者試験)業務別割合
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「IT人材白書2014」について
(IPAウェブサイト)
URL:http://www.ipa.go.jp/jinzai/jigyou/about.html
<本資料に関するお問い合わせ先>
IPA IT人材育成本部 IT人材育成企画部
Tel: 03-5978-7506 Fax: 03-5978-7516 E-mail: [email protected]
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