U.S.GAAP と IFRS の コンバージェンスの変遷(2)

立正経営論集 第46巻 第2号(2014年3月)
U.S.GAAP と IFRS の
コンバージェンスの変遷(2)
榊 原 英 夫
Ⅰ はじめに
Ⅱ ノーウォーク合意(2002年10月)~
MoU のアップデート(2008年4月)
⑴ FASBとIASBによるノーウォーク合意(2002年10月)
⑵ FASBとIASBによる MoU(2006年2月)
⑶ MoU のアップデート(2008年4月)
(以上、前号・第 46 巻 1 号)
Ⅲ FASBとIASBによる共同声明 ( 2009年11月 ) ~
ワーク・プランの更新(2013年9月)
⑴ FASBとIASBによる共同声明 ( 2009年11月 )
⑵ コンバージェンスに関する四半期進捗報告書
(2010年4月~2011年4月 )
⑶ ワーク・プランの更新とコンバージェンスに関する進捗報告書
(2011年6月~2013年9月)
Ⅳ むすび
(以上、本号・第 46 巻 2 号)
1
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Ⅲ FASB と IASB による共同声明 ( 2009年 11 月 ) ~
ワーク・プランの更新(2013年9月)
本節では、FASB と IASB による共同声明 (2009 年 11 月 ) からワーク・プラ
ンの更新(2013 年 9 月)までにおける、IASB と FASB によるコンバージェン
スの変遷を① FASB と IASB による共同声明 (2009 年 11 月 )、②コンバージェ
ンスに関する四半期進捗報告書(2010 年 4 月~ 2011 年 4 月 )、③ワーク・プ
ランの更新とコンバージェンスに関する進捗報告書
(2011 年 6 月~ 2013 年 9 月)
に分けて、説明する。
⑴ FASB と IASB の共同声明
IASB と FASB
([1],p.1)
は、
2009 年 10 月の共同会議において、
IFRS と U.S.GAAP
を改善し、それらのコンバージェンスを達成する約束を再確認し、2006 年の
MoU(2008 年に更新 ) において提示された主要な共同プロジェクトを完成する
取り組みに集中することに合意した共同声明を発表した。この共同声明は、
MoU に関する主要なプロジェクトを完成するための計画(各プロジェクトに
とってのマイルストーンの目標が含まれている)
について説明している。また、
この共同声明([1],p.1)において、次の 2 つの重要な事項が提示されている。
① IASB と FASB は、2011 年 6 月末までに主要な各プロジェクトの完成を目
指している。IASB と FASB は、この目標とする日付(2011 年 6 月末まで)を
設定するにあたり、有力な数カ国が 2011 年に IFRS を採用する予定であるとの
事実、また、米国を含む他の諸国が、それらの資本市場における IFRS の役割
を決定するさいに、継続的な改善およびコンバージェンスを十分斟酌している
との事実を考慮した。
② IASB と FASB は、上記のマイルストーンに関する透明性と説明責任を提
供するために、コンバージェンス・プロジェクトに関する四半期進捗報告書を
作成し、これらの報告書をウェッブ上で入手できることを約束した。これにつ
いては、(2)「コンバージェンスに関する四半期進捗報告」において詳しく説
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明する。
IASB および FASB([1],p.4)は、この共同声明において 、 次の①から⑩のプ
ロジェクトの適時な完成を確保するための日程を決定し、
その戦略を展開した。
①金融商品、②連結,③認識の中止、④公正価値測定、⑤収益認識、⑥リース、
⑦資本の特質を有する金融商品、⑧財務諸表の表示などの各プロジェクト、⑨
その他の MoU プロジェクト(ジョイント・ベンチャー、退職後給付、法人所
得税)、⑩その他のプロジェクト(概念フレームワーク、
排出権取引、
保険契約 )。
IASB および FASB([1],pp.7-15)
)は、
この共同声明の付録 A(「MoU プロジェ
クト完成へ向けての道筋」
)
において、
「各プロジェクトにとってのマイルストー
ンの目標」を以下の表①から表⑩のように提示している。
表①金融商品プロジェクト
公表予定期日
マイルストーン目標
2009 年 11 月
IASB は、予想キャッシュ・フローを基礎としたモデルが提案され
ている、金融資産の減損に関する公開草案を公表した。
IASB は、金融資産の分類および測定を扱っている、新 IFRS の第
1 部を公表するであろう。
2010 年
第 1 四半期
IASB は、2010 年 6 月末をコメント期限とする、金融資産および
負債のヘッジに関する最初の提案を公表するであろう。
IASB は、2010 年 6 月末をコメント期限とする、金融負債の分類
および測定に関する最初の提案に対する変更を公表するであろう。
(IASB は、2009 年 7 月に金融負債の分類および測定にとっての提案
を公表したが、金融商品プロジェクトの第 1 フェイズの範囲に金融
負債を含めないことを決定した)。
FASB は、2010 年 6 月末をコメント期限とする、分類および測定、
減損、ヘッジを含む包括的な提案を公表するであろう。その提案の
一環として、FASB は、(資産と負債の両方の)認識、測定、減損お
よびヘッジについての IASB の提案に関する見解を求めるであろう。
IASB も、FASB の包括的な公開草案に関する見解についての要望
書を公表するであろう。
2010 年
第 2 四半期
IASB は、当該要求事項を早期適用している企業による金融資産の
分類および測定についての要求事項の適用をレビューするであろう。
2010 年
第 4 四半期
両審議会は、最終基準を公表する予定である。
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表②連結プロジェクト
公表予定期日
マイルストーン目標
2010 年
第 2 四半期
FASB は、連結に関する公開草案を公表する予定である。
IASB は、最終基準案についてのスタッフによる草案を入手可能に
し、FASB の提案に関する見解についての要望書も公表するであろ
う。
2010 年
第 3 四半期
IASB と FASB は、すべてのタイプの企業に適用される、コンバー
ジェンスされた連結に関する最終基準を公表することを目指してい
る。
表③認識の中止プロジェクト
公表予定期日
マイルストーンの目標
2010 年
第 2 四半期
IASB と FASB は、修正された U.S.GAAP の要求事項の適用を基礎
として、U.S.GAAP と IFRS の差異を評価するであろう。
2010 年
第 2 四半期
IASB と FASB は、IASB がこれまでの四半期にわたって開発して
きているであろう、支配を基礎とした認識の中止のモデルに関する
適合性を共同で検討するであろう。
表④公正価値測定プロジェクト
公表予定期日
マイルストーン目標
2009 年 11 月
IASB は、FASB と協力して、アジア、欧州および北米において「公
正価値測定」に関する公開円卓会議を開催するであろう。
2010 年
第 1 四半期
両審議会は、IASB の公開草案に関して受け取ったコメントを共同
で検討するであろう。
2010 年
第 1 四半期
FASB は、「公正価値測定」に対する要求事項を改善し、当該要求
事項が IFRS 案と調和していることを確保するために、U.S.GAAP に
ついての何らかの修正を提案することが必要かどうかを決定するで
あろう。
2010 年
第 3 四半期
(必要ならば)FASB の公開草案に対する公開コメント期間の終了
後、両審議会は共同で問題点を審議するであろう。IASB は、「公正
価値測定」に関する最終基準を公表する予定である。FASB は、必
要な場合、U.S.GAAP に対する何らかの関連する修正を完了するで
あろう。
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表⑤収益の認識プロジェクト
公表予定期日
マイルストーン目標
2009 年
第 4 四半期
両審議会は、さまざまなタイプの取引に対するモデルを評価する
ために異なる業界代表と一連のワークショップを実施するであろう。
2010 年
第 2 四半期
IASB と FASB は、収益の認識に関する公開草案を公表する予定で
ある。
2011 年
第 2 四半期
IASB と FASB は、「収益の認識」に関する最終基準を公表するこ
とを目指している。
表⑥リース・プロジェクト
公表予定期日
マイルストーン目標
2010 年
第 2 四半期
IASB と FASB は、貸手および借手の観点から、リース会計を提案
する公開草案を共同で公表するであろう。
2011 年
第 2 四半期
IASB と FASB は、リース会計に関する最終基準を共同で公表する
ことを目指している。
表⑦資本の特徴を有する金融商品プロジェクト
公表予定期日
マイルストーン目標
2009 年 12 月
両審議会は、合同会議で識別されたアプローチの実行可能性を共
同で検討するであろう。
両審議会は、より詳細なマイルストーンの目標を含めた、計画を
更新するであろう。両審議会は、2011 年の中ごろまでに本プロジェ
クトを完了することを目指している。
2010 年 1 月
表⑧財務諸表の表示プロジェクト
公表予定期日
2010 年
第 1 四半期
マイルストーン目標
IASB と FASB は、単一の包括利益計算書以外においてその他の包
括利益項目を表示する、企業による選択肢の削除を提案する公開草
案を公表する予定である。
FASB は、非継続事業についての IFRS の定義を適用する提案を公
表する予定である。
2010 年
第 2 四半期
IASB と FASB の両審議会は、「財務諸表の表示」に関する公開草
案を公表する予定である。
FASB は、非継続事業の IFRS の定義を適用する修正を完了するこ
とを目指している。
2010 年
第 3 四半期
IASB と FASB は、単一の計算書において包括利益を表示すること
を企業に求める修正を完了することを目指している。
2011 年
第 2 四半期
IASB と FASB は、「財務諸表の表示」に関する最終基準を公表す
ることを目指している。
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表⑨その他の MoU プロジェクト
(1) ジョイント・ベンチャー・マイルストーン目標
IASB は、今後数か月以内に、「ジョイント・ベンチャー」を含むジョイント・
アレンジメントについての財務報告を改善するであろう基準を公表する予定であ
る。
(2) 退職後給付・マイルストーン目標
IASB は、2010 年初めに公開草案を公表し、2011 年の中頃までに改善を完了する
予定である。
(3) 法人所得税・マイルストーン目標
両審議会は、本プロジェクトを現在の形式で進めるべきではないことに合意した。
IASB は、11 月に , 限定された範囲の改善プロジェクトの一環として、IAS 第 12
号「法人所得税」の局面を扱うかべきか否かを検討する。
表⑩その他の共同プロジェクト
(1) 概念フレームワーク・マイルストーン目標
財務報告の「目的および質的特性」を扱う、フレームワークの初めの2つの章は、
2009 年末頃に公表される。
両審議会は、「報告実体」を扱う章についての公開草案も共同で公表する予定で
ある。
(2) 排出権取引・マイルストーン目標
両審議会は、このプロジェクトに関して共同で作業を実施してきており、2010
年に共同で公開草案を公表する予定である。両審議会は、2011 年の中頃に共同の
基準を公表することを目指している。
(3) 保険契約・マイルストーン目標
両審議会は、このプロジェクトを検討し始め、2011 年中頃までに共同の基準の
発行を目指して、2010 年第 2 四半期に公開草案を共同で公表する予定である。
⑵ コンバージェンスに関する四半期進捗報告書
(2010 年 4 月・6 月・11 月および 2011 年 4 月 )
前述したように、2009 年 10 月の共同声明において、IASB と FASB は、IFRS
と U.S.GAAP を改善し、それらのコンバージェンスを達成する約束を再確認
し、2006 年の MoU(2008 年に更新された ) において提示された主要な共同プロ
ジェクトを完成する取り組みに集中することに合意した。そのうえで、IASB
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と FASB は、これらのマイルストーンに関する透明性と説明責任を提供する
ために、コンバージェンス・プロジェクトに関する四半期進捗報告書を作成
し、これらの報告書をウエッブ上で入手できることを約束した。以下において、
2010 年4月、6 月、11 月および2011年4月に発表された4つの四半期
進捗報告書について説明する。
1)第1回四半期進捗報告書(2010 年 4 月 )
本報告書([2],p.1)は、2010 年 3 月 31 日までの共同四半期進捗報告書であ
る。IASB と FASB は、2010 年 3 月 31 日時点で、2010 年の第一四半期にとっ
てのすべてのマイルストーン目標を実質的に達成した。また、
本報告書
([2],p.1)
によれば、2010 年第 2 四半期に公表が予定された公開草案は、その質および
数(FASB 関しては 11( 主要なプロジェクトに関して 8 つ )・IASB に関して
は 11( 主要なプロジェクトに関して 7 つ ))の点で重要である 。 したがって、
IASB と FASB は、公開草案の変更の程度および複雑性に見合ったコメント期
間を用意するであろうと指摘されている 。
本報告書([2],p.2)は、その内容を次の3つのパートに分けて提示している。
第一のパート(作業方法の改善)は、2011 年 6 月の目標期日までに共同プ
ロジェクトの完成を促進するための作業方法の変更を説明している。本報告書
([2],p.2)によれば 、IASB および FASB は、作業方法の改善のため、①ワーク・
プログラムの集中審議、②重要な問題に取り組むための特別会議の積極的な開
催日程、③両審議会の絶え間ない審議日程、④利害関係者に対するプロジェク
トに関するアウトリーチの強化について作業方法を変更した。
第二のパート(コンバージェンス・プロジェクトの更新)は、2009 年 11 月
の報告(共同声明)以降各プロジェクトに関して実施された進展および更新さ
れたマイルストーン目標を説明している。
第三のパート(2011 年の第 2 回四半期に予定されている公表資料)は、
FASB と IASB が MoU の完成との関連で公表する予定であるすべての資料につ
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いての完全なリストと予定さている公表日程である。
以下において、本報告書の第二のパートにおける各プロジェクトにとっての
マイルストーン目標と第三のパートを中心に説明する。
ⅰ
( ) 各プロジェクトにとってのマイルストーン目標
本報告書([2],pp.3-10)によれば、①金融商品のプロジェクトから⑩その他
の共同プロジェクトまでの各プロジェクトにとってのマイルストーン目標が、
次のように説明されている。
①金融商品・プロジェクト
公表予定期日
マイルストーン目標
2010 年
第 2 四半期
IASB は、このプロジェクトの特定のパートを促進する要求に応
えて、各フェイズにおける金融商品についての改善された財務報
告の要求事項を開発してきた。次のフェイズにおいて、IASB は、
金融商品負債の分類および測定についての提案を以前計画した 3
月までではなく、4 月に公表するであろう(IASB は、2009 年 7 月
に金融商品負債の分類および測定についての提案を公表した。し
かし、金融商品負債を金融商品のプロジェクトの第一フェイズの
範囲に含めないことを決定した)
。
FASB は、
以前計画した 3 月までではなく、
2010 年 5 月の第 1 週に、
金融商品の分類および測定、減損、ヘッジを含む包括的提案を公
表する予定である。その提案の一環として、FASB は、
(資産およ
び負債の両方の)認識および測定と減損についての IASB による提
案に関する見解を強く求めるであろう。IASB は、FASB の包括的
公開草案に関する見解に対する要求事項を公表するであろう。
11 月以降、IASB は、ヘッジ会計に取り組むプロジェクトのフェ
イズにおいて、非金融ヘッジを含むことを決定した。結果として、
IASB は、
(当初計画された 3 月までではなく、
)2010 年半ばにヘッ
ジ会計に関する最初の提案を公表するであろう 。
第 3 四半期
両審議会は、両審議会による様々な各提案に関して受理したコ
メントレターおよびその他のフィードバックを共同で検討し始め
るであろう 。
2010 年
第 4 四半期
/2011 年
第 1 四半期
両審議会は、受理したフィードバックについての共同協議を完
了し、新要求事項を完成し、発行する予定である 。
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②連結・プロジェクト
公表予定期日
マイルストーン目標
2010 年
第 2 四半期
IASB は、企業が支配はしていないが、支援してきた、または企
業が特別の関係を有している証券化および投資ビークルズについ
て要求されるディスクロージャーを完成し、公表する予定である。
IASB は、以前は、2010 年の第 4 四半期に、このディスクロージャー
要求事項を公表する予定であった。
FASB は、変動持分企業の連結に大きな影響を与えると予想され
ない連結に関する包括的公開草案を公表する予定である。FASB は、
以前は、2010 年第 1 四半期に、包括的公開草案を公表する予定であっ
た。
IASB は、その提案された基準についてのスタッフによる草案を
入手可能なものにするであろう。また、IASB は、FASB による提
案に関する見解に対する要求を公表するであろう。
2010 年
第 4 四半期
または
2011 年
第 2 四半期
IASB と FASB は、すべての企業タイプを含む連結に関する共通
基準の発行を目指している。
③認識の中止・プロジェクト
公表予定期日
2010 年
第 2 四半期
マイルストーン目標
IASB スタッフは、金融資産および負債についての認識の中止に
とってのモデル案を FASB に提示するであろう。
両審議会は、それらの計画に関するさらなる詳細およびこのプ
ロジェクトにとってのマイルストーン目標を開発し、提供するで
あろう。
④公正価値の測定・プロジェクト
公表予定期日
マイルストーン目標
2010 年
第 2 四半期
FASB は , 公正価値の測定の要求事項を改善し、IFRS 案とのコン
バージェンスを達成するであろう、公正価値の測定の要求事項に
対する修正案についての公開草案を発行する予定である。この公
開草案は、以前、第 1 四半期に発行する予定であった。
2010 年
第 3 四半期
FASB は、公正価値の測定について提案された公開草案を検討す
るための公開円卓会議を開催する予定である。
2010 年
第 4 四半期
FASB の公開草案にとっての公開コメント期間終了後、両審議会
は、第 4 四半期において共通基準を発行することを目標に、共同
で問題点を協議するであろう。
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⑤収益の認識・プロジェクト
公表予定期日
マイルストーン目標
2010 年
第 2 四半期
IASB と FASB は、各要求事項を改善し、コンバージェンスを達
成するであろう公開草案を公表する予定である。
2011 年
第 2 四半期
IASB と FASB は、改善された共通基準の発行を目指している。
⑥リース・プロジェクト
公表予定期日
2010 年
第 2 四半期
2011 年
第 2 四半期
マイルストーン目標
IASB と FASB は、レッサーおよびレッシーの観点から、リース
会計を提案した公開草案を公表するであろう。
IASB と FASB は、改善された共通基準の発行を目指している。
⑦持分の特徴を有する金融商品・プロジェクト
公表予定期日
2010 年
第 2 四半期
2011 年
第 2 四半期
マイルストーン目標
IASB と FASB は、持分として分類される金融商品と資産または
負債として分類される金融商品を識別するために提案された要求
事項についての公開草案を公表する予定である。この公開草案は、
120 日のコメント期間を有するであろう。
両審議会は、改善された共通基準の発行を目指している。
⑧財務諸表の表示・プロジェクト
公表予定期日
マイルストーン目標
2010 年
第 2 四半期
IASB と FASB は、4 月にその他の包括利益項目を財務諸表にど
のように表示するかに対する改善を提案する公開草案(3 月に公開
草案と呼ばれた以前の報告書)を公表する予定である。
FASB と IASB は、4 月に非継続事業の定義に関する要求事項を
結びつけ、関連するディスクロージャー要求事項を改善するであ
ろう公開草案(3 月に公開草案と呼ばれた以前の報告書)を公表す
る予定である。
IASB と FASB は、5 ヶ月のコメント期間付で、財務諸表の表示
に関する公開草案を公表する予定である。
2010 年
第 4 四半期
IASB と FASB は、非継続事業の報告に関する要求事項に対する
改訂を完成することを目指している。
2011 年
第 1 四半期
IASB と FASB は、その他の包括利益項目を財務諸表にどのよう
に表示するかに対する改善を完成することを目指している。
2011 年
第 2 四半期
IASB と FASB は、財務諸表の表示に関する改善された共通の基
準を発行することを目指している。
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U.S.GAAP と IFRS のコンバージェンスの変遷(2)
⑨その他の MoU プロジェクト ⑨ -1 ジョイント・
ベンチャー・
プロジェクト
⑨ -2 退職後給付・
プロジェクト
マイルストーン目標
IASB は、2010 年 6 月に新要求事項を完成する予定である 。 それ
には、ジョイント・ベンチャーに対する比例連結を利用する可能
性の除去が含まれている。
マイルストーン目標
IASB は、2008 年 3 月に公表された討論資料に関して受理した
コメントをレビューした後、定義された給付義務および計画資産
における変更の認識および表示に対する改善に焦点を当てている。
回廊アプローチの除去および改訂されたディスクロージャーにつ
いての要求事項を含む提案が、4 月に公表されるであろう 。
⑩その他共同プロジェクト
⑩ -1
マイルストーン目標
概念フレーム
IASB は、2010 年の第 1 四半期に、「企業実体」を扱った章につ
ワーク・
いての公開草案を共同で公表した。
プロジェクト
⑩ -2 排出量取引・
プロジェクト
⑩ -3 保険契約・
プロジェクト
マイルストーン目標
両審議会は、このプロジェクトに関して共同で作業をしてきた。
両審議会は、2010 年に、共通の基準を発行することを目指した共
同の公開草案を公表する予定である 。
マイルストーン目標
両審議会は、2010 年の第 2 四半期に、公開草案を共同で公表す
るとのマイルストーン目標を有していたが、マイルストーン目標
の本質および時期は、両審議会が差異を調整する取り組みの結果
次第で、変更されるであろう 。
ⅱ
( ) 公表予定であるすべての資料についての完全なリストと予定されている公
表日程
第 1 回四半期進捗報告書([2],pp.11-13)によれば、公表予定であるすべて
の資料についての完全なリストと予定されている公表日程が、次のように提示
されている。
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< 2010 年 4 月から 2011 年 12 月までの資料の公表日程>
2010
Q2
①金融商品
Q3
2011
Q4
Q1
Q2
H2
IASB 提案:負債の分類および測定
ED
(5 月)
IFRS
IASB 提案:ヘッジ
ED
(6 月)
IFRS
FASB:包括的提案(IASB 提案に関 ED
するコメントに対する要求を含む)(5 月)
最終
基準
IASB:FASB 提 案 に 関 す る 見 解 に DP
対する要求
(4 月)
②連結
IASB:証券化および投資ビークル IFRS
に関するディスクロージャー
(6 月)
FASB:変動持分企業の連結に大き ED
な影響を与えることが予定されな (3 月)
い連結に関する包括的基準につい
ての公開草案
最終
基準
IASB:基準案についてのスタッフ
の草案および FASB 提案に関する
見解に対する要求
IFRS
5月
③認識の中止
IASB 提案:時期が決定されるであ
ろう
FASB 提案:時期が決定されるであ
ろう
④公正価値測定
FASB 提案:要求事項を改善するた ED
めの変更および IASB 基準案とのコ (5 月)
ンバージェンス
IASB:最終 IFRS
⑤収益の認識
IASB 提案:包括的基準
FASB 提案:包括的基準
最終
基準
IFRS
ED
(5 月)
IFRS
ED
(5 月)
最終
基準
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U.S.GAAP と IFRS のコンバージェンスの変遷(2)
< 2010 年 4 月から 2011 年 12 月までの資料の公表日程>
2010
Q2
Q3
⑥リース
2011
Q4
Q1
Q2
H2
IASB 提案:包括的基準
ED
(6 月)
IFRS
FASB 提案:包括的基準
ED
(6 月)
最終
基準
IASB 提案:包括的基準
ED
(6 月)
IFRS
FASB 提案:包括的基準
ED
(6 月)
最終
基準
⑦持分の特徴を有する金融商品
⑧財務諸表の表示
IASB:包括的利益の報告
ED
(4 月)
IASB:非継続企業についてのディ ED
スクロージャー
(4 月)
IFRS
IFRS
IASB:主要基準、IAS1 および IAS7 ED
の取り替え
(5 月)
FASB:包括的利益の報告
ED
(4 月)
IFRS
最終
基準
FASB:非継続企業についてのディ ED
スクロージャー
(4 月)
FASB:包括的基準
ED
(5 月)
最終
基準
⑨その他の MoU プロジェクト
ジョイント・ベンチャー:IASB の
み
年金会計:IASB のみ
IFRS
(6 月)
ED
(4 月)
IFRS
⑩その他の共同プロジェクト
排出量取引- IASB および FASB 時
期が決定されるであろう
保険契約- IASB および FASB
ED
(6 月)
最終
基準
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2)第 2 回四半期進捗報告書(2010 年 6 月 )
IASB と FASB により、2010 年 6 月 2 日に発表された共同声明「コンバージェ
ンス作業に関する共同声明」
([3],p.1)によれば、第 1 回の四半期進捗報告書
の公表以来、2010 年の第 2 四半期に公表が予定されている主要なほとんどの
公開草案に対して、高品質の提案が提出できるか否かについて多くの利害関係
者から懸念が示されてきた。
このため、IASB と FASB([4], pp.2-3)は、第 2 回四半期進捗報告書におい
て次のような事項を考慮した修正ワーク・プランを展開した。
① IASB と FASB は、IFRS と U.S.GAAP の重要な改善とコンバージェンスを
もたらすであろうと考えられる問題およびプロジェクトに集中できるように、
MoU における主要なプロジェクトに優先権を与えた。IASB と FASB は、金融
商品、収益の認識、リース、その他の包括利益および公正価値の測定に関する
共同プロジェクトに優先権を与えた。
② IASB と FASB は、公開草案の公表および関連協議(たとえば、公開円卓
会議)を調整している。それらによって、IASB と FASB の基準の質にとって
極めて重要であるデュー・プロセスに広い範囲からのかつ有効的な利害関係者
の参加が可能になる。IASB と FASB は、1 四半期に発行される重要なまたは複
雑な公開草案の数を 4 つに限定している。
③ IASB と FASB は、発効日および移行方法について、利害関係者の情報を
求める独立した協議資料を発行するであろう。
第 2 回四半期進捗報告書の付録([4],pp.5-15)において、IASB および FASB
の戦略および計画と 2010 年 5 月 31 日時点での (a) 主要な MoU プロジェクト
および (b) 他の共同プロジェクトにとってのマイルストーンの目標が以下のよ
うに説明されている。
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U.S.GAAP と IFRS のコンバージェンスの変遷(2)
⒜ MoU プロジェクトにとってのマイルストーン目標
①連結・プロジェクト
公表予定期日
マイルストーン目標
2010 年
第 3 四半期
FASB は、IASB により提案された連結基準を米国の利害関係者と
議論するために公開円卓会議を開催する予定である。
2010 年
第 4 四半期
IASB は、現行の U.S.GAAP と調整するために、投資会社に関する
連結要求事項に対する変更案についての公開草案を公表する予定で
ある。FASB は、投資会社に関する完全にコンバージェンスした基
準を達成するために、必要なものとして、U.S.GAAP に対する改訂
公開草案を発行するであろう。
IASB は、2010 年末までに、連結基準(組成された企業について
の改善されたディスクロージャーを含む)を完成し、公表する予定
である。この基準は、IFRS または U.S.GAAP を適用する企業により、
組成された企業 (structured entity) について同じ連結意思決定をもた
らすと予想されている。
FASB は、米国の利害関係者からの情報を検討し、IASB により公
表された要求事項(議決権株による持分企業に関する両基準の差異
を除く)と調和した公開草案に着手するか否かを決定するであろう。
2011 年
第 2 四半期
IASB と FASB は、投資会社の連結に関する改善され、コンバージェ
ンスされた基準を公表する予定である。
②認識の中止・プロジェクト
公表予定期日
マイルストーン目標
2010 年
第 3 四半期
IASB は、2009 年に公表されたディスクロージャーの要求事項を
完成する予定である。それは、最近改訂された U.S.GAAP 要求事項
に類似している
2012 年
FASB は、改訂された認識の中止の要求事項の適用についての施
行後レビューを終了させるであろう。
IASB と FASB は、さらなる改善とコンバージェンスの取り組みの
質と範囲について意思決定するであろう。
③デリバティブおよびその他の金融商品についての相殺表示・プロジェクト
公表予定期日
2010 年
第 4 四半期
2011 年
第 1 四半期
2011 年
第 2 四半期
マイルストーン目標
両審議会は、デリバティブおよびその他の金融商品についての
相殺表示に関するコンバージェンスされた要求事項と関連ディスク
ロージャーについての公開草案を公表する予定である。
両審議会は、公開円卓会議を開催する予定である。
両審議会は、金融商品の基準に対する変更を完了するのと同時に
このトピックスに関する改善され、コンバージェンスされた基準を
公表する予定である。
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④金融商品・プロジェクト
公表予定期日
マイルストーン目標
2010 年
第 3 四半期
IASB は、ヘッジ会計に関する提案を公表する予定である(以前は
2010 年第 2 四半期に予定されていた)。
2010 年
第 4 四半期
FASB は、 利 害 関 係 者 と の 公 開 円 卓 会 議 を 開 催 す る で あ ろ う。
IASB もその会議に参加するであろう。
2011 年
第 2 四半期
両審議会は、受理したフィードバックについての共同協議を完了
し、新基準を完成し、発行する予定である(以前は 2011 年第 1 四半
期に予定されていた)。
⑤- 1 その他の包括利益についての財務諸表の表示・プロジェクト
公表予定期日
2010 年
第 4 四半期
マイルストーン目標
IASB と FASB は、改善され、コンバージェンスされた基準の完成
を目指している。
⑤- 2 主要なプロジェクトについての財務諸表の表示・プロジェクト
公表予定期日
マイルストーン目標
2010 年
第 3 四半期
IASB と FASB は、拡大した利害関係者のアウトリーチ活動の基礎
として、これまでになされた暫定的意思決定を反映する基準案につ
いてのスタッフ公開草案をウェブサイトに公表する予定である。
2010 年
第 4 四半期
両審議会とスタッフは、拡大した利害関係者のアウトリーチプロ
グラムを完成するであろう。
2011 年
第 1 四半期
IASB と FASB は、包括利益基準についての公開草案を公表する予
定である。
2011 年
第 3 四半期
2011 年
第 4 四半期
両審議会は、公開円卓会議を開催する予定である。
IASB と FASB は、改善され、コンバージェンスされた基準を発行
することを目指している。
⑤- 3 非継続事業についての財務諸表の表示・プロジェクト
公表予定期日
マイルストーン目標
2011 年
第 1 四半期
IASB と FASB は、非継続事業のコンバージェンスされた定義につ
いての公開草案および関連ディスクロージャーを公表する予定である。
2011 年
第 4 四半期
IASB と FASB は、改善され、コンバージェンスされた基準を発行
することを目指している。
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U.S.GAAP と IFRS のコンバージェンスの変遷(2)
⑥資本の特徴を有する金融商品・プロジェクト
公表予定期日
2011 年
第 1 四半期
2011 年
第 3 四半期
2011 年
第 4 四半期
マイルストーン目標
IASB と FASB は、持分として分類される金融商品と資産としてま
たは負債として分類される金融商品を識別するための要求事項案に
ついての公開草案を公表する予定である。
両審議会は、公開円卓会議を開催する予定である。
両審議会は、改善され、コンバージェンスされた基準を公表する
予定である。
⑦リース・プロジェクト
公表予定期日
2010 年
第 3 四半期
2010 年
第 4 四半期
2011 年
第 2 四半期
マイルストーン目標
IASB と FASB は、貸手および借手の観点から、リース会計を提案
する公開草案を公表する予定である。
両審議会は、公開円卓会議を開催する予定である。
IASB と FASB は、改善され、コンバージェンスされた基準を発行
する予定である。
⑧公正価値測定・プロジェクト
公表予定期日
マイルストーン目標
2010 年
第 2 四半期
FASB は、公正価値の定義に対する軽微な改訂についての公開草
案と IFRS 案とのコンバージェンスを達成するための関連実務指針を
発行する予定である。IASB もまた、追加的な利害関係者情報を収集
するためにディスクロージャーに関する問題を再公開する予定である。
2011 年
第 1 四半期
両審議会は、コンバージェンスされた最終基準を発行する予定で
ある。
⑨収益の認識・プロジェクト
公表予定期日
2010 年
第 2 四半期
2010 年
第 4 四半期
2011 年
第 2 四半期
マイルストーン目標
IASB および FASB は、各要求事項を改善し、コンバージェンスを
達成するであろう公開草案を公表する予定である。
両審議会は、公開円卓会議を開催するであろう。
IASB と FASB は、改善され、コンバージェンスされた基準を発行
することを目指している。
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⑩退職後給付・プロジェクトのマイルストーン目標 IASB は、2010 年 4 月に、U.S.GAAP の最近の修正と同様、退職後給付義務の報
告のオフバランスを許容する規定を除去することにより報告を改善するであろう
修正案についての公開草案を公表した。コメントの締め切りは、2010 年 9 月であ
る 。IASB は、2011 年の第 1 四半期に改訂基準を公表する予定である。
⒝ 他の共同プロジェクトのマイルストーン目標
①保険契約・プロジェクトのマイルストーン目標
IASB は、2010 年の第 3 四半期(7 月)に公開草案を公表する予定である。これ
らの異なる見解に照らして、FASB は、7 月に IASB の提案に関する利害関係者の
情報を入手するための最善の手段(たとえば、公開草案としてそれを公開するこ
とによって、または、別の方法によって)を決定する予定である。
②排出量取引・プロジェクトのマイルストーン目標
両審議会は、5 月に、その他の MoU プロジェクトが、高い優先性を持つことに
合意した。両審議会は、現在、2011 年の第 2 四半期に、2012 年にコンバージェン
スされた基準を発行する目標を持って、公開草案を公表する予定である。
3)第 3 回四半期進捗報告書
本報告書([5],p.1)は、2010 年 11 月 29 日に発行された第 3 回四半期進捗
報告書であり、発行日現在のワーク・プランの状況を反映している。IASB と
FASB([5],p.2)は、本報告書において、6 月の報告書(第 2 回四半期進捗報告
書)において定めた優先プロジェクトを再確認した。また、IASB と FASB は、
目標期日(2011 年 6 月)までに優先プロジェクトを完成するための最良な状
態になるように、その他のプロジェクトにとっての戦略および計画を次のよう
に修正した。
① IASB と FASB は、2011 年 6 月まで4つのプロジェクト(財務諸表の表示、
資本の特質を有する金融商品、排出権取引および概念フレームワークの
報告実体フェイズ)の実質的審議を繰り延べることを決定した。
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U.S.GAAP と IFRS のコンバージェンスの変遷(2)
② IASB と FASB は、投資会社の連結が、2011 年 6 月までの優先プロジェク
トではない点で合意した。この共同プロジェクトの完成目標は、2011 年
末までである。
③ FASB および IASB は、また、いくつかの独立した基準設定プロジェクト
(たとえば、FASB の偶発事象に関するディスクロージャーおよび IAS37
「引当金、偶発債務および偶発資産」および IASB の年次改善)に関する
審議を繰り延べた。
スタッフは、
高い優先プロジェクトを再度割り当てた。
第 3 回四半期進捗報告書([5],pp.4-17)は、その付録において、2011 年 6 月
という目標期日における (a) 優先プロジェクト(①金融商品、②リース,③収
益認識、④連結、⑤公正価値測定、⑥認識の中止、⑦保険契約)および (b) そ
の他のプロジェクト(①退職後給付、②ジョイント ・ ベンチャー、③財務諸表
の表示、④資本の特質を有する金融商品、⑤排出権取引 ) についての審議会に
よる戦略、計画およびマイルストーン目標を次のように提示している。
⒜ 優先プロジェクト
①金融商品・プロジェクト
①-1 金融商品の分類および測定、減損、ヘッジ会計・プロジェクト
< IASB プロジェクトの説明>
IASB は、2010 年の第4四半期において、一般的なヘッジ会計に対する要求事項
案についての公開草案を公表する予定である 。IASB は、また、2011 年第1四半期
の初期に減損会計にとっての再公開草案を公表する予定である。IASB は、2011 年
6月 30 日までにこれらの改善を完了する予定である。
< FASB のプロジェクトの説明>
FASB は、2010 年 5 月に、分類および測定、減損、ヘッジ会計の要求事項を扱
う包括的提案を発行した。
FASB は、2010 年 10 月に、IASB が参加した利害関係者との公開円卓会議を開催
した。
FASB は、2010 年 10 月に包括的提案の再協議を優先することを決定した。それ
は、分類、測定および減損に当初焦点を当てていた。FASB は、2011 年第 2 四半期
まで、ヘッジ会計の要求事項案についての再協議を開始しないであろう 。FASB は、
IASB が今年後半に発行するであろう、IASB によるヘッジに関する公開草案に関し
て受理される情報を検討するであろう。
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①-2 デリバティブおよび他の金融商品の貸借対照表上の相殺・プロジェクト
両審議会は、デリバティブおよびその他の金融商品についての貸借対照表上の
相殺に関する U.S.GAAP 要求事項と IFRS 要求事項を改善し、コンバージェンスす
る共同プロジェクトに着手している。両審議会は、2011 年の第 1 四半期に公開草
案を公表する予定であり、2011 年 6 月 30 日までに新要求事項を完成することを目
指している。
②リース・プロジェクト
両審議会は、リースについての IFRS 要求事項および U.S.GAAP 要求事項を改善
し、コンバージェンスを達成するための協議事項に関する共同プロジェクトを有
している。両審議会は、2011 年の第 2 四半期に改善され、コンバージェンスされ
る基準を発行するとの目標に向けて、2009 年 8 月に発行された公開草案に関して、
翌年初めに協議を開始する予定である。
③収益の認識・プロジェクト
両審議会は、収益の認識についての基準を改善し、コンバージェンスを達成す
るために、共同で作業している。2010 年の後半には、両審議会は、改善され、コ
ンバージェンスされた基準を 2011 年の第 2 四半期に完成するとの目標に向けて、
2010 年 6 月に発行された共通の公開草案について共同で再協議を開始するであろ
う。
④連結・プロジェクト
IASB は、2011 年の第 1 四半期の初めに、組成された投資ビィークルおよび他の
特別目的会社の連結に関する U.S.GAAP との実質的なコンバージェンスをもたらす
であろう連結に関する IFRS を完成する予定である 。IASB および FASB は、投資会
社の連結に関連する問題を共同で検討している。IASB および FASB は、2011 年後
半までにコンバージェンスされた基準を発行する予定である(両審議会は、2011
年中頃に公開草案を公表する予定である)。
FASB は、2010 年後半または 2011 年初めに、議決権株による持分企業について
の U.S.GAAP 連結要求事項とのコンバージェンスを達成するであろう改訂を提案す
るか否かを検討するであろう。
⑤公正価値測定・プロジェクト
両審議会は、公正価値の定義を改善し、そのコンバージェンスを達成し、共通
の実務指針を規定するための共同プロジェクトに関して活発に活動している。両
審議会は、2011 年の第 1 四半期にコンバージェンスされた最終の要求事項を公表
する目的で、2010 年の初期に発行された提案を再協議している。
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U.S.GAAP と IFRS のコンバージェンスの変遷(2)
⑥認識の中止・プロジェクト
2010 年に完成した独立した基準設定の取り組みを通して、両審議会は、金融資
産および負債の認識の中止に関連する IFRS と U.S.GAAP の間の差異を減少させた。
FASB は、改訂された認識の中止の要求事項についての実施後レビューを行う予定
である 。 その結果は、さらなる改善およびコンバージェンスの取り組みの本質お
よび範囲に関する決定のために利用されるであろう。
⑦保険契約・プロジェクト
IASB は、2011 年の 6 月に IFRS を公表する予定である 。FASB は、2010 年 9 月の
討論資料に関して受理した情報を検討した後、その先のスッテプを決定するであ
ろう。
⒝ その他のプロジェクト
①退職後給付・プロジェクト
IASB は、2011 年の第 1 四半期に改訂基準を公表する予定である。
②ジョイント ・ ベンチャー・プロジェクト
IASB は、連結に関する IFRS と同時にジョイント・ベンチャーに関する IFRS を
公表できるようにその完成を引き留めた。
③財務諸表の表示・プロジェクト
③-1その他の包括的利益の表示・プロジェクト
両審議会は、今年後半に 2010 年 5 月のこのプロジェクト関する公開草案につい
ての再協議を完了し、2011 年の第 1 四半期に最終要求事項を発行する予定である。
③- 2 主要なプロジェクト
この包括的な報告書は、将来の一般的な協議にとっての基礎を提供するであろ
う。それは、他の主要なプロジェクトを優先するとの決定に照らして、現時点では、
2011 年 6 月以降に開始する予定である。
④資本の特質を有する金融商品・プロジェクト
両審議会は、2011 年 6 月以降に、このプロジェクトに関する実質的な協議を再
開始する予定である。
⑤排出権取引・プロジェクト
両審議会は、現時点では、2012 年にコンバージェンスされた基準を発行する目
的で、2011 年の後半に公開草案を公表する予定である。
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4)第 4 回四半期進捗報告書(2011 年 4 月 )
本報告書は、IASB と FASB による第 4 回の進捗報告書であり、2011 年 4 月
21 日現在のワークプランの状況を反映している。本報告書は、(a) 第 3 回四半
期進捗報告 (2010 年 11 月 ) 後の IASB と FASB による措置、(b)MoU 作業の完成
状況、(c) 残されたコンバージェンス作業の優先性と時期について、以下のよ
うに説明している。
⒜ 第 3 回四半期進捗報告後の IASB と FASB による措置
IASB と FASB([6],pp.1-2)は、
第 3 回四半期進捗報告 (2010 年 11 月 ) の後に、
次の措置をとった。
① 5 つのプロジェクトの完成
両審議会は、プロジェクト数に関する重要な決定をした。その結果、継続す
る作業として残された優先的 MoU プロジェクトの数を 3 プロジェクト(収益
の認識、リースおよび金融商品)に減らした。MoU プロジェクトの完成を反
映して、公正価値の測定、
連結財務諸表(他の企業の持分についてのデスクロー
ジャーを含む)
、ジョイント・アレンジメント、その他の包括利益および退職
後給付に関するコンバージェンスされたまたは実質的にコンバージェンスされ
た基準の公表が、今後数週間の間に予定されている。
② 残された MoU 分野および保険契約に対する優先性の付与
両審議会は、2010 年 11 月に、適切な時期に完成できるように 3 つの MoU
プロジェクト(金融商品、収益の認識およびリース)と保険契約の会計に関す
る共同作業に優先性を付与することを決定した。
③ 完成目標を 2011 年 6 月後まで延長
両審議会は、4 月の会議において、さらなる作業および利害関係者との協議
ができるように、残された優先 MoU コンバージェンス・プロジェクトおよび
保険契約についての日程表を 2011 年 6 月後まで延長した。両審議会は、開か
れた、包括的なデユー・プロセスと整合する方法による、残された 3 つの優先
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U.S.GAAP と IFRS のコンバージェンスの変遷(2)
MoU コンバージェンス・プロジェクトの完成に集中するために、ワークプラ
ンを改訂した。IASB は、2011 年の後半に、保険契約についてのプロジェクト
を完成する予定である。一方、FASB は、類似の日程で公開草案を公表する予
定である。このワークプランは、以下においてより詳細に説明されている((c)
「残されたコンバージェンス作業の優先順位と時期」- 27 ~ 30 頁参照)
。
④ 企業が変更の実施に十分な時間を使うことができるように施行日を決定
することで合意
両審議会によれば、IFRS および U.S.GAAP を利用する人々が基準の実施に
対する準備に十分な時間を使うことができるように、両審議会により施行日が
決定されるであろうことが強調された。
⒝ MoU 作業の完成状況
IASB と FASB([6],p.2)は、MoU 作業の完成状況について、次のように述べ
ている。第 3 回四半期進捗報告後の進展により、両審議会は、2002 年に開始
した MoU プログラムの完成に近づいている。つまり、① 2006 年 MoU および
2008 年更新 MoU において識別された短期プロジェクトは、完成済みまたは完
成に近づいている。②長期プロジェクトについては、3 つの優先 MoU コンバー
ジェンス・プロジェクト(金融商品、収益の認識およびリース)だけが、両審
議会による技術的決定が完了していないために、残されているにすぎない。
2006 年 MoU の当初の公表以降に完成した作業の要約が、第 4 回四半期進捗
報告書の付録 A「コンバージェンス作業の状況」において、
(ⅰ)「短期コンバージェ
ンス作業」と (ⅱ)「MoU プロジェクト」に分けて、
下記のように提示されている。
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(ⅰ) 短期コンバージェンス作業
ほとんどの短期プロジェクトは、両審議会の一方が、その要求事項ともう一
方の審議会の要求事項とを調整するために基準を改訂することを要求してい
た。株式報酬のような他のプロジェクトは、両審議会が改訂基準を発行するこ
とを要求していた。短期コンバージェンス作業([6],p.3)は、下記の表のよう
に要約されている。
表・短期コンバージェンス作業
プロジェクト
状況
マイルストーン
1
株式報酬
完成
実質的にコンバージェンスされた
基準が 2004 年に発行された。
2
セ グ メ ン ト 完成
報告
IFRS8「オペレーティング・セグメ
ント」が 2006 年に発行された。
3
非 貨 幣 性 資 完成
産
FASB は、2004 年 に 発 行 さ れ た
FAS153「 非 貨 幣 性 資 産 」 に お い て、
取引に経済的実質がない場合を除き、
公正価値による認識を要求する特定の
非貨幣性項目の交換の処理に関してコ
ンバージェンスした。
4
棚 卸 資 産 会 完成
計
FASB は、2004 年 に 発 行 さ れ た
FAS151「棚卸資産コスト」において
異常な運賃および仕損費の処理に関し
てコンバージェンスした。
5
会 計 上 の 変 完成
更
FASB は、2005 年 に 発 行 さ れ た
FAS154「会計上の変更および誤謬の
訂正」において、遡及的適用を要求す
ることにより、会計方針における自主
的変更の処理に関してコンバージェン
スした。
6
公 正 価 値 オ 完成
プション
2007 年に発行された FAS159「金融
資産および金融負債についての公正価
値オプション」は、U.S.GAAP に公正
価値オプションの導入をもたらした。
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U.S.GAAP と IFRS のコンバージェンスの変遷(2)
プロジェクト
状況
マイルストーン
7
借入コスト
完成
改 訂 IAS23「 借 入 コ ス ト 」 が 2007
年に発行された。
8
研究費
完成
2008 年 に 発 行 さ れ た 改 訂 FAS141
「企業結合」は、取得される研究開発
費に関する会計を改訂した。
9
非支配持分
完成
2008 年 に 発 行 さ れ た 改 訂 FAS160
「連結財務諸表上の非支配持分」は、
中間的表示の利用を廃止した。
10 ジ ョ イ ン 最終段階-
IFRS11「ジョイント・アレンジメ
ト・ ベ ン
IFRS が 2011 年 5 月 に ント」が、2011 年 5 月に発行される
チャー
発行されるであろう。
であろう。
11 法人所得税
より低い優先プロジェ
クトとして再評価されて
いる。当面の作業の予定
はない。
IASB は、2009 年に公開草案を発行
した。
12 投資不動産
仕掛中
FASB は、U.S.GAAP を IFRS に調整
する提案を開発しつつある。
(ⅱ)「MoU プロジェクト」
下記の表・MoU プロジェクト([6],p.4)は、
残された 3 つの優先 MoU プロジェ
クトを除いて、IASB と FASB の MoU プロジェクトの進展について詳述してい
る。
表・MoU プロジェクト
プロジェクト
現状
マイルストーン
1
企業結合
完成
企業結合会計と非支配持分につい
ての共同要求事項が、2008 年に発行
された。
2
認識の中止
完成
両審議会は、ディスクロージャー
要求事項を実質的に調整し、U.S.GAAP
の会計要求事項を IFRS に近づける改
訂を導入した。
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プロジェクト
現状
マイルストーン
3
連結財務諸
表( オ フ バ
ランスシー
ト・ リ ス ク
のディスク
ロージャー
を含む)
最終段階-
IFRS が 2011 年 5 月に
発行されるであろう。
FASB は、5 月 に 変 動
持分企業に関する提案を
公表する。
IFRS10「連結財務諸表」と IFRS12「他
の企業に対する持分に関するディスク
ロージャー」が、2011 年 5 月に発行
されるであろう。新 IFRS は、特定目
的企業に対する会計およびディスク
ロージャーを改善し、特定目的企業に
対するディスクロージャー要求事項を
U.S.GAAP と実質的に調整している。
4
公 正 価 値 の 最終段階-
測定
IFRS お よ び FASB の
改 訂 版 が、2011 年 4 月
に発行される。
FASB 第 157 号「公正価値の測定」
が、2006 年に発行された。IFRS13「公
正価値の測定」が、2011 年 4 月に発
行されるであろう 。
5
退職後給付
IAS19「従業員給付」に対する改訂
が、2011 年 5 月に発行されであろう 。
6
財 務 諸 表 の 最終段階-
その他の包括利益の表示について
表示-その
IFRS および U.S.GAAP の IFRS および U.S.GAAP に対する改
他 の 包 括 利 の 改 訂 版 が 2011 年 5 月 訂版が、2011 年 5 月に発行されるで
益
に発行されるであろう。 あろう。
財務諸表の表示につ
いての他の側面に関する
さ ら な る 検 討 は、2011
年 12 月まで予定されて
いない。
7
持分の特徴
より低い優先プロ
共同の討論資料が、2008 年に公表
を 有 す る 金 ジェクトとして再評価さ された。
融商品
れている。さらなる検討
は、2011 年 12 月まで予
定されていない。
8
無形資産
最終段階-
IFRS が 2011 年 5 月に
発行される。
IASB は、このプロジェ
IASB は、2007 年 12 月 に 無 形 資 産
ク ト を 推 進 し な い こ と に関するプロジェクトを追加する協議
を決定したが、IASB は、 事項案を検討した。
新しい協議事項を設定す
る場合に再検討するであ
ろう。
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U.S.GAAP と IFRS のコンバージェンスの変遷(2)
⒞ 残されたコンバージェンス作業の優先性と時期
IASB と FASB([6],p.2)は、残されたコンバージェンス作業の優先性と時期
について、次のように述べている。両審議会は、3 年前に、国際社会からの支
持を得て、MoU プロジェクトの完成に向けて、2011 年 6 月 30 日という目標期
日を設定した。両審議会は、4 月の会議において、両審議会がこの共同作業を
完成するために、2011 年 6 月後においても追加的な時間を費やすであろうこ
とに合意した。両審議会は、2011 年の後半に残りの MoU 分野の作業を速やか
に完成するとの目標を公約した。
残された各プロジェクト(①収益の認識、②リース、③保険契約、④金融商
品)についてのワークプラン案に関する個々の詳細な説明が、付録 B「残され
た優先的コンバージェンス・プロジェクト」
([6],pp.5-12)において下記のよ
うに提示されている。
①収益の認識・プロジェクト
IASB と FASB は、2008 年 12 月に、単一の収益認識モデルを提案した共同討論
資料を公表した。そのモデルは、財または役務の支配が顧客に移転することによっ
て、企業が契約上の履行義務を満たす時点で、企業が収益を認識すべきであると
の原則に基づいて構築されている。この原則は、多くの既存の要求事項に類似し
ている。しかしながら、両審議会は、この原則を明確化し、それを顧客とのすべ
ての契約に一貫して適用することが、財務諸表の利用者にとっての収益の比較可
能性および理解可能性を改善するであろうと考えている。
このプロジェクトは、IASB と FASB の両方にとって非常に重要である。U.S.GAAP
は、広範囲にわたる、極めて詳細な産業別要求事項を有している。IASB は、個別
的指針について、財務諸表作成者が結果として U.S.GAAP に依存することになるよ
うな、極めて一般的な要求事項を有している。このプロジェクトは、FASB の詳細
な指針を一貫した原則に纏め上げ、IFRS の利用者が U.S.GAAP を参照する必要性
を除去しようとしている。
両審議会は、コミットメント・レターや両審議会の広範なアウトチーチ活動か
ら受理したフィードバックを検討してきており、その再審議の完了が近づいてい
る。両審議会による再審議が完了すれば、両審議会は、この提案の再公開が必要
であるか否かを検討するであろう。
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②リース・プロジェクト
両審議会は、2010 年 8 月に共同の公開草案を公表した。この提案によれば、リー
ス債務と関連資産はレッシーの貸借対照表(財政状態計算書)に計上されるであ
ろう。レッサーについての提案によれば、リース資産の重要なリスクまたはベネ
フィットを保留している企業が、資産およびレッシーに当該資産の利用を認める
関連義務を認識するように設計されている。他のケースにおいては、リース資産
の重要なリスクまたはベネフィットがレッシーに移転する場合、レッサーは、リー
ス契約によって、移転する資産部分の認識を中止するであろう。
両審議会は、コミットメント・レターや両審議会の広範なアウトチーチ活動か
ら受理したフィードバックを検討してきており、その再審議の完成に近づいてい
る。
③保険契約・プロジェクト
保険契約は、2001 年の設立以来、IASB にとって活動中のプロジェクトであった。
これは、IFRS が現在極めて多様な保険契約会計を認めているので、重要なプロジェ
クトである。IASB は、2007 年に、討論資料「保険契約に関する予備的見解」を公
表した。FASB は、2007 年 8 月に、コメント勧誘書「FASB 提案:保険者と契約者
による保険契約会計」(IASB による討論資料を含む)を発行した。
FASB は、2008 年 10 月に、保険契約に関するプロジェクトをその協議事項に追
加した。両審議会は、共同でそのプロジェクトに取り組むことに合意した。
IASB は、2010 年 7 月 30 日 に、 公 開 草 案「 保 険 契 約 」 を 公 表 し た。FASB は
2010 年 9 月に、それ自身の討論資料(代替的見解を含んでいる)を公表した。
④ 金融商品・プロジェクト
IASB は、段階的アプローチにより、その金融商品についての要求事項を置き換
えてきた。一方、FASB は単一の改正案を開発した。これらの異なる開発の日程表
およびその他の要因により、両審議会よる重要な多くの専門的論点に関する共同
提案の公表が妨げられてきた。両審議会は、共同提案を公表しなかったので、結
果として、異なるアプローチが一般のコメントのために公開された。
これの差異についての両審議会の戦略は、同じでままである。両審議会は、そ
の提案の相対的利点を比較し、評価する機会を利害関係者に与えるようにするた
めに、両審議会は、自らの提案を公表する一方、他方の審議会の提案に関するコ
メントを求めてきた。両審議会は、改善およびコンバージェンスを促進するよう
な方法で差異を調整する取り組みにおいて、両審議会が受理するコメントレター
および他のフィードバックを検討するであろう。
④-1分類および測定・プロジェクト
< IASB >
IASB は、2009 年 11 月に、IFRS9「金融商品」を発行することによって、金融資
産の分類および測定に関する新要求事項を完成した。IFRS9 には、
2 つの分類区分(償
却原価および公正価値)がある。IFRS9 の強制適用日は、2013 年 1 月 1 日であるが、
IFRS9 は、その公表日から早期適用が可能であった。
IFRS9 の第一フェイズを公表するさいに、IASB は、金融資産に対する基準に限
定し、金融負債の会計についての検討は先送りすることとした。IFRS9 に先立って
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U.S.GAAP と IFRS のコンバージェンスの変遷(2)
の公開草案に対するほとんどのコメント提出者によれば、金融負債の会計は、1
つの問題点(企業それ自体の負債を公正価値で測定する場合に生じる純利益の変
動性)を除いて、うまく機能していると IASB に提言された。そのような場合、発
行者の信用力の変動により、純利益の変動が生じる(「自己の信用の問題」)
。企業
の信用の質が低下するにつれて、企業が会計利得を報告するとの直感に反するよ
うな特定の懸念がある。受理したフィードバックに反応して、IASB は、金融負債
の会計について包括的な整備を実施しないことを決定し、自己の信用の問題だけ
を取り組み目標とする変更を実施することを決定した。
IASB は、2010 年 5 月に、自己の信用の問題に対する解決案を提案している公開
草案を公表した。IASB は、2010 年 11 月に、IFRS9 に対するこれらの要求事項を完
成し、
追加した。早期適用は認められているけれども、有効日は 2013 年1月である。
< FASB >
FASB は、2010 年 5 月に、金融商品の分類および測定、減損会計およびヘッジ会
計を扱った公開草案を公表した。コメント期間は、2010 年 9 月に終了した。FASB
は、10 月に一連の円卓会議を開催した。FASB の公開草案は、IFRS9 よりはるかに
多くの公正価値による測定の利用を提案した。その提案のもとでは、ほとんどす
べての金融商品が貸借対照表(財政状態計算書)において公正価値で認識される。
この提案には、ある種の金融負債についての償却原価オプションが含まれていた。
FASB は、一部の金融商品に対する規準の適用を精緻化すると同時に、上記の範
疇内における金融商品の分類のための規準をさらに継続的に精緻化する予定であ
る。FASB が受理したフィードバックには、トレイディング目的保有資産、売却目
的保有資産および変動キャシュフローを伴う金融商品は、公正価値で報告し、そ
の価値の変動は純利益において報告すべきであるとの提案については、一般的な
合意があった。しかしながら、財政状態計算書において、貸付金、債権および企
業自身の債務を公正価値で認識するとの FASB の提案については、一般的な合意は
なかった。合意しなかった人々は、これらの項目に対して償却原価を勧告し、貸
付金に対してより強固な減損アプローチを勧告した。
多くの投資家の提言によれは、貸付金および負債についての公正価値のディス
クロージャーは、有用な情報であるが、投資家は、その情報が財務諸表の基本的
な測定値としてではなく、脚注(または、他の方法)により提供されるべきであ
ることを選考するであろうとされている。
受理したフィードバックを検討したのち、FASB は、金融商品についての 3 つの
区分、つまり、(a) 公正価値のすべての変動を純利益において認識する公正価値測
定(トレイディング目的保有または売却目的保有)、(b) 公正価値の変動をその他の
包括利益で認識する公正価値測定(リスクエクスポージャーを管理し、総リター
ンを極大化することを重視する投資)、(c) 減損アプローチ(顧客との再交渉により
信用リスクを管理する能力による顧客に対する融資)の改善を条件とした償却原
価とディスクロージヤーの充実について、検討することを決定した。
<コンバージェンス>
FASB が、分類および測定に関する意思決定をする時点(2011 年第 3 四半期に決
定予定)において、IASB は、自らの利害関係者からの所見を求めるために、FASB
の最終的結論を公開するであろう 。
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④ - 2 減損・プロジェクト
IASB は、2009 年 11 月に、より先の予想損失を見込む減損および引当金モデル
への移行を提案した公開草案を公表した 。IASB は、予想損失減損モデルへの移行
に対する一般的支持を受け取った。しかしながら 、 公開草案において 、 提案され
たモデルに多くの実務上の問題点が認識された。専門家諮問パネルが、これらの
問題点に関する有用なフィードバックを提供した。
両審議会は、2010 年 11 月に、減損に関する再審議を共同で開始した。両審議会
は、2011 年 1 月に補足文書「金融商品に関する会計およびデリバティブおよびヘッ
ジ活動に関する会計に対する改訂―減損」を公表した。この補足資料は、減損会
計に対する異なる目的を反映しているが、減損に対する共通の解決策を提供して
いる減損モデルを提示した。コメント期間は、4 月 1 日に締め切られた。
両審議会は、4 月にコメントレーターおよび審議会の広範なアウトリーチ活動
からのフィードバックを検討した。コメント提出者の間に明確な合意はなかった。
両審議会は、問題点および提案に関して作業中であり、6 月末までに基本的アプロー
チに関する合意に到達することを決めた。
④ - 3 ヘッジ会計・プロジェクト
両審議会は、MoU の一環として、金融商品に関する会計の複雑性を減らすため
に、
リサーチプロジェクトに関して共同で作業をした。この共同の取り組みにより、
IASB は、2008 年 3 月に討論資料「金融商品の報告における複雑性の減少」を公表
した 。 この討論資料は、金融商品の測定およびヘッジ会計に焦点を当てることに
より、金融商品に関する会計を改善し、単純化するためのいくつかの考えられる
アプローチを識別した。
現行のヘッジ会計の多くの側面に関する数多くの問題点に取り組む要求に応え
て、FASB は、2008 年 6 月に、公開草案「ヘッジ活動に関する会計」を発行した。
2010 年 5 月の FASB の公開草案は、
金融商品の分類および測定と減損に加え、
ヘッ
ジ会計に関する提案も含んでいた。
IASB は、2010 年 10 月に、一般的なヘッジ会計に関する公開草案を公表した。
FASB は、その提案に関して自らの利害関係者からコメントを求めるために、2011
年 2 月に IASB の公開草案に関する討論資料を公表した。
IASB の公開草案は、一般的なヘッジ会計に関連していた。それは、ポートフォ
リオヘッジ会計を扱っていない。IASB は、4 月にポートフォリオヘッジについて
の公開討論を再開した。IASB は、
一般的ヘッジ会計要求事項を完成するに先だって、
ポートフォリオヘッジ会計に関連する提案をさらに開発する予定である 。IASB は、
本年(2011 年)後半にポートフォリオヘッジ会計に関する公開草案を公表する予
定である。
④ - 4 貸借対照表上のデリバティブおよび他の金融商品の相殺・プロジェクト
IFRS と U.S.GAAP を用いている企業の比較可能性に関する利害関係者の関心に
応えて、IASB および FASB は、金融資産の相殺を扱うように金融商品に関する共
同プロジェクトの範囲を拡大した。これは、U.S.GAAP を用いている金融機関と
IFRS を用いている金融機関の貸借対照表(財政状態計算書)の間の差異のうち、
もっ
とも大きな単一の源泉である 。
両審議会は、2011 年第 1 四半期に共同公開草案を公表し、次の四半期で実質的
に再協議を完了することを目指している。
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U.S.GAAP と IFRS のコンバージェンスの変遷(2)
⑶ ワーク・プランの更新とコンバージェンスに関する進捗報告書
ここでは、IASB および FASB によるコンバージェンスに関する変遷(2011
年 6 月 30 日から 2013 年 9 月 23 日)を①ワーク・プランの更新 (1)(2011 年 6
月 30 日から 2012 年 3 月 23 日)
、
②コンバージェンスに関する進捗報告書
(2012
年 4 月 5 日)
、③ワーク・プランの更新 (2)(2012 年 4 月 23 日から 2013 年 9
月 23 日)に分けて、説明する。
1)ワーク・プランの更新⑴(2011 年 6 月 30 日から 2012 年 3 月 23 日)
下記のワーク・プランの更新に関する表 ( 文献 [11]) は、ワーク・プランの
更新 (1)
(2011 年 6 月 30 日から 2012 年 3 月 23 日)
を①ワーク・プランの更新 (1)-1
(更新日:2011 年 6 月 30 日、2011 年 7 月 26 日、2011 年 9 月 30 日)②ワーク・
プランの更新 (1)-2(更新日:2011 年 10 月 31 日 ,2011 年 12 月 20 日), ③ワーク・
プランの更新 (1)-3(更新日:2012 年 2 月 1 日、2012 年 3 月 23 日)に分けて、
表示したものである。
ワーク・プランの更新 (1)-1
プロジェクト
金融商品
減損
公表物
更新日
2011 年 6 月 30 日
ED ま た は レ 2011 年 3Q-4Q
ビュー・ドラ
フト
最終基準書の 2011 年 3Q-4Q
承認投票
一般的な
ヘッジ会計
最終基準書
マクロ・
ED
ヘッジ会計
資産と負債の 最終基準書の
相殺
承認投票
最終基準書
リース
再 ED
収益の認識
最終基準書
再 ED
最終基準書
更新日
更新日
2011 年 7 月 26 日 2011 年 9 月 30 日
変更なし
2011 年 4Q-2012
年前半
2011 年 3Q
レビュー・ドラ
フト
2011 年 4Q
変更なし
2012 年前半
2011 年 4Q-2012 2011 年 4Q-2012
年
年前半
2011 年 3Q-4Q
-(記載なし)
2011 年 3Q
2011 年 4Q
2011 年 4Q
2011 年 4Q
2011 年 3Q
( 再 ED ま た は レ
ビュー・ドラフト )
2012 年上半期
2011 年 3Q
2012 年上半期
変更なし
2011 年 4Q
2012 年
変更なし
2012 年
変更なし
(2011 年 12 月 )
2012 年前半
(2012 年 1Q)
2012 年後半
2011 年 4Q
2012 年後半
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ワーク・プランの更新 (1)-2
プロジェクト
公表物
更新日
2011 年 10 月 31 日
更新日
2011 年 12 月 20 日
金融商品
減損
再 ED
2012 年前半
2012 年 2Q
一般的な
ヘッジ会計
レビュー・
ドラフト
2011 年 4Q
2012 年 1Q
最終基準書
2012 年前半
2012 年 2Q
マクロ・
ヘッジ会計
ED
2012 年前半
2012 年 3Q
資産と負債の
相殺
最終基準書
2011 年 4Q
(2011 年 12 月 16 日
公表済 )
リース
再 ED
2012 年前半
2012 年 2Q
最終基準書
2012 年後半
-
再 ED
2011 年 4Q
(2011 年 11 月 20 日
公表済 )
最終基準書
2012 年後半
-
収益の認識
ワーク・プランの更新 (1)-3
プロジェクト
公表物
更新日
2012 年 2 月 1 日
更新日
2012 年 3 月 23 日
金融商品
分類および
測定
ED
2012 年 3Q-4Q
変更なし
減損
再 ED
2012 年 3Q-4Q
変更なし
一般的な
ヘッジ会計
レビュー・
ドラフト
2012 年 1Q
2012 年 2Q
最終基準書
2012 年 3Q-4Q
変更なし
マクロ・
ヘッジ会計
討論資料または ED
2012 年 3Q
2012 年 3Q-4Q
リース
再 ED
2012 年 2Q
2012 年 3Q-4Q
収益の認識
受理したコメント
の検討期間
-
2012 年 2Q-3Q
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U.S.GAAP と IFRS のコンバージェンスの変遷(2)
2) コンバージェンスに関する進捗報告書(2012 年 4 月 5 日)
コンバージェンスに関する進捗報告書(文献 [8])は、① MoU プログラムが
完成に近づいている状況と②未完成プロジェクトの完成までの予定ステップ
を明らかにしている。このコンバージェンスに関する進捗報告書は、IASB と
FASB の両議長の連名により、金融安定理事会(FSB) に提出されたものである。
(ⅰ)MoU プログラムが完成に近づいている状況
コンバージェンスに関する進捗報告書によれば 、MoU プログラムが完成に近
づいている状況が、(a) 短期プロジェクト、(b) 長期プロジェクト、(c) 未完成プ
ロジェクトに分けて、以下のように説明されている。
⒜ 短期プロジェクト
本報告書([8],pp.1-2)によれば 、 ほとんどの短期プロジェクトは、完成し
たかまたは完成に近づいている。1つのプログラム ( 法人所得税)は、低い優
先度のものであると決定された。また、ほとんどの短期プロジェクトは、一方
の審議会が他方の審議会の要求事項により適切に合わせるようにその要求事項
を改訂することを要求した。たとえば、IASB は、U.S.GAAP にその要求事項を
合わせるように、セグメント報告を改訂した。株式報酬のようなプロジェクト
は、両審議会が改訂基準を発行することを要求した。
本報告書([8],p.3)によれば 、 短期プロジェクトの状況は、下記の表・短期
プロジェクトに要約されている。
表・短期プロジェクト
プロジェクト
状況
マイルストーン
1
株式報酬
完成
コンバージェンスされた基準が 2004
年に発行された。
2
セ グ メ ン ト 完成
報告
IFRS8「オペレーティング・セグメン
ト」が 2006 年に発行された。
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プロジェクト
状況
マイルストーン
3
非 貨 幣 性 資 完成
産
FASB は、2004 年 に 発 行 さ れ た
FAS153「非貨幣性資産」において、取
引に経済的実質がない場合を除き、公
正価値による認識を要求する特定の非
貨幣性項目の交換の処理に関してコン
バージェンスした。
4
棚 卸 資 産 会 完成
計
FASB は、2004 年 に 発 行 さ れ た
FAS151「棚卸資産コスト」において異
常な運賃および仕損費の処理に関して
コンバージェンスした。
5
会 計 上 の 変 完成
更
FASB は、2005 年 に 発 行 さ れ た
FAS154「会計上の変更および誤謬の訂
正」において、遡及的適用を要求する
ことにより、会計方針における自主的
変更の処理に関してコンバージェンス
した。
6
公正価値
オプション
完成
2007 年 に 発 行 さ れ た FAS159「 金 融
資産および金融負債に対する公正価値
オプション」は、U.S.GAAP に公正価値
オプションの導入をもたらした。
7
借入コスト
完成
改訂 IAS23「借入コスト」が 2007 年
に発行された。
8
研究開発費
完成
U.S.GAAP は、2008 年に「企業結合」
の一環として、取得される研究開発費
に関する会計を改訂した。
9
非支配持分
完成
2008 年に「企業結合」の一環として、
中間的表示の利用が廃止された。
10
ジョイント・ 完成
ベンチャー
11
法人所得税
より低い優先プロ
共同の公開草案が 2009 年に公表され
ジェクトとして再評 た。IASB は、後に法人所得税に関する
価されている。当面 会計についての基本的レビューを検討
の作業の予定はない。 するであろう 。
12
投資不動産
仕掛中
IFRS11 ジョイント・アレンジメント
が、2011 年 5 月に発行された。ジョイ
ント ・ アレンジメントの参加者による
財務報告のための原則が確立された。
FASB は、投資不動産企業が投資不動
を公正価値で測定する提案を発行した。
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U.S.GAAP と IFRS のコンバージェンスの変遷(2)
⒝ 長期プロジェクト
本報告書([8],p.1・p.3)によれば 、 長期プロジェクトのうち、いくつかの
プロジェクトは完成した。また、MoU は、2008 年に更新され、そのさい、両
審議会は 10 の長期プロジェクトに集中するために、そのプログラムを縮小し
た。両審議会は、
順調に作業し、
2008 年版更新 MoU におけるほとんどのプロジェ
クトを完成した。
本報告書([8],p.4)によれば 、 長期プロジェクトは、下記の表・長期プロジェ
クトに要約されている。
表・長期プロジェクト
プロジェクト
現状
マイルストーン
1
企業結合
完成
企業結合会計と非支配持分について
の共同要求事項が、2008 年に発行さ
れた。
2
認識の中止
完成
両審議会は、ディスクロージャー要
求事項を実質的に調整し、U.S.GAAP
の会計要求事項を IFRS に近づける改
訂を導入した。
3
連結財務諸表(オ 完成
フバランスシー
ト・リスクのディ
スクロージャー
を含む)
IFRS10「連結財務諸表」と IFRS12「他
の企業に対する持分に関するディスク
ロージャー」が、2011 年 5 月に発行
された。
FASB は、2011 年に本人対代理人に
関連する解説書案を発行した。
4
公正価値の測定
完成
FASB 第 157 号
「公正価値の測定」が、
2006 年に発行された。IFRS13「公正
価値の測定」が、2011 年 5 月に発行
された 。
5
退職後給付
完成
IAS19「従業員給付」に対する改訂が、
2011 年 5 月に発行された。
6
財 務 諸 表 の 表 示 完成
-その他の包括
利益
その他の包括利益の表示についての
IFRS お よ び U.S.GAAP に 対 す る 改 訂
が、2011 年に発行された。
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プロジェクト
現状
マイルストーン
7
持分の特徴を有
より低い優先プ
共同討論資料が、2008 年に公表さ
する金融商品
ロジェクトとして れた。
再評価されてい
る。
8
投資会社
IASB の提案は、その実質的活動に
より彼らが支配している企業を連結す
ることから、資本の増価、投資利得ま
たはその両方のための投資であるよう
な種類の企業を排除するであろう 。 そ
の代わり、これらの投資企業は、支配
されている投資先を公正価値で測定す
る。その公正価値の変動は、損益計算
書で認識される。
FASB の提案は、企業が投資会社で
あるか否かを評価するための、投資会
社がコンバージェンスされた規準を
開発するため、投資会社にとっての
U.S.GAAP の現行のガイダンスを改訂
するであろう 。
⒞ 未完成プロジェクト
本報告書([8],pp.3-4)によれば 、 当初識別された長期プロジェクトのうち、
両審議会により技術的決定がいまだ完成していないプロジェクトが 3 つある。
つまり、それは、リース、収益の認識および金融商品である 。 収益の認識およ
びリースに関する日程は、多くの利害関係者の関心に対する十分な考慮を確保
するべきであるとの彼らの要求に応えて、延長された。MoU プロジェクトに
優先性が与えられたけれども、両審議会は、また、保険契約に関する会計に対
する多くの必要とされる改善を共同で作業してきた。
本報告書([8],p.5)によれば 、 未完成プロジェクトは、下記の表・未完成プ
ロジェクトに要約されている。
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U.S.GAAP と IFRS のコンバージェンスの変遷(2)
表・未完成プロジェクト
プロジェクト
状況
マイルストーン
1
リース
仕掛中
両審議会は、2010 年の 8 月に共同
提案を公表した 。 両審議会は、2012
年第 2 四半期に拡大して実施される協
議に対応する改訂提案を公表する予定
である 。
2
収益の認識
仕掛中
両審議会は、2010 年の 6 月に共同
提案を公表した 。 拡大して実施される
協議に対応した改訂提案に対するコメ
ント期間は、2012 年 3 月に締め切ら
れた。両審議会は、2012 年にそれら
の議論を完了する予定である。
3
金融商品
仕掛中
この資料の金融商品のセクションに
おいて 、 説明されている。
4
保険契約
仕掛中
両審議会は、2012 年第 2 四半期に
おける次の公表に向けて作業をしてい
る。IASB は、別の公開草案を公表す
べきか否かを検討している 。 そうする
ことは、FASB が公開草案をまだ公表
していないので、両審議会の協議プロ
セスと歩調が合うであろう 。
(ⅱ) 未完成プロジェクトの完成までの予定ステップ
本報告書([8],p.5)によれば 、IASB および FASB は、残された3つの MoU
プロジェクト(①金融商品、②収益の認識、③リース)と保険契約について、
できるだけ迅速な完成を約束した状態のままである。本報告書([8],pp.5-15)
によれば 、 個々の未完成プロジェクトの現状と MoU プログラムを完成するた
めに両審議会により実施が予定されているステップがより詳細に説明されてい
るが、ここでは、未完成プロジェクトについて、両審議会により実施が予定さ
れているステップを説明する。未完成プロジェクトを完成するために予定され
ているステップは、下記の表・
(38 頁・参照)のように提示されている。
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表1・未完成プロジェクトの完成までの予定ステップ
①金融商品
予定ステップ
分類および測定
両審議会は、分類および測定についての協議を継続し、
2012 年第 2 四半期に公開草案を発行し、2013 年の前半に新
基準を完成する予定である。両審議会は、開発段階が異なっ
ているので、どの公開草案も別個のものであるが、できる
限りコンバージェンスした結果を達成すべきであると提案
している。
減損
現行計画は、共同協議を完了し、2012 年第 2 四半期にコ
ンバージェンスされた公開草案を発行することである。こ
の日程表に基づけば、両審議会は、2013 年第 1 四半期に新
減損要求事項の完成を目標とするであろう 。
一般的ヘッジ会計
IASB は、2012 年第 2 四半期に最終基準を発行すること
を目標としている。
マクロヘッジ会計
IASB は、2012 年第 2 四半期に討論資料または公開草案
を公表する予定である。
デリバティブおよび
両審議会は、2011 年 12 月に最終要求事項を発行した。
その他金融商品
これらの要求事項は、2013 年 1 月 1 日から施行される。
②収益の認識
両審議会は、2012 年第 2 四半期に共同協議を再開する予定である 。 実質的な協
議は、2012 年に完了し、最終基準は、2013 年初めに発行される予定である。
③リース
両審議会は、協議を完了し、2011 年 12 月に公開草案を発行することを目標とし
ている。両審議会は、コメント期間中、財務諸表の利用者およびリース活動をす
る企業に対して追加的アウトリーチを実施する予定である 。 両審議会は、2013 年
半ばに最終基準を予定している。
④保険契約
両審議会は、現在のところ、2012 年第 2 四半期に主要な技術的議論について、
結論を下すつもりである。FASB は、2012 年第 2 四半期に公開草案を公表する予定
である。IASB は、別の公開草案を公表すべきかまたは最終 IFRS に着手するか否か
を検討している。
公開草案の発行は、両審議会の協議プロセスに同一歩調を取らせることになる
であろう。この計画に基づけば、最終基準は、2013 年に発行できるであろう。
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3)ワーク・プランの更新 (2)(2012 年 4 月 23 日から 2013 年 9 月 23 日)
下記のワーク・プランの更新に関する表 ( 文献 [10]) は、ワーク・プランの
更新 (2)
(2012 年 4 月 23 日から 2013 年 9 月 23 日)
を①ワーク・プランの更新 (2)-1
(更新日 :2012 年 4 月 23 日 ,2012 年 6 月 1 日 ,2012 年 6 月 14 日)②ワーク・プ
ランの更新 (2)-2(更新日:2012 年 7 月 26 日 ,2012 年 10 月 1 日 ,2012 年 10 月
25 日), ③ワーク・プランの更新 (2)-3(更新日:2012 年 12 月 4 日 ,2012 年 12
月 19 日 ,2013 年 2 月 26 日), ④ワーク・プランの更新 (2)-4(更新日:2013 年
3 月 25 日 ,2013 年 4 月 30 日 ,2013 年 5 月 30 日), ⑤ワーク・プランの更新 (2)-5
(更新日:2013 年 6 月 21 日 , 2013 年 7 月 29 日 ,2013 年 9 月 23 日)に分けて、
表示したものである。
ワーク・プランの更新 (2)-1
プロジェクト
公表物
更新日
2012 年 4 月 23 日
更新日
2012 年 6 月 1 日
更新日
2012 年 6 月 14 日
金融商品
分類および
ED
測定(見直し) 最終基準書
減損
再 ED
最終基準書
一般的な
ヘッジ会計
マクロ・
ヘッジ会計
リース
2012 年 3Q-4Q
(記載なし)
2013 年上半期
2012 年 4Q
(記載なし)
2012 年 4Q
(記載なし)
変更なし
(記載なし)
2013 年前半
変更なし
(記載なし)
2013 年前半
レビュー・
ドラフト
2012 年 2Q
変更なし
変更なし
最終基準書
2012 年 3Q-4Q
変更なし
変更なし
討論資料
2012 年 3Q-4Q
(または ED)
変更なし
変更なし
変更なし
2012 年 4Q
再 ED
最終基準書
収益の認識
2012 年 3Q-4Q
(記載なし)
2013 年上半期
2012 年 3Q-4Q
(記載なし)
2013 年半ば
コメント検討 2012 年 2Q-3Q
2012 年下半期
最終基準書
(記載なし)
2013 年初め
(記載なし)
2012 年 2Q-4Q
(記載なし)
(記載なし)
2013 年前半
変更なし
2012 年後半
(記載なし)
2013 年初め
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ワーク・プランの更新 (2)-2
更新日
2012 年 7 月 26 日
更新日
2012 年 10 月 1 日
更新日
2012 年 10 月 25 日
分 類 お よ び ED
測 定( 見 直
し)
2012 年 4Q
変更なし
変更なし
減損
改訂 ED
2012 年 4Q
変更なし
変更なし
一般的な
ヘッジ会計
レビュー・
ドラフト
2012 年 3Q
-(2012 年 9 月
公表済)
最終基準書
2012 年 4Q
変更なし
変更なし
マクロ・
ヘッジ会計
討論資料
2012 年 3Q-4Q
2013 年 1Q-2Q
変更なし
リース
ED
2012 年 4Q
2013 年 1Q
変更なし
収益の認識
コ メ ン ト 検 2012 年 2Q-4Q
討(再審議)
2012 年 3Q-4Q
2012 年 4Q
最終基準書
変更なし
変更なし
更新日
2012 年 12 月 4 日
更新日
2012 年 12 月 19 日
更新日
2013 年 2 月 26 日
分 類 お よ び 再審議
測 定( 見 直
し)
2013 年 2Q
変更なし
変更なし
減損
改訂 ED
2013 年 1Q
変更なし
変更なし
一般的な
ヘッジ会計
最終基準書
2013 年 1Q
変更なし
変更なし
マクロ・
ヘッジ会計
討論資料
2013 年 1Q-2Q
変更なし
変更なし
リース
改訂 ED
2013 年 1Q
変更なし
2013 年 2Q
収益の認識
最終基準書
2013 年 1Q-2Q
変更なし
2013 年 2Q
プロジェクト
公表物
金融商品
2013 年 1Q-2Q
ワーク・プランの更新 (2)-3
プロジェクト
公表物
金融商品
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U.S.GAAP と IFRS のコンバージェンスの変遷(2)
ワーク・プランの更新 (2)-4
更新日
2013 年 3 月 25 日
更新日
2013 年 4 月 30 日
更新日
2013 年 5 月 30 日
分 類 お よ び 再審議
測 定( 見 直
し)
2013 年 2Q-3Q
変更なし
変更なし
減損
再審議
2013 年 3Q
変更なし
変更なし
一般的な
ヘッジ会計
最終基準書
2013 年 2Q-3Q
変更なし
2013 年 3Q
マクロ・
ヘッジ会計
討論資料
2013 年 2Q-3Q
2013 年 3Q
変更なし
リース
改訂 ED
2013 年 2Q
変更なし
変更なし
2013 年 5 月
公表済み
再審議
-
-
2013 年 4Q
最終基準書
2013 年 2Q
変更なし
2013 年 3Q
変更なし
更新日
2013 年 6 月 21 日
更新日
2013 年 7 月 29 日
更新日
2013 年 9 月 23 日
プロジェクト
公表物
金融商品
収益の認識
ワーク・プランの更新 (2)-5
プロジェクト
公表物
金融商品
分類および
測定(見直
し)
再審議
2013 年 2Q-4Q
2013 年 3Q-4Q
最終基準書
-
-
減損
再審議
2013 年 3Q-4Q
変更なし
最終基準書
2014 年 1Q-2Q
2014 年 1Q-2Q
一般的な
ヘッジ会計
最終基準書
2013 年 3Q
2013 年 3Q-4Q
2013 年 4Q
マクロ・
ヘッジ会計
討論資料
2013 年 3Q-4Q
変更なし
2013 年 4Q
リース
再審議
2013 年 4Q
変更なし
変更なし
収益の認識
最終基準書
2013 年 3Q
変更なし
2013 年 4Q
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Ⅳ むすび
IASB と FASB(文献 [10])による、最新のワーク・プランの更新(2013 年
12 月 17 日)と各プロジェクト(金融商品、保険契約、リース、収益の認識)
の状況を提示することによって、
「むすび」に代える。
ワーク・プランの更新(2013 年 12 月 17 日)
プロジェクト
公表物
マイルストーン
① IFRS9 金融商品
(IAS39 の置き換え)
① -1 分類および測定
(軽微な修正)
最終基準書
2014 年 1Q-2Q
① -2 減損
最終基準書
2014 年 1Q-2Q
① -3 マクロ・
ヘッジ会計
討論資料
2014 年 1Q
②保険契約
再審議
2014 年 1Q
③リース
再審議
2014 年 1Q
④収益の認識
最終基準書
2014 年 1Q
<各プロジェクトの状況>
プロジェクト
状況
① IAS39 金融商品 ( 置き換え )
IASB および FASB は、2008 年 3 月に、討論資料「金融商品の報
フェイズ1:
分 類 お よ び 告における複雑性の減少」を公表した。この討論資料の公表に続い
て、IASB は、金融商品の会計を再検討するためのプロジェクトを
測定
3つのフェイズに分けることを決定した。分類および測定は、金融
商品会計の基礎であり、したがって、第一フェイズである。
IFRS9「金融商品」は、2009 年 11 月に公表された。IFRS9 は、金
融資産についての要求事項を含んでいた。金融負債についての要求
事項は、2010 年 10 月に IFRS9 に追加された。IFRS9 のほとんどの
要求事項は、IAS39 から変更されることなく繰り越されてきた。し
かしながら 、 企業自身の信用リスクの問題を扱った金融負債に対す
る公正価値オプションについては、変更された。
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U.S.GAAP と IFRS のコンバージェンスの変遷(2)
IASB によれば 、IFRS9 プロジェクトの減損フェイズが未だ完成
していないので、2015 年 1 月 1 日という強制的施行日においては、
企業が新基準を適用するに十分な時間を用意できないであろうと決
定された。したがって、IASB は、新施行日は、IFRS9 プロジェク
ト全体が完成に近づく時点で決定すべきであると決めた。2013 年
11 月に IFRS9 に対してなされた修正は、IFRS9 から強制的施行日を
除去した。しかしながら 、 企業が、IFRS9 を直ちに適用することを
選択する場合も依然としてあるだろう。
< IFRS9 に対する軽微な修正>
両審議会は、2011 年 12 月 15 日に、IFRS9 に対する軽微な修正
の実施を検討することを決定した。IASB は、2012 年 11 月 28 日に、
公開草案「分類および測定:IFRS9 に対する軽微な修正」
(IFRS9(2010
年)修正案)を発行した。
減損の方法は、IAS39「金融商品:認識と測定」を置き換えるた
フェイズ 2:
めのプロジェクトの第二フェイズである。このフェイズの目標は、
減損の方法
償却原価による測定を改善することによって、利用者の財務諸表の
有用性を、特に、貸付金に関する損失および金融資産の信用の質に
対する引当金の透明性を改善することである。IAS39 は、金融資産
に対して償却原価で測定する「発生済み損失の減損アプローチ」を
要求している。このアプローチは、それが償却原価による金融資産
に関する会計の基本的欠陥であるとして、多くの理由で批判されて
きた。金融危機により、
これらの多くの批判が全面に押し出された。
結果として、IASB は、代替的方法を追求することを決定した。
IASB は、2008 年 3 月、金融商品の会計における複雑性の減少に
関する基本的見解を眼目とした討論資料を公表した。また、
IASB は、
2009 年 6 月 25 日に、
金融資産の減損に対する予想キャッシュフロー
アプローチの柔軟性に関するコメントを求めた情報のための要求書
を公表した。さらに、IASB は、2009 年 11 月 5 日に、金融資産の
減損に対する予想キャッシュフローアプローチを用いた公開草案を
公表した。IASB にとって、この資料(金融商品:減損)は、公開
草案「金融商品:償却原価と減損」に対する補足資料である。この
資料に対するコメントの締め切りは、2011 年 4 月 1 日であった。
IASB は、2013 年 3 月 7 日に、公開コメントのために、金融商品
の減損に関する改訂案「金融商品:予想信用損失」を公表した。こ
の提案は、予想信用損失をよりタイムリーに認識する、より先を見
込んだ引当モデルを開発するこれまでの作業に基づいて構築されて
いる。この公開草案に対するコメントは、2013 年 7 月 5 日までに
受理されるであろう 。
公開草案「金融商品:予想信用損失」が、
2013 年 3 月に公表された。
コメント期間は、2013 年 7 月 5 日に終了し、再協議が継続している。
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フェイズ 3:
このプロジェクト(マクロ・ヘッジ会計)の目標は、企業のリ
ヘッジ会計
スク管理活動と密接に連携するオープン・ポートフォリの状況のも
とで、ヘッジ会計の要求事項を開発することにより財務諸表の有用
性を改善することである。このプロジェクトは、当初、IFRS9 の第
三フェイズ:「ヘッジ会計」の一部であった。それは、2012 年 5 月
に、IFRS9 プロジェクトから独立したプロジェクトに分離した。2
つのプロジェクトを分離することによって、IFRS9 の完成が促進さ
れ、スタッフは、マクロ・ヘッジ会計に関する広範な利害関係者か
ら、より広範な代替的会計処理を引き出すことができた。
IASB は、2013 年 11 月 19 日に、IFRS9「金融商品」(2013 年)を
公表した。
②保険契約
このプロジェクトの第一フェイズは、IFRS4「保険契約」が 2004
年 3 月に発行された時点で完成した。IFRS4 は、保険会社による会
計に軽微な改善を与え、保険契約からの将来キャッシュフローの金
額、時期および不確実性に関するディスクロージャーを高めた。し
かしながら 、IFRS4 は、保険会社が長年にわたって開発してきた多
様な会計実務を使用続けることを許容する暫定基準を意図したもの
にすぎなかった。それは、包括的な基準の完成を延期したままであ
る。
現在実施されているこのプロジェクトの第二フェイズは、現行
IFRS4 を置き換えるための新基準をもたらすであろう 。 この基準は、
すべてのタイプの保険契約を会計処理するための単一の原則主義フ
レームワークを提供することによって、現行実務の矛盾および欠陥
を除去するであろう 。 第二フェイズは、また、企業間の比較可能性
を高めるために、表示およびディスクロージャーに関する要求事項
を提供するであろう 。
審議会は、2010 年 7 月に、2010 年 10 月 30 日を締切日とする 4 ヶ
月のコメント期間付きの公開草案「保険契約」を発行した。この公
開草案における提案は、IFRS4「保険契約」を置き換えることにより、
現行実務の矛盾および欠陥を除去するであろう 。 それ以来、審議会
は、FASB と共同で公開草案における提案を再検討してきた。保険
契約プロジェクトは、MoU ではないけれども、IASB および FASB は、
共同で作業し、多くの決定に基づいて類似の意思決定に到達した。
IASB は、2012 年 9 月に、その提案を再公開する決定をした。そ
の再公開には、限られた範囲の問題点に関するフィードバックだけ
が求められている。
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U.S.GAAP と IFRS のコンバージェンスの変遷(2)
③リース
両審議会は、2009 年 3 月に発行された討論資料「リース:予備
的見解」ならびに 2010 年 8 月に公表された IASB の最初の公開草案
「リース」および FASB の更新された会計基準案「リース」
(Topic840)
に対するコメントを検討した後に、再公開草案を開発した。
現行のリースの要求事項に関する多くの問題点は、財務諸表に
おけるオペレイティング・リースの借手の会計処理に関連するもの
であるが、貸手について現行のリース会計モデルを保持すると、借
手の会計処理について提案されているアプローチと整合しなくな
り、財務報告がさらに複雑になる。さらに、両審議会は、両方が収
益の認識に関する提案を開発するのと同時に貸手の会計処理を検討
することが、有益であろうと結論づけた。したがって、この公開草
案は、借手の会計処理と貸手の会計処理の両方に対する変更を提案
している ([9],p.5)。
④収益の認
両審議会は、2008 年 12 月に、討論資料「顧客との契約における
識
収益の認識に関する予備的見解」を公表した。この討論資料は、収
益に関する両審議会の当初の見解を説明したものであり、それには、
両審議会が将来の基準の基礎として提案したいくつかの原則が含ま
れている。両審議会は、この討論資料について受理したフィードバッ
クを検討した後に、それらの原則を基準案へと展開した。
両審議会は、2010 年 6 月に、公開草案「顧客との契約から生じ
る収益」を公表した(FASB 版では、更新された会計基準書案であっ
た)。両審議会は、2010 年の公開草案に関する 1,000 通近くのコメ
ントを受理し、これに対応して、2010 年 6 月の提案について様々
な側面を改訂した。それらの改訂は、両審議会のデュー・プロセス
手続に従って、一般のコメントを求めるための再公開を必要とする
ものではなかったが、両審議会は、収益の財務報告がすべての企業
にとって重要であることや、最終基準から不本意な結果が生じるこ
とを避けたいという観点から、本提案を再公開することを決定した
([7],p.6)。
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【参考文献】
[1] FASB and IASB, A Joint Statement of the FASB and IASB , FASB and IASB
Reaffirm Commitment to Memorandum of Understanding (5 November 2009).
[2] IASB and FASB, Quarterly Progress Report IASB and FASB Commitment to
Memorandum of Understanding(31 March 2010).
[3] FASB and IASB, A Joint Statement of the FASB and IASB on their Convergence work
(2 June 2010).
[4] IASB and FASB, Progress Report on Commitment to Convergence of Accounting
Standards and a Single Set of High Quality Global Accounting Standards (24 June
2010).
[5] , Progress Report on Commitment to Convergence of Accounting Standards and a
Single Set of High Quality Global Accounting Standards(29 November 2010).
[6] , Progress report on IASB-FASB convergence work(21 April 2011).
[7] ,Exposure Draft Revenue from Contacts with Customers (IASB and FASB,2011)
[8] , IASB-FASB Update Report to the FSB Plenary on Accounting Convergence (5
April 2012).
[9] , Revised Exposure Draft Leases (IASB and FASB 2013)
[10] , Work plan-projected targets as at 17 December 2013 (17 December 2013).
[11] あずさ監査法人 , IFRS Digest No.11-2「国際財務報告基準(IFRS)を巡る動向
(2011 年 5 月~ 7 月中旬まで )」(July 2011) から IFRS Digest No.12-3「国際財務
報告基準(IFRS)を巡る動向 (2012 年 3 月 1 日~ 2012 年 3 月 31 日まで )」(March
2012)
, IFRS Digest No.13-4「国際財務報告基準(IFRS)を巡る動向
[12] (2012 年 4 月 1 日~ 4 月 30 日まで )」(April 2012) から IFRS Digest No.13-9「国
際財務報告基準(IFRS)を巡る動向 (2013 年 9 月 1 日~ 2013 年 9 月 30 日 )」
(September 2013).
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