ポスター - 神奈川県産業技術センター

2PS-2302
平成26年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿
平成 26 年度神奈川ものづくり技術交流会予稿
小型流体軸受スピンドルの特性評価
東海大学 工学研究科 機械工学専攻
東海大学 工学部 機械工学科
2.実験装置および方法
2.1.スピンドルの構造
図 1 に 2.5 インチ用スピンドルの断面図を示す.スピ
ンドルは,シャフト,ハブ,ジャーナル油膜軸受,スラ
スト油膜軸受で構成されている.油膜軸受では,軸が高
速回転した際に軸受面で圧力が発生し,アキシアル方向
およびラジアル方向の荷重を非接触で支持することが可
能である.
2.2.加振実験装置
図 2 に加振実験装置の外観を示す.加振実験装置を用
いてスピンドルにアキシアル方向の振動を与え,磁気デ
ィスクの上部に設置した渦電流式変位計でディスクの加
振応答変位を測定する.渦電流式変位計は,FFT アナラ
イザを介してノート PC と接続されている.また,加速
度センサを用いることで振時の衝撃も同時に測定する.
2.3.実験方法
図 3 に測定位置を示す.同図のように Zx と Zy の 2 か
所を本実験での測定位置とした.本実験ではスピンドル
の回転数を 7200[rpm]に設定し,加振周波数を 50[Hz]か
ら 800[Hz]まで変化させ振動応答変位を測定する.また,
加振衝撃は 5,10,20[G]とする.
スラスト油膜軸受
図1
磁気ディスク
スピンドルの断面図
FFT アナライザ
ノート PC
加速度センサ
渦電流式変位計
スピンドル
加振実験装置
Z
Y
X
図 2 加振実験装置の外観
16[mm]
Zx 測定位置
Y
Zy 測定位置
X
図 3 測定位置
30
20
5[G]
10[G]
20[G]
10
0
0
200
400
600
800
400
600
800
加振周波数 f [Hz]
(a) Zx の加振応答変位
30
変位 Zy [µm]
3.実験結果
図 4 に本実験より得られた加振応答変位を示す.同図
(a),(b)はそれぞれ Zx,Zy の加振応答変位を示している.
Zx,Zy 共に加振衝撃が大きいほど加振応答特性が大きく
な る こ と が 確 認 さ れ た . 加 振 周 波 数 が 400[Hz] か ら
700[Hz]の間で変位が著しく上昇していることが確認さ
れた.このことから,スピンドルの固有振動数が関係し
ていると考えられる.
4.参考文献
(1) M. Miwa, H. Miyazaki, R. Kaneko, and H.
Unozawa, “Evaluation of Fluid Dynamic Bearing
Spindle
by
Vibration
Base”
IEEE
TRANSACTIONS ON MAGNETICS, VOL. 41,
NO. 2, FEBRUARY 200
ジャーナル油膜軸受
シャフト
ハブ
変位 Zx [µm]
1.はじめに
近年,情報化社会の発展に伴って情報のデジタル化が
進み,爆発的に増大したビッグデータを管理,保存する
手段として,クラウドコンピューティング(以降,クラ
ウド)と呼ばれるサービスに注目が集まっている.クラ
ウドの基盤であるデータセンタの記憶装置には,低コス
ト,高記録密度,高速転送速度(1)といった利点を有する
Hard Disk Drive(以降,HDD)が多く用いられている.
しかし,HDD は振動や衝撃に弱く,自然災害などの大き
な衝撃で軸と軸受が接触することで,HDD が故障し,重
要なデータの消失につながる恐れがある.そのため,自
然災害の中でも特に頻発する地震の縦揺れを模擬した加
振実験を行い,HDD の特性評価を行う必要がある.
そこで,本研究では独自にコイルを作製し,それを搭
載した HDD 用小型スピンドルの縦揺れ振動特性につい
て検討したので報告する.
○原田 啓
落合 成行、橋本 巨、砂見
20
5[G]
10[G]
20[G]
10
0
0
200
加振周波数 f [Hz]
(b) Zy の加振応答変位
図 4 加振応答変位
2PS-2303
平成26年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿
陽極酸化アルミナ多孔質板をテンプレートとした
酸化ニッケル/金コアキシャルナノロッドアレイ膜の特性
○水越
山田
1. はじめに
我々は、現在までにポリカーボネート(PC)多孔質膜を
テンプレートとして、無電解メッキや電解析出により金
ナノロッドが立った状態で下地金膜に固定化されたアレ
イ構造(Au-NRM)を作成し、その光学特性やエレクトロ
クロミック(EC)物質を同心円状に固定化した複合膜の
特性について検討してきた。[1,2]PC 膜から得られた金
ナノロッドは下地に対して傾く傾向があり、ロッドの傾
きが大きくなるほど、EC 物質の膜断面方向の光路長は
短くなることが明らかとなった。このことから、現行の
テンプレートから得られる Au-NRM では、これ以上の
EC 物質の薄膜化や EC 応答の高速化は困難と考えられ
た。そこで、本研究では理想的な直立ナノロッドを得る
ために、陽極酸化アルミナ(AAO)板をテンプレートとし
て Au-NRM を作成し、今回は EC 物質として代表的物
質である酸化金属の酸化ニッケル(NiO)を被膜し、ロッ
ドの長さや EC 物質の膜厚の違いによる特性を検討した。
3. 結果
金析出時の電解電気量により得られる金ロッドの長さ
を制御できた。図 1 には、代表的な条件で作成した
NiO/Au 複合体ナノロッドアレイ膜の FE-SEM 断面画
像を示した。図 2 に平均ロッド長と⊿Ref.の関係図を示
した。これらのロッドには膜厚 80 nm の酸化ニッケル薄
膜が固定化されている。ロッド長の増加に伴い⊿Ref.も
増大するが、ロッド長 3 µm 以上では⊿Ref.は 5.8%より
大きくならなかった。図 3 に酸化ニッケル膜厚と⊿Ref.
の関係図を示した。
膜厚は50 nm以上では⊿Ref.は5.8%
より大きくならなかった。これらの結果から、EC 特性
の最適な条件はロッド長3 µm、
酸化ニッケル膜厚50 nm
と結論づけた。図 4 に最適条件での EC 変化の時間応答
優貴
を示した。図 4 に示すように応答時間は着色(酸化)に
0.62 秒、
消色(還元)に0.85秒と、
良好な結果が得られた。
6.0
5.8
5.6
5.4
5.2
5.0
4.8
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
Leangth / nm
Fig. 2 Relationship between ⊿
Ref. and rod length. The
dependences of the ⊿Ref. on the
rod length were discussed for the
coaxial membrane with the same
NiO film thickness (85 nm).
Relationship between ⊿Ref. and
the film thickness.
Fig. 1 FE-SEM image of
the obtained product film
on the Au-NRM prepared
by a typical condition (Rod
from 1h deposition, and
product film from 40 min.
deposition).
5.6
-0.3 V
8
Reflectance / %
5.4
⊿Ref. / %
2. 実験方法
市販の空孔直径 200 nm、厚さ 60 µm の AAO 板をテ
ンプレートに使用し、ナノ空孔内に金ロッドを電解析出
させた。金の電解析出は、参照電極に銀・塩化銀電極、
対向電極に白金線を用い、亜硫酸金ナトリウム(10 mM)
水溶液を含む電解液中で-1.0 V の定電位電解を行った。
電解後の金膜から、AAO テンプレートを 1 M 水酸化ナ
トリウム水溶液中で溶解除去し、Au-NRM を得た。
得られた Au-NRM を塩化ニッケル(Ⅱ)六水和物(25
mM)水溶液に浸し、-0.6 V の定電位電解を 40 分行い
Au-NRM に NiO 薄膜を固定化した。得られた NiO/Au
複合体ナノロッドアレイ膜を 1 MKOH 水溶液中で-0.3
V と+0.7 V を印加した際の EC による反射率変化量(⊿
Ref.、着色量に相当)と EC 変化の応答時間を測定した。
康裕
勝実、田中
⊿Ref. / %
東京工芸大学大学院 工学研究科
東京工芸大学 工学部
5.2
5.0
4.8
6
4
+0.7 V
4.6
4.4
0
20
40
60 80 100 120 140 160
Film thickness / nm
Fig. 3 Relationship between
⊿Ref. and rod length. The
dependences of the ⊿Ref. on
the NiO film thickness were
discussed for the coaxial
membrane with the same rod
length (3 mm).
2
0
30
60
90
120
150
Time / s
Fig. 4 Changes in the
reflectance at 700 nm for the
NiO/Au composite nano-rod
array membrane (Rod from
3h deposition, and NiO
film from 40 min. deposition)
during continuous potential
switching between +0.7 V
and –0.3 V.
参考文献
[1] K. Yamada, K. Seya, G. Kimura, .Synth.Met. 159,188-193(2009).
[2] G. Kimura, K.Yamada, Synth.Met. 159,914-918(2009).
2PS-2304
平成26年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿
ナノスケール熱分析技術に関する研究(ナノカロリメトリ用多点温度較正試料の開発)
明治大学大学院 理工学研究科 ○大聖 多郎
1.はじめに
当研究グループではカンチレバー型MEMSカロリメ
ータを開発し,微小試料に対する複合熱分析技術の開発
を行っている.開発されたナノカロリメータを用いて熱
分析を行うには事前に複数の低融点金属の融点を利用し
て,測温抵抗体の非線形な抵抗値変化を温度に較正する
必要がある.しかし,カンチレバー部からの較正試料の
脱着作業は極めて困難であり,カロリメータを破損する
恐れがあった.そこで本研究では,単一で複数点の温度
が較正可能な多点温度較正試料の開発を行っている.
明治大学 理工学部 中別府 修
図 1 Cu-Sn 合金の状態図と高温熱分析用カロリメータ
2.簡易 DTA 実験
Cu-Sn 合金の 2 元系状態図を図1に示す.Cu-Sn 合金
の固相は銅と錫の配合比とその温度により結晶構造が異
なり,昇温時には相転移に伴い吸熱反応を示す.バルク
状の Cu-Sn 合金における相転移の発現の仕方を調べる
ために,0.2g 程度の Cu-Sn 合金に対して簡易的な DTA
(示差熱分析)実験を行った(図 2)
.Cu-wt.30%Sn 合
金は 2 箇所,
Cu-wt.50%Sn 合金は 3 箇所,
Cu-wt.70%Sn
合金は 4 箇所の相転移が確認された.発現の温度間隔を
考慮し,銅と錫の質量配合比が 30~50%の試料がナノカ
ロリメータの温度較正試料に適するとした.
3.高速 DTA 実験
製作した較正試料の適用性を示すために,高温熱分析
用カロリメータ(図 1 )を用いて 100g 程度の
Cu-wt.50%Sn合金に対する高速熱分析実験を行った
(図
3)
.温度走査用ヒータにプログラムされた電圧(振幅:
9.5V,周期 0.25Hz)を印加し,2 秒で室温から 550 oC
まで昇温し室温まで降温する温度走査を行った.昇温時
の DTA 曲線上にインジウムの融解反応(156.6 oC)に加
えて,239oC で 1 つの明瞭なピークと,389 oC と 453 oC
で 2 つの小ピークを確認した.これらは簡易 DTA 実験
の trans.2~4 に該当する.インジウムによる温度較正と,
簡易 DTA 実験で得た相転移温度を基にし,trans.2~4
を用いて温度較正を行い,それぞれの結果を図 4 に示し
た.室温とインジウムによる較正結果は温度変化の非線
形性を無視しているのに対して,室温と多点温度較正試
料の相転移点による温度較正では,測温抵抗体の温度特
性が温度差の 2 次式として表された.
4.まとめ
簡易 DTA 実験より温度較正試料に適した銅と錫の質
量配合比を 30~50%とした.Cu-wt.50%Sn 合金試料の
高速 DTA から,この試料が trans.2~4 に対応する吸熱
反応をとることを示した.これらの相転移を用いて,測
温抵抗体の温度特性が温度差の 2 次式として表され,単
一試料による温度較正手順を確認した.
図 2 簡易 DTA 実験結果
図 3 Cu-wt.50%Sn 合金に対する高速熱分析結果
図 4 Cu-wt.50%Sn 合金を用いた温度較正
2PS-2305
平成26年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿
CVD(化学気相堆積)法によるポリシリコン半導体薄膜の作製とその評価
神奈川県産業技術センター 電子技術部
○黒内 正仁、湯淺 宏康、小沢 武
1. はじめに
ポリシリコン半導体薄膜は大規模集積回路を構成する
上で重要な材料として知られ、半導体素子の活性層領域
やゲート電極 1)など電子デバイスを作製する上で幅広い
用途がある。当センターの熱 CVD (Chemical Vapor
Deposition:化学気相堆積)法の成長装置はホットウォー
ル式でウェハは縦置きにする仕様である一方で、最近ポ
リシリコンの成膜依頼が多いのはチップ形状の試料であ
り、これに対応するためには試料を横置きにする必要が
ある。ところが、従来の条件を用いて横置きの構成で成
膜を行うと面内不均一がみられたために、成膜条件の再
検討が必要である。そこで本研究では横置きの構成での
ポリシリコンの成膜条件を検討したのでその結果を報告
する。
ともに、面内分布はシート抵抗で 10~12%程度、膜厚で
3%程度となり、均一性の高い膜を得ることに成功した。
参考文献
1) 化学工業会編,“CVD ハンドブック”,朝倉書店,P.
120(1991)
.
表 1 ポリシリコン薄膜の成膜条件
条件
温度
SiH4流量
B2H6 (3%H2希釈)流量
Ar流量
圧力
成膜時間
2. 実験方法
熱酸化膜付きの 3 インチウェハを横置きの構成で熱
CVD 装置に導入して、表 1 に示す条件でボロンをドー
プしたポリシリコンを成膜した。ここで成膜圧力を従来
条件である 67 Pa と低圧にした 27 Pa で成膜を行い、依
存性を検討した。成膜時間は目標膜厚が 800 nm 前後と
なるように設定した。
作製した試料は 4 探針法でシート抵抗を測定した。ま
た、触針式段差計で膜厚の評価を行った。
3. 結果
67 Pa の条件で作製した試料は表面の荒れが原因と思
われる曇った表面が見られたが、27 Pa の条件で作製し
た試料は全面的にミラーライクな表面となり、表面平坦
性の改善が見られた。作製した試料のシート抵抗分布を
評価した結果は図 1 に示すようになった。この結果をも
とにシート抵抗の平均値A 、標準偏差σ 、σ /A を評価
した結果を表 2 に示す。圧力を 67 Pa から 27 Pa にする
ことによって、シート抵抗が大きく下がるとともに、
σ /A が 15%程度から 10~12%程度になり、面内分布が
より均一になったことを確認した。作製した試料の膜厚
は 67 Pa の試料では約 720 nm であり、成膜レートは約
24 nm/min となった。27 Pa の試料では詳細に膜厚分布
を評価した結果、平均膜厚A は上流側ウェハで約
820 nm(成膜レート:約 11 nm/min)、下流側ウェハで約
890 nm(成膜レート:約12 nm/min)となった。
標準偏差σ
の比率σ /A は上流側ウェハで 3.0%、下流側ウェハで
2.8%となり、均一性の高い膜であることが確認された。
4. まとめ
既存の縦置き方式の熱 CVD 装置でチップ形状試料へ
の成膜に適した横置きの構成における成長条件の検討を
行った。低い成膜圧力にすることで平坦性が改善すると
650℃
(炉内温度: 680~690℃)
15 sccm
30 sccm
60 sccm
67 Pa
27 Pa
30 分
75 分
図 1 作製した試料のシート抵抗の分布
表 2 シート抵抗の統計処理結果
(a) 67 Paでの成膜結果
A(平均)
上流
下流
173 Ω/□
185 Ω/□
σ(標準偏差) 26.3 Ω/□ 29.2 Ω/□
σ/A
15.2%
15.8%
(b) 27 Paでの成膜結果
上流
A(平均)
下流
31.8 Ω/□ 55.5 Ω/□
σ(標準偏差) 3.20 Ω/□ 6.56 Ω/□
σ/A
10.1%
11.8%
2PS-2306
平成26年 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿
巻線応力がリング試料の直流磁気特性に及ぼす影響(Ⅱ)
神奈川県産業技術センター
電子技術部
1. はじめに
磁性材料は発電機や電磁弁などの鉄心や磁気回路の構
成部として広く使用されている。この磁性材料の直流磁
化特性を測定する方法の一つにリング状試料を用いた積
分方式直流 B-H 測定方法がある。この測定方法では一次
と二次のコイル巻線および絶縁テープを直接試料に巻い
た場合は試料に応力が加わる。前報では大きな正の磁歪
定数を持つパーメンジュール(CoFeV)を用いて,この手
巻き程度の巻線応力でも磁化特性が大きく影響を受ける
ことを確認した。
本研究では,巻線応力による磁化特性への影響に関す
る知見をさらに蓄積するために,負の磁歪定数を持つ材
料の巻線応力による直流磁化特性への影響について調べ,
正の磁歪定数を持つ材料の場合と比較・検討を行った。
2. 実験
負の磁歪定数を持つ材料には Ni を用いた。試料の形
状は外径 45 mm,内径 37.5 mm,高さ 3 mm のリング
状のものとし,試料に巻線応力が加わらないようにする
ための樹脂ケースには,外径が 48 mm,内径 34.5 mm,
高さ 6.6 mm のものを用いた。巻線は一次コイルに 140
ターン,二次コイルに 40 ターンを手巻きした。
リング試料の積分方式直流 B-H 測定には,理研電子
(株)製の B-H カーブトレーサ BHU-60 を用いた。測定に
は同一のリング試料を用いて,先にリング試料を樹脂ケ
ースに入れてコイル巻きして無応力状態の B-H 曲線を
測定し,次に巻線を取り除きケースから取り出した後,
リング試料に直接コイルを手巻きして,試料に巻線応力
が掛った状態の B-H 曲線を測定した。ケースに入れた試
料の測定結果については,二次コイルとリング試料間の
空隙補正を行った。
3. 結果と考察
250 A/m の磁界強度でパーメンジュールを測定したと
きと,1000 A/m の磁界強度で Ni を測定したときの巻線
応力による B-H 曲線の変化をそれぞれ図 1 と図 2 に示
す。初磁化曲線の比較からパーメンジュールでは,コイ
ルを直接巻いてリング試料に巻線応力を与えたときの方
が,ケースに入れて試料に掛かる巻線応力を無くしたと
きよりも磁化がし易くなった。これとは逆に,Ni ではコ
イルを直接巻いてリング試料に巻線応力を与えたときの
方が,磁化がし難くなった。リング試料に加わる巻線応
力の方向が,試料の円周方向に発生する磁界と直交して
いることから,この結果は逆磁歪現象と合致している。
しかし,磁歪定数の正負に関係なく初磁化曲線は,消磁
状態から磁界強度 Hh(パーメンジュール:24 A/m,Ni:
286 A/m)の強さに至るまで巻線応力の有無に関係なく
一致した。磁界強度が Hh より強くなると初磁化曲線は
○馬場
康壽
ずれ始めて巻線応力の影響が現れた。
測定磁界強度が Hh より弱い 250 A/m における Ni の
B-H 曲線を図 3 に示す。B-H 曲線はヒステリシスを持っ
ていることから,この磁界強度での磁化は非可逆的磁壁
移動領域の磁化過程である。また,ヒステリシス曲線は
巻線応力の有無に関係なくほぼ一致した。したがって,
巻線応力は可逆的磁壁移動領域と初期の非可逆的磁壁移
動領域の直流 B-H 特性に影響しないことが分かった。即
ち,可逆的磁壁移動領域にある初透磁率は手巻き程度の
巻線応力の影響は受けない。
図1 パーメンジュールのB-H 曲線(H=250A/m)
図 2 Ni の B-H 曲線(H=1000A/m)
図 3 Ni の B-H 曲線(H=250A/m)