移乗動作に着目した 介護用パワーアシストスーツの研究開発

法政大学大学院理工学・工学研究科紀要
Vol.55(2014 年 3 月)
法政大学
移乗動作に着目した
介護用パワーアシストスーツの研究開発
DEVELOPMENT OF POWERED SUIT FOR ASSISTING TRANSFER WORK
瀧川 大地
Daichi TAKIAGWA
石井
千春
法政大学大学院工学研究科機械工学専攻修士課程
This paper presents a new powered suit aiming at reduction of burden of a care giver's waist in transfer
work. In order to make an attachment and a detachment of the powered suit easy, lightweight overalls with
high pliability is used. Then, the simple structured powered suit in which an artificial muscle is attached on the
back of the overalls was built. The effectiveness of the proposed powered suit was evaluated by using
integrated electromyogram. In addition, by performing identification of an action in the transfer work using a
tilt sensor and a pressure sensor, a method of carrying out automatic detection of the timing which makes the
powered suit generate assistance force, was proposed
Key Words : Powered suit, Artificial muscle, Transfer work, Identification of action
1. 諸言
発が進んでいる.例えば,超音波モータをアクチュエー
近年,日本社会の高齢化に伴い,介護の需要が高まっ
タ ー と し て 使 用 し た パ ワ ー ア シ ス ト ス ー ツ [3] や ,
ている.高齢者などの要介護者をベッドから車椅子や便
McKibben 型ゴム人工筋肉使用し,重量物を持ち上げる
座へ移乗させる場合に,介護者は前屈みの姿勢での力作
際に背筋をサポートするマッスルスーツ[4]や,握力支援
業が強いられる.特に,要介護者を抱え上げる動作や着
を目的として,伸張型湾曲ゴム人工筋肉を使用して開発
座させる際には,介護者の腰の筋肉に慢性的な負荷が加
された肘部パワーアシストウェア[5]などがある.しかし
わる.これにより,介護者が筋膜性腰痛を発症したり,
ながら,これまでに開発されてきたパワーアシストスー
椎間板に無理な負荷がかかり椎間板ヘルニアを発症した
ツの多くは,装脱着およびキャリブレーションに時間が
りする事例が報告されており,問題視されている.最近
掛かる,重量が大きく柔軟性が低いためパワーアシスト
ではスライディングボードやリフトといった移乗用機器
スーツを装着した状態では,アシストの対象となる動作
の開発および導入が奨励されているが,ベッドと車椅子
以外の日常動作が制限される,等の問題がある.
の座面の高さを合わせなければならないことで使用範囲
一方,福祉施設等で移乗作業を行う介護者は,限られ
が限定されることや,大掛かりな装置となり,導入に多
た時間内に多くの要介護者を移乗介助しなければならず,
額の資金が必要とされる場合があるため,普及が進みに
装脱着に時間が掛かるパワーアシストスーツを現場で使
くいというのが現状である.
用するのは困難である.また,パワーアシストスーツを
そこで,様々な研究機関で新たな介護用機器として,
装着した状態で他の作業も支障なく行えることが好まし
人間の動作をサポートするパワーアシストスーツの開発
い.そこで本研究では,移乗作業中における介護者の腰
が盛んに行われるようになった.代表的なものとして,
部の負担軽減を実現するために,比較的安価で,軽量か
佐藤ら(1)が提案した,生体信号によって人間の動作を認識
つ柔軟性が高く,手軽に装脱着が可能な介護用パワーア
し,各関節に設置したモータによって全身の動きを支援
シストスーツを開発することを目的としている.動力源
するパワーアシストスーツ HAL[1]や,八木ら[2]が開発
には,軽量な空気圧アクチュエーターであるゴム人工筋
した,空気圧シリンダと空気圧ロータリーアクチュエー
肉を使用する.また,装脱着を容易に行えるようにする
タを使用し,農業における高齢者の身体的負担を軽減す
ため,安価で柔軟性が高い,ツナギ服を用い,ツナギ服
るためのパワーアシストスーツがある.また,特定の動
の背筋にあたる部分にゴム人工筋肉を組み込んだ簡素な
作または部位をサポートするパワーアシストスーツも開
構造のパワーアシストスーツを提案する.
製作したパワーアシストスーツの有効性を検証するた
め,特に腰への負担が大きいと考えられる「抱え上げ動
作」中の脊柱起立筋の活動量の減少を積分筋電位[6]によ
って評価した.また,介護者は全身を用いて移乗作業を
行うため,移乗介助を行いながらアシストするタイミン
グをスイッチ等で操作するのは困難である.そこで,本
研究では傾斜センサと圧力センサを用いて,移乗動作に
おける動作識別を行い,アシストするタイミングを検出
し,必要に応じてパワーアシストスーツに補助力を発生
させる方法を考案した.さらに,提案した動作識別方法
による識別実験も行った.
2. 移乗作業
(1)
移乗作業中の動作の細分化
移乗作業とは,介護者が要介護者をベッドから車椅子
へ,あるいは車椅子からベッドへ乗せ換える一連の介護
動作である.本研究では特に,ベッドから車椅子への移
Fig.1
Classification of transferring action
乗作業を行う際の介護者の腰部の負担低減を目的として,
パワーアシストスーツにより介護者の脊柱起立筋を補助
する.このため,ベッドから車椅子へ移乗介助を行う間
の介護者の動作を以下のように細分化する.また,この
3. パワーアシストスーツの製作
本研究では,腰痛に最も関係が深いと言われる脊柱起
立筋を支援することにより,腰部の負担軽減を行う.
ときの介護者の動作を Fig.1 に示す.
①直立(Standing straight):直立した状態
②前に屈む(Stooping down):前に屈む動作
③腕を通す(letting arms pass):被介護者の脇の下から腕を
通す動作
(1)
介護者の腰への負荷モーメントの算出
「④抱え上げる」動作から「⑥降ろす」動作の間,介護
者は要介護者を持ち上げているため,脊柱起立筋の支援
が必要と考えられる.また,これら2つの動作において
④抱え上げる(Lifting up):被介護者を抱え上げる動作
は矢状平面上の運動が大部分を占める.そこで,「④抱
⑤転回する(Turning around):車椅子方向に転回する動作
え上げる」動作から「⑥降ろす」動作の間,介護者の上
⑥降ろす(Taking down):被介護者を車椅子に降ろす動作
半身は腰を中心とした回転の静的釣り合いを保つと仮定
⑦腕を離す(Letting arms move away):被介護者を抱えてい
して,矢状平面上において腰に加わる負荷モーメントを
る腕を離す動作
⑧直立に戻る(Returning to standing):直立に戻る動作
算出する.
Fig.2 に示すように,腰まわりの上半身の回転中心を ,
上半身の仰角を ,介護者の肩に加わる力を ,鉛直下方
向と のなす角を ,ゴム人工筋肉の収縮力を , と上
半身のなす角を とする.また, は屈んだ状態での上半
身の背筋の長さ, は直立した状態での背筋の長さ, は
背筋の平均長さを表す.
Fig.2
Human body model
による介護者の腰回りの負荷モーメントを とおく
と,
621 N 以上のゴム人工筋肉を使用する必要がある.そこ
で,本研究では,Fig.3 に示す神田通信工業社製,可動部
は次式で表される.
長 300 mm,最大収縮 80 mm,最大発揮力 1800 N のゴム
(1)
人工筋肉を選定した.
ただし,
,
(2)
とする.
ここで,介護者の肩に加わる荷重を被介護者(一般男
性)の上半身分の体重と仮定して = 360 N,また介護者
の上半身を = 0.6 m の剛体棒として,介護者が被介護者
から腰に受ける最大負荷モーメントを算出すると,
のとき は極値をとり, = 216 Nm の負荷モーメントが
発生する.この腰回りの負荷モーメントを,ゴム人工筋
Fig.3
肉を用いて軽減することを目的とする.
(2)
Artificial muscle
ゴム人工筋肉の選定
パワーアシストスーツのアクチュエーターには,
McKibben 型ゴム人工筋肉を使用する.McKibben 型ゴム
人工筋肉は,ゴムチューブに網目状のスリーブを覆った
構造になっており,ゴムチューブに流体圧が印加される
と,スリーブの網目構造によりゴムチューブは半径方向
には膨張し,軸方向には収縮する.これにより,軸方向
の収縮力を生み出すアクチュエーターである.人間の筋
肉と同様の性質をもち,出力密度が高く,収縮方向にの
(3)
パワーアシストスーツ
本研究では,移乗作業用のパワーアシストスーツの開
発を目的としているため,現場でのニーズを考慮して,
以下の条件が要求される.
・時間が掛からず,容易に装脱着が可能であること
・パワーアシストスーツを装着した状態で様々な作業が
行えるように,軽量かつ柔軟性が高いこと
・安価であること
これらの条件を満たすように,装脱着が比較的容易な
み仕事をするという特徴がある.
パワーアシストスーツの装着を想定した介護者役 A
(22
歳,身長 1.66 m,体重 53 kg)において,直立した状態と
前屈した状態において,最大 80 mm の背筋の伸びを観測
した.すなわち,次式が成り立つ.
ツナギ服の背筋の部分に人工筋肉を組み込んだ簡素な構
造のパワーアシストスーツとした.これにより,パワー
アシストスーツ本体の重量は 2 kg と軽量で柔軟性がある
ため,介護者の動作を阻害しにくいという特長がある.
本研究で製作したパワーアシストスーツを Fig.4 に示す.
mm
(3)
背中部と腰部のアルミプレートの間にゴム人工筋肉が取
り付けられている.背中部のアルミプレートには,ゴム
人工筋肉の固定個所の調整機構を設けている.ゴム人工
ここで, は次式で与えられるものとする.
筋肉の駆動には圧縮空気を供給するエアコンプレッサー
(4)
このとき,計算により = 0.618 rad となる.これより,ゴ
ム人工筋肉によるアシストモーメントを
とすると,
は次式により求まる.
と,ゴム人工筋肉の圧力を制御するためのレギュレータ
が必要となる.レギュレータは小型であるため尻部のポ
ケットに収納できる.また,本研究においては,介護現
場の各部屋にエアコンプレッサーを設置することを想定
している.
(5)
により をキャンセルできればよいので,式(5)から次
のように が求まる.
(7)
したがって,収縮が 80 mm 以上あり,最大発揮力が
的に圧力を増加させて人工筋肉に圧縮空気を供給する.
これは,上半身の仰角が小さく,腰部に掛かる負荷モー
メントが大きい「④抱え上げる」動作開始時点での人工
筋肉による支援が,もっとも効果的であると考えたため
である.
(3)
実験結果
4章2節で行った実験で測定された 12 回分の IEMG
の平均値を Fig.5 に示す.
Fig.4 Powered suit
4. パワーアシストスーツの性能評価
腰部の負担減少の評価を,「④抱え上げる」動作を対
象として,介護者の脊柱起立筋の表面筋電位を計測し,
積分筋電位を用いて行う.
(1)
表面筋電位
Fig.5
Measurement results of IEMG
筋電位は,脳からの指令や脊髄反射に起因して筋に発
生する電位である.特に,表面筋電位(SEMG)は,個々
(ⅲ)の場合,(ⅰ)及び(ⅱ)の場合と比較して,特に 2.25
の筋繊維から発生した活動電位の電位変化を加算し,皮
秒付近から IEMG の値が減少している.また,3.25 秒付
膚表面から読み取ったもので,筋の運動の度合いを表す.
近の IEMG のピーク値に着目すると,
(ⅰ)と(ⅱ)に比べて,
一般に表面筋電位は,筋の緊張が大きくなるほど振幅が
(ⅲ)では最大で 25%の減少が見られる.(ⅱ)と(ⅲ)のスー
大きくなるという特徴がある.
ツ装着時において,0~2 秒間で IEMG が少し小さな値に
表面筋電位の信号処理には大きく,振幅に着目する方
なっているのは,人工筋肉の収縮力の損失を避けるため
法と周波数に着目する方法がある.本研究では振幅に着
スーツを体に密着するよう製作したため,スーツ装着時
目し,筋の活動量を表すと言われる積分筋電位(IEMG)
を数値解析ソフトウェア MATLAB/ SIMULINK を用いて
算出する.
は屈んでいるだけでも若干人工筋肉の張力が働き,筋を
支援しているためであると考えられる.また,主観的で
はあるが,介護者は(ⅰ)と(ⅱ)では感じられなかったアシ
=
(7)
スト力を,(ⅲ)の時に体感することができた.
以上の結果から,製作したパワーアシストスーツによ
る支援効果が確認できたといえる.そこで,次節ではベ
ここで, は積分時間,
は重み,
は表面筋電
位を絶対値化したものである.本研究では,サンプリン
グ 1 kHz で表面筋電位の計測を行い,IEMG の積分区間は
1 s,重み
(2)
は 1 とした.
実験方法
健常者である成人男性 2 名のうち,介護者役 A が,ソ
ファ上で端座位の被介護者役 B(22 歳,身長 1.80 m, 体
重 65 kg)に対して「④抱え上げる」動作を行う.介護者
は表面筋電位の測定開始後 0~2 秒は被介護者を抱き起
こす準備として屈んだ状態を維持し,2 秒から「④抱え
上げる」動作を開始する.
製作したパワーアシストスーツのアシスト効果を検証
するため,以下に示す3つのパターンで検証実験を行う.
ッドから車椅子への移乗動作において,センサを用いて
介護者の動作識別を行い,「④抱え上げる」動作の開始
時に人工筋肉に給気を行うことを試みる.
5. 動作識別
移乗作業において,パワーアシストスーツによる支援
対象となる動作は,介護者が被介護者から受ける腰まわ
りの負荷モーメントが存在する「④抱え上げる」動作開
始から「⑥降ろす」動作終了までである.このとき,「④
抱え上げる」動作開始時に人工筋肉に給気を行い,「⑥
降ろす」動作開始時に人工筋肉からの排気を行う.
そこで,傾斜センサで介護者の上半身の仰角を測定し,
(ⅰ)スーツを装着しない
また圧力センサで介護者の被介護者との接触を検出する
(ⅱ)スーツを装着するが人工筋肉による支援は行わない
ことにより介護者の動作識別を行い,ゴム人工筋肉に給
(ⅲ)スーツを装着して人工筋肉による支援を行う
排気を行うタイミングを検出する.Table 1 に移乗動作の
ここで,(ⅲ)においては,表面筋電位の測定開始後 2~
2.5 秒の 0.5 秒間で 0.001 MPa から 0.55 MPa まで比例
フローチャートを示す.
Table 1
Action
Artificial
muscle
Angle of
upper
body
Contact
to care
recipient
Load to
the waist
(1)
Flow of identification for transferring action
① ② ③
④
Air supply
⑤
Maintaining
the status
↑
Increase
↓
⑥
Air
release
⑦
⑧
これより,次式が成り立つ.
(8)
↓
Decrease
↑
よって, と を測定することにより,次式から仰角
Nothing
Existence
Nothing
Nothing
Existence
Nothing
各センサ設置個所
Fig.6 に,傾斜センサと圧力センサの設置個所を示す.
傾斜センサは介護者の背中に設置し,上半身の仰角を測
が求まる.
(9)
但し,角度の計測範囲は 0~90 deg とした. また,求ま
った仰角から次式により角速度を算出する.
定する.圧力センサは,パワーアシストスーツによる支
(10)
援を行う動作中にのみ,介護者と被介護者が接触する場
所に設置する.本研究では介護者の手の甲に設置する.
また,各センサの外観を Fig.7 に示す.
(3)
圧力センサ
本研究ではインターリンクエレクトロニクス社製の圧
力センサ FSR402 を使用する.感圧部に荷重が掛かると抵
抗値が変化し,電圧変化により感圧部に掛かる圧力が検
出できる.測定値は,0~5 V のアナログ電圧で出力され
る.
本研究では圧力センサに加わった荷重により検出され
る電圧 を最大電圧 5 V で正規化し,圧力負荷率 pp [%]
として定義した.
(11)
Fig.6 Position of each sensor
(4)
識別条件の設定
動作の識別条件を決定するために,健常者である成人
男性 2 名のうち,介護者役 C(24 歳,身長 1.67 m,体重
59 kg)に,ソファ上で端座位の被介護者役 D (22 歳,
Fig.7
Appearance of each sensor
身長 1.63 m, 体重 70 kg)に対して一連の移乗作業を行っ
てもらった.このときの仰角,角速度,圧力負荷率の測
(2)
傾斜センサ
定結果をもとに,④~⑥の各動作に対して,表2に示す
本研究では近藤科学社製の傾斜センサ RAS-2C を使用
識別条件を設定した.また,識別処理のため各動作に 0
する.使用する傾斜センサの原理を以下に記す.Fig.8 に
から 3 の値を割り当て,
これを識別値と呼ぶことにする.
示すように,傾斜センサは重力加速度の方向に対して常
に基準電圧 を出力している.センサが傾くとそれに対
応した電圧変動 が生じる.
Table 2
Conditions for identification and identification value
④
⑤
⑥
Other
Conditions
Angular velocity
Angle [deg]
[deg/s]
-
15
85
-15
15
-
-15
-
(5)
ゴム人工筋肉の圧力制御
Action
Identification
value
1
10
3
2
10
0
[%]
各動作におけるゴム人工筋肉の圧力制御方策を試行錯
誤的に実験を繰り返し,Table 3 のように設定した.
Fig.8 Principle of tilt sensor
Table 3
Strategy of pressure control
また,上記の実験内容及び,被介護者役を入れ替え
Action
Artificial
muscle
Pressure control
た内容でそれぞれ実験を 10 回繰り返し行ったところ,同
④
Air supply
0.41 MPa/s
(Up to 0.55 MPa)
様な結果が得られた.
⑤
Maintaining
the status
0.55 MPa
⑥
Air release
0.40 MPa/s
(Until 0.001 MPa)
Other
Maintaining
air release
(6)
Until 0.001 MPa
6. 結論
本研究では,移乗作業に着目したパワーアシストスー
ツの開発を行った.ツナギ服を用いてスーツの構造を簡
素化したことで,本体重量が約 2 kg と軽量で,比較的容
易に単身での着脱が可能となっている.
実装実験
提案した識別方法とゴム人工筋肉の圧力制御方策を用
い,パワーアシストスーツを装着した介護者 C に,被介
護者役 D に対して一連の移乗作業を行ってもらった.
Fig.9 上図に,介護者の上半身の仰角,角速度,圧力負荷
率の測定値を,また下図に,識別値及び,各動作に応じ
たゴム人工筋肉の目標圧力と測定圧力の測定結果の一例
を示す.
移乗作業の中で,特に「抱え上げ動作」において,パ
ワーアシストスーツの支援のもとで,脊柱起立筋の活動
量を積分筋電位を用いて評価した結果,最大で 25%の減
少が見られた.また,傾斜センサと圧力センサを用いた,
移乗作業における介護者の動作識別により,ゴム人工筋
肉の給排気のタイミングを検出できるようになり,人工
筋肉への給排気を適切に行うことができた.
本研究では,製作したパワーアシストスーツを個人仕
様に調整したため,対象とした介護者に対しては有用性
を検証することができた.今後は,被験者の数を増やし
て,製作したパワーアシストスーツの有用性を実証する
ことが課題として挙げられる.
謝辞:平素より熱心なアドバイスと,ご指導をして頂い
た石井教授に誠に感謝しております.また共に研究に励
んだ研究メンバーにも感謝しております.
参考文献
1)佐藤帆紡・川端共良・田中文英・山海嘉之:「ロボッ
トスーツ HAL による移乗介助動作の支援」,日本機械
学論文集(C 編), Vol.76, No.762, pp.227-235 ,2010
2)八木栄一・原田大輔・小林雅章:「農作業用持ち上げ
動作を支援するための空気圧駆動上肢パワーアシスト
システムの開発」,日本機械学会論文集(C 編),Vol.75,
No.755, pp.2036-2043 ,2009
3)遠山茂樹・米竹淳一郎:「超音波モータを応用したパ
ワーアシストスーツ」,バイオメカニズム学会誌,
Vol.30, No.4, pp.189-193 ,2006
4)佐藤裕・何佳欧・小林寛征・村松慶紀・橋本卓弥・小
a
: Actual start time of action ④
林宏:「腰補助用マッスルスーツの開発と定量的評価」
b
: Actual start time of action ⑥
日本機械学会論文(C 編)Vol. 78, No.792,
a’
:Identified start time of action ④
pp.2987-2999 ,2012
b’ :Identified start time of action ⑥
Fig.9
Results of experiment
5)荒金正哉・則次俊郎・高岩昌弘・佐々木大輔・猶本真
司:「シート状湾曲型空気圧ゴム人工筋の開発と肘部
パワーアシストウェアへの応用」,日本ロボット学会
Fig.9 より,実際の④と⑥の動作開始時間と識別された
④と⑥の動作開始時間がほぼ一致しており,ゴム人工筋
肉への給排気タイミングが正確に検出できた.これより,
パワーアシストスーツに適切に補助力を発生させること
ができ,介護者は違和感なく移乗作業を行うことができ
た.
誌,Vol.26, No.6, pp.674-682 ,2008
6)木塚朝博・増田正・木竜徹・佐渡山亜兵:「表面筋電
図」,東京電機大学出版局, pp.43-45 ,2008