富山県における標高別 PM 2.5 調査

富山県における標高別 PM2.5 調査
)
○山﨑敬久1), 木戸瑞佳1), 源 将1), 菅田誠治2 , 清水
1)
富山県環境科学センター, 2)独立行政法人国立環境研究所
)
厚2
【はじめに】
2009 年 9 月、微小粒子状物質(PM2.5)に係る環境基準が設定され、現在、国や地方自治体において PM2.5
による大気汚染の実態把握等が行われている。PM2.5 による大気汚染は地域的かつ広域的な問題であり、本県
では環境省環境研究総合推進費(以下「推進費」という。)5B-1101「全国の環境研究機関の有機的連携によ
る PM2.5 汚染の実態解明と発生源寄与評価」に研究協力者として参加し、富山県の地理的特長を活かして標高
差のある観測地点に同一の観測機材を設置し、PM2.5 質量濃度の連続観測と成分分析用のサンプリングを行っ
ている。本推進費による観測は全国 14 地点(都市域及び遠隔地)で行われ、高時間分解能での PM2.5 の広域
的実態を把握することにより PM2.5 発生源寄与率、越境汚染寄与率の定量的評価を行うことを目的としている。
本報告では、富山県の 2 地点の観測結果から得られた知見について発表する。
【調査概要】
(1)質量濃度の連続観測
・地点 都市域:富山県環境科学センター(標高 20m) (以下、
「小杉局」という。
)
遠隔地:立山黄砂酸性雨観測局(標高 1,180m) (以下、「立山局」という。
)
・機器 PM2.5 質量濃度自動計測器:PM-712(PTFE テープろ紙)
・期間 2011 年 9 月中旬~2013 年 5 月末(継続観測中)
(2)成分分析
・地点 上記(1)の観測地点と同じ
・機器 PM2.5 ローボリウムエアーサンプラー:FRM-2025(石英繊維ろ紙)
・期間 2 週間/季の同期サンプリングを高時間分解能(小杉局 6 時間、立山局 12 時間)で実施
・分析項目 イオン成分・炭素成分(石英繊維ろ紙)
無機元素成分((1)の PM-712 で採取された PTFE テープろ紙を利用)
【結果及び考察】
上記の調査期間全体の PM2.5 の質量濃度の平均値は、小杉局で 10.7μg/m3、立山局で 7.1μg/m3 であっ
た。なお、月別の PM2.5 の平均濃度は図 1 のとおりであり、年間を通して小杉局の PM2.5 質量濃度が高く、
2 地点とも春季に高濃度傾向を示した。
また、2013 年 1 月から 2 月初めにかけて全国的に PM2.5 高濃度現象が観測され、社会的にも注目される
事象となり、本県の大気常時観測局でも 1 月 30 日に環境基準の日平均値 35μg/m3 を超過した地点があっ
た。この期間の前後について、PM-712 の立山局と小杉局の PM2.5 質量濃度及び気温差のグラフを図 2 に示
す。立山局と小杉局で PM2.5 質量濃度の変動傾向は比較的似ているが、1 月 30 日から 2 月 2 日にかけては、
小杉局と立山局の濃度差が明確に現れている。この期間は標高の高い立山局の方が小杉局より気温が高く
なっており、逆転層が形成されていた可能性がある。地上付近に大気汚染物質が押し留められた結果、小
杉局の濃度が高くなったと考えられる。なお、当センターに設置されているライダー(LIDAR)の同期間
の観測結果では、地上付近に大気汚染粒子(球形粒子)の存在が観測されており、立山局と小杉局の PM2.5
質量濃度差と整合的であった。
発表では成分分析の結果やその他の事例について詳述する。
【謝辞】本研究は環境省環境研究総合推進費(5B-1101)により実施された。
15.0
10.0
5.0
15.0
60
立山局 PM2.5
小杉局 PM2.5
気温差(立山-小杉)
50
3
40
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5.0
30
0.0
20
-5.0
10
-10.0
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0
0.0
1/22
1月
2月
3月
4月
図1
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1/24
1/26
1/28
1/30
2/1
2/3
2/5
-20.0
-10
月別の PM2.5 平均濃度
図2
- 100 -
2/7
PM2.5 質量濃度と気温差
気温差( ℃)
3
質量濃度 (μ g/m )
20.0
小杉局
小杉局
小杉局
立山局
立山局
立山局
質量濃度 (μ g/m )
2011年
2012年
2013年
2011年
2012年
2013年