スライド 1

あさひかわ緩和ケア講座 2014
あさひかわ緩和ケア講座 2014
第9講
看護ケアⅡ
(口腔ケア、浮腫のケア)
旭川赤十字病院
緩和ケア認定看護師
蟹谷 和子
あさひかわ緩和ケア講座 2014
口腔ケア
あさひかわ緩和ケア講座 2014
がん患者の口腔ケア
• 看護師による口腔ケアが必要な場合
・がん手術直後の患者
・造血細胞移植治療や、化学療法などによる
副作用が強く、セルフケアができない状況
・がん終末期で予後が月単位から週単位となり、
寝たきりの状態となった場合
など
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がん患者におこりやすい
口腔トラブル
口腔トラブル
口内乾燥
主な原因
・脱水や絶食による唾液分泌減少
・口呼吸や酸素投与
・放射線治療による有害事象
・抗精神薬・オピオイドなど
粘膜の脆弱 ・唾液分泌減少による抗菌作用の低下、日和見感染
性(口内炎 ・ビタミンや微量元素欠乏による粘膜の脆弱化
など)
・化学療法や放射線治療の有害事象
味覚異常
・低栄養によるビタミンや亜鉛などの微量元素の欠乏
・化学療法や放射線治療の有害事象
・カンジダ症
口臭
・唾液分泌減少やケア不足による細菌の貯留や歯周病の悪化
・吐物、痰、食物残渣などの口内残留や壊死組織
舌苔・痂皮
様痰付着
・口腔乾燥やケア不十分による洗浄不足
義歯不適合 ・体重減少
・ケア不足による歯肉の腫脹や潰瘍
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口腔乾燥が引き起こす問題
•
•
•
•
•
•
•
•
•
自浄作用低下
咀嚼・嚥下障害
義歯の不適合
味覚障害
口唇トラブル~口角びらん・潰瘍
粘膜トラブル~出血・痛み・腫れ
歯肉トラブル~出血・痛み・腫れ
舌苔や粘膜上皮の付着
う歯の増加
感染↑
経口摂取↓
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口腔乾燥のケア
 洗口液を用いて含嗽(刺激性の少ないノンアルコールを使用)
6~8回/日程度の含嗽
(頻回の含嗽は粘性成分のムチンを失わせ、乾燥を助長)
 口蓋粘膜・頬粘膜・歯肉清掃
初めに口唇に保湿剤(水でも可)を塗布し、滑りを良くする。
次に口腔内に塗布
スポンジブラシなどで口腔の奥から手前に転がすように行う
とくに汚染しやすい口腔底や口腔前庭を丁寧に行う
※スポンジブラシは、柔らかく、目が細かい
素材を選択
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口腔乾燥のケア
 ブラッシング
事前に水で湿らせておく
歯肉にブラシの毛先が当たらないように、毛先の角度を
調整する
 口唇口腔粘膜保護
2~4時間毎の定期的保湿が効果的
保湿剤は液体よりジェルタイプの方が口腔内にとどまり
やすい
舌背以外にも舌下や頬粘膜に薄く塗りのばす
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口腔粘膜炎
原因 ・義歯などの物理的刺激
・熱傷や薬剤
・口腔乾燥
・感染症(ヘルペス)
・抗癌剤や放射線照射
・栄養不良
 ケア
• 口腔内の清潔保持(歯ブラシは歯面のみ、粘膜に当てない)
アルコールを含まない洗口液や水などで含嗽
疼痛が強い場合は生理食塩水を使用
• 口腔内保湿
ワセリン、グリセリン入り含嗽や保湿剤・白ゴマ油などを使用
• 疼痛コントロール
リドカインを混ぜた含嗽+NSAIDSやオピオイドの使用
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ヘルペス性口内炎
・はじめ水泡形成を認め、その後痂皮を形成
・痛みを伴うので鎮痛剤を使用
・バルトレックス®やゾビラックス®などの抗ウイルス薬を使用
・アラセナ-A軟膏®の塗布(口唇)
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カンジダ性口内炎
 原因
・易感染状態
・口腔乾燥
・ステロイドや抗菌薬の長期投与
・口腔内(義歯も含めた)衛生状態の不良など
 症状 舌、口蓋粘膜、頬粘膜、咽頭粘膜に白苔が点状に不
連続に広がる。ピリピリ・チクチクした持続性の痛み。
 ケア 口腔ケア(義歯の清掃も)で衛生状態を改善。
軽症例には、イソジンガーグル®による洗口やリフレケ
ア®オーラルバランス®などの抗真菌作用のある保湿剤。
重症になればファンギゾンシロップ®、フロリードゲル®、
イトリゾール®などの抗真菌薬を使用。
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口臭
 口臭の原因 (6割が舌苔で生産)
口腔内 未治癒のう歯、不良充填物内での腐敗、歯周病、舌苔、
口腔乾燥、口腔内のがん、義歯に付着している歯垢
全身性 耳鼻咽喉・肺・上部消化管の疾患、耳鼻咽喉のがん、重
症の糖尿病・肝硬変・尿毒症
 ケア
・舌苔・口腔内のケア~保湿剤や洗口液などの使用
10~20倍に希釈したオキシドール液の使用
・口腔内嫌気性菌を抑制する口臭予防剤を3~4回/日使用
例:ハイザック®(揮発性硫化物をキレート化して消臭)
・腫瘍による口臭の場合は、嫌気性菌への対応としてメトロニダゾ
ール(フラジール®)の投与が有効
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出血傾向のある場合のケア




超軟毛歯ブラシ・スポンジブラシを使用
出血している時は、頻回に含嗽しない
ケア前後に保湿剤を粘膜に塗布し、全体を湿潤
歯肉を傷つけないように歯ブラシ、スポンジブラシは湿らせ
ておく
 歯垢の除去(出血の原因の炎症症状を改善する)
 ブラッシング時には、歯肉を傷つけないように、歯頚部に指
を添えると良い
 出血時は生理食塩水で湿らせたガーゼや綿球で10~20分
圧迫止血。またエピネフリンやオキシドールの併用もあり
血餅が自然に落ちるのを待つ。それまでの間は
血餅の上に保湿剤をのせて、湿潤させておく。
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保湿剤選択のポイント
 自分で口腔ケアができるのか、介護者が行うのか
 効果時間が短くても良いのか、長い方が良いのか
 保湿剤に味を求めるのか、無味か
 口腔乾燥の程度
 どの部位に使用するのか(舌、口唇、頬粘膜、口蓋など)
 口呼吸なのか鼻呼吸なのか
 口腔カンジダ症やヘルペスなどはあるのか
 嚥下障害はあるのか
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保湿剤選択のポイント
・液状タイプ・・・オーラルウェット®、絹水®、コンクールマウスリンス®など
加湿効果に適している、ベタつかず使用感が良い、
保湿しながら洗浄できる、誤嚥のリスクあり
・ジェルタイプ・・・オーラルバランス®、リフレケア®、
オーラルアクアジェル®、ビバジェルエット®など
保湿効果に適している、液だれしにくい、誤嚥リスクが低い、
就寝中などの保湿に適している
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口腔粘膜ケア~動画
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口腔ケアに使用される含嗽剤、
鎮痛薬(1)
含嗽液・
鎮痛薬
使用方法
性状
適応
含嗽・使用方法
Nacl9gを水1000mlに
溶かす
含嗽水
重症口内炎、
口腔乾燥
5~8回/日使用、粘膜
の刺激が少ない
オキシ
ドール
口内局所消毒時は2
~3倍希釈、洗口時
は10~20倍希釈
含嗽水
粘膜消毒、口
内炎洗口、舌
苔
5~8回/日またはケア
時。粘膜出血、痂皮付
着、舌苔付着時の口内
清掃または洗口、痂皮
をはがしやすくする
ハチアズ
レ・グリセ
リン
ハチアズレ5P、グリセ
リン60ml、水500ml
含嗽水
口内乾燥、唾
液分泌減少
5~8回/日、グリセリン
の味が少し甘い。疼痛
時リドカイン併用
食塩水
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口腔ケアに使用される含嗽剤、
鎮痛薬(2)
含嗽液・鎮
痛薬
使用方法
性状
食塩水・リ
ドカイン
Nacl9g、水1000ml、4%
キシロカイン®10ml or
20ml or30ml
含嗽水
口内炎、咽頭炎 毎食直前に含嗽、
10ml/回をグチュグ
チュ含嗽2分
シロップ
口内炎の痛み、 食事前15分に服用、
咽頭炎による嚥 食事前の粘膜痛、嚥
下痛
下時痛に有効
内用液
粘膜炎
ポンタール 10ml/回
シロップ®
アルロイドG®
アルロイドG® 10ml~
20ml/回
アズレン・
リドカイン
軟膏
キシロカインゼリー®1
本(30ml)と、アズノー
ル軟膏®150gを混合
軟膏
適応
含嗽・使用方法
嚥下痛がある場合、
粘膜保護作用、止血
作用、食前服用で痛
みの緩和
口唇部、頬粘膜 直接塗布、持続は10
部の粘膜炎
~15分と短い、口内
炎が限局し局所使用
時有効
静岡がんセンター歯科・口腔外科で使用されている含嗽剤・鎮痛剤資料より引用、一部改変
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終末期がん患者への口腔ケア
目的:口腔トラブルによる苦痛の予防や苦痛の緩和、
尊厳ある最期を迎えるため
・倦怠感や呼吸困難など苦痛な症状によりケア時間や体位に制限
がある
・口腔トラブルの原因が除去しきれない(オピオイドや酸素投与等)
・口腔トラブル以外の苦痛な症状に注意やケアが集まりやすい
ので、口腔トラブルへの対応が後手に回りやすい
口腔トラブルは“食べる・話す”を奪
い、QOL低下の大きな要因!!
最小の苦痛で最大の効果が得られるようなケアを早期から検討、実施
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認知症患者への口腔ケア
• ケアによる突然の刺激でパニックに陥り、拒否に繋がる可能性
• 2つ以上の刺激、例えば「声をかけながら口を触る」などを行うと、
声に反応してそちらの理解に困惑しているところに、さらに口への
触覚刺激が加わり、パニックを誘発
• 強い刺激は痛みなどの不快感を与え、複雑な思考を想起させ、
それを処理できないうちに、次の刺激が加わると、パニックを誘発
する
• ケアに時間がかかると、意識を集中することができず、ケアが余
分で不快な刺激となり、拒否につながる
• 手足の動きや目つきなどは精神状態を表すので、よく観察し刺激
を除くことで、大きな拒否を回避できる
• 怒ったような強い言葉は不快な印象を与える。優しい言葉も、何
度もかけられると処理しきれなくなって、不快な感覚を与えてし
まうこともある
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浮腫のケア
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浮腫の分類
 全身性浮腫
心疾患 (心不全など)
腎疾患 (腎不全、ネフローゼ症候群など)
肝疾患 (肝硬変など)
内分泌疾患 (甲状腺機能低下症、亢進症など)
その他 (薬剤性、特発性、低栄養性など)
 局所性浮腫
静脈疾患 (静脈瘤、深部静脈血栓症など)
リンパ管疾患 (リンパ浮腫など)
その他 (廃用性、アレルギー性、血管性など)
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リンパ浮腫~定義
リンパ管の障害があるために、リンパ管の吸収・運搬・
排除する能力が低下することにより、皮下組織内に組織
間液が過剰にたまった状態
• 原発性(一次性)リンパ浮腫
発症の原因疾患が確定しない~リンパ管の発育不全・
形成不全など
• 続発性(二次性)リンパ浮腫
がん治療に伴うリンパ節切除、放射線治療、リンパ管炎、
悪性腫瘍の増悪、慢性静脈不全など
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リンパの働き
<リンパ液の成分>
細胞で不要になった老廃物や白血球などに分解された
蛋白成分、リンパ球などの細胞成分、侵入してきた細菌、
脂肪など
過剰な組織液を血液中に戻す
血液中のタンパク成分量を維持
細菌・ウイルスや異物が血液循環に進入するのを防ぐ
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リンパ系の特徴(1)
1.リンパ管の自動運搬能:
一定のリズムで自律的な収縮運動(10回/分)
2.弁構造:集合リンパ管には弁があり逆流を防ぐ
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リンパ系の特徴(2)
3.筋肉ポンプ:筋肉運動や関節運動、マッサー
ジなどでリンパ液の流れが促進
(10~20倍)
4.その他:腹式呼吸、動静脈血流や胃腸運動も
リンパ液運搬を補助
どの一つが欠けてもリンパ液運搬に支障がでる可能性
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リンパ液の運搬①(表在リンパ管)
• 毛細リンパ管
・弁構造がない ⇒ あらゆる方向に流れる可能性
・全身に張り巡らされている ⇒側副リンパ路として機能
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リンパ液の運搬②(表在リンパ管)
• リンパ分水嶺:リンパの流れを区分する境界線
•それぞれの領域の主要
リンパ節に流れるしくみ
•境界線を境に弁は反対
向き
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リンパ液の運搬③(表在リンパ管)
• 主要リンパ連絡路:主要なリンパ節間では、毛細リン
パ管が多く、密になっている
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リンパの運搬④(深部リンパ管)
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リンパ浮腫の治療
 保存的治療
複合的理学療法、間歇的空気圧迫法、患肢拳上など
 薬物療法
利尿剤、抗生物質、漢方薬(五苓散、柴苓湯など)、
エスベリベン®など
 外科治療
リンパ管-静脈吻合術、リンパ管再建術など
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リンパ浮腫 確定診断
リンパ浮腫鑑別診断
超音波検査(ドプラ検査)
リンパ浮腫確定診断
リンパ管シンチグラフィ
蛍光リンパ管造影
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リンパ浮腫の病期分類
(国際リンパ学会)
期
0期
Ⅰ期
Ⅱ期
皮膚の状態と特徴
リンパ液輸送が障害されているが、浮腫が明らかで
ない潜在性または無症候性の病態。
比較的蛋白成分が多い組織間液が貯留しているが、
まだ初期であり、四肢を挙げることにより治まる。圧痕
がみられることもある。
四肢の拳上だけではほとんど組織の腫脹が改善しな
くなり、圧痕がはっきりする。
Ⅱ期後期 組織の線維化がみられ、圧痕がみられなくなる。
圧痕がみられないリンパ液うっ滞性象皮症のほか、
Ⅲ期
アカントーシス(表皮肥厚)、脂肪沈着などの皮膚変
化がみられるようになる。
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リンパ浮腫による影響
視覚的
な影響
自立性
の低下
セクシャ
リティへ
の影響
自尊心
の低下
リンパ
浮腫
楽しみ・
趣味の
制限
QOLの
低下!!
経済的
負担
職場で
の困難
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リンパ浮腫の合併症
 蜂窩織炎(発赤・発熱・炎症)
 リンパ漏・・・蜂窩織炎を来しやすい
 象皮症・皮膚硬化・・・感染を起し
やすい
 急性皮膚炎
 白癬・皮膚感染症・・・蜂窩織炎を起しやすい
 色素沈着
 関節機能障害
 褥創・・・感染を起しやすい
蜂窩織炎
リンパ浮腫は炎症をきっかけに悪化しやすい
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複合的理学療法(CPT)
スキンケア
リンパドレナージ
免疫力の低下、皮膚乾燥、傷
などにより感染を起こしやす
いため清潔や保湿を保つ
患肢に溜まっているリンパ液
を側副路を介して、健康なリン
パ節から深部リンパ管に誘導
圧迫療法
患肢を外部から適度に圧迫す
ることで、リンパ液の再貯留を
防ぐ
運動療法
弾性包帯や弾性着衣を用いた
状態で筋肉ポンプ作用を促す
※医師の診察を受けてから許可のもとに治療を開始
※知識と技術を習得したセラピストの協力を得る
※症状に合わない弾性着衣や無理な圧迫療 法は、症状悪化や 炎症を
招く
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複合的理学療法の適応
 適応~リンパ輸送障害、慢性静脈疾患に起因する局
所性浮腫
リンパ浮腫、慢性静脈不全症、廃用性症候群、脂肪
浮腫、特発性浮腫、一般的手術や外傷、創傷後の浮
腫など
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リンパドレナージの禁忌
全身的な禁忌
• 感染症による急性炎症、心性浮腫、心不全、下肢静脈の
急性疾患(深部静脈血栓症、急性静脈炎)など
相対的な禁忌
• 悪性腫瘍
局所的な禁忌
• 頸部:ホルモン分泌や血圧上昇に関わる疾患(甲状腺機
能亢進症、頸動脈洞症候群、不整脈など)
• 腹部:腹腔内の疾患、手術、照射線治療後、大動脈瘤、
盤内静脈血栓症の既往、腸閉塞の既往など
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圧迫療法の禁忌
全身的な禁忌
• 感染症による急性炎症、心性浮腫、心不全、末梢
の閉塞性動脈疾患など
相対的な禁忌
• 高血圧、狭心症、不整脈、強皮症、関節リウマチ、
感覚障害、乳幼児など
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スキンケア
1.皮膚の清潔を保つ
弱酸性~中性の洗浄剤、愛護的な洗浄、擦らない
2.皮膚の乾燥を防ぐ
保湿剤塗布による皮膚保護~添加物やアルコール
成分が少なく、乳液タイプのもの
3.皮膚の損傷をまねく行為は避ける
採血や血圧測定、粘着・医療用テープ、虫さされ、
日焼け、カミソリなどを避ける。ペットによる掻き傷に
注意、深爪にしない
セルフケア指導が大事!!
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リンパドレナージ
方向:流したい方向のリンパ節にむかって行う
圧力:優しく撫でるくらいの軽い圧で行う
手のひらを皮膚に密着させ、ゆっくりと伸張させる
速度:2~3秒間に1回程度
撫でさする程
度のちから
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リンパドレナージの流す方向
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リンパドレナージ手技
静止クライス
指もしくは手掌全体で皮膚に接触し、
皮膚と皮下部分に円運動を加える手
技(身体のいたる部分に用いることが
出来る)
ポンプ手技
母指と示指の間の部分を排液方向に
向けて置き、手掌全体で圧を加える手
技(主に四肢や乳房に用いられる)
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リンパドレナージ手技
シェップ手技
四肢後面を手掌全体で交互にすくう
ような手技(主に前腕・下腿に用いる)
ドレ一手技
手掌全体を体表に接触させ、適度に
圧をかけながら前方へ柔らかく皮膚
を動かす手技(主に体幹部など広い
面のところに用いる)
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リンパドレナージ注意点
•
•
•
•
•
•
•
•
もまない
さすらない
たたかない
強すぎない
痛くない
早くなりすぎない
手をまわすことにこだわらない
強すぎるドレナージは、皮膚を傷め、毛細血管透過性
を亢進、患部の組織間液成分を更に増加させてしまう
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リンパドレナージ~前処置
1.両肩後ろ回し、または両上肢の上下運動
(静脈角の流れを促す)
2.腹部マッサージ、または腹式呼吸
(乳び槽に流入するリンパの流れを促す)
3.健康なリンパ節のマッサージ
(リンパ液を流す時に、受け入れ先となるリンパ節を
刺激しておく)
4.患肢と健康な主要リンパ節を結ぶ体幹のマッサー
ジ
(主要リンパ連絡路を刺激する)
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リンパドレナージの手順
患肢:左上肢
①肩回し:10回
②腹式呼吸:5回
③右脇窩マッサージ:20回
④前胸部マッサージ:abcの順で各5回
⑤左ソケイ部マッサージ:20回
⑥左体側面マッサージ:efgの順で各5回
⑦上腕マッサージ:前面・後面各5回
⑧肘(内側・外側):各10回
⑨前腕マッサージ:前面・後面各5回
⑩手関節(内側・外側):各10回
⑪手掌と手背のマッサージ:各5回
⑫手指のマッサージ:各5回
⑬左手指先→左肩先→④の道→右腋窩
までをさする:3回
拡大資料2あり
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リンパドレナージの手順
患肢:左下肢
①肩回し:10回
②腹式呼吸:5回
③左腋窩マッサージ:20回
④左体側面マッサージ:abcの順で各5回
⑤大腿マッサージ:deの順で各5回
⑥膝と膝裏のマッサージ:5回・10回
⑦下腿(前面・後面)マッサージ:各5回
⑧足関節(前面・後面)マッサージ:各5回
⑨足背と足底マッサージ:各5回
⑩足趾マッサージ:各5回
⑪腰殿部マッサージ:各5回
⑫足指先→足付け根外側→左腋窩までさ
する:3回
拡大資料3あり
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圧迫療法
・弾性着衣には様々なタイプがあるが、食い込
みが少なく、患肢にあった製品の着用が必要。
着脱が困難で使用できない場合は、緩めのも
のの着用も考慮する
・弾性包帯は、患肢の変形が強い場合でも、
極端に細い場合にも同じ包帯を使用可能。
また、皮膚転移やリンパ漏があっても可能。
ティジーソフト
ティジーチューブラ
ストッキネット
・圧迫することでの苦痛が
強い場合には緩めのタイ
プのもので対処
ティジーグリップ
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運動療法
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リンパ浮腫ケア~0期
 0期 (潜在性または無症候性の病態)
・スキンケア~皮膚保湿、むくみの早期発見
・セルフリンパドレナージ
・圧迫療法~必要なし
・運動療法~必要なし
・生活上の具体的注意~患肢拳上、体重管理、
炎症予防、衣類選択、活動と休息
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リンパ浮腫ケア~Ⅰ期
Ⅰ期 (初期で、四肢を挙げることで改善)
・スキンケア
・セルフリンパドレナージ
・弾性着衣(既製)
・圧迫下の運動療法
・生活上の注意事項~患肢拳上、体重管理、
炎症予防、衣類選択、活動と休息
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リンパ浮腫ケア~Ⅱ期
 Ⅱ期 (拳上で改善せず、圧痕がはっきりする)
・スキンケア
・セルフリンパドレナージ
・用手リンパドレナージ
・弾性包帯・弾性着衣
・圧迫下での運動療法
・生活上の注意事項~患肢拳上、
体重管理、炎症予防、活動と休息
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リンパ浮腫ケア~Ⅱ期後期
 Ⅱ期後期 (組織の線維化出現、圧痕消失)
・スキンケア
・セルフリンパドレナージ
・用手リンパドレナージ
・弾性包帯、弾性着衣(既製・特注)
・圧迫下での運動療法
・生活上の注意事項~患肢拳上、
体重管理、炎症予防、活動と休息
・入院治療を推奨
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リンパ浮腫ケア~Ⅲ期
 Ⅲ期 (象皮症などの皮膚変化がみられる)
・スキンケア
・セルフリンパドレナージ
・用手リンパドレナージ
・弾性包帯、弾性着衣(特注)
・圧迫下での運動療法
・生活上の注意事項~患肢拳上、
体重管理、炎症予防、活動と休息
・合併症治療
・入院治療を推奨
あさひかわ緩和ケア講座 2014
進行がんに伴う浮腫
• 悪性腫瘍の進行や再発・転移に伴い、リンパ浮腫が
起こる
• がん細胞がリンパ管内に浸潤したり、再発・転移し
たリンパ節や腫瘍がリンパ管を直接圧迫閉塞し、浮
腫の増悪を招く
• 静脈を圧迫・閉塞すれば静脈うっ滞による浮腫の出
現や、がん性胸膜炎・腹膜炎を合併すれば胸腹水
も出現し、浮腫のコントロールは困難になる
• 臓器不全や薬剤、低アルブミン血症、身体活動の低
下などで浮腫が増悪
あさひかわ緩和ケア講座 2014
緩和ケア領域でのリンパ浮腫
「マッサージを受けると気持が良い」
しかし
• 施術後間もなく腫脹したり、体液の移動が腫瘍浸潤
部を刺激し、不快感を感じる
• 胸水や腹水が貯留している場合は、呼吸困難や腹
満感をさらに感じる
• 悪性腫瘍の直上はリンパドレナージは禁忌
⇒リンパドレナージや圧迫療法は身体への負担がか
かる
あさひかわ緩和ケア講座 2014
緩和ケア領域でのリンパ浮腫
• 目標
QOLの維持・向上と合併症の予防
1.苦痛になることは行わない
2.スキンケアとタッチング程度の軽いドレナージと圧迫
治療(刺激や圧迫力の少ない包帯、局所的な圧迫)が
中心。
3.家族ができるケアをみつける
4.心地良さの提供、傍にいてくれるという感覚、見放さな
い
あさひかわ緩和ケア講座 2014
Take Home Message!
 口腔ケアの基本はセルフケアである。セルフケアが
適切に行われるように支援を行う必要がある
 患者の「食べる」楽しみや「話す」楽しみにつなげるた
めに、口腔内環境を整えることは大切なケアである
 口腔ケアは一つの単なるケアではなく、その方の尊
厳を保つケアである
 リンパ浮腫治療を行うには、複合的理学療法と日常
生活指導を加えた複合的治療が標準治療である
あさひかわ緩和ケア講座
2013
あさひかわ緩和ケア講座 2014
Take Home Message!
 適切な浮腫の治療を行うためには、解剖・生理から
発生のメカニズムまで正しい知識を習得し、個々の
病態に即した治療法を選択しなければならない
 緩和領域でのリンパ浮腫は、循環不全や低蛋白血
症などによる浮腫と混在しやすく、両方の浮腫に対
応することが必要となる
 緩和ケア領域でのリンパ浮腫ケアは、心地良さとケ
アされているという安心感、人とのつながりを実感で
きるケアであり、また最期まで提供可能なケアである
あさひかわ緩和ケア講座
あさひかわ緩和ケア講座2014
2014
リンパ浮腫指導管理料
診療加算 100点/回
1.病院に入院中の患者で、子宮悪性腫瘍、子宮付属器悪性腫瘍、前立腺
悪性腫瘍または腋窩部郭清を伴う乳腺悪性腫瘍に対する手術を行った
ものに対し、手術を行った月、またはその前月もしくは翌月のいずれかに、
リンパ浮腫に対する適切な指導を実施した場合に、1回限り算定できる
2.当該保険医療機関入院中にリンパ浮腫指導管理料を算定した患者で、当
該保険医療機関を退院したものに対して、当該保険医療機関又は当該患
者の退院後において地域連携診療計画に基づいた治療を担う他の保険
医療機関(がん治療連携指導料を算定した場合に限る)において、退院
した日の属する月またはその翌月に規定する指導を再度実施した場合に、
当該指導を実施した、いずれかの保険医療機関において、1回に限り算定
する。
あさひかわ緩和ケア講座 2014
参考文献
1.神津三佳:口腔内と口唇のケア,がん看護14(7),772‐776,南江堂,東京,2009
2.篠原明子・有賀悦子:終末期における口腔ケアの重要性,臨床養,113(5),2008
3.西川史江:口腔乾燥,がん看護13(2),増刊号,南江堂,東京,2008
4.岸本裕充:ナースのための口腔ケア実践テクニック,照林社,東京,2008
5.門田和気・戸谷美紀他編:がん患者の消化器症状マネジメント,がん看護13(2)
増刊号,98‐114,南江堂,東京,2008
6.太田洋二郎他:根拠がわかる口腔ケア,がん看護15(5),南江堂,東京,2010
7.佐藤佳代子:リンパ浮腫治療のセルフケア,文光堂,東京,2008
8.小川佳宏・佐藤佳代子:リンパ浮腫の治療とケア,医学書院,東京,2007
9. 10.渡邊 裕・大野友久:終末期の口腔ケアUP date,看護技術,Vol.59 No.7別
刷,2013,メヂカルフレンド社
10.小川佳宏他:リンパ浮腫のケア・患者指導,オンコロジーナース2014.1-2月
号,日総研
11.日本リンパ浮腫研究会編:2014年版リンパ浮腫診療ガイドライン,金原出版,
東京,2014
あさひかわ緩和ケア講座 2014