“いっしょにeco”フォーラム2014報告書

「変わりつつある地球」への対応
開会挨拶
p.1
花王株式会社 常務執行役員 研究開発部門統括 武馬 吉則
基調講演
p.2
「変わりつつある地球」
への対応
(独)製品評価技術基盤機構 理事長/東京大学 名誉教授 安井 至 氏
招待講演①
p.12
バイオマスからの燃料・化学品生産技術の開発と合成生物工学の展開
神戸大学大学院工学研究科 教授 近藤 昭彦 氏
招待講演②
p.14
企業のCSR
NPO法人サステナビリティ日本フォーラム 代表理事 後藤 敏彦 氏
パネルディスカッション
p.16
「変わりつつある地球」
への対応
ファシリテーター:合同会社 地球村研究室 代表/東北大学 名誉教授 石田 秀輝 氏
パネリスト
:東京大学生産技術研究所 准教授 岩船 由美子 氏
NPO法人九州バイオマスフォーラム 事務局長 中坊 真 氏
和歌山大学システム工学部 教授 吉田 登 氏
大阪大学大学院工学研究科 准教授 惣田 訓 氏
閉会挨拶
p.35
花王株式会社 エコイノベーション研究所 副所長 細川 泰徳
フォーラム、見学会、交流会のようす
p.36
開催概要
■テーマ/
「変わりつつある地球」
への対応
■日 時/2014年11月4日
(火)
10:20∼15:30
■場 所/ダイワロイネットホテル和歌山 4Fボールルームグラン
■主 催/花王株式会社
開 会 挨 拶
本日は第4回「花王“いっしょにeco”
フォーラム」にご参加いただきまして、誠
にありがとうございます。関係者一同、厚く御礼申し上げます。
花王は、2009年に環境宣言を発表し、エコロジーを経営の根幹に据えて、
さ
“いっしょに
まざまなステークホルダーの皆さまといっしょにecoに取り組む、
eco”というテーマを具現化した最初の製品として、
「アタックNeo」を発売い
たしました。そして、2011年には、新たなエコイノベーションの創出をめざす、次
世代環境技術の研究開発拠点として「エコテクノロジーリサーチセンター」を設
立し、
さまざまな角度から研究に取り組んでおります。本日の「“いっしょにeco”
フォーラム」は、
こうした活動の一環として開催しているもので、サステナブルな
社会の実現に向け、学術的な見地から幅広い専門家や有識者の皆さまにお集
まりいただき、議論や情報交換を行なう場とすることを目的としています。
花王製品のLCA全体を通じて排出されるCO2量のうち、50%強がご家庭で
お使いいただく時に発生しています。
このため、我々は環境負荷の低減をめざし
を推進したいと考えていま
て、消費者の皆さま一人ひとりと
“いっしょにeco ”
す。本日は学術的な講演が中心となりますが、
どうすれば一般の皆さまが環境問
に取り組んでいただけるか、その伝え方、巻き込
題を理解し、
“いっしょにeco”
み方もご議論していただけたら、非常にうれしく思います。
今回は「『変わりつつある地球』への対応」というテーマです。遠い話と思わ
れるかもしれませんが、昨今の天候不順を見れば、今日、明日から我々ができるこ
とは多いのではないかと考えています。皆さま方におかれましても、
このフォーラ
ムを、
あらためて環境や地球の将来を考える機会にしていただければ幸いです。
本日は、
どうぞよろしくお願いいたします。
花王株式会社
常務執行役員 研究開発部門統括
武馬吉則
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基 調 講 演
「変わりつつある地球」
への対応
(独)製品評価技術基盤機構 理事長/東京大学 名誉教授
安井 至 氏
人類はなぜ苦境に陥るのか、
リスクをきちんと考える
今日は、
これから地球がどうなっていくかという話をさせていただきます。人類はなぜ苦境に陥るの
か、
というところがひとつのカギになります。それは、
リスクというものをきちんと考えることだろうと思い
ます。
ダボス会議という、
スイスで冬に行なわれる有名な会議では、
ここ何年か世界のリスクの予想を毎年出
しています。今年出たものの中で、影響の大きいもの、可能性が大きいものとして、環境関係では気候変
動や異常気象、水関連リスク、生態系の崩壊、
自然崩壊、環境破壊、食糧危機などが入っています。また、
財政危機や失業、所得格差なども入っています。
2年ほど前に
『地球の破綻』
という本を書きました。ここでいろいろなことを指摘しているのですが、ダ
ボス会議の評価に比べると、
『 地球の破綻』での分類
(気候変動、生物多様性の喪失、金属資源の枯渇、化
石燃料の枯渇、人口爆発と食糧危機、環境汚染、対策費用の不足)
のほうがもう少し根源的になっている
と思います。やはり、
気候変動と生物多様性の喪失、
この2つが大きいかもしれません。今日は時間があり
ませんので、生物多様性の話は割愛し、
気候変動に集中してお話をさせていただきます。
1人当たりの所得とは「十分な良い食物という量」
気候変動の最大の原因は化石燃料ということになっています。なぜ人類が化石燃料を使うようになっ
たかを考えるために、少し長い視点から書いたものを探すと、
グレゴリー・クラークという人が2007年に
書いた『10万年の世界経済史』
という本があります。その中に、約3,000年間での1人当たりの所得のプ
ロットが出てきます。ここで表されている不思議な量は
「十分な良い食物という量」
です。つまり、1人当た
りの所得とは、良い食物をどのぐらいとっていたかということです。
それを見ると、紀元前1000年∼1750年頃までは、何かにとらわれた格好でほとんど伸びません。所
得が上下しているのは、いろいろな原因で人口にかかわるからです。飢饉や疫病などが原因で人口が減
ると、1人当たりの分け前が増え、1人当たりの所得が上がります。要するに、食物の生産量というのはほ
とんど限られていて、それをみんなで取り合うような状態になっています。だから、人口が増えてくると分
け前が下がり、何かが起きて人口が減る、
ということを繰り返している。よく
「マルサスの罠」
と呼ばれるメ
カニズムで決まっていたということです。そして1800年頃に産業革命が起き、それ以降とても恵まれて
いる人は非常に良い食物を十分以上にとっていますが、最も悪いほうは昔とあまり変わっていません。
人口というものをもっと長期的に見ると、紀元前1万2000年頃の世界人口は、定住型農業や鉄器の発
明など、いろいろな技術があるわりにはずっと伸びていません。
しかし、紀元1年辺りからすべての技術が
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合体し、いろいろな意味で進化したり、あるいは情報の交換が行なわれたりと、
さまざまな要素によって
人口が伸び、食糧ができるようになってきたのではないかと思われます。1500年からはかなり伸びてお
り、最後はほとんど垂直に伸びているという状況です。
近年だけを拡大すると、産業革命が明らかにひとつの契機となって勾配が変わっています。1950年頃
には食糧革命と呼ばれているものが起き、大量の食糧がとれるようになりました。フランスの小麦が1ヘ
クタール当たり何トンとれるのか。その収穫量が1950年で急激に上昇しています。これが食糧革命なの
です。
その実態は化学肥料を使えるようになったからです。アンモニアを大気中の窒素から合成するハー
バー・ボッシュ法という方法で、1950年頃から化学肥料がどんどん使われるようになりました。もっとも、
ハーバー・ボッシュ法は1906年に発明された古い方法なのですが、
コスト的な問題や装置的な問題で使
われていなかったと考えられます。第一次世界大戦において、連合国は火薬の原料に使われる硝石を封
鎖するため、
ドイツの海上封鎖を行ないます。
しかし、
ドイツがハーバー・ボッシュ法を使ったため、封鎖の
効果がなかなか出なかったという歴史的な話があります。
ハーバー・ボッシュ法は、我々が使っている年間消費エネルギーの1%以上を使用しているという推論
もあります。つまり、食糧革命というのは、ある意味エネルギー革命なのです。エネルギーというのが非
常に大きな要素なのです。
IPCC
(気候変動に関する政府間パネル)
のWG3
(第3作業部会)
でも似たようなことを議論していま
す。エネルギー=CO2で何が起きたかというと、2001年から1人当たりのGDPが増大しました。先ほどの
話と似ている量です。豊かになった、良い食物をとる人が多くなったということです。2001年からですか
ら、
はっきりいうと中国です。中国の皆さんが豊かになり、良い食物をとるようになったことが、2001年か
らの差なのではないかという議論が行なわれています。
ラクだからこそライフスタイルを変えるのはむずかしい
そもそも、我々はなぜエネルギーを使いたがるのか。どうやら最初は良い食物を収穫するためでした。
それが結局、人口増加につながりました。それ以降は、人口増加につながったかどうか定かではないです
が、
ラクな生活をするためです。特に輸送。それ以前は電気自動車か蒸気エンジンだったところに、ダイ
ムラーたちがガソリンエンジンを発明して特許をとりました。また、
ガソリンエンジンの燃料である油田
の発見。自動車の大量生産。鉄をつくるには莫大なエネルギーが必要です。どれもこれもエネルギーが
らみであり、輸送というものが改善されていきました。
そして、快適で便利な生活をするため。やはり電気に関する発明が大きいと思います。モーター、特に
モーターを使ってヒートポンプを動かす冷蔵庫やエアコンの類。電力のみが可能にした快適性と利便性
を十分に確保できるようになりました。あとは半導体。皆さんはパソコンやスマホを使って便利にされて
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いますが、
そういったことでも豊かさがひとつ増えたかもしれません。
ところで、
どのくらいのエネルギーがあれば人間というのは生きていけるのか。人は生存のために必
要なエネルギーを補給するため、毎日だいたい2,000∼2,500kcalの食物をとっています。それを体内
で酸化して、毎日700g∼1kg程度のCO2を出しています。これが体の中のどこで使われているか。確か
に量的には肝臓や筋肉が多いのですが、単位重量当たりのエネルギー消費量を見ると、脳が一番大き
い。食物をとって運動をするとやせると思われるかもしれませんが、筋肉はたいしたことありません。実際
には一生懸命頭を使っていただくと、
よりやせられる。ですから、今日は脳を活性化していただいて、
スリ
ムになっていただければと思います。
日本の1人当たりのCO 2 排出量は、産業を含めると年間約10トン。家庭用だけだと1人1日当たり
6.1kg程度。家庭の中だけで使用人を6∼8人雇っていることになります。そんな数の他人を雇って生活
しているのですから、豊かになるに決まっています。豊かなエネルギーによってラクな生活をしています
が、
だからこそライフスタイルを変えるのはなかなかむずかしいということかもしれません。
エネルギーのもとは化石燃料、核燃料、自然エネルギーの3種類
我々がいま使っているエネルギーのもととなる一次エネルギーは、
たった3種類しかありません。それ
は化石燃料と、核燃料と、
自然エネルギーです。
石油、石炭、天然ガスといった化石燃料は、大昔に地球に降り注いでいた太陽エネルギーを使っていま
す。太陽エネルギーというのは、
ご存知のように、水素からの核融合でできています。これも核エネル
ギーです。核エネルギーの結果である太陽エネルギーを使っているのが化石燃料です。これだけ長期間
にわたって溜め込んでいますから、当然莫大な量があります。
核燃料は、そのもととなる原子番号の高い元素が超新星爆発のようなことからできているので、宇宙
起源です。そこで何が行なわれているのか。質量とエネルギーを変換するというアインシュタインの式
で表されるように、
質量がどこかで減ってエネルギーになっている、
ということが起きています。
(E=mc2)
自然エネルギーも、基本的には現在の太陽エネルギー、つまり核融合でできているエネルギーを使っ
ています。ただし、化石燃料と核燃料はたまっているものを使うストック型であるのに対し、
こちらは唯一
のフロー型です。フロー型というのは枯渇をしません。だから、
自然エネルギーだけは枯渇しないで済ん
でいます。
地球のエネルギーフローをもう少し詳しく見てみます。太陽から全世界のエネルギー使用量の
1万2000倍ほどの太陽光が地球に降り注いでいます。そのうち3分の1程度はすぐに反射されて宇宙へ
戻り、地球に吸収されたものはすべて赤外線に変換されて外へ再放射されます。当然です。そうでなけれ
ば、地球はどんどんエネルギーを溜め込んで熱くなってしまいますから。ところが最近は、人類がCO2を
出すことによって、再放射されたエネルギーの一部をCO2が吸収して地球へ戻ってきてしまう。すなわ
4
基 調 講 演
ち、地球はどんどん太陽エネルギーの一部を溜め
込んだ状態になっている。これが地球温暖化で
す。
地熱というエネルギーだけは少し特殊です。地
熱の大部分は放射性元素が地中で崩壊してでき
る熱です。地熱以外にも、摩擦熱やジュール熱、地
球ができた時の熱である残留熱というものがあり
ます。もうひとつ変わっているのが潮汐力です。こ
れは月と地球の重力の関係によって生まれます。
この2つを除くと、
自然エネルギーはそのほとんど
が太陽、
あるいは宇宙起源ということになります。
原子力発電は「暴力的危険人物」、火力発電は「地球を破壊する悪魔」
原子力発電はいま大変問題になっています。経産省関係の原子力小委員会の委員長をやっています
が、私は最終的に人類が原子力に依存することにはならないと思っている人間です。一言でいえば、原子
力発電は
「暴力的危険人物」
です。とにかく
「よい子、
よい子、
よい子」
と言って使っていかないと、
どうしよ
うもない。
もうひとつ。福島第一の事故以来、原子力発電所が止まっていることもあり、最近は火力発電の量がど
んどん増えているのですが、実をいうと、火力発電も
「地球を破壊する悪魔」
なのです。化石燃料を使うか
ぎり、二酸化炭素をそのまま放出すれば気候変動を引き起こします。ところが、見かけは普通の人間のよ
うに見えてしまうのが、原子力発電と違うところであり、
日本のビジネスマンは
「火力に戻ればいいではな
いか」
と思われる方が多いようです。東京大学政策ビジョン研究センターがアンケートをとってまとめた
日本人のリスク観を見ると、長期的なリスクである気候変動などに対する理解はあまりないようです。い
ずれにしても、悪魔ですから、長期的にいろんなことを起こします。最終的には、
やはり自然エネルギーに
置き換えることが、
地球も国も安定するひとつの方法だろうと考えています。
今世紀中にCO2排出量をゼロにするべき理由
化石燃料の使用量を示す、年間CO2排出量の表があります。世界全体で見ると1950年の手前付近か
ら急激に伸びました。工業国とその他に分けた場合を見ると、工業国は1970年頃から上下しつつ横ばい
になっています。
しかし、先進国を除いたその他の部分は大変な勢いでCO2排出量が増えているという
状況です。現時点で約350GtC
(億炭素トン)
という排出量です。それをこれからどうするのか。いまさら
5
もう伸ばせません。もし途上国もすぐ横ばいにできれば、あと60年間程度で700GtCとなり、合わせて約
1,000GtCです。
しかし、現状のままだと、
この1,000GtCに350GtCが加わる格好になってしまう。これ
がIPCCの第5次報告書の根拠です。
個人的に、
IPCC第5次報告書のWG1で最も
重要なグラフはこれだと思っています
(画像参
照)
。横軸は1870年頃からのCO2累積排出量
です。縦軸は1870年時点からの上昇温度で
す。
それがひとつの直線のようなもので描けて
しまうということです。化石燃料だけでいうと、
いまから排出量を横ばいにすれば、
2080年の
排出量は左側の矢印程度になります。
もしも現
状のままだった場合、
右側の矢印程度になりま
す。
つまり、
よくて2.5℃程度の上昇、
現状のまま
だと3℃以上の上昇になることを意味します。
ただし、
ここで重要なのは2080年で排出を
完全にやめた場合です。2080年から先は排出量をゼロとした場合に、その温度になります。2080年以
どんどん気温は上昇してしまいます。IPCCの新しい統合報告書で、今世紀中
降もCO2を出してしまうと、
こういう理由なのです。
にとにかくCO2の排出量をゼロにしないといけないと書かれているのは、
現時点で左側の矢印付近がよい状態かを示すグラフも出されています。排出量は1940年頃からずっ
と真っすぐ上昇しています。現状のままだと、先ほど話した3℃以上の上昇になってしまいます。いまから
排出量を横ばいにすれば、2100年以降でも2.5℃ぐらいの上昇で終わります。はたしてこれができるか。
もし非常に頑張っても少ししか下げられないという状況です。いまから排出量を横ばいにすれば、2100
年でも最低10∼20%の排出量は残ることになります。
しかし、現状のままだと、2080年頃から排出量を
ゼロにしないといけません。あるいはマイナスにする。いま、環境省と経産省がCO2排出量をマイナスに
する実験を一生懸命やろうとしています。バイオマス発電にCCS
(二酸化炭素地中貯留)
をつけるという
やり方です。
日本のビジネスマンは比較的ナイーブで
「天然ガスがあるから大丈夫。シェール革命があるから大丈
夫」
なんておっしゃるのですが、
まったくそんなことはありません。石炭と天然ガスのキロカロリー当たり
のCO2排出量は、0.376gと0.213g。44%削減と、それほど変わらない。半減にもならないのです。
また、
日本の場合、
シェール革命は関係ありません。アメリカはすでにパイプラインができて、減価償却
が済んでいるため、
ほとんど無料で天然ガスが使えるようなものなのです。
しかし、
日本に持ってくる時は
また液化しないといけないので、
アメリカのシェール革命の恩恵にはほとんどあずかれないのが現実だ
と思います。結局、
天然ガスだけではダメなのです。
6
基 調 講 演
自然エネルギーは「気まぐれな浪費家」
自然エネルギーというのがひとつの解だと申してきました。最近、太陽光発電の接続申し込みが非常
に多いというニュースがありましたが、以前からの分も足すと、FIT
(再生可能エネルギーの固定価格買
い取り制度)
の支払いが30兆円程度になってしまうのではないか。そうなると、電気代の上昇分が1.5兆
円/年です。これを人口で割ると、1人1万円以上、4人家族だと年間4万円の電気代がかかることを意味
します。
これは家計に相当響くでしょうから、
なかなかうまくいかないと思います。
要するに、
自然エネルギーは
「気まぐれな浪費家」
です。金を出せと我々を脅迫してくるわけです。だか
ら、本当にどうしたらよいのか悩ましい。ほかにも、社会制度や過剰規制など、さまざまな問題があると
思っています。また、安定な電力が必須というのは、ある意味の認知バイアスです。これを打ち壊さない
と、いろいろなことが解決しないのではないかと思っています。自然エネルギーは確かに善人なのです。
しかし、
その後ろには
「気まぐれな浪費家」
という面があることも忘れるわけにはいかないと思います。
さて、再生可能エネルギーは残念ながらいろいろと準備不足です。地熱から始めればよかったのです
が、地熱はなかなかむずかしいのです。日本のポテンシャルは世界3位で、資源量は2,000万kW以上。
大きな原発15基分程度は発電できますが、その9割程度が国立公園の中にあるため、発電所の建設が
認められていません。国立公園の中に発電所をつくってよいのか、同意するのか。そういったことがあり、
なかなかむずかしい。
また、不安定な電力なら、長距離直流送電技術のようなものをつくっておかないといけませんでした。
しかし、少なくとも9電力会社体制では、そういうものは不必要だったため、
まったく考えられていない状
況です。そこに、FITなんかを取り入れてしまったものだから、
うまくありません。それから、ダイナミック
プライシングや、
所有者不明の森林のバイオマスなど、
言いたいことはたくさんあります。
満足度を上げるサービスを活用して人々の行動を変える
第4のエネルギー源が省エネです。省エネ技術を極限まで活用するといいますが、
日本のさらなる省
エネはかなりむずかしいと思います。家庭用でできそうなものだと、
たとえばエアコン暖房を北海道の冬
でも可能にする方法や、都市部だと下水の熱を使うなど、いくつかあり得るのですが、各家庭が行なうと
いうものでもありません。10年ほど前の家電製品は即お買い替えいただいたほうがよいと思います。
し
かし、最近、冷蔵庫やテレビなどを買われた方は、次の買い替えでエネルギーをさらに半分にしたところ
で、減る量は知れており、
もうこれ以上はなかなか減らない状況になっています。いまの頼みは二国間ク
レジットによる途上国の低炭素化しかないということになります。
経産省の試算では、現状のままいくと2050年頃に約570億トンの温室効果ガス排出量になるとされ
ています。そうはせず、現時点の半分程度に下げれば、
まあまあだろうといわれています。ただ、下げるこ
とができればよいのですが。そうするには、日本に強みのある技術による貢献が必要です。自動車や
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CCS、原子力などだけでも貢献分が336億トンもあります。陸上風力や水力など、その他の技術が31億
トン程度。残りはモーダルシフトなど、技術革新以外の対策で約53億トン。これらを合わせれば、2050年
頃の排出量を約150億トンまで下げられる。ただし、
これは相当お金がかかります。そのお金をいったい
誰が出すのか、
ということになります。いま、
日本は12カ国とこういう技術を導入する調印ができており、
18カ国ほどまで増やしたいという目論みです。
「満足度×サービス/満足度
第5のエネルギー源がライフスタイルです。CO2排出量の要素分解式は
という式です。
「CO2排
×エネルギー消費量/サービス×CO2排出量/エネルギー消費量=CO2排出量」
出量/エネルギー消費量」
が表すのは
「低炭素のエネルギーを使いなさい」
ということであり、
「エネル
ギー消費量/サービス」
が表すのは
「サービス当たりのエネルギー消費量を下げなさい」
ということで
す。通常はここまでで終わるのですが、私は満足度というものを入れるべきだと最近考えています。
満足度というのは、国民性もあって、人によって違います。今年の10月、安倍首相の提案で始まった
ICEF
(Innovation for Cool Earth Forum)
という国際会議において、Opowerというベンチャーが発
表を行ないました。Opowerは電力の消費量がインターネットでわかるスマートメーターを活用して、
人々の行動を変えるということを実現しています。カリフォルニア州の例ですが、PG&Eという電力・ガス
会社と提携して、気温などから
「明日は消費量が増えそうだな」
と予測すると、その日のうちに消費者へ
メールを送ります。たとえば
「明日11時から14時までの消費量を××以下に抑えてもらえたら、
ご褒美と
して8ドル差し上げます」
。この××という数値は、Opowerがその家の過去の実績から、
ここはこのぐらい
はできそうだと見越して、提案しています。このサービスがアメリカ人にうけていて、
やたら効いているよ
うです。人によっては
「それならもう、明日は図書館にいるか、
ショッピングセンターへ買い物にでも行こ
う」
と、家を空けてエアコンを切ってしまいます。そうするとガソリンの消費が増えてしまうので、本当によ
いことなのかわかりませんが、そのような状況になっています。これが日本流だと
「明日の11時から14時
までは消費電力が増大するので、電力単価が2倍になります」
となります。最近はそうでもないかもしれ
ませんが、
日本人は耐えるのを好む民族のようです。
地球の気候が決まるメカニズム
気候変動は、昔は地球温暖化、
すなわち地球の温度が上がることだといわれていましたが、実際には気
候異変や異常気象が起きます。なぜこんなことが起きるのか、
簡単にご説明します。
実は2000年以降、地球の平均気温はあまり上がっていません。これはハイエイタス
(地球温暖化の停
滞現象)
と呼ばれています。観測値は2000年頃からあまり上がっていないのです。
しかし、大気中のCO2
濃度が上がっているので、地球が溜め込んでいるエネルギーがどんどん増えているのは間違いありませ
ん。そのエネルギーは、
大気にいっていないのだから、
おそらく海洋にいっているといわれています。
地球の温度が上がらない場合のシミュレーションを見ると、
日本周辺の海水温度が非常に上昇すると
8
基 調 講 演
いう恐ろしい計算値が出ています。
しかし、現実の観測値を見ると、
日本周辺以外の海水温度も非常に上
がっています。つまり、計算値と観測値がまったく合っていません。サイエンスがまだ完璧に追いついて
いないという状況です。いずれにしても、海洋の温度は上がっているようなので、水温の上昇に説明ので
きない異常が見られるというのが現状ではないかと思います。
日本の気象庁は最近、毎年の海水温度を比較したデータを発表しています。2012年、13年、14年の
9月1日の比較を見ると、
まず2012年というのは世界的にもハリケーン・サンディが起きるなど、
おかしな
年でしたが、北緯40度付近の海水温度が非常に高い状態にありました。そのために、秋が消えました。夏
からいきなり冬になったということです。2013年は割合と均等ですが、全体的に温度が上がっていまし
た。2014年は、北緯40度付近の温度が下がっている代わりに、北緯25度付近の温度が上がりました。日
本列島の南方全域に海面水温30℃が広がってい
ます。台風は27℃まで成長できますから、海面か
ら水蒸気をもらい、それを雨に降らし、蒸発潜熱を
もらいながら、日本列島のぎりぎりまで成長しま
す。そして、日本列島にぶつかってくるわけです。
北緯25度辺りをうろうろしている間はどんどん成
長するというのが、いまの状況です。
2番目は、中緯度の全体的な気候です。太陽で
温められる赤道付近が気温上昇するのは明らかで
す。気温が上昇すると上昇気流が起きます。その
上昇気流はやがてどこかで下降気流となり、そこ
に高圧帯がつくられます。たとえばサハラ砂漠は、年がら年中高気圧がいて雨が降らない中緯度高圧帯
にあるため、砂漠になっているのです。
では、赤道の気温が上昇すると何が起きるのか。大量の上昇気流ができるので、気流の下りてくる位
置が中緯度高圧帯の少し北のほうにずれるのです。そこはもともと偏西風帯で、西風が吹いています。そ
こに高気圧が頭を突っ込むと、普通は一瞬で流されて移動性高気圧になります。
しかし、赤道からどんど
ん上昇気流が生まれるので、流されずに大きくなり、動かない高気圧ができます。これはブロッキング高
気圧と呼ばれるもので、
偏西風を蛇行させます。
これが中緯度における気候変動のひとつの要素です。
ブロッキング高気圧が起きた2010年の夏、モスクワは非常に暑い日が続き、6月にもかかわらず
32.4℃になりました。こういう地域には当然冷房設備はないので、
とんでもない事態になりました。また、
ハリケーン・サンディがニューヨークを襲った2012年。本来ハリケーンというのは、
日本の低気圧と同じ
で、北東の方向に抜けていなくなるのが普通の経路です。
しかし、
このハリケーン・サンディは左折して
ニューヨークに向かいました。進行方向にあるブロッキング高気圧によって北東へ抜けられず、巻き込ま
れて北西に入ったのです。それだけで6兆円の被害です。そのうち、東京の南を通っている台風が左折す
9
るようになると大変なことになる気がします。
昔は三寒四温といわれていましたが、今年の1月∼3月の気温を見ると、
だいたい15、16日寒、14日温
です。周期がまったく違う。まず北風が吹き込み、その後に南風が吹き込むという間隔が非常に広くなっ
ている。これは風が吹き込む辺りにブロッキング高気圧がいて、なかなか動かないということです。とに
かく、異常にとどまる高気圧ができていることを意味します。だいたい1カ月周期で寒い、暖かいが繰り返
されています。
最後は乾燥です。太陽が温める範囲は北回帰線と南回帰線の間です。陸地は海よりも暑くなるので、
陸地が温められると、そこから上昇気流が起きます。北緯30度、中緯度高圧帯にあるサハラ砂漠の南方
付近に陸地が多いので、
そこからの上昇気流が下りてくるのはサハラ砂漠の少し北のほう、
つまり地中海
付近が非常に乾燥するのではないかと予測されます。そうなると、たとえばピレネーの水力発電も使え
なくなるのではないかといわれています。また、南米の陸地から一定距離にあるカリフォルニア付近の乾
燥が激しくなると予測されます。今年のカリフォルニアはひどかった。昨年からですが、乾燥が非常に激し
い状況が見え始めているのかもしれません。
では、
日本はどうか。日本が影響を受ける辺りは幸いにしてちょうど海なのです。だから、あまり温度は
上がらず、降雨量もそれほど変わらないといわれています。日本とは反対側のオーストラリアはという
と、
影響を受ける辺りに少し陸地があるものですから、
おそらく乾燥が進むだろうといわれています。
この予測はコンピュータシミュレーションです。いまご説明したように、
どこにどうやって高気圧ができる
かを考えると、
簡単に説明できるのです。人によっては
「コンピュータシミュレーションはあてにならない。
最初から結果が仕込まれている」
とおっしゃる方もいますが、
そんなことはありません。いまお話ししたよう
な話を、
30分かけて、
丁寧に説明すれば、
中学生はわかってくれると思います。
ビジネスマンはむずかしい
かもしれない。先入観があるとむずかしいのですが、
何も先入観がない中学生ならわかってくれるのでは
ないかと思います。話は簡単です。地球の気候が決まるメカニズムがわかれば、
それだけでよいのです。
今世紀末までの大目標「持続可能性より定常状態の達成」
最後に、今世紀末までの大局観をまとめます。いま、大目標として持続可能性という言葉が使われてい
ますが、
しばらくはよいのです。途上国に持続可能性があるなどというのは、
もともと経済的なコンセプト
が非常に大きい。それを除けば、持続可能性ではなく定常状態というものをつくります。つまり、可能で
あれば世界人口を微減状態にする。今世紀中にどこかでピークをつくり、微減に入る。また、地球は回復
力があります。だから、1人当たりの地球への負荷を、地球の回復力を人口で割った1人分にほぼ等しくす
れば、
なんとかなるのではないかと思います。
その定常状態を実現するには、
たとえば枯渇はいけません。化石燃料はCCSでも枯渇します。核燃料
も枯渇しますし、汚染は論外です。廃棄物も出ます。CO2も核燃料も地球の処理能力内で処理できれば
10
基 調 講 演
よいのですが、放っておくと処理に100万年ほどかかる。これを地球の処理能力にどうやって移動するか
を、いま一生懸命考えています。できないわけではないのですが、お金がかかります。それから、物質資
源はすべて枯渇するので、
自然エネルギーを使って丁寧にリサイクルする。生物資源は、
とにかく再生速
度の範囲内でしか使わない。淡水もそうです。環境資源の生態系は脆弱なので、
これは一生懸命保全す
るしかない。
このような感じになると思います。
エネルギーはどうなるのか。本当は世界全体で
2050年までにやらないといけないのですが、1人
当たりの使用エネルギーを、先進国で2100年、遅
くとも2200年までに半減させます。途上国も最
終的にはこのラインに乗せて、
とにかく半減してい
くしかないのかもしれません。CO2の排出量はそ
れよりも早く下げなければいけないので、化石燃
料はCO 2をCCS、つまりカーボンをとらえて溜め
込むことで削減していかないといけません。これ
を実現するには結局、最終的には自然エネルギー
だけにするのですが、化石燃料もなかなかゼロに
はできないだろうと思っています。標語としては
「ほぼ自然エネルギーだけの2100年」
という程度が大局
観です。そうなると、
どうしても原子力も残ってしまうかもしれない。このようなイメージです。
結論としては、いろいろ問題はありますが、気候変動と生物多様性の問題が大きい気がします。鉱物資
源はなんとかリサイクルすればよい。最終的に持続可能な社会へは3種の対応を行ないます。①イノ
ベーションは、消費者をいかに巻き込むか。消費者の感性への対応が重要です。②社会システム変更は、
いろいろと問題があります。③ライフスタイルの変更は、①と深く関係しており、①と③を合体したイノ
ベーションを起こすことが解のような気がしています。
以上です。ご清聴ありがとうございました。
安井 至
(やすい いたる)
氏
(独)製品評価技術基盤機構 理事長/東京大学 名誉教授
1968年東京大学工学部卒業、1973年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。工学博士。東京大学生産技術研
究所 教授、東京大学国際・産学共同センター センター長、国際連合大学 副学長、(独)科学技術振興機構 研究開発戦
略センター 上席フェローを経て2009年より現職。主な著書に『市民のための環境学入門』
( 1998年 丸善出版)
、
『環
境と健康 誤解・常識・非常識 信じ込んでいませんか?』
( 2002年 丸善出版)
、
『リサイクル 回るカラクリ止まる理由』
(2003年 日本評論社)
、
『 図解雑学
「環境問題」(
』2008年 ナツメ社)
、
『「化学」
で何がわかるか−あなたの化学、西暦何
年レベル?−』
(2011年 化学工業日報社)
、
『 地球の破綻 21世紀版成長の限界』
(2012年 日本規格協会)
など。
11
招 待 講 演 ①
バイオマスからの燃料・化学品生産技術の
開発と合成生物工学の展開
神戸大学大学院工学研究科 教授
近藤 昭彦 氏
化学工場から細胞工場へ
低炭素社会を実現するため、再生可能な資源であるバイオマスからバイオ燃料や化学品をつくるバ
イオリファイナリーへの期待が高まっています。そのためには、
これまで化学工場にて石油原料から燃
料や化学品をつくってきた過程を、
「細胞工場」
によってバイオマ
スからバイオベースの燃料や化学品をつくる過程にパラダイム
シフトさせる必要があります。細胞工場とは、バイオマスを分解し
てできた糖を微生物に食べさせ、目的の化合物をつくらせるとい
うものです。
欧米でも研究開発が行なわれており、たとえばアメリカでは
DOE
(アメリカ合衆国エネルギー省)
が非常に大きなファンドを出
して3つの研究開発拠点をつくっています。また、
ブリティッシュ・ペ
トロリアムという石油会社が数百億円規模の研究開発拠点をつく
るなど、
企業も巨額の投資を行なっています。
このように、世界では化石燃料経済からバイオベース経済へと転換が起きており、バイオベース製品
の市場は急速に拡大しています。OECD
(経済協力開発機構)
は2020年までに化学産業の最大20%が
バイオベースに移行すると予測しています。そして今年、
トウモロコシなど食糧と競合する可食バイオマ
スの利用から、木や草など食糧と競合しない非可食バイオマス利用への転換が本格化し、非可食バイオ
マスからエネルギーをつくる事業が動き出しました。オランダの化学メーカーDSM社とアメリカのエタ
ノール生産メーカーPOET社の合弁会社や、
アメリカの化学メーカーDuPont社が、植物の繊維であるセ
ルロースからのバイオエタノールの商業生産を開始しました。このような世界の状況を背景に、
日本でも
事業化への取り組みが求められています。
細胞工場の創製
非可食バイオマスである木や草は、主にセルロースやヘミセルロース、
リグニンを含んでいます。微生
物はこれらの成分をこのままでは利用できないので、酵素で低分子の糖へ分解する必要があります。バ
イオマスは酵素による糖化プロセスと微生物による発酵プロセスを経て、燃料や化学物質に変換されま
す。従来の方法ではプロセスが煩雑で多くのエネルギーが必要なうえ、
コストもかかり、実用化は困難で
した。そこで、
このプロセスをできるだけ簡略化し、省エネルギーや低コストなものにするべく、糖化と発
酵を同時に行なう細胞工場
(スーパー微生物)
を開発して一貫バイオプロセスを確立しようとしていま
す。そのためには広範な技術が必要なので、分野の垣根を超え、工学と農学が連携して研究開発を行
なっています。
しかし、細胞工場のような都合のよい微生物は容易につくれません。そこで、細胞表層工学と合成生物
12
工学による技術が必要になります。細胞表層工学では微生物の表面にバイオマス分解酵素を集積させ
ます。すると微生物自らがバイオマスを分解してできた糖を効率的に取り込むようになります。よって、
バ
イオマスを簡単な前処理をするだけで直接発酵することができます。また、合成生物工学では微生物を
改変し、効率よく物質を生産できる代謝経路をつくります。微生物
の代謝は複雑で、
さまざまな反応があるため、
コンピュータシミュ
レーションによって代謝経路をデザインし、細胞内の成分を網羅
的に解析するなどして良い経路を探し、遺伝子技術でその性質を
微生物に付与します。
この細胞表層工学と合成生物工学を組み合わせることで、
バイ
オマスから目的の化合物を高収率・低コストで生産できるスー
パー微生物
(細胞工場)
を開発し、
バイオプロセスを完成させよう
としています。
グリーン・イノベーションの実現に向けて
リグノセルロースからエタノールをつくる時は、前処理して液体にしたリグノセルロースに、
デザインし
たスーパー酵母を加えて発酵します。酵母はリサイクルして繰り返し使い、
エタノールの蒸留はできるだ
け省エネルギー型の蒸留塔で行ない、
エネルギーやコストの削減につなげます。たとえばネピアグラス
という草を原料にして発酵すると、約5%濃度のエタノールを70時間でつくれます。これは世界最高レベ
ルの性能です。さらに微生物の代謝をコントロールすれば、
エタノールのほかにアミノ酸など、
さまざま
な化合物をつくることも可能です。
また、二酸化炭素から直接目的の化合物を生産するため、微細藻類によるバイオリファイナリーの研
究も行なっています。炭水化物や油をつくってから生物変換で目的の化合物にする手法と、二酸化炭素
をダイレクトに変換する手法があります。前者でいえば、微細藻類は光合成をするので、二酸化炭素と光
さえあれば糖をつくることができます。もしグリコーゲンという糖をためれば、非常に分解しやすいので、
簡単にグルコースから生物燃料がつくれるという、非常に省エネルギーな変換が可能になります。
これらの研究は、実験室レベルのものもあれば、実用化をめざして大規模実験が始まっているものも
あります。最終的には、バイオ燃料や化学物質を生産する微生物が働く大規模なプラントが並んだバイ
オコンビナートをつくりたいのです。そのために、
製紙工場のパルプをつくる装置を利用することや、
さと
うきびなどを使った従来法による第一世代エタノール製造設備にセルロース系エタノール製造設備を
併設することなどを検討しています。
私たちはバイオリファイナリーの製造工程を確立し、石油化学コンビナートが担っている役割の多くを
バイオコンビナートに転換するグリーン・イノベーションを起こしたいと考えています。
近藤 昭彦
(こんどう あきひこ)
氏
神戸大学大学院工学研究科 教授
1983年京都大学工学部卒業、1988年京都大学大学院工学研究科博士課程修了。工学博士。九州工業大学 講師・助
教授、神戸大学 助教授を経て2003年より現職。2007年より神戸大学統合バイオリファイナリーセンター センター
長。2012年より理化学研究所バイオマス工学プログラム細胞生産チーム チームリーダー。専門は生物化学工学。著
書に『コンビナトリアル・バイオエンジニアリング』
(2003年 化学同人 共編著)
、
『 遺伝子工学』
(2012年 化学同人 共
編著)
など多数。2010年生物工学功績賞、2011年井植文化賞、2013年
「モノづくり日本大賞」
経済産業大臣賞など受
賞多数。
13
招 待 講 演 ②
企業のCSR
NPO法人サステナビリティ日本フォーラム 代表理事
後藤 敏彦 氏
CSRにおける経営トップ関与の重要性
1972年のストックホルム国連人間環境会議以降、世界各国で環境問題への取り組みが行なわれてい
ます。その影響で、
日本の企業も1990年代に環境への取り組みを開始し、2000年代にはCSRに取り組
むようになりました。企業グループ内だけでなく、調達先や企業グループ外も含めた全体を
「バリュー
チェーン」
といいます。昨今のバリューチェーンにおいて、NGOはレピュテーション
(世論)
を活用しつつ
環境や人権などの問題解決を求めており、対応を誤った日本企業がダメージを負うケースが多発してい
ます。たとえば、NGOからの抗議を無視したために大量の抗議文が届いたり、売上げが半減したりといっ
たケースがあります。一方で、NGOの抗議に当初から社長自ら対応し、いまではNGOと共に環境活動を
行なっているケースもあります。
このようなことが起きる背景にはISO26000
(国際標準化機構
による、あらゆる組織の社会的責任を記述した手引き規格)
があり
ます。ここでは、NGOも策定主体の一員であり、企業とNGOのエ
ンゲージメントがより重視されるようになりました。また、
組織が取
り組むべき社会的責任として、
「組織統治」
「人権」
「労働慣行」
「環境」
「消費者課題」
など、7つの中核主題が掲げられています。主題ひ
とつにおいても企業の関係部門は多岐にわたり、1部門だけでは
対応できません。もはや、経営トップの関与、方針、戦略なくして対
応は不可能であり、怠ればリスクに巻き込まれるという状況です。いまやCSRはバリューチェーンの中で
実践することが定義になっており、そのためにはNGOを含むステークホルダーとのエンゲージメント、あ
るいは企業戦略が重要です。すなわち、
全社総がかりで対応し、取り組む時代になっているのです。
環境・CSR報告の大きな変化
企業が発行する環境報告書とCSR報告書の世界が、
この1年半ほどで大きく変化しています。企業情
報開示をめぐる国際動向を受けたもので、
この動きに共通するのは企業の
“長期的成功”
が重視されて
いることです。
EUでは、会社法指令で企業の情報開示の基本的枠組みを規定していますが、昨年4月に改定提案が
され、
まもなく成立する見込みです。非財務情報である環境、従業員関連事項、人権尊重、腐敗・贈収賄に
関するマテリアル情報の開示や、取締役会に多様な人材を起用するというダイバーシティポリシーの作
成・公表が法律で義務化されます。また、昨年GRIガイドライン第4版
(G4)
が出されました。これはサステ
ナビリティレポートやCSRレポートのガイドラインです。G3までは網羅性を重視していましたが、G4では
「マテリアリティ」
に焦点をあてた報告書に変更しました。マテリアリティとは、サステナビリティの実現に
向けて取り組むべき事項を、
ステークホルダーの視点も入れて選定した重要課題のことです。IIRC
(国際
14
統合報告評議会)
は統合報告フレームワークの初版を公表しました。コンセプトは
「財務情報と非財務情
報を統合して、簡潔な、企業の将来的成功のためのレポートを出す」
ことで、CSR報告書に代替するもの
ではありません。一方、金融庁は
「責任ある機関投資家」
の諸原則
(日本版スチュワードシップ・コード)
を
導入しました。これは、企業の持続的・中長期的な成長を促すために、機関投資家が企業と建設的な対話
を行ない、適切に受託者責任を果たす7つの原則です。
世界の動きを見ると、今後は過去情報の掲載だけでなく、それをベースにした長期的成功のための情
報が求められていることがわかります。
CSR経営の成長戦略とESG課題への対応
これまでの経済は工業を基盤とした産業活動を通じて利潤を生み出すという産業資本主義でしたが、
これからは利潤の源泉は
「もの」
ではなく、
「人の知恵」
になるといわれています。つまり、企業経営の基盤
は有形資産から無形資産
(知的資産)
へと大きく変容しています。そして、企業のグローバリゼーション
は、
すでにある市場に商品を売るという20世紀型の
「市場参入型」
から、需要を見つけて市場をつくると
いう21世紀型の
「市場創造型」
へと移っています。さらに、CSRの推進が競争力の源泉となり、企業の個
性の構築につながります。一方で、世界経済は資源制約という大きなリスクに直面しており、その影響か
らビジネスモデルの変更が問われています。
投 資 の 世 界では、S R(
I 社会的責任投資)
・E S G 投 資( E n v i r o n m e n t=環 境 、S o c i e t y=社 会 、
Governance=ガバナンスという非財務情報を重視する投資)
が広がっています。先日、
「欧州に炭素繊
維を売り込んだら買ってもらえることになったが、製造する時の熱源が先行きは再生可能エネルギーで
なければ
(化石燃料ならば)
買わないと言われた」
という話を耳にしました。購入してもらえない点ではリ
スクですが、
カーボンレス・プロセスをつくれば買ってもらえるということなので、ESGはリスク要因だけ
でなくリターン要因でもあります。ただし、
日本はESG投資に対する準備がかなり遅れています。投資全
般に占めるESG投資の資産割合が、欧州の49%に対して日本は1%にも満たない状況です。
国連では、
「極度の貧困と飢餓の撲滅」
など8つの目標を掲げた
世界共通の開発目標である
「ミレニアム開発目標
(MDGs)
」
につ
いて、達成期限の2015年を前に議論が続いています。さらに、
MDGsでは対応しきれなかった課題を含めた、2016年以降の持
続可能な開発目標について検討する
「ポスト2015
(SDGs)
」
プロ
セスが本格化しています。来年9月に改定される課題はすべて企
業も関係あるESG課題となる見通しです。こうした動きを背景に、
ステークホルダーと社会がエンゲージメントする中で、企業が
SDGsにどう対応していくかが今後の課題となります。
後藤 敏彦
(ごとう としひこ)
氏
NPO法人サステナビリティ日本フォーラム 代表理事
1964年東京大学法学部卒。(一社)グローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワーク 理事、NPO法人社会的責任投資
フォーラム 理事・最高顧問、(一社)グリーンファイナンス推進機構 理事など複数の団体の理事を務める。NPO法人環
境経営学会 会長、地球システム・倫理学会 常任理事、その他複数学会会員。環境管理規格(ISO)審議委員会EPE小委
員会 委員、環境省・環境コミュニケーション大賞 審査委員など複数委員会の座長・委員を務める。主な著書に『環境コ
ミュニケーション入門』
( 2007年 日本規格協会 共著)
、
『 社会的責任の時代』
( 2008年 東信堂 共著)
、
『 サステナビリ
ティと本質的CSR 』
( 2009年 三和書籍 共著監修)、
『 環境 持続可能な経済システム』
( 2010年 勁草書房 共著)、
『ISO26000 実践ガイド』
(2011年 中央経済社 共著)
など。
15
パ ネ ル ディス カッション
「変わりつつある地球」への対応
ファシリテーター: 合同会社 地球村研究室 代表/東北大学 名誉教授 石田 秀輝 氏
パネリスト
: 東京大学生産技術研究所 准教授 岩船 由美子 氏
NPO法人九州バイオマスフォーラム 事務局長 中坊 真 氏
和歌山大学システム工学部 教授 吉田 登 氏
大阪大学大学院工学研究科 准教授 惣田 訓 氏
石田 このパネルディスカッションでは、エコイノベーションがもたらす
新たな価値の創造が、最終的に
“いっしょにeco ”へどうつながっていくの
か、考えることができればと思います。安井先生が基調講演で気候変動の
お話をされましたが、昨今の環境への対応において非常に大きなウエイト
を占めるのが気候変動と生物多様性であり、気候変動の非常に大きな部分
を占めるのがエネルギーです。本日のパネリストの皆さまは、大きな意味で
エネルギーのお話をされるということで、私も楽しみにしています。
石田先生
暮らしとエネルギー 需要側にできること
これまでは供給
岩船 本日は長期的展望にたったお話をします。まず、エネルギー問題において、
側での解決意欲が強かったのですが、特に東日本大震災以降、需要側も供給側に協力する雰囲気が
16
出てきました。実際、需要側に対する期待が高まっています。
需要側でできることは大きく3つ。ひとつ目が省エネルギー。2つ目が再
生可能エネルギー対応のための調整機能、つまり使うべき時間をずらすと
いった手法。3つ目がCO 2排出原単位の小さい燃料への転換です。これは、
灯油などから電気への転換、あるいは太陽光発電パネルを屋根に設置する
といったことです。
東日本大震災以降、電力ピークに関する議論が目立ちますが、日本の家庭
岩船先生
用エネルギー消費は非常に小さく、それなりに省エネも進んでいるため、そ
れほど調整余力があるとは思えません。エネルギーの
「見える化」
についても、効果は限定的です。多
消費の世帯ほど、自身のエネルギー使用量に無関心なのが実情です。スマートハウスには自動制御の
可能性がありますが、
くつろぎの場である家庭に制御が持ち込まれることを嫌がる人もいます。結果
的に、家庭側でできることは期待されているほど大きくないのではないか、
というのが私の考えです。
私が考えるエネルギー消費の式は
「エネルギー消費量=①実現されるサービス量×②単位サービ
ス量当たりに必要なエネルギー消費量」
です。①は①′
と①″
に分けられます。①′
は
「効用の増加に寄
与するサービス量」、すなわちエネルギーを使うことで消費者にメリットが生じるものです。①″
は
「効
用の増加に寄与しないサービス量」、つまり消費者がエネルギーを使ってもメリットが生じないもの
です。②は、サービスを実現するためのエネルギー消費量、要するに効率です。省エネを考える場合、
まず②を減らし
(効率を上げる)、①″
を減らし
(無駄を減らす)、最後に①′
を減らす
(我慢する)
という
順番でやるべきでしょう。
②の削減とは、エネルギー利用効率の改善で
す。家電製品の省エネや高効率設備の導入など
は社会的に実施済みです。これは省エネの第一
義であり、政策的にも介入しやすいので、今後も
進めていくべきです。
①″の削減とは、無駄を減らすことです。ただ
し、何が無駄かどうかの判断は世帯によって異な
ります。ペットのために冷暖房、ましてや照明ま
でを稼動させる家庭に対して、それが無駄とは
言い切れないわけです。これはライフスタイル
の問題と密接にかかわるため、規制による対応は困難です。一方で、消費者それぞれの判断にゆだね
るには、エネルギー使用量の情報をきちんと提供することが重要です。その手段のひとつが「見える
化」です。ただし、それだけでは解釈がむずかしく、判断がつかないので、なんらかの診断が必要で
す。いま我々はHEMS
( 家庭用エネルギーマネジメントシステム)のデータを分析し、診断をお返しす
17
るしくみを構築することを行なっています。
①′
の削減については、非常時を除き、基本的には行なわなくともよいと考えます。ただ、我々の調
査結果では、東日本大震災後に節電対策を実施された方の中には、効用は減少したものの負担感は
少ない方々がいて、節電行動が習慣化していた傾向も見られました。そう考えると、負担感を含めた
コストと省エネ効果のバランスを消費者が意識できるようなしくみが必要だと思います。
では、そもそものサービス量はどうなるのか。利便性や快適性の訴求は続くかもしれませんが、先
進国では基本的にエネルギー由来の充足水準はほぼ実現しているので、大きく増えることはないと
思います。つまり、安井先生が省エネの極意として提案されている
「新こたつ文明」、すなわち「必要
なとき、必要なところで、必要なことだけ、をサービスの基本に」
を実現できればよいのです。
長期的な持続可能社会のためには、現在
のサービス水準を今後も継続して供給でき
るかは疑問です。原子力NO、CO 2も減らし
たい、ということであれば、需要側が変わる
必要があります。たとえば、太陽光発電の発
電量が増える時間に電気給湯器のお湯をつ
くったり、早寝早起きをしたり、洗濯を晴れた
日にするなど、供給に需要を合わせていくこ
とがゆくゆく必要になるかもしれません。ま
た、不安定な電源や電力システムを受け入
れる。さらには、必要なサービスの種類を変
える、多少の不自由を受け入れても高い満
足度のものを見つけるといった、サービス対満足度のバランスの見直しが考えられます。
もう少し手前の需要の変化の例を見ましょう。たとえば、サーバーの電力消費量。Googleのデー
タサーバーは、2010年に電力消費量が2,300GWhに達し、これはソルトレイクシティの電力消費
量に匹敵するといわれています。対してヤフーは、発電機やUPS( 無停電電源装置)
を使わず高温で
動作するサーバーを利用した「プレハブデータセンター」
を構築し、大幅な省エネを実現しました。
「Yahoo! JAPAN」の大部分はユーザーのデータに頼らない公開情報を利用したサービスのため、
電源が失われた際、ほかのデータセンターにサービスを引き継ぐ短い間だけ電源を維持できればい
いと考えたのです。また、イギリスのEnviro-Cool社が開発した飲料缶急冷装置
「v-tex」
は、1分と待
たずに4℃まで冷却できるといいます。業務用のものも検討されており、いつも大量に冷やしておく
必要がないので、非常に省エネになります。こういった発想の転換に、思わぬ省エネの可能性が眠っ
ているのではないかと思います。
最近では、ネット通販をコンビニで即日受け取りできるサービスが始まりました。はたしてそれは
18
パ ネ ル ディス カッション
本当に必要なのかどうか。我々は
「必要なサービスとは何か」
ということについて考えていかなけれ
ばならないと思います。
小さな自給の仕組みづくり
中坊 我々NPO法人九州バイオマスフォーラムの事務所は、九州の中
央、阿蘇山のカルデラにあります。3年前まで阿蘇の草原の草を使ってガス
化発電を行ない、温水プールに電気の熱を送るという実験事業を行なって
いました。いまはその近くで草と木を利用した活動をしています。
私はもともと火山が専門で、火山研究のために阿蘇へやってきました。阿蘇
山は7、8万年前に大火砕流を起こし、その時にカルデラができました。この火
中坊先生
砕流は海を越えて山口県にまで達し、火山灰は北海道で15cmも積もりまし
た。世界規模の気候変動を起こすほどの噴火=破局噴火が起きたのです。いま同じ噴火が起きたら、
おそ
らく北部九州は全滅します。それほどの噴火が10万年規模の単位で考えると九州で起こっています。
最近よく豪雨が発生します。2年前の九州北部豪雨では、阿蘇市乙姫の記録で約500mmもの雨が
降りました。阿蘇市の被害は、死者21名。流木と土砂が流れ込み、商店街が浸水しました。山から流れ
出した多くの流木が、橋のたもとにたまり、さらに大きな被害をもたらしました。被害拡大の原因のひ
とつが人工林の間伐の遅れだといわれています。また、切り捨てられた間伐材が大雨の時に流れ出
し、河川を埋め、橋や海辺にたまる。そして莫大な処理費がかかる。そういう悪循環が起こっています。
いったい災害に強いしくみとは何だろうか。そのキーワードのひとつに
「小規模・分散化」がありま
す。小規模・分散化の事例といえば、昔はバスを使っていた人が、乗用車に乗り、軽自動車へ買い替え
る。大型ショッピングセンターよりも、いまはコンビニの売上げが伸びています。一方で、道の駅のよ
うな小規模なお店も出てきている。また、原子力発電所による大規模・集中的な発電に対しては、住
宅用太陽光発電の急速な普及や、家庭用燃料電池も登場してきています。
エネルギーに限らず、食糧についても小規模・分散化の事例を考えた時、そのヒントになるのがド
イツの「クラインガルテン」
( 集団型・賃貸型の市民農園)
です。日本の食糧自給率はカロリーベース
で4割ですが、旧東ドイツは食糧の3、4割をクラインガルテンで自給していました。また、戦争時は逃
げ場所でもあり、重要な食糧供給源でもありました。公園・景観保全の機能を重視し、地産地消。ほと
んどの方は農薬をできるだけ使わず、有機農業をされています。
ロシアの場合は
「ダーチャ」
です。1985年以降、何度も経済危機に見舞われたにもかかわらず、ロ
シアでは餓死者が出ませんでした。国内3,400万世帯の8割がダーチャなどの菜園を持ち、ジャガイ
モの国内生産の9割と野菜の8割を自給していたからだといわれています。
こういった小規模での食糧・エネルギー自給体制も、ライフラインが途絶した時の対策として、非
19
常に強いシステムのひとつになり得ると思います。ライフスタイルとしても、ロシアでは郊外のダー
チャで週末を過ごすのが一般的で、
「 ダーチャ渋滞」
が起きるほどだそうです。ダーチャに関する雑誌
も数百種類あるといわれています。
さて、我々はいま、薪に注目しています。これは自給できる数少ない燃料であり、電気やガス、灯油
の代わりになります。また、災害時や停電時も薪ストーブなら利用可能です。山林を持っていれば無
料で手に入りますし、何より薪づくりは楽しいのです。楽しくて必要以上に薪をつくってしまう人もい
ます。農業と家庭菜園の関係のように、林業で生活する人がいる一方で、薪づくりという個人のライ
フスタイルがあってもいいのではないかと思います。
我々は山のように薪をつくって露天乾燥さ
せ、そこに簡易な屋根を被せて乾燥させてか
ら、
トラックで配達しています。流木なども買
い取って薪にしていますが、もちろん余計に
木を切るわけではありません。1本の木のう
ち、用材になるのは約半分で、残り半分は山
に捨てられています。原料としては、タンコロ
と呼ばれる木の根元の部分や、割れが入って
いるもの、曲がっているせいで捨てられてい
たものが薪になります。森林の
「落ち穂拾い」
と呼んでいるこのビジネスで山村を活性化
させようとしています。
我々はいま薪とペレットを配達・販売しており、売上げは順調に伸びています。初年度は15万円だっ
た売上げが、平成21年度から急激に伸び、昨年度は800万円になりました。薪ストーブの導入には約
100万円の投資を必要としますが、お金がか
かっても投資をする人はいるのです。別荘地
などでは、薪ストーブ設置率が半数を超えて
いるようなところもあります。
薪を利用すると、まず木が気になります。
次に、木がお金に見えてきて、山が気になり
ます。そして炎がより好きになり、冬が楽し
みになります。薪ストーブでおでんや焼きい
も、ピザを焼く。さらに大事なこととして、コ
ミュニケーションが活性化します。炎を囲む
と会話が弾むのですね。夫婦仲がよくなった
20
パ ネ ル ディス カッション
り、父と娘が会話するようになったりと、暖かい薪ストーブに人が集まって会話が生まれる効果があり
ます。薪ストーブの、暖房器具やエコとは異なる魅力に惹かれ、導入するという現象がよく見られます。
また、薪ストーブユーザーは、斧を購入したあと、チェーンソー、軽トラと続き、最後は斧で割るのが
大変だからと油圧薪割機まで購入します。これを合計すると薪20年分が買える金額になります。この
ように、普通の林業への参入とはまったく異なる現象が、薪ストーブユーザーの中で起こっています。
考えてみれば、我々は石器時代の頃から木を集め、それで煮炊きして生活していたわけです。我々
の本能の中に、木を集めて火を燃やす、それでやすらぎを得る、
ということが刻まれているのかもし
れません。
東南アジアの廃棄物埋立処分場から考えた低炭素・循環型社会
惣田 私はこの数年、東南アジアの国々における廃棄物埋立処分場の
調査研究をしています。そこから考えた、これからの社会のあり方につい
て、話題提供させていただきます。
ベトナムなどの東南アジアの都市部における人口集中や経済成長には、
めざましいものがあります。しかし、その裏側には、どうしても廃棄物の量
が増大してしまう問題があります。日本とは違い、廃棄物を焼却することは
惣田先生
ほとんどありません。生ごみでもプラスチックでも、何でも混ぜて廃棄して
しまう直接埋立方式が主流です。処分場運営管理も不十分なので、ごみが山積みのところもありま
す。また、モンスーン地域なので、雨季の大雨によって、ごみの浸出水が周辺に氾濫し、汚染を引き起
こすことも多々あります。
たとえば、ジャカルタでは個人的にごみを焼却し、その残渣を河川に捨てているところもあります。
その河川は灰色に濁っており、プラスチック
も散乱しています。また、タイのノンタブリ
では 、雨 が 降った あと、どろどろの 状 態に
なった地面からメタンや亜酸化窒素といっ
た温室効果ガスが発生しています。
浸出水の中には、腐敗性の有機物や褐色
の腐植物質、アンモニア態窒素など、ほかに
も数えきれないほどの有害物質が含まれて
います。また、乾季に比べて雨季の降水量は
圧倒的です。加えて、気温が高いのでごみも
腐りやすく、有機物の指標であるBOD(生
21
物化学的酸素要求量)
は、乾季は雨季の約10倍の濃度になるため、浸出水の処理施設の設計・運営
が非常に困難な状況です。処理施設の実態としては、溜め池や嫌気ラグーン
(酸素供給のない汚水
貯留池)のようにほとんど処理が行なわれていないところもあれば、他国の支援によって、ナノ濾過
やフェントン酸化などの高度過ぎる処理設備を導入しているところもあります。これは非常に高額な
費用がかかります。
しかも、必ずしも十分な処理ではないうえに、他国の支援が終了すると同時に処
理も止まってしまうこともあります。つまり、持続可能とはいえない処理を行なっているわけです。
フォーラムのテーマにもある
「変わりつつある地球」
という観点から東南アジアの場合を考えると、
都市部の人口集中や、生活様式の高度化による廃棄物の増加という事態は容易に予測できます。ま
た、異常気象や海面上昇の影響で河川や埋立地の浸出水が氾濫しやすくなり、汚染を広げるリスク
が高くなっています。さらに、東南アジアではさまざまな日本の製品の普及が進み、使い終わったも
のはごみになり、洗剤などは最終的には河川に捨てられる化学物質です。企業の社会的責任や生産
者責任がさらに厳しく問われることが予想されます。
さて、私の研究分野での技術を用いて貢献できることを考えた場合、水生植物を使った埋立地の
浸出水処理とバイオマス利用を提案しようと思います。ベトナムやタイでは、河川を覆い尽くすほど
のホテイアオイが繁殖しているところがあります。浸出水貯水池でも、その毒性に負けずに成長する
ガマが生えているところもあります。池の中央でいかだを使った浮島浄化法の実践例もあります。こ
のような年間を通して植物の成長がよい東南アジア地域では、維持管理が容易な人工湿地を利用し
た、省エネルギー・適正技術型の廃水処理ができるのではないかと考えています。
たとえば、高度処理の場合と、標準処理に
人工湿地を導入した場合の、下水処理シス
テムのエネル ギー 消 費 量を比 較しました。
1,100m 3 の下水を処理する場合、嫌気好気
プロセス
(りん除去を目的とした処理方式)
を用いた高度処理では、一定の水質獲得の
ための消費電力量は1日890kWh。対して、
標準型のシンプルな処理方法と人工湿地の
組み合わせによって合計500kWh、9分の5
のエネルギーで済ませることができます。
加えて、人工湿地から余剰植物バイオマ
スを獲得できるので、投入エネルギーよりも
若干多いエネルギー量のバイオエタノールが生産できると計算しています。あるいは、単純にバイ
オエタノールを燃やしてしまうのはもったいないので、ビルディングブロックになるような化学物質
をつくることも有効だと考えています。たとえば、ウォルフィアというミジンコウキクサはデンプンの
22
パ ネ ル ディス カッション
含有量が40%にまで高くなるので、簡単にグルコースを回収できます。このグルコースとCO 2から
コハク酸を生産し、そこからさまざまな化学物質をつくることができます。健康産業や食品産業と
いった用途も考えられます。
変わりつつある自然・社会環境への対応を東南アジアから考えた場合、廃水処理とバイオマス生
産を別々に行なうのではなく、両者の同時達成をめざしていくべきだと思います。今回の発表では、
私の研究テーマである浸出水処理から考えましたが、本来なら廃棄物や下廃水の収集といった上
流から、処理リサイクルなどの下流までを、総合的にデザインする必要があります。また、日本の化
学産業や静脈産業が東南アジアのバイオリファイナリー産業の発展に貢献していくべきだと考えて
います。
また、私は大学の教育・研究に従事する者として育成したい人材像(ディプロマポリシー)
を掲げて
います。研究室の専門である廃水処理や、廃棄物リサイクルの環境プラントの設計・運転の資質を有
していることはもちろん、気候変動や国際化、アジア進出、国内の課題としては人口減少社会や震災
復興に関する将来ビジョンを持つ人材を送り出したいと考えています。
環境インフラにおけるバイオマスからのエネルギー回収
吉田 本日は、下水処理場やごみ焼却場といった環境インフラをテーマ
に掲げた話をさせていただきます。私はエネルギー、特に環境インフラを
研究しています。450トン/日クラスのごみ焼却場では、ごみ焼却発電量
の半分以上が所内の動力に回されてしまいます。そこで発電を高効率化す
るため、ごみに含まれるバイオマス廃棄物を再生可能エネルギーとして有
効活用する技術の導入を検討しています。財政的制約のある地方自治体で
吉田先生
も、ESCO事業(省エネルギー改修にかかる費用を光熱水費の削減分でま
かなう事業)
のような投資回収のしくみを介することで技術導入を図ることができます。
一方で、下水汚泥のように、焼却しかできないようなものを燃料化する技術開発が行なわれていま
す。さらに都市部では、施設の更新のタイミングを計って技術を導入していくことで、温室効果ガス
の大幅な削減も含められるというシナリオを検討してきました。
さて、環境インフラの役割変化についてお話しします。130年という下水道設備の歴史を見ると、
まず公衆衛生を目的に、コレラ対策として日本初の下水道が整備されました。その50年後には浸水
対策として。それから約30年後にはアメニティを向上させる一環として、地方部も含めた広域処理
が広がりました。1970年に水質保全が下水道法に明記され、ようやく環境保全のための下水道の役
割が位置づけられました。下水汚泥の資源化・利用となると、2000年以降のことになります。ごく少
数の下水道でエネルギー利用の取り組みがなされるようになってきました。
23
下水処理場の年代別の分布数を見ると、
2000年頃に建設の大きなピークがありま
す。処理場のコンクリート部分は50年、機械
設備は20∼30年が寿命なので、2030年頃
には少なくとも、内部のフロアや機械部分に
ついては更新のピークが来るのではないか
と思います。
ポイントは、
メタン発酵の設備を備えた下
水処理場が全体の約6分の1しかないという
ことです。
しかもそのほとんどは減量化が目
的で、バイオガス発電には至っていません。
また和歌山でも、いままでは小規模な下水
処理場だと下水汚泥は焼却するしかありませんでした。しかし、低温排熱を使い、バイナリ発電など
も組み合わせて、何とか電力を自給できるような実証事業が始まっています。
ごみ焼却場整備も同じように100年以上の歴史があります。約1,200のごみ焼却場のうち、発電
できるのは340程度。4分の1程度にとどまっています。小規模ごみ焼却場での発電は困難でした
が、乾式メタン発酵とガスエンジン発電を取り入れることによって、小規模ごみ焼却場でもエネル
ギー回収できるような技術開発が進められています。こちらも同じく2030年頃に更新の大きなピー
クを迎えます。
続いて、変わりつつある社会についてお話しします。まずは人口の減少。特に地方部では人口減少
が進んでいます。2004年頃から緩やかにピークが下がり、2035年には全国レベルで8、9割弱まで
減少しています。都道府県によって大きな差があり、たとえば和歌山は全国で2番目に人口減少が著
しい。こういった世の中において、本当にいままでのインフラで財政的に持つのか。利用の仕方が問
われています。
一方で市町村合併も行なわれましたが、社会そのものの組み替えには時間がかかるようです。プ
ランニングされた推進計画をもとに、全国ですべての合併が実行されたと仮定すると、ごみ発電が
可能でエネルギー回収に有利な大規模自治体(20∼30万人以上)
は増加します。しかし、現状では
小さな自治体があまりにも多いため、少しの合併ではエネルギーの回収に有利な規模には至らない
という課題があります。さらに、環境インフラにかかわらず、道路橋や河川管理施設などの社会資本
においても、建設後50年を経過するようなものが今後は増えていきます。
それでは今後、環境インフラをどう活用していけばよいのか。個別には環境インフラやエネルギー
回収の取り組みに着手したところですが、おそらく2030年頃になると当初から再生可能エネルギー
インフラとして位置づけていくようになるのではないか。さらに、バイオマスが安定的に供給される
24
パ ネ ル ディス カッション
ようになれば、災害時のレジリエンス
(回復力)
を高める防災の拠点になります。
このような環境インフラの、エネルギーインフ
ラとしての活用を進めるためには、個別の下水
処理場やごみ焼却場の技術を単純に組み入れ
るだけでは不効率です。小規模ごみ焼却場にガ
ス化発電ができるようなメタン発酵を導入する
と廃液が出ますが、ごみ焼却場内に廃液の処理
施設はないので、個別に処理施設を設ける必要
があります。また、下水処理場でも下水汚泥を
有効活用しますが、そういうものを燃やすことは
ごみ焼却場のほうが長けています。このように、
いままで別々に進んできたものが手を取り合っ
ていくことが必要になるのではないでしょうか。
また、熱は融通できないので電気のように遠く離れたところと売買することはできませんが、社会
的費用をうまく制度設計することにより、特に地方部での熱の活用を含め、再生可能エネルギーの価
値の市場化が重要になってくると思います。さらに、今後のエネルギーインフラを効率的に活用する
ために、都心部と地方部での住まい方を空間的に変えていくことも考える必要があります。
環境インフラを目的に、お互いをすり寄せることによって、エネルギーを上手に活用する社会へと
一歩前進できればいいのではないかと考えています。
社会全体で緩やかにインフラをシェアする習慣
石田 ありがとうございました。岩船先生には家庭のエネルギー消費というひとつの価値観。中坊
先生には薪利用というひとつの価値観。共にライフスタイルという切り口からエネルギーを考えて
いただきました。また、惣田先生には東南アジアをベースとした廃棄物のバイオマス利用。吉田先生
にはバイオマスからのエネルギー回収。こちらはひとつの価値観として社会インフラを基盤にしたエ
ネルギーのお話でした。ライフスタイルと社会インフラ、
この2つに大きく分けられると思います。
まずは、パネラーの4人で、お互いにご質問やご意見、感想などありましたら、
どうぞ。
中坊 では、吉田先生に質問です。下水処理場の年代別の分布図で、近年の施設数が減少してい
るように見えたのですが、施設自体の数が減っているのですか?
吉田 いえ。あの分布図の各棒グラフは、その年に新しく建設された数を示しています。そして、
分布図全体でストックを表しています。
メタン発酵ガスを都
中坊 我々もバイオマス関連のニュースで、下水処理場でできた消化ガス、
25
市ガスに利用するという実験事業をよく耳にするのですが、これから新たに建てられる下水処理場
は、
メタン発酵ガスのエネルギー利用を念頭に置いて設計されることが多いのでしょうか?
吉田 消化発酵設備が導入に至るかどうかは、現場や自治体の条件など、その時々の意思決定に
かなり左右されているようです。たとえばいま、FIT(再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度)
が消化ガス発電導入の動機づけのひとつになっています。そういったことから、
メタン発酵設備を導
入する処理場は増えてきました。
また、神戸市では、消化ガスを精製してつくられる天然ガス
「こうべバイオガス」
を燃料にバスを運
行している事例があります。環境インフラだけでなく、社会に対して広く使われるしくみづくりが戦略
的に導入されています。
岩船 私も吉田先生に質問です。私の発表にありました需要側が変わることの最たる例が、吉田
先生がお話しになった集約的な土地利用の誘導です。特に地方において、コンパクトシティ化は今後
の自治体の経営などを考えた場合も必要になると思いますが、環境インフラの面から見て、どの程
度の規模感であれば集約する価値があるのでしょうか?
吉田 たとえば10万人という規模であれば、1日に100トンのごみを焼却することになります。こ
のクラスの焼却場でやっと、ごみ発電装置の導入が可能になります。
岩船 単純に合併しただけでは、散らばっているだけだと思います。収集にもコストがかかります
よね?
吉田 そのとおりです。合併後にごみ焼却場をひとつに集約した場合、確かに収集のためのコスト
はかかります。ただし、輸送にかかるエネルギーはそれほどでもありません。問題になるのは常に収
集する際の人件費、コストです。また、そもそも合併に合意形成が得られない場合、自分の地域のご
み焼却場に隣町のごみを入れることは、余力があったとしても、感情的になかなか納得できません。
すべての立地問題に共通することだと思いますが、感情的にどう適応させていくか。現在は一般廃
棄物の自治区処理の原則から、自治体ごとに処理しなければならないという決まりになっています。
そうではなく、たとえば一方のごみ処理場が壊れている時には隣町のごみ焼却場で処理するという
協定を結ぶような形で、社会全体で緩やかにインフラをシェアしていく。そういう習慣に慣れていく
ところから進めていく必要があると思います。
食物やエネルギーを自らつくることで変わる意識
吉田 では、中坊先生におうかがいします。私が話した環境インフラは、その多くが都市を対象に
集積しています。その際、都市部と地方部をいかにうまく連携させるかが大きな課題です。先生の発
表は、
クラインガルテンのように、むしろ小規模・分散化を進めるという、こちらの環境インフラとは
対極にあるようなお話でした。それは地方の中で確立するものなのでしょうか? 地方だけでクロー
26
パ ネ ル ディス カッション
ズドに、木を中心とした小規模・分散化の暮らしをすることに、都市部がどのようにかかわってくるの
か、日本の中での事例がありましたら教えてください。
中坊 ドイツには、法律で都市計画の中でクラインガルテンが緑化地域として明確に割り当てられ
ているようです。日本でも団地に公園がありますが、市民農園としてのクラインガルテンを、公園兼
食糧を自給できる緑化地域として位置づけているのです。都市設計のあり方として、
こういった菜園
の存在は廃棄物処理の面からもメリットがあると考えています。阿蘇地域では水分の多い生ごみを
可燃ごみと一緒に灯油を使って乾燥させてから固形燃料に加工しているのですが、家庭で生ごみを
堆肥化して畑で利用している人が多いので、灯油代の節約につながっています。そういう意味では、
都市部でも自分で堆肥化して畑で生産することで、ごみ焼却費用を削減できるのではないか。
また、自分で食物やエネルギーをつくると、つくることの大切さがよくわかります。自分でつくった
薪は、
どんなにカビが生えていても、文句を言わずに燃やします。自分でつくった野菜は、虫がついて
いても、キュウリが曲がっていても、無駄なく食べるのです。農産品の1、2割は規格外や傷などの理
由で捨てられていますが、自分でつくれば廃棄される農産品も削減できる。これからの人口減少時
代では都市、住宅地、商業地と分けるのでなく、住宅地の周りを緩衝地帯としての市民菜園に割り当
てるような都市設計を行なってもいいのではないかと思います。
吉田 いまのお話のようなことを自治体の環境計画などに盛り込めれば、都市部と地方部の連携
やエネルギー利用が進みやすくなるのですが、そのためには市民の方々に実感してもらわなければ
ならないと思います。無駄を感じたり、ものを大事にしたりといった、肌で感じて意識を変えるような
仕掛けが大切だと受け止めました。
省エネ行動における個人の判断を誘導するしくみ
の「効用の増加に寄与しないサービス量」
は、一
吉田 続いて、岩船先生におうかがいします。①″
言でいえば無駄なエネルギー消費だと思います。この無駄については個人差もあるとのことです
が、無駄をうまく発見してエネルギー消費量を下げていくことは技術的に可能なのか。また、全国的
に見て①″
は定量的にたくさんあるのかどうか。岩船先生は発表の中で、日本では個人による省エネ
は行き着いていて、今後大きく下げることはなかなかむずかしいとおっしゃいましたが、いかがでしょ
うか?
岩船 家庭部門に限定すれば、日本はすでに相当な省エネを行なっているといえます。平均的な
電力消費量だけを見ても、アメリカの半分です。ただ、日本の電気料金の単価はアメリカの倍なので
金額的には同じですが。そういう意味では、アメリカにおける
「削減」
と、日本における
「削減」では、
まったくレベルの違うむずかしさがあります。
ただし、HEMSの機能のひとつとして、無駄なエネルギー消費を発見・削減する機能に関しての研
27
究は若干進んでいます。誰もいない部屋の明かりを消すといったことはもちろん、たとえば夏、家の
外が涼しくなってきたにもかかわらずエアコンが稼動しているような場合、外気温をセンシング(セ
ンサーを利用した計測・判別)
し、エアコンを停止して窓を開けるという作業をHEMSに実行させる。
機能的には十分可能であり、検討もしています。よって、技術的に無駄を発見してエネルギー消費量
を下げることは考えられると思います。ただし、期待するほど効果があるかといわれると、おそらくそ
れほどではないと思います。
(
「効用の増加に寄与するサービス量」
)
と①″
、すなわち効用の増加に寄与する
吉田 そもそも①′
か寄与しないかの境目というのは大きく動き得るものなのでしょうか? 無駄の判断は人によって異
なりますよね。その判断をHEMSに機械的に任せ、それにライフスタイルが慣れた場合、個人の意識
の中でそれまで①′
だったことが①″
になるという変化は起きるのでしょうか?
岩船 その境目は非常にあいまいです。料金などとも密接に関係してくると思います。いまはピー
クロードプライシングという価格体系があります。これは、世の中の電力消費が多い時に、その時間
帯の料金を上げることで、出かけさせて消費電力を抑えるというように、一般家庭の行動変容を誘導
するのがねらいです。それが我慢なのか無駄なのか、その境目は本当に人によって異なるとしか言い
ようがありません。それを見極めるためにも、ご自分のエネルギーの使い方を把握できたらいいの
ではないか。それが我々の研究のひとつの提案です。
「需要側が変わる必要がある」
と
惣田 私も岩船先生にご意見をうかがいたいです。発表の中で
おっしゃっていて、そのとおりだと強く実感しました。というのも、
うちの小学生の子どもがゲームや
テレビをつけっぱなしで、
( 不要な時でも)
電気を消さないのです。私や祖母は
(不要な時は)
電気をこ
まめに消しますが、母はあまり消しません。ひとつの家庭で暮らしながら、個人や世代によって満足度
が違う場合、
どのように調整していけばいいのでしょうか?
岩船 東日本大震災後は特に、まるで家族に共通の目的ができたように、節電に協力的だったよう
です。ただし、ばらつきは非常に大きく、そこは各家庭で対処してもらうしかないのですが、やはり皆
さん忙しいのか、エネルギーのことを考えている暇などそれほどないと思います。
一方で、子どものほうが学校で教育され、その子どもに親が教育されるという話も耳にするので、
教育の影響はきっと大きいのだろうと思います。たとえば、
うちの息子も夏休みに電気を計測する機
械を使い、
どちらが省エネかなどと一生懸命調べていました。そのようなおもしろがれるしくみがあ
れば、子どもたちも参加してくれるのではと思います。私自身も、意識を高めるよりは、
しくみでうま
く誘導できる方法を考えています。
「 和歌山環境ネットワーク」
というNPOが、節電についておもし
吉田 おもしろいしくみといえば、
ろい取り組みをしています。まず、各家庭の7・8・9月の電力使用量における前年からの削減率を募
集します。また、その取り組みに対して企業から景品を提供してもらい、抽選で賞品をプレゼントして
います。これもひとつの教育だと思います。社会全体でそういう価値を認める。その取り組みのため
28
パ ネ ル ディス カッション
にたとえば家族があえてひとつの部屋で寝たりする中で、家庭内のコミュニケーションも増えている
ようです。
岩船 多くの方がポイントというものには敏感なので、全国的にポピュラーなポイント制度とうま
くリンクさせるのもひとつの方法だと思います。
ライフスタイルの価値観に基づくテクノロジーの新たな概念
石田 いまのお話は、安田先生の基調講演に出てきたOpowerと同じですね。僕はさきほど、岩
船先生と中坊先生はライフスタイルで、惣田先生と吉田先生は社会インフラという話をしましたが、
いまの議論からいくと、結局ライフスタイルがとても重要だということが、何となく共通の認識に
なっている気がします。
東北に南三陸町という、東日本大震災の津波に襲われた町があります。そこはあまりに小さな町な
ので、もともと下水処理場がない。だから、肩身の狭い思いをしながら、隣町と毎年下水処理を頼む
契約をしていた。ところが、その隣町も津波でやられてしまい、まったく余力がなくなってしまった。そ
の時、
コンサルタントの人たちも立派だったのですが、自分たちで処理することにしました。完璧に分
別をし、有機物の部分は発酵させてエネルギーを集め、液肥をコミュニティごとに戻して自分たちの
家庭菜園に使うようなシステムをつくったら、見事に動き始めた。そして5,000人程度のユニットごと
に、その処理施設をセットで置くことに決めたそうです。
要するに、
これからはテクノロジーとライフスタイルをセットで変えていかなければならない。皆さ
んのいまのお話を聞いていると、目に見えないところで何かと何かを置き換えていくだけでは行き
詰まりがある気がする。
僕は、ライフスタイルからテクノロジーをつくる
「ネイチャー・テクノロジー」
というものを提唱して
います。たとえば風力発電のライフスタイルを描いた時、羽の大きさは50cm程度で、子どもが指を
出しても怪我せず、いつも回っているような発電機が必要であれば、本当に微風でも回ってくれる発
電機にしなければならない。結局、風速1mでも発電効率20%という世界で最も効率のいい、
トンボ
の羽を模した発電機をつくりました。その時に思ったのは、そのような低速で回るものに関する論文
はこの20年間で10本しか発表されていないのに、超音速のものに関する論文は何万本も出ている
ことです。
僕が結論を出すわけでもないのですが、もっと新しい価値観を大切にし、そのうえで必要なテクノ
ロジーの概念を考えなければならない時代に、もしかしたら入ったのかもしれない。たとえば岩船先
生がおっしゃったように、見える化だけでは物足りなくてHEMSにしているけれども、まだ何か足りな
いような感じを受けたのです。実際、価値観の転換が必要だということは何度もお話しされていた。
結局、家庭のエネルギー消費というのは、最近ようやく頭打ちに近づいた程度で、まだ増えてい
29
る。企業側からすると、やはり利便性をあおるようなテクノロジーをつくらざるを得ない。中坊先生の
薪の売上げは確かに右肩上がりですが、まだまだ800万円程度。ビジネスとしてはもっと成長しても
いいはずです。
僕たちが新しいテクノロジーを考えるうえで、暮らし方の価値観がもっと見えなければならないの
ではないか。その価値観に基づいたテクノロジーの概念が必要なのではないだろうか。吉田先生のお
話を例にとれば、自治体を集約してごみ発電をしようとする時の感情的な問題を解決するのもライフ
スタイルの価値観だと思うのですね。一方で、1日100トン以下のごみによる発電は効率が悪いとい
われますが、機械の効率だけでなく、ライフスタイル全体で見た時の効率という価値観も必要なので
はないか。惣田先生のお話に出てきたすてきなシステムを、日本でもっと活用できる場所はないのだ
ろうかと思うわけです。もちろん、行政のハードルなど、さまざまな課題があるのでしょうが。
こういった切り口から、何かご意見はありますか?
新たな価値を感じる場を生活の中にどうつくるか
中坊 よく温暖化対策で冷房温度を28℃に設定することがすすめられていますが、温室効果ガス
インベントリオフィスが発表している家庭のCO 2 排出量の内訳を見ると、冷房からのCO 2 排出量は
全体の2%で、暖房が12.3%なのです。家を建てる時に薪ストーブ1台だけで家の暖房すべてをまか
なうような設計にされる方が多いのですが、薪はカーボンニュートラルなので、その設計であれば
CO 2を12.3%削減できることになります。また、煮炊きに使えばキッチンでのCO 2排出量4.3%も多
少減らせます。ヨーロッパでは家全体を薪やペレットによるセントラルヒーティング(全館集中暖房)
にしているところがあります。その場合、暖房と給湯とキッチンを合わせると、CO 2 の削減が25%を
超えるのです。木質バイオマス燃料を導入することで、家庭でもCO 2を25%削減できる余地がある
のではないかと私は考えています。冷房を我慢するのではなく、暖房のほうをカーボンニュートラル
に切り替えていくという選択肢があると思います。
我々のNPOは、石田先生がおっしゃるように薪の売上げはまだ800万円程度です。しかし、薪ス
トーブユーザーが最も多い長野県の場合、九州より寒いので暖房にかかる光熱費も多いため、500
人の顧客がいる販売店では、ひとつの市で4,000万円もの売上げがあるそうです。阿蘇市の場合、
100世帯の薪ストーブユーザーがいれば約300万円の売上げがある。阿蘇市は1万世帯なので、も
し5%の世帯が薪ストーブを導入すれば、1,500万円の市場が生まれる。周辺の10市町村で1億
5000万円程度のビジネスになる余地は十分あると考えています。
それ以外には、暖房や給湯まで含めたエネルギーインフラです。これまで市町村の外に出ていた
石油代、オイルマネーが、その町内で回ることになるのですね。そうして循環型社会につながるだけ
ではなく、外に出ていたお金が地域内を回ることによって地域が潤うという考え方もあります。
30
パ ネ ル ディス カッション
また、薪ボイラーというものがあります。温浴施設に導入しているケースで、1台当たり年間約
500万円の需要創出があります。こういうものを地域の温泉施設に入れて、1件当たり1,500万円程
度の薪の売上げを上げているところもあります。
石田 いまのお話は非常に良い議論ができるところですね。問題は、いま中坊先生がおっしゃった
ところにあると思います。要するに、グラフを見れば必ず省エネだと言う。ところが人間には欲があ
る。僕は
「生活価値の不可逆性の欲」
と言っているのですが、人間は一度得た快適性や利便性を容易
に放棄できない。つまり、スイッチひとつで暖かくなったり涼しくなったりする世界を知ってしまった
人は、プラスアルファの価値がないと、薪ストーブといったものに対してスイッチが入らないのです。
だから、そこでどうやってスイッチを入れさせるか。4人の先生方が本日お話しされたことは、おそら
くすべて同じです。私も答えがあるわけではありませんが、循環をさせるというのはひとつの答えか
もしれません。コミュニティがしっかりすれば小さな循環が重要になるということは、皆さんがおっ
しゃっているわけですから。外にお金が流れないようにすることが小さな循環のひとつの条件なの
は、良いインセンティブになるかもしれません。
そんなところで皆さん、もし何かご意見があれば。
吉田 いまの薪のお話につながるのですが、新しい価値を感じる場を生活の中でどうつくるかと
いう時に、技術の側も社会の側も共に歩み寄る必要はあると思います。和歌山の日高川町というと
ころで新しい木質燃料を開発しました。それは、いきなり薪という見慣れないものではなく、パウダー
状なのです。木質パウダー燃料は、噴霧燃焼できるため、従来の灯油に近い扱いをすることができま
す。農家でも従来の灯油ボイラーに近い燃焼装置を使うことができるというので、まず技術の側が
歩み寄りました。また、その原料となる林地残材(タンコロ)の運搬が大変であることから、そこに地
域振興券のようなものをうまく組み合わせました。買い物の合間に軽トラにタンコロを積み、パウ
ダー製造の事業所のほうに持ってきていただいて、木質燃料で地域振興券のお小遣いをいただき、
またそれを晩酌に代える。そこから、
これを
「晩酌システム」
と呼んでいます。
石田 参加型ですね。
吉田 そうやって新しい価値を感じる場というのを生活の中でつくり上げていくことが重要では
ないかと思います。
石田 それは大切なことだと思います。ほかにもご意見があればどうぞ。
岩船 確かに熱はローカルで考える必要がありますが、電気に関しては逆だと思っています。電気
というのは大きい系統ほど変動を吸収しやすくなるため、地産地消をめざすと反対に失敗すると思う
のです。余計にお金がかかるという問題があるので、そこは整理して考える必要があります。あまり
エモーショナルな面ばかり強調してしまうと、非効率的なしくみになってしまうおそれがあるので、冷
静に全体最適を考えるべきだと思います。
私が「需要側が変わる必要がある」
と言ったのは、原子力も火力も拒否し、再生可能エネルギーを
31
どんどん導入すれば、需要側が変わらざるを得ないだろうという観点で申し上げました。いますぐ
「不
安定な電力システムを受け入れてください」
と言おうとは思いません。しかし、長期的には必要にな
るのではないか。そういう観点で言ったので、そこは分けて考える必要があると思います。
子どもたちに渡すものをつくるために
石田 よくわかりました。では最後に、今日の感想をお願いします。
惣田 ライフスタイルをどう変えるかというのはもちろん重要です。しかし、ライフスタイルを変
えるようなインフラも提案もできればよいかと考えています。携帯やスマホはライフスタイルを大き
く変えてしまうものでした。たとえばインフラの場合、はじめに下水処理場や廃棄物処分場があり、そ
こからバイオマスを回収して発電できるキャパシティを決めた時、それに合わせてコンパクトシティ
やライフスタイルを考えていくとどうなるのか。そういった試行実験を行なってみると、何か新しい
ものが見えるのではないかと思っています。
吉田 今日は貴重な機会をいただき、ありがとうございました。今日のパネルディスカッションを
通して、2030年あるいは2050年に下水処理場やごみ焼却場は必要なのか。そのままでいいのか。
あるいは産業とのつながりはどうなっているのか。そういったことをもう一段深めて考えていかなけ
れば、本当の意味でソリューションは生まれてこないのではないかと思いました。その時に、環境イン
フラと生活者がつながった未来像、環境インフラを中心とした生活の場というものを、もう一度将来
像として描き、そこからまた考え直さなければならないと思いました。
中坊 さきほど岩船先生から、バッテリーが高いので系統連携を考える必要があるというお話が
ありましたが、裏を返せば、バッテリー技術が非常に安くなれば個人で発電しても見合う時代が来る
のではないかと思いました。それは数十年かかるかもしれませんが、
ソーラー電卓のように配線が不
要なしくみで、各家庭で電気も食糧もつくってしまえるような時代が来るのではないかと、私は予測
しています。
薪ストーブに関しては、私が見るかぎり、個人のライフスタイルを変えている製品だと思います。
ドイツやアメリカなどは少なくとも日本
日本の人口当たりの薪生産量は0.9m 3/百万人・年ですが、
の100倍以上の薪を使っています。おそらく日本の市場は100倍以上成長の余地があるだろうと
思っています。
石田 いい仕事になりますね。
岩船 さきほど、電気の地産地消は冷静に考えるべきという話をしましたが、もし太陽電池を導入
することでその家の需要が変わるのであれば、地産地消の価値も生まれるのではないかと思ってい
ます。供給サイドが近いことのメリットはもちろんあると思いますし、そこにはぜひ期待したいです。
ところが、屋根に太陽光発電を10kW以上載せていても、お家の中で無駄に電気を使っている状況
32
パ ネ ル ディス カッション
を見ると、
どうしても意識の乖離がある。そこがすごく残念だと思います。
それから、惣田先生にご質問できず残念なのですが、東南アジアでもその国のライフスタイルが
あります。また、システムに関しても、分けて集めるのか、
どこに集めるのか、そういった社会システム
的な観点から、東南アジアは日本より改善する余地が大幅にあります。そういう意味でも全体的に考
えていく必要があると思いました。
石田 ありがとうございました。実はきのう、高野山で、中学2、3年生の子どもたちが僕たちのた
めに発表してくださったのですが、最後に何を言ったと思いますか? 「次の世代のために、私たちは
しっかりやらなきゃいけないんだ」。私はもう申し訳なくて、汗が噴き出す思いでした。
「 おじさんが役
にたたなくてごめんね」
と、心の中で思いました。
そういう子どもたちに渡すものをつくるために、今日は本当に良い議論ができたと思います。4人
のパネラーの方々、本当にありがとうございました。
33
パ ネ ル ディス カッション
ファシリテーター
石田 秀輝
(いしだ ひでき)
氏
合同会社 地球村研究室 代表/東北大学 名誉教授
2004年(株)INAX
(現LIXIL)
取締役CTOを経て東北大学 教授、2014年より現職、ものつくりのパラダイムシフトに向
けて国内外で多くの発信を続けている。特に、2004年からは、自然のすごさを賢く活かすあたらしいものつくり
「ネイ
チャー・テクノロジー」
を提唱、2014年から
「心豊かな暮らし方」
の上位概念である
「間抜けの研究」
を沖永良部島で開始
した。また、環境戦略・政策を横断的に実践できる社会人の育成や、子どもたちの環境教育にも積極的に取り組んでい
る。ネイチャーテック研究会 代表、サステナブル・ソリューションズ 理事長、ものつくり生命文明機構 理事、アースウォッ
チ・ジャパン 副理事長ほか。近著に『 科学のお話 『 超 』能力をもつ生き物たち 』
( 2014年 学研 監修)、
『 Nature
Technology』
(2013年 Springer 共著)
、
『 それはエコまちがい?』
(2013年 プレスアート 監修)
、
『 自然界はテクノロ
ジーの宝庫』
(2013年 技術評論社 共著)
ほか多数。
パネリスト
岩船 由美子
(いわふね ゆみこ)
氏
東京大学生産技術研究所 准教授
1991年北海道大学工学部卒業。1993年北海道大学大学院工学研究科修士課程修了。2001年東京大学大学院工学
系研究科電気工学専攻博士課程修了。博士(工学)。専門はエネルギーシステム工学。(株)三菱総合研究所(19931998年)
、(株)住環境計画研究所
(2001-2008年)
勤務を経て、2008年東京大学生産技術研究所エネルギー工学連
携研究センター 講師、2010年6月より現職。現在、文部科学省、経済産業省、環境省などの委員を務める。
中坊 真
(なかぼう まこと)
氏
NPO法人九州バイオマスフォーラム 事務局長
1972年京都府生まれ。京都大学大学院理学研究科博士後期課程単位取得退学。大学院で火山物理学を専攻し、阿蘇
火山の観測中に草原のススキのエネルギー利用に関心を持ったことがきっかけで、NPO法人九州バイオマスフォーラ
ム設立に携わることになった。現在は同法人の事務局長。2003年からNEDOの実験事業として、草原の草のガス化発
電事業を5年間実施。その後、草資源と木質バイオマスの活用について、阿蘇地域を中心に活動している。内閣府地域
活性化伝道師。
吉田 登
(よしだ のぼる)
氏
和歌山大学システム工学部 教授
1988年大阪大学工学部卒業。博士
(工学)
。専門は環境システム、産業エコロジー。八千代エンジニヤリング
(株)
、大阪
大学工学部 助手、和歌山大学 助教授
(准教授)
を経て2011年より現職。現在は副学部長を兼任。和歌山県環境審議会
委員、ひょうごエコタウン事業化検討会 委員などを務める。1999年土木学会論文奨励賞、2009年土木学会環境シス
テム論文集優秀論文賞、2013年土木学会地球環境論文賞受賞。主な著書
(分担執筆)
に『産業社会は廃棄物ゼロをめ
ざす』
( 1998年 森北出版)、
『 建設のLCA』
( 2001年 オーム社)、
『 サービサイジング』
( 2006年 省エネルギーセン
ター)
、
『 都市・地域・環境概論』
(2013年 朝倉書店)
など。
惣田 訓
(そうだ さとし)
氏
大阪大学大学院工学研究科 准教授
1995年大阪大学工学部卒業。1999年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程修了。博士
(工学)
。専門は環境工学、微
生物・植物を用いた水質浄化と資源回収。1999年大阪大学 助手、2005年同講師、2008年から現職。主な著書に
『Handbook of Metal Biotechnology』
(2011年 Pan Stanford Publishing 共編著)
、
『はじめての環境デザイン学』
(2011年 理工図書 共著)
。
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閉 会 挨 拶
本日は第4回「花王“いっしょにeco”
フォーラム」にご参加いただき、誠にあり
がとうございました。
「『変わりつつある地球』への対応」というテーマで、
ご講演をしていただきま
した先生方、そしてパネルディスカッションにご登壇いただきました先生方に、厚
く御礼申し上げます。
我々花王にとりましても、
また、本日お越しいただきました皆さま方にとりまして
も、今回のフォーラムは大変多くのことを学ばせていただく機会になったことと思
います。
と同時に、
「変わりつつある地球」というタイトルが示すとおり、非常に危
機感を覚える内容だったことと思います。
最近は異常気象も多く、一人ひとりが身にしみて「変わりつつある地球」という
ものを感じておられるのではないでしょうか。問題解決に向けて、いかなるロード
マップを描き、
どのような行動をとっていくのか。サステナブル社会への実現に
向け、積極的な取り組みの重要さを、私自身、
ますます実感いたしました。
我々花王も、社会のサステナビリティへの貢献に向けて、眼前の短期的視点
での取り組みと共に、多少時間を要しても、未来のよきサステナブル社会にしっ
かりと貢献できるような技術開発や価値創造に、継続的に努めてまいりたいと思
います。
本日ご参加いただきました皆さま方におかれましても、
このフォーラムが環境や
サステナビリティについて、あらためて考え、行動に移す機会となりましたら幸い
です。
本日は誠にありがとうございました。
花王株式会社
エコイノベーション研究所 副所長
細川泰徳
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フォ ー ラ ム
講演やパネルディスカッションでは、
「『変わりつつある地球』への対応」
をテーマに、
これからの地
球環境に対して、
どのような取り組みを行なっていくべきかの議論がなされました。
約300名が参加して、5時間にわたって行なわれたフォーラム
ご登壇された先生方と花王関係者
環境問題に関心を抱くさまざまな分野の皆さまがご来場
開会のあいさつをする、研究開発部門統括の武馬吉則
気候変動について問題提起される、安井先生
活発な質疑応答が行なわれたパネルディスカッション
閉会のあいさつをする、エコイノベーション研究所副所
長の細川泰徳
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見 学 会
和歌山工場と花王エコラボミュージアムへの見学会には、多くの方にご参加いただき、花王の環
境への取り組みに興味を持たれていました。
先端のエコ技術など、花王の環境への取り組みを見学す
る皆さま
藻類からの油脂生産についての展示をご覧になる安井先生
交 流 会
フォーラムにご登壇された先生方を中心に、会場の各所で歓談の輪が広がっていました。
懇 親 会
ごあいさつをされる、横浜国立大学環境情報研究院 教
授の松田裕之先生
学生から各分野の専門家までが和やかに交流
後藤先生のお話に耳を傾ける参加者の皆さま
研究テーマや専門分野を超えて意見交換する皆さま
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発行:花王株式会社 研究開発部門
お問い合わせ:花王株式会社 広報部
住所:〒103-8210 東京都中央区日本橋茅場町1-14-10
TEL:03-3660-7549
http://www.kao.com/jp/corp/eco/
2015年1月発行