乾癬治療の変遷 - Eisai.jp

乾癬治療の変遷
皮膚関連疾患
はじめに
外用剤による治療
川
田
暁
QOL︵生活の質︶を低下させる疾患である。
抑制作用、表皮角化細胞増殖抑制作用がある。
われてきた。作用機序として抗炎症作用、免疫
尋常性乾癬︵以下乾癬︶は、厚い鱗屑が付着 1950年代から現在まで、ステロイド外用
した紅斑を特徴とする、難治性で経過が長く、
剤は乾癬治療において第一選択薬として広く使
日本乾癬学会には1982∼2008年までに
α
︶ Dを
4万259人の乾癬患者が登録された。病因と
乾癬を有する骨粗鬆症患者に ︵
1 OH
3
内服させたところ、乾癬病変が改善したという
して樹状細胞からの各種サイトカインの産生に
外用剤
発売された。その後効果をより向上させるため
としてタカルシトール︵ボンアルファ軟膏︶が
報告を契機に、1993年に本邦初の
胞の角化異常が考えられている。乾癬には種々
よるT細胞の活性化と、それに引き続く表皮細
の治療方法︵表①︶があり、その選択が重要で
に、高濃度の
外用剤として、2000年にカ
®
ルシポトリオール︵ドボネックス軟膏︶
、20
®
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D3
ある︵図②︶
。本稿では乾癬治療の変遷につい
て述べる。
D3
膏︶
、2002年に高濃度タカルシトール
︵ボン
01年にマキサカルシトール︵オキサロール軟
較的長いなどの特徴を有し、使用頻度が増加傾
ーやリバウンドを起こしにくい、寛解期間が比
アルファハイ軟膏︶が発売された。作用機序は、 向にある。
表皮角化細胞の分化誘導作用、増殖抑制作用、
2 0 1 4 年 9 月 に、 ︵ カ ル シ ポ ト リ オ ー
ル︶とステロイド︵ベタメタゾンジプロピオン
1)
®
(筆者作成)
酸エステル︶の配合外用剤︵ドボベット軟膏︶
D3
ガソン︶が承認された。核内レチノイドレセプ
1985年に、本邦でレチノイド︵ビタミン
A酸誘導体︶の一種であるエトレチナート︵チ
用がない。
在でも使用頻度が高い。しかし本邦では保険適
1950年代から葉酸拮抗薬であるメトトレ
キサートの乾癬での使用が始まり、欧米では現
内服薬による治療
で、かつ副作用が少ないことが期待される。
が発売された。それぞれの単独使用よりも有効
®
重症乾癬を合併した移植患者に、カルシニュ
ターに結合し、異常角化や白血球遊走を抑える。
®
炎症抑制作用がある。ステロイド外用剤と比較
外用療法
ステロイド外用剤
活性型ビタミン D3外用剤
活性型ビタミン D3/副腎皮質ステロイド配合剤
全身療法
エトレチナート
シクロスポリン
光線療法
PUVA
ナローバンド UVB
生物学的製剤
アダリムマブ
インフリキシマブ
ウステキヌマブ
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®
して、皮膚萎縮を起こさない、タキフィラキシ
①乾癬の主な治療方法
②乾癬治療のアルゴリズム
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PUVA
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ーリン阻害剤であるシクロスポリンを使用し乾
癬病変が改善したため、乾癬での使用が開始さ
れた。本邦では1992年に、乾癬への適応が
追加承認された︵サンディミュン︶
。2000
ン化したシクロスポリン︵ネオーラル︶が発売
年に、吸収の安定を図ってマイクロエマルジョ
®
服PUVA、PUVAバスの3種類がある。外
報告し、その後使用された。外用PUVA、内
1973年、水野信行がPUVA︵ psoralen
+UVA︶療法の乾癬に対する有効性を初めて
は1970年代まで広く行われていた。
1925 年に発表されたゲッケルマン療法
︵コールタール外用+紫外線照射︶が、本邦で
紫外線治療
する。
ることで活性を阻害し、T細胞の活性化を抑制
合し、その複合体がカルシニューリンと結合す
された。シクロスポリンはシクロフィリンと結
®
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(筆者作成)
用PUVAは入院が不要であり、副作用も少な
生物学的製剤
びT細胞と表皮角化細胞のアポトーシスの誘導
︵ステラーラ︶
が発売された。アダリムマブは抗
ミケード︶が、2011年にはウステキヌマブ
DNA障害による表皮角化細胞の増殖抑制およ
いため、本邦では最も頻度が高い。作用機序は、
乾癬に対しては本邦では、2010年にアダ
リムマブ︵ヒュミラ︶とインフリキシマブ︵レ
®
である。
®
®
序として、①可溶性メディエーターに対する効
照射時間も短く、急速に増加している。作用機
斑の発現や発癌が少ない。照射が簡便であり、
いるが、アダリムマブは間欠療法でも有効性が
増加している。3剤とも継続使用が推奨されて
射間隔がそれぞれ異なる。いずれも使用頻度が
今後の展望
保たれるという報告がある。
抗体︵完全ヒト型︶
キヌマブは抗 IL-12/23 p40
である。注射方法︵皮下注射か静脈注射︶と注
−
−
3)
ット型光線療法︶で、副作用が少ない。
受容体
IL-17
学的製剤では
IL-12/23
p40, IL-23 p19, IL-17A,
に対する抗体がある。患者
, IL-22
あり、局所のみを照射することが可能︵ターゲ 現在、乾癬に対して多くの薬剤が開発中であ
る。内服薬ではヤヌスキナーゼ阻害剤が、生物
シマライトが発売された。これは機器が小型で
アポトーシスの誘導がある。2008年にエキ
2)
果、②細胞表面関連の分子の調節、③T細胞の
ピークが311 の波長域の狭い光であり、紅
−
α 抗体︵完全ヒト型︶
、インフリキシ
2002年、ナローバンドUVB︵ narrow- TNF
、ウステ
マブは抗TNF α 抗体︵キメラ型︶
band UVB以下NB UVB︶を照射する機
器が本邦で発売された。NB UVBは波長の
−
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nm
の病態やQOLを適切に評価し、効果・副作用
・医療コストを考慮し、多種類の中から適切な
方法を選択する必要がある。
︵近畿大学医学部
皮膚科
主任教授︶
文献
川田
暁 乾癬の疫学と治療︱最近の知見、綜合臨
牀、 、3285∼3286︵2007︶
新谷洋一 ナローバンドUVBによる奏効機序︱免
疫抑制︱、 Derma
、172、5∼9︵2010︶
Sakamoto S, et al : Successful treatment of psoriasis
with interrupted adalimumab use : a case report. J
Dermatol, 40, 477-478 (2013)
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