S2561 大腿部筋肉内腫瘤 - Plaza.umin.ac.jp

S2561 大腿部筋肉内腫瘤
島根大学医学部器官病理学
石川典由
天野知香、長瀬真実子、荒木亜寿香、原田祐治、丸山理留敬
MRI T1強調像
では筋肉と等信号
T2強調像や脂肪抑制
では高信号
分葉状で低信号のrimを有する
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単純CT: 筋肉より低濃度
造影CT:
早期相で不均一な増強効果
後期相でも増強効果
が遅延している
単純CT
造影早期
造影後期
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拡張した空隙内に糸球体状の塊や拡張した血管が見られる
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糸球体様構造に見える部分①:血管構造が見える
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糸球体様構造に見える部分②:血管構造が認識しにくい
5
血管構造の見にくい部分は、紡錘形核を持つ細胞が増加
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血管の見える所はスリット状血管→拡張した血管へと移行
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主にスリット状構造が多い部分
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鑑別診断
• 血管奇形(いわゆるhemangioma)
• Kaposiform hemangioendothelioma
・増生のflowの態度がvascular malformationに合うし、周囲浸潤傾
向もみられないので血管奇形か?
・紡錘形細胞の増生の強い部分が見られ、糸球体状、スリット状構
築も目立ち、Kaposiform hemangioendotheliomaか?
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EVG染色 弾性線維、膠原線維、平滑筋層が確認出来ない
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D2-40
陽性の部分と陰性の部分が見られる
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D2-40
糸球体様部分は折りたたまれた
血管様に見える部分で陽性
紡錘形細胞の部分はあまり
染まらなくなってくる
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CD31
見折 糸
えり 球
るた 体
た様
ま構
れ造
たの
よ部
う分
には
血管に対しては概ね陽性
紡錘形細胞の多くは陰性である
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CD34
陽性と陰性の部分が見られる
糸球体様部分は折りたたまれた
血管のように陽性の所もある 14
多くの糸球体様構造の部分は陰性で、紡錘形細胞も陰性
CD34
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αSMA
糸球体構造の部分は血管を裏打ちするように陽性
が陽
見性
ら部
れ分
、と
陰
性
部
分
部紡
分錘
が形
見細
ら胞
れに
るも
軽
度
陽
性
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ERG
糸球体様構造では,折りたたまれたような状態
脈
管
の
多
く
は
陽
性
だ
が
,
17
ERG
紡錘形細胞は陽性細胞と陰性細
胞があり、染まりが非常に弱い部
分も見られる
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免疫染色のまとめ
CD31
CD34
D2-40
ERG
αSMA
スリット状血管
陽性
陽性と陰性
陽性と陰性
概ね陽性
陽性と陰性
拡張した血管
陽性
陽性
陽性と陰性
概ね陽性
陽性
糸球体様構造
陽性
陰性>陽性
陰性と陽性
概ね陽性
陽性
紡錘形細胞
陰性
陰性
陰性が多い
陽性と陰性
弱陽性
解釈により、KHE(腫瘍)、奇形のどちらにも取れる・・・
大阪大学医学部の森井英一、堀由美子先生にconsultationをした。
ISSVA分類派でも腫瘍と言えば、腫瘍と取れる。
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Kaposiform hemangioendothelioma
↓
Malformation
KHEではなく、血管奇形を支持する理由
• 紡錘形細胞のすべてがERG陽性ではない。
• 血管様構造の多くにαSMA陽性の血管内皮細胞を伴って
いる。
• 紡錘形細胞の集簇は虚脱した脈管構造と考え、
D2-40染色にて陽性の部分と陰性の部分があることから、
lymphatic venous malformationとなる。
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本症例の場合
• 血管奇形としてもKHEとしても非典型的な部分が見られ
る。
• 紡錘形細胞の増生が目立つことや、どの抗体にも染ま
らない部分が見られることや、壁構造が非常に脆弱であ
ることは、血管奇形としては非典型的である。血管壁の
平滑筋や弾性線維もほとんどない。
• 血管奇形としては細胞増殖も強い。
• むしろ血管奇形とKHEとの中間的な像を取る
• こういった症例は、hemangioendothelioma様の転帰を取
る可能性もある。
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診断:Lymphatic venous malformation
with glomeruloid structure
ただし、本症例では、やや紡錘形細胞の集簇巣が目立つこ
とから、臨床的に転移・再発のpotentialがある細胞増殖の
可能性を否定出来ない・・・・
どの抗体にも染まらない紡錘形細胞も比較的多く見られる
ことは,血管奇形としては非典型的で,腫瘍の可能性も鑑
別に残る
Spindle cell hemangiomaは染色パターンが、本症例と類似し、糸球
体様構造も取ることがあり、これ自体も血管奇形と考えられている。
しかし、浅部病変で使う用語である。
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ISSVA分類の立場から
実際には、腫瘍と奇形との線引きは難しいが・・・
治療の面を考えると
・幼少期では、infantile hemangiomaとcongenital
hemangiomaを鑑別することが重要
・成人期では、良性病変(いわゆる血管腫)は奇形
と考える方が治療方針が立てやすい
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今後の課題
• 軟部腫瘍を専門とする立場からは,本症例をKHEなどの
腫瘍とする可能性がある。
• まだ、ISSVA分類に慣れていない自分も、一人だと悩み
ながらも腫瘍と診断するかもしれない。
• ISSVA分類で奇形とされている症例の中にもclonalityが
あると言う報告もある。
• 奇形としても切除部位や別の部位に再発することもあり,
再発などか多発病変なのかも分からない。
• 血管病変は,まだまだ他の腫瘍と比べて確立されておら
ず,今後の研究しがいのある領域である。
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まとめ
• 糸球体様構造、スリット状血管、紡錘形細胞を持つ病変
で、Kaposiform Hemangioendothelioma(腫瘍)との鑑別
を要するLymphatic venous malformation(奇形)を経験し
た。
• ISSVA分類が改訂されてから、本症例のように鑑別が必
要となる症例が増加すると考えられる。
• このような症例においては、ISSVA分類と軟部腫瘍の両
者の専門病理医の意見を聞いて、総合的に判断する必
要がある。
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