【審査講評】 読書指導における大人の役割 審査委員長 水戸市立第五

【審査講評】
読書指導における大人の役割
審査委員長
水戸市立第五中学校長
木下
美直
本に親しませることは,間違いなく子どもの世界を大きく広げるものです。中でも感じたことを言語
化することは,思考力・創造力を飛躍的に高めます。その一つの方法として,読書感想文や手紙作品を
書かせることが効果的です。
ところが,いきなり文を書くことを目的にさせると,たいていは本嫌いをつくってしまうもの。では
どうすればよいかというと,幼児や低学年は、親が読み聞かせを行うのが,一番のお薦めです。その時
に子どもの口から出た「つぶやき」を書きとめてあげ,それをもとに親子で手紙を書いてみてはどうで
しょう。
本年も,県内より選出された総勢11名の審査員が,数多くの児童書の中から吟味を重ねて課題図書
として推薦しました。実際に審査をしてみると,我々大人が想像もつかない,子どもならではの初々し
い感性にはっとさせられることばかり。
数多くの良い本との出会いを上手に手助けすること・・・。そこにこそ私たち大人の役割があるので
ないでしょうか。本コンクールがその一助になっていれば,審査員としてこれほどうれしいことはあり
ません。
幼児の部
稲敷市立あずま西小学校教諭
野波 典子
常総市立水海道小学校教諭
大野 幸子
今回読書感想文と手紙作品を読ませていただきました。いずれもお父さんやお母さん,
(幼稚園・保育
園の)先生に読み聞かせをしてもらい,会話を弾ませたり,遊んだりしながら,楽しく絵本の世界に浸
っている様子がよく伝わりました。
また,登場人物にあてて,自分なりに感じたことを伝えようとする手紙形式の作品も多くありました。
今後もさらに,家族や先生と一緒に様々な本との出会い,「本て楽しいな。」と思えるような子が増え
てほしいと思います。
小学校1・2年生の部
水戸市立梅が丘小学校教諭
浅野 久美子
高萩市立秋山小学校教諭
倉田 美穂子
例年,低学年では手紙形式の応募が多い中,今年度は感想文形式が多かったのが印象的でした。あら
すじを追い,出来事の感想をこまぎれに述べる作品はほとんどなく,どの作品も自分の思いを素直に言
葉で表現していました。
命をテーマにした課題図書が多く,低学年には難しいテーマでしたが,自分の経験と重ね合わせたり,
自分に置き換えて考えたりしながら,命の尊さについて真剣に考える姿が伝わってきて,胸を打つ作品
が数多くありました。
また,物を大切にする気持ちや本気で取り組む大切さや楽しさなど,読後の変容が見られる作品もあ
りました。
これからもたくさん本を読み,
「揺さぶられる一冊」に出会ってほしいと思います。
小学校3・4年生の部
行方市立玉造小学校
関野 奈々子
かすみがうら市立志筑小学校教諭
池嶋
忍
今回の課題図書は,内容もバラエティに富んでいて児童の興味・関心を引く本がたくさんあったと思
います。その中でも,応募数の多かった「ゆきひらの話」に登場するゆきひらの鍋は,時代的に児童に
はあまりなじみがない物であったにも関わらず,おばあちゃんとゆきひら鍋の関係や自分なりに感じた
深い家族愛まで書かれた素敵な作品が多かったように思います。審査を通して,私自身改めて本の良さ
を知る機会を与えていただき感謝しています。
小学校5・6年生の部
筑西市立下館南中学校教諭
古橋 牧子
笠間市立笠間小学校教諭
吉川 裕之
たくさんの応募作品があり,読書への関心の高さを感じました。ありがとうございました。
現代社会や生活の中で,小学生にとっては身近なテーマである「生命尊重」にいて書かれているもの
がたくさんありました。自分の言葉で素直に表現されている感想文で,書いた人の思いがよく伝わって
きました。
今回の入賞者については,あらすじではなく,本の場面や言葉から,自分なりに深く考えたことが表
現されているものが選ばれています。
読書をすることで,自分の体験を振り返ったり,これからの未来について考えたことを,感想文とし
て表現してみてください。手紙にして,登場人物への思いを伝えてみるのもよいでしょう。
これからもたくさんの本を読んで,何かに気づき,自分を振り返ってください。そうすることで,感
じる心が豊かになり,自分の成長へとつながっていきます。
中学校の部
日立市立十王中学校教諭
河野
達也
鹿嶋市立鹿野中学校教諭
髙倉 多佳子
自閉症・ADHD を題材にした作品を読み,障害についてよく考え,自分の考えを表現できていた作品
が多く見られました。身近な友達の中にも障害をかかえ苦しんだり困っていたりした時に手を差し伸べ
ていこうとする心の変容を中学生らしい感性でまとめられていました。
他にも,それぞれの内容をしっかり読み,感じたことを自分の経験に重ね合わせ表現できていました。
本をきっかけに考え方が変わっていく様子も見受けられ,得がたい経験になったと思います。