3-10 処分坑道レイアウトの検討(3.2.2.2(4))

3-10 処分坑道レイアウトの検討(3.2.2.2(4))
1. はじめに
第 2 次 TRU レポートでは,3.2.2.2 地下施設のレイアウトにおいて,処分坑道断面,廃棄体定置数
を設定し,また力学的,熱的制約を考慮した坑道離間距離を整理し,それらの条件等に基づいた処分
場地下施設のレイアウトを例示した。ここでは,レイアウトの検討において考慮,設定したより詳細
な内容として,全体レイアウトの考え方や坑道長の設定内容について取りまとめる。
2. 全体レイアウトの考え方
全体レイアウトを設定するにあたって,各処分坑道長を短くして坑道本数を増やす,或いは坑道長
を長くして坑道本数を最小(各グループ 1 本ずつで 4 本)にする,といった両極端な考え方がある。
前者の考え方では,処分坑道を取り囲む主要坑道の形状が縦長になる。
(図–1 参照)この場合,建
設作業を同時に多くの箇所で実施できることや,各坑道の廃棄体の定置完了時期が分散され操業性が
優れるといった利点がある。その反面,各坑道で作業スペース(図–1 参照)を有することから掘削量
が増えることや,緩衝材を有する場合は各坑道の端部にも緩衝材が必要となるため,緩衝材の使用量
が増えるといった不利益もある。また硬岩系岩盤における幌型処分坑道の場合は,処分坑道の両端部
に建設される連絡坑道の高さが有意に異なるため(第 2 次 TRU レポート 3.2.3.2 参照)
,処分坑道を短
くしすぎると処分坑道全体を取り囲む主要坑道の勾配が大きくなり,車両の走行性に問題が生じるこ
とになる。
一方,後者の場合はその逆で,主要坑道の形状は横長になり,作業スペースや緩衝材使用量等を最
小にできる反面,各処分坑道で定置完了時期が埋め戻し直前の後半に集中し,操業性に劣る。またグ
ループごとの廃棄体数量が大きく異なる場合は,無駄な空間が増えることになる。たとえば図-1 のレ
イアウトの場合,グループ 2 の坑道を一本にする場合は主要坑道の形状は横長になり,グループ 1 の
右側により広い空間ができることになる。
以上のことを勘案し,ここでは主要坑道で囲まれる領域の横方向(x)と縦方向(y)の寸法(図–1 参照)
の比をできるだけ 1 に近づける,すなわちグループ 3 の離隔距離を無視した場合の主要坑道の形状が
できるだけ正方形に近くなるように,坑道長(坑道本数)を設定することとした。
また処分施設レイアウトの設計には,以下の内容を考慮した。
①各グループの処分坑道は独立させた。
②線量当量が大きい廃棄体グループを定置する処分坑道を地下水流動の上流側に配置し,移
行距離が長くなるようにした。なお,処分施設での地下水流向は一定と仮定した。
③多量の硝酸塩を含む廃棄物を分類しているグループ 3 の処分坑道は,グループ 1,2 の核種
吸着に寄与する地質媒体に影響を与えないように地下水流動の下流側に配置し,さらに他
の処分坑道から離して配置するか,もしくは地下水流向に対して水平方向に離すこととし
た。
④地下施設と地上を接続するアクセス施設が核種移行のクリティカルパスとならないように,
施設内で上流側に配置した。
⑤車両による廃棄体の定置を想定している円形処分坑道においては(第 2 次 TRU レポート 3.
2.3.2 参照)
,1 本の処分坑道内に形状の異なる 2 種類の廃棄体を合理的に定置できるよう
1
にするために,
必要に応じて処分坑道の両側から廃棄体の定置が可能となるようにした
(図
–1 参照)
。なお幌型処分坑道では,クレーンによって構造躯体上部から廃棄体を定置する
ことが想定されており,形状が異なる廃棄体も一方向から定置することが可能である。
立坑
71.0m
98.0m
39.6m
5.0m
50.0m
ア クセス斜坑 へ
28.60m
39.6m
グループ2:キャニスター
(廃棄体の積替え等)
50.4m
182.20m
(553.0m)
グループ2:キャニスター
39.6m
50.4m
182.20m
グループ2:キャニスター
ドラム缶
グ ループ2:BNGS500L
BNFL容器
78.80m
81.80m
グループ4:200Lドラム
200L ドラム缶
(432.0m)
作業スペース
グルー プ1
注 1:括弧内の数値はグル
ープ 3 の離隔距離を考慮
しない場合の距離
縦方向(y)
39.6m
212.10m
グループ4:200Lドラム
200L ドラム缶
39.6m
212.10m
グループ4:角型容器
80.00m
BNGS500L
ドラム缶
BNFL容器
43.70m
BNGS500L
ドラム缶
BNFL容器
グ ループ3:200Lドラム
200L ドラム缶
39.6m
135.00m
5.70m
角型容器
グ ループ3:200L
200Lドラム
ドラム缶
40.0m
129.00m
7.0m
11.20m
20.0m 20.0m
286.1m
横方向(x)
図–1 全体レイアウトの設定
2
作業スペース
(坑道の両側から廃棄
体の定置が可能)
3. 円形処分坑道における処分坑道長の設定
前述のとおり円形処分坑道の場合は,廃棄体の定置は構造躯体上部からではなく,側方から車両に
よって行うことが想定されており,廃棄体は全てパッケージ化して搬送・定置される。
処分坑道長として考慮すべき項目には,端部支保工厚,端部緩衝材厚,及び廃棄体定置領域がある。
軟岩系岩盤では 60cm の支保工を構築し,硬岩系岩盤の場合は空洞の力学安定性がよく,支保工を必
要としない。廃棄体が搬入される処分坑道の端部(表-1 の概略図の左側)には作業領域(20m)を設
けており,坑道が連続して存在するが,その反対の端部(概略図の右側)は断面変化部となるため,
堆積岩の場合はこの端部にも 60cm の支保工を施工することとした。
また,処分坑道グループ 1,2 については緩衝材を設置する。ここでは廃棄体定置領域を,廃棄体パ
ッケージ幅×定置列数とし,廃棄体定置領域としては定置誤差や鋼製構造躯体厚等を考慮しない代わ
りに,端部の緩衝材厚は余裕を持たせ 2.0m とした。
以上から,処分坑道長に係る諸元を表-1 にまとめる。なお,l1 については,各グループの廃棄体量,
全体レイアウトを考慮し,2 章の考え方にしたがって設定する。
表–1 処分坑道長に係る諸元(円形処分坑道)
グループ
1
廃棄体定置領域
l1(m)
緩衝材厚
l2(m)
端部支保工厚
l3(m)
処分坑道全長
l(m)
グループ
2
グループ
3
グループ
4
任意
(廃棄体パッケージ幅×定置列数)
2.0
処分坑道概略図
左側から廃棄体を搬送・定置
0.0
廃棄体定置領域
(軟岩系岩盤)0.6
(硬岩系岩盤)0.0
l=l1+l2×2+l3
処分坑道の全長
4. 幌型処分坑道における処分坑道長の設定
幌型処分坑道は,岩盤が強固であり,二次覆工も不要で,大断面の処分坑道の建設が可能な場合に想
定しうる。この場合鉄筋コンクリート製の構造躯体を設けて,構造躯体上部からクレーンで廃棄体を内
部に定置する。構造躯体は必要に応じて仕切り壁を設ける。
処分坑道長として考慮すべき項目には,端部緩衝材厚及び構造躯体を含めた廃棄体定置領域がある。
処分坑道グループ 1,2 については緩衝材を設置するが,処分坑道端部の緩衝材厚(l2)は処分坑道断面の
中の緩衝材厚に若干余裕をもたせ 1.4m とした。
次に構造躯体を含めた廃棄体定置領域の設定方法を以下に示す。
まず,構造躯体の隔壁で仕切られた 1 つの空間(以後「ピット」という)の長さ(l1)を設定するた
めに,1 ピットあたりの坑道方向への廃棄体定置数,及び余裕代を設定した。
3
ピット
ピット
ピット
ピット
l4
l1
l3
l
処分坑道全長
l2
図–2 処分坑道概念図(坑道方向:幌型)
①坑道方向への廃棄体定置列数
・グループ 1:1ピットあたり 9 列(200L ドラム缶:Φ600×H900)
(200L ドラム缶 1,589 本では 9 列で収まる)
・グループ 2:1ピットあたり 9 列(キャニスタパッケージ:□1200×H1600)
9 列(BNGS500L ドラム缶:Φ800×H1192)
・グループ 3:1ピットあたり 12 列(200L ドラム缶:Φ600×H900)
6 列(角型容器:□1600×H1200)
(角型容器 199 個では 6 列で収まる)
3 列(BNGS500L ドラム缶:Φ800×H1192)
(BNGS500L ドラム缶 250 本では 3 列で収まる)
・グループ 4:1ピットあたり 12 列(200L ドラム缶:Φ600×H900)
6 列(角型容器:□1600×H1200)
7 列(BNGS500L ドラム缶:Φ800×H1192)
②坑道方向のピット内の余裕代
・200L ドラム缶(グループ 1,3,4)の場合
200L ドラム缶1本あたり 0.15m の余裕を持たせるものとした。
(1 ピットあたりの余裕代)
= (1 ピットあたりの延長方向への 200L ドラム缶定置数)×0.15 m
・キャニスタパッケージ(グループ 2)の場合
1 ピットあたり,パッケージ1個分の 1.2m とした。
・角型容器(グループ 3,4)の場合
1 ピットあたり,角型容器 1 個分の 1.6m とした。
・BNGS500L ドラム缶(グループ 2,3,4)の場合
BNGS500L ドラム缶1本あたり 0.15m の余裕を持たせるものとした。
(1 ピットあたりの余裕代)
= (1 ピットあたりの延長方向への BNGS500L ドラム缶定置数)×0.15 m
①,②より,1 ピットの長さ(l1)は,以下のとおりである。
・グループ 1:
(200L ドラム缶) (0.9m+0.15m)×9 列=9.45m
4
・グループ 2:
(キャニスタ)
1.2m×(9 列+1 列)=12.0m
(BNGS500L ドラム缶) (1.192m+0.15m)×9 列=12.078m →12.1m
・グループ 3:
(200L ドラム缶)
(0.9m+0.15m)×12 列=12.6m
(角型容器)
1.6m×(6 列+1 列)=11.2m
(BNGS500L ドラム缶) (1.192m+0.15m)×3 列=4.026m →4.0m
・グループ 4:
(200L ドラム缶)
(0.9m+0.15m)×12 列=12.6m
(角型容器)
1.6m×(6 列+1 列)=11.2m
(BNGS500L ドラム缶) (1.192m+0.15m)×7 列=9.39m →9.4m
また隔壁厚(l2)と端部側壁厚(l3)は 0.8m とした(第 2 次 TRU レポート 3.2.2.2(1)参照)
。
以上の内容を表-2 にまとめる。
表-2 処分坑道長に係る諸元(幌型処分坑道)
グループ
1
ピット長
緩衝材厚
隔壁厚
端部構造躯体厚
処分坑道全長
l1(m)
l2(m)
l3(m)
l4(m)
l(m)
グループ
2
グループ
3
グループ
4
A*1
B*1
D*1
A*1
C*1
D*1
A*1
C*1
D*1
9.45
12.0
1.4
12.1
12.6
11.2
4.0
12.6
11.2
9.4
0.0
0.8
0.8
l=l1×n+l2×2+l3×(n-1)+l4×2
ピット
処分坑道概念図
ピット
ピット
*2
ピット
l4
l1
l3
l
処分坑道全長
l2
*1: A=200L ドラム缶 B=キャニスタ C=角型容器 D=BNGS500L ドラム缶
*2: n は坑道1本あたりの該当廃棄体を定置するピット数
5. 結論
第 2 次 TRU レポートにおいて例示した処分場地下施設のレイアウトについて,検討において考慮,
設定したより詳細な内容として,
全体レイアウトの考え方や坑道長の設定内容について取りまとめた。
全体レイアウトの考え方として,ここではグループ 3 の離隔距離を無視した場合の主要坑道の形状
ができるだけ正方形に近くなるように,坑道長,坑道本数を設定した。今後操業方法,操業装置等が
より具体化した段階,廃棄体の取り扱い数量が確定した段階で必要に応じて再度合理的なレイアウト
を検討することが望ましい。
また坑道長の設定においては,端部の緩衝材厚や鉄筋コンクリート製構造躯体に廃棄体を定置する
際の余裕代を概略的に設定した。今後緩衝材の定置方法や廃棄体搬送・定置装置の仕様がより具体化
5
した段階でこれらの設定を見直す必要がある。
6
参考文献
特になし
7