退職のご挨拶 一般科 高橋正和 桜待つ 学び舎(や)をいざ 去りゆかん 37年という長きにわたりまして、勤めさせていただいた宇部高専の職場を定年により 去ることになりました。桜のつぼみが日に日にふくらんできました。私の胸を去来するも のは、高専という素晴らしい学校に在籍し、そこで学生の皆さん、また多くの同僚職員と 一緒に仕事してきた楽しかった日々にございます。それを、上掲の句に作ってみました。 ある方が、下駄を作る職人さんの仕事ぶりを見て、まるで仏像でも作ってるみたいだ、 と言ってましたが、本当にその通りだと思います。全身全霊を傾けて物を作り出すその姿 には尊い精神が宿っていると思います。下駄の木の板切れ、畳のイグサやワラ、鋳物の鉄 や銅、こういう材料を使って、下駄職人、畳職人、鋳物師の方々は、まさにそれらの材料 を世のため人のために成仏させている、という見方もできるのではないでしょうか。だと したら、下駄職人も、畳職人も鋳物師も、仏像を作る仏師と何ら変わることがないと思わ れます。それどころか、かつて鈴木正三という江戸初期の思想家が、農業も、商業も、工 業もみな修業であり、仏行に他ならないと言っていた言葉が思い起こされます。 高専には職人の方々とは違いますが、専門の教員、一般の教員がたくさんいらっしゃっ て、それぞれの領域で、素晴らしい抜群の知識を持ったエキスパートがたくさんおられま した。ものの本質を極め、ものづくりに学生指導をしています。今日も、学生指導、研究 活動に懸命の日々を送っておられます。そういう方々から聞くお話はどれも実に面白く、 興味を惹かれました。こういう職場に勤めることができましたことは、私の一生の誇りと するところです。私は社会教室のメンバーとして、現代社会、ドイツ語、哲学、社会科学 の各教科を担当してきました。学生の皆さんにどれだけのことを伝えることができたか、 反省するところ多々ありますが、もし万が一でも、何かお役にたつことでもありましたら、 知力、体力の限界というものはございますが、またお声をかけてください。 卒業生の皆さん、毎日忙しい日々を送っておられることと思いますが、ときおり、学校 に帰ってきて先生の研究室、後輩を訪ねに戻ってください。皆さんの一層のご活躍とご清 栄を心より祈念いたします。意は尽くせませんが、卒業生の皆様、本当にありがとうござ いました、篤くお礼申し上げます。 (平成27年3月)
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