脳波を使用した意思伝達装置 近畿大学 生物理工学部 准教授 医用工学科 山脇 伸行 1 想定するユーザー 本装置は、ユーザーとして主に 筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis: ALS )患者、 その他、 脊髄損傷等による四肢麻痺患者 を想定している。 2 ALS 脳や末梢神経と筋肉をつないでいる運動神経 細胞群が徐々に変性し、筋肉を動かすことがで きなくなってゆく進行性の病気で、原因が解明さ れておらず、治療方法も確立されていない。病 気が進行すると運動機能が失われ、寝たきりと なるが、知的機能や感覚機能(視覚、聴覚、臭 覚、味覚、触覚)は正常のまま保たれるという特 徴がある。 3 ALS 手足等が動かず、発声もできない状態になるが、 その段階でも眼球は動くため、その動きを使っ た意思伝達が行われている。 日本国内のALS患者数は、約9,000人(2012年 度の統計資料)となっており、年々増加傾向に ある。 4 従来技術とその問題点 ALS患者の多くは、視覚を必要とする意思伝達 装置を使用している。そのため、眼球運動や眼 瞼運動に支障をきたすと、意思伝達が困難とな る。現在、視覚を使用しない装置は存在するが、 その種類は少なく、しかも、「はい」、「いいえ」の 意思伝達に数十秒の時間がかかるという問題 がある。 5 新技術の特徴・従来技術との比較 • 視覚を使用しない意思伝達装置では、病気の 進行等によって瞼が閉じた状態かそれに近い 状態となった状況でも意思伝達が可能である。 • 視覚を使用しない従来の意思伝達装置では、 暗算等によって脳が活動している状態と何も 考えていない安静状態の2種類の脳波を使用 している。これに対して、本装置では左右の腕 の運動イメージで現れる脳波を使用している。 後者は、脳波の変化が比較的速く現れるため、 意思伝達に要する時間が短縮できる。 6 新技術の特徴・従来技術との比較 • また、運動イメージによる脳波は左右それぞ れで違いが明確なため、高い正答率が期待で きる。 • 本装置の意思伝達に要する時間は約2~20秒 程度、正答率は、被験者が健常者の場合で 約92%となっている。 • 本装置は、病気の初期段階から使用すること も想定し、視覚を使用した意思伝達機能も備 えている。 7 脳波計 電極 電極のり 8 脳波 9 視覚を使用する意思伝達装置 脳波を使って選ぶ選択肢の例 10 手や腕の運動のイメージ 鼻 脳の活動が 変わる Fp1 Fp2 F7 左耳 T3 F3 C3 Fz Cz P3 T5 F4 C4 T4 右耳 P4 T6 Pz O1 F8 O2 11 右の手や腕の運動をイメージするときの脳波 鼻 振幅:大 振幅:小 Fp1 Fp2 F7 左耳 T3 F3 C3 Fz Cz P3 T5 F4 C4 T4 右耳 P4 T6 Pz O1 F8 O2 12 左の手や腕の運動をイメージするときの脳波 鼻 振幅:大 振幅:小 Fp1 Fp2 F7 左耳 T3 F3 C3 Fz Cz P3 T5 F4 C4 T4 右耳 P4 T6 Pz O1 F8 O2 13 は い いいえ コンピュータのモニタ画面 はい 14 選択肢が移動する 音 楽 食 事 カーテン 照 明 エアコン 電 話 コンピュータのモニタ画面 エアコン 15 この方法は、視覚を使用せず、運 動イメージ時の脳波だけを使用 するため、閉眼状態でも意思伝 達が可能 16 介護者が患者に質問し、それに対して 「はい」 か 「いいえ」 を 腕(左 か 右) の運動イメージ で伝える 17 脳波計:大型の脳波計から 小型生体アンプに変更 18 電極数(皿電極使用) 脳波計測用 2個(または3個) 基準用2個 19 想定される用途 • 筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の意思伝達 支援に利用できる可能性がある。 • 装置の操作には集中力が必要なため、教育、 スポーツ等の分野で集中力を高めるトレーニ ングに活用できると考えられる。 • また、ゲーム分野に展開することも可能と思 われる。 20 実用化に向けた課題 • 現在、市販の小型生体アンプを使用し、装置 全体を持ち運び可能な大きさまで小型化して いるが、さらに携帯電話程度の大きさまで小 型化すること。 • 実際に患者の方々に試用していただき、個人 差による正答率の変動を小さくするための装 置の改良。 21 企業への期待 • 脳波計として使用可能な小型生体アンプの技 術を持つ企業との共同研究。 • 福祉機器、医療機器などに関係して、ALS患 者用装置に興味を持っている企業との共同研 究。 • 教育、スポーツ、ゲーム分野等の企業との共 同研究。 22 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :脳波を使用した意思伝達装置 出願番号 :特願 2014-195323 • 出願人 :近畿大学 • 発明者 :山脇 伸行 23 お問い合わせ先 近畿大学 リエゾンセンター TEL FAX e-mail 武田和也 06-4307-3099 06-6721-2356 [email protected] [email protected] 24
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