青年期 の協働経験 にお ける 自己 。他者 理 解 一 チ ーム でのア ンサ ンブル 演奏 に着 日 して一 201lHP014 藤 田詩 乃 問題 と目的 青年期 は、心 の 内に多様 な情緒 を体験す る時期 である。 また、現代 の青年 にお いて は、他者 と傷 つ けあ うこ とを避 けた表面的な円滑 さや、 ノ リ重視 とい つた関係 の希薄化 の傾 向 が指摘 され てい 2007)。 る(岡 田、 しか し、そ うした関係 が 当人 に とつて安心 して過 ごせ る居場所 とな る友人関係 を 提供す る とは限 らず、時 には心的葛藤 を引き起 こす ことに もな る。 ア ンサ ンブル 演奏 とは、管弦打楽器 な どの楽器 を用 いて 3∼ 8人 で合奏 をす る音楽活動 であ る。 協奏 の作用 と して 、音楽演奏 を通 しての感情 の表出や 自己表現、 コ ミュニ ケー シ ョンや他者 との 交流 を促す とい つた効果 が 挙 げ られ る。 ア ンサ ンブル 演奏 は学校 教育 にお いて も授 業や部活 の一 環 と して取 り組 まれ てお り、 この よ うな楽器 協奏 の効用 は 、学校教育 で実施 され るア ンサ ンブル 演奏活動 にお いて も発揮 され得 る と考 え られ る。 本研 究 では 、 中学 、高校 にお ける 「部活動」 で のア ンサ ンブル 演奏経験 に焦点 を当て、楽器 演奏 を通 じて他者 と協働 して一つ の作品 を仕上 げて い くとい う過程 の 中で、 どの よ うな人間関係 のプ ロセ ス を経験す るのか 、 また、協奏活動 を通 じて どの よ うな 自己理解 、他者 理解 を得 るのかにつ いて検討す る。 また、そ の 人 に とつての協奏 の意味 を明 らかにす る。他者 と協奏す るア ンサ ンブ ル 演奏 が 、希薄 にな りがちな青年期 の 人間関係 、 ひ いては 自己理解 、他者 理解 に及 ぼす 影響 を検 討す る こ とは、教育現場 にお ける協働 の 可能性 を広 げ るもの と考 え られ る。 方法 ア ンサ ンブル 演奏経験 があ り、当時 の活動 を客観的 に振 り返 ることの 出来 る 20歳 以 上 の男女 5 名 を対象 し、 イ ンタ ビュー に よるデ ー タ収集 をす る。 イ ンタ ビュー は録音、逐語録 を作成 し、分 析 はナ ラテ ィブ分析 に よつて行 う。 総合考察 ア ンサ ンブル を行 う際、特 に 「お互 いの音 をききあ う」 よ う意識す る こ とが 5人 の イ ンタ ビュ ー か ら共通 して語 られ た こ とである。ま た 、充実感や楽 しさを感 じる点 につい て 、「音 がぴ った り 合 った とき」「全体 の音 が調和 した とき」 と、バ ラバ ラの楽器 が一 つの音楽 と して成立 した瞬間で つ ある と語 られ た。 よ つて 、一 人 で楽器 を演奏す る こ と自体 とい うよ り、音楽 を通 じて他者 と な が り、同期 で きる とい う点 に活動 の 充実感 を感 じられ るのが 、協奏 な らでは の特徴 であ る と考 え られ た。 い また、 一つの 曲をつ く り上げ るた めに 、演奏 に対す る フ ィー ドバ ックや 自分 の 思 い を伝 えて の つ く必要 が ある。普通 の談笑 と異 な り、 目的 の ために意 見 を発 しあ うよ うな関 わ りが あ た。 そ つた と語 られた。 中 で 、自分 の言 いたい こ とを言 えた り、人 の意 見 を認 める協調性 を持 つ よ うにな いて 、 さらに。 自身 の 関 わ り方や 、努力 をす る実感 な ど、青年期 にお ける仲間 との協働 経験 にお 多様 な 自己 。他者理解 が得 られ る ことが 明 らかにな つた。 青年 期 の リー ダ ー 経 験 が 自己概 念 に及 ぼ す影 響 一 自己客体視 に着 目 して一 201lH P 029 林 柚 希 研 究 目的 】 【 本 研 究 で は 、 リー ダ ー 経 験 の あ る社 会 人 の 方 に 当時 の 困難 や 苦痛 、 また 喜 び や 達 成 感 を聞 き、そ の 体験 が 自己概 念 に どの よ うな作 用 を与 えた のか を明 らか に す る。また 、 リー ダ ー を務 め る とい う経験 は 、 一 時的 な 変化 を も た らす の み で な く、 そ の 後 の 自 己 に も影 響 を及 ぼ す の で は な い か と考 え 、 リー ダ ー を務 め た後 も、 自己概 念 に何 らか の 影 響 が残 つ て い る の か に つ い て も検 討 して い く。 【研 究 方法 】 本研 究 で は 、 メ ン バ ー 間 の 信 頼 関係 の 強 さや共 有 す る時 間 の 長 さを理 由 に 、 団 体競 技 の ス ポ ー ツチ ー ム に 所 属 して い た リー ダ ー を対 象 とす る。 当時 の 体験 を振 り返 つて い た だ くた め 、大学 を卒業 し社 会 に 出 て 23年 に あた る、 25歳 前 後 の 方 (5名 )に イ ン タ ビュー 調 査 を実施 した 。イ ン タ ビュー の 内容 は録 音 し、ナ ラテ ィ ブ 分析 を行 つ た 。 【分析 結 果 ・ 考 察 】 1)他 者 か らの フ ィー ドバ ックに よる 自 己概 念 へ の 影 響 リー ダー は 他 の メ ンバ ー よ りも、他 者 か らの フ ィー ドバ ッ ク 、特 に不整 合 フ ィー ド バ ッ ク を受 け る機 会 が 多 い 。 不整 合 フ ィー ドバ ック事 態 は 自己概 念 の 発 達 。変 容 の 契 機 とな つた り、反 対 に 自己概 念 の 安 定性 を脅 か した りす る と考 え られ る。 2)自 己 客体 視 に よ る 自 己概 念 へ の影 響 リー ダ ー は 自分 自身 で 他 者 の 視 点 を取 り入 れ 、 自己客 体 視 を行 う こ とで リー ダ ー と して の 役割 を果 た そ う とす る傾 向 が 強 い 。 自分 の 負 の側 面 を受 け入 れ 、 あ りの ま ま の 自己 を認 めた うえで 、現 在 の 自己 と理想 の 自 己 との ズ レ を克服 し、 リー ダ ー と して の 自己 を向上 させ よ う と試 み る と考 え られ た 。 3)リ ー ダ ー 経 験 が 対象者 に とつて どの よ うな経 験 にな つてい るか 任 期 中、 また は リー ダ ー を務 め き った 後 に 、他 者 か ら リー ダ ー と して認 め られ る経 験 を機 に 、 リー ダ ー 経 験 は 自信 とな る場 合 が 多 い 。 しか し、 半数 以 上 の 対 象 者 に とつ て 、 リー ダ ー 経 験 は後 悔 や 苦 痛 を伴 つ た マ イ ナ スの 記 憶 と して も残 つて お り、任 期 中 に感 じて い た孤独 や 不 安 、悲 しみ は記 憶 か ら消 え る こ とは な い と考 え られ る。 本研 究 で は 、 リー ダ ー 経 験 が そ の 後 も影 響 を与 え続 け て い る こ とは な く、 リー ダ ー 経 験 は過 去 の 記 憶 と して 、現 在 の 生活 とは切 り離 され て い る と考 え られ る。 肢体不 自由者 の一人暮 らしか ら考える自立の意義 201lHP040 飯 田侑子 研究 目的 本研究では、障がい者 にとって 自立 とはどのよ うなもので あるか検討す ることを目的 とする。 介助を受けなが らでも一人暮 らしを した い と自己決定 し、実行 した人を対象に、障がい者 の 目指 す 自立 とはどのよ うなものか、障がい者 の 自立にとつて何 が重要であるのかを検討す る。 障がい者 が、介助が必要であつて も一人暮 らしをしようとし、実現す るには、健常者 とは異な る困難があると考えられ る。障 がい者 に体験を直接尋ねることで、一人暮 らしによつて何を実現 す ることがその人にとつて重要であるのかを明 らかに し、そ こか ら障がい者にとつての 自立を再 定義する。 研究対象者・研究手法 一人暮 らしを始めて半年以上経過 した成人 の先天性肢体不 自由者を対象にイ ンタ ビュー を行 つ た。一人暮 らしを始めた年齢や一人暮 らしをしてい る期間、性別 、障がいの程度 によつては、異 なる体験をしてい るとも考えられるので、それ らの多様性を反映 させ るように対象者 5名 を選定 した。本研究では、成人福祉施設を通 じて研究対象者を募集 したため、福祉施設 の関係者及び施 設内のホームで暮 らしていた人が対象 となる。録音 したイ ンタ ビューの内容を逐語にお こ し、分 析 はナラテ ィブ分析によつて行 つた。 分析結果・考察 本研究では、①障がい者 が一人暮 らしをす る意味、②障 がい者にとつて自立とはどの よ うなも ので あ り、自立にあた り何を実現す ることが重要であるのかの 2点 に焦点を当てて分析、考察を 行 つた。① について研究対象者 は、 自分で決めて行動す ることがで きることに一人暮 らしをす る 意味を感 じてい ることが窺 えた。障がい者は、施設や病院 な どの閉鎖的な環境 の決められた規則 の 中で生活 してい るこ とが多い。 一人暮 らしでは施設 とは異な り、自分のや りたいことを自分で 決 めて、 自分 の生活を作 ってい くことがで きるとい える。②について、 自分でできるか どうかが 重要なのではなく、周 りの人に協力 して もらいなが らであつて も、 自分で考 え、決断 し、行動す ることが 自立で あるといえる。常 に介助が必要で、 自分一人だけでできることはほ とん どない障 がい者 であって も、自分の意志を持 つて介助者に伝 え、一緒に形に してい くことはできる。 自分 一人ではできないか らといつて諦 めるのではな く、自分で決めて、 自己実現 に向けて主体的に行 動 してい くことが大切 である。そ うす ることによつて、他 の誰でもなく自分 の人生を生 きてい く ことがで きるといえる。 イ ン ドネ シア人 のアイデ ンテ イテ イの諸要素 ― ナ シ ョナル・ アイデ ンテ ィテ イに焦点 を当て て一 201lHP051 伊藤 里奈 ・ ンテ ィテ ィの 本研究 では、民族 、宗教等 を基 と したアイデ ンテ ィテ イ と、ナ シ ョナル アイデ 2つ の こ とを明 らかに 関係 を、イ ン ドネ シア 人 の体験 に焦点 をあて て 、検討 す る。 具体的 には、 の した い。1つ めは 、多 文化 国家 に属す るイ ン ドネ シア人 の個人 のアイデ ンテ ィテ ィは ど よ うな のアイデ ンテ ィテ イ つ 要素 か ら成 り立つ ものであ るのか。2つ めに、多様 な要素 か ら成 り立 個人 とナ シ ョナル ・ アイデ ンテ ィテ ィの 関係 について 、明 らか に した い。 究 の対象者 と 留学 な どの理 由で 日本 に一時的 に来て い るイ ン ドネ シア人 の 大学生 4名 を本研 こ ナ テ ブ し、イ ンタビュー調 査 を実施 した。 イ ンタ ビューの内容 は録音 し、逐語録 にお し、 ラ ィ バ ン ドや 、対 象者 の属す る様 々 分析 を行 つた。分 析 のポイ ン トと して 、対象者個 人 の ック グラ ウ のアイデ ンテ ィ な社会集 団 がマ ジ ョ リテ ィで あるか マ イ ノ リテ ィであるかが研 究対象者 それ ぞれ た、言語 、民族、 テ ィに どの よ うな影響 を与 えて い るか着 目す る。そ して、先行研 究 で抽 出 され が あ つたアイデ ンテ ィテ イの 宗教 、国家 に関す るアイデ ンテ ィテ イや新 しく研 究対象者 か ら言及 ついて 考察す る。特 に、 どの よ うな 要素 が研 究対象者 の 中 で、 どの よ うに関 わ り合 ってい るか に い のかについて考察 し、個人 時 に どのアイデ ンテ ィテ イが対象者 の 中で相対的 に重要視 され て る のナ シ ョナル ・ アイデ ン のアイデ ンテ ィテ イの 多様 な要素 の 関係 を明 らかにす る。 さらに、個 人 ・ ンテ ィテ イが他 のアイデ テ ィテ ィが形 成 され て い つ た背景 に も着 目 しつつ 、 ナ シ ョナル アイデ かにす る。 ンテ ィテ イに比 べ て どの よ うな時 に重要視 され るか考察 し、 それ らの 関係 を明 ら 。宗教 。民族 。国家 だ けに捉 われ ない複雑性 を持 ったイ ン ドネ シ る宗教 アイデ ンテ ィ ア人個人 のア イデ ンテ ィテ イが浮 かび上が つて きた。対象 者 の 日か ら語 られ な もの だ けでな く、 テ ィや民族 的 アイデ ンテ ィテ イは、価値観 やイ メー ジ とい つた よ うな抽象的 いた。衣食 、 生活様式 な ど、 そ の 地域 の生 活 に根差 した要素 を踏 ま えた具体的 な ものが語 られ て イ ンタ ビュー 分析 か ら、言語 地域 に生活 して い な くては育 まれ な い 要素 が 、 地域 の生 活 に根 差す いた。 族 、宗教 のアイデ ンテ ィテ イを具体 的 な ものに して アイデ ンテ ィテ イである民 の 性 も明 らかにな つた。 宗教 ナ シ ョナル ・ アイデ ンテ ィテ イ とそ の他 のアイデ ンテ イテ イ 関係 を選 ぶ折 に、ナ シ ョナル・ アイデ ン 的 アイデ ンテ ィテ イは、対 象者 4人 全 てにお いて 、結 婚相 手 同 士が結婚 で きな い 国 の制度 テ ィテ ィや そ の他 のアイデ ンテ ィテ イ以 上 に重要視 され た。異 教徒 に大 きな影響 を及 ぼ して い の 上 の問題以 上 に、宗教 が対象者 の家族 の 関係 を繋 ぎ、対象 者 世界観 る こ とが考 え られ る。 ル ・ アイデ ンテ イテ イのあ り方が明 らかに異 さらに、 マ ジ ョリテ ィ とマ イ ノ リテ ィでナ シ ョナ い る対象者 は民族 、宗教 、 地方語 といつた よ うな な る ことが示唆 され た。 マ イ ノ リテ イに属 して ・ア として のアイデ ンテ イテ イ とす シ ヨナル アイデ ンテ イテ イや それ らを統括 した マ イ ノ リテ イ マ しか し、マ ジ ョリテ イに属 して い る対象者 は、 イデ ンテ イテ イ との 関係 性 が色濃 くみ られ た。 ので のイデ オ ロギー に関す る語 りが実体験 に伴 うも べ イ ノ リテ イの対象者 と比 て、イ ン ドネ シア され る ことはあ ま りな か つた。 な く、ナ シ ョナル ・ アイデ ンテ イテ イが重要視 心理的 依存 関係 にお ける心理 状態 の 検討 ― 依存 の深刻化 を防 ぐために一 201lHP109 野 々垣 萌 子 「心理的 依存関係 」 とは、 一 方が他方 よ りも強 く相手 に執 着 し、必要 とされ る こ とに 自 己の 存在価値 を見出す 、あ るいは 関係 を繋 ぎ とめるた めに 自己犠牲的 な考 え方・ 行動 を と つてい る状態 を指す 。本研 究では、 どの よ うに心理的依存 関係 が構築 され るのか 、 当事者 はそ の 関係 を どの よ うに捉 えて い るのか 、 心理 的依存 関係 と自己概念 は どの よ うに影響 し 合 っ て い るの かにつ い て検 討す る。本研 究 では 、自己を見失 う深刻 な関係 で ある「共依存」 を回避す るためのポ イ ン トを明 らかにす る。 本研 究 では 、20歳 以 上で 、過 去 (特 に青年期 にあた る高校 か ら大学時代 )に 、友 人・ 恋 人間 にお け る心理的 依存関係 を体験 した男女 5名 を対象 に 、イ ンタ ビュー 調 査 を行 つた。 録 音 したイ ン タ ビュー 内容 か ら逐語録 を作成 し、ナ ラテ ィブ分析 を行 つた。 分析 か ら、心理的 依存 関係 が生 じる根底 には 、 自己 自信傾 向 の弱 さや 自己受容性 の低 さ が ある ことが 明 らか になった。 自信 の な さが相手 との 関係 に対す る不安に繋 が り、不安 の 払拭や 関係 の 繋 ぎ止 めを 目的 とす る相手 中心 思考 。行動 に繋 が る こ とが明 らかにな つた。 依存 が深刻化 した対象者 には 、重度 の 自己犠牲行動 と共依存傾 向 もみ られ た。す べ ての 対 象者 は 、関係 の 中で不安 定 さやネ ガテ ィブ な気持 ちを 自覚 してお り、 うち 3人 には 自己否 定的 な考 え方 に陥 りやす い傾 向が 窺 えた。 心理 的依存関係 は 、 もとよ り肯定的でな い 自己 概念 に さらにマ イナ ス な影 響 を与 え 、 当人 の 心理的健康 を脅かす もの である とい える。 考察 では 、心理的依 存関係 を軽度 。中度・ 重度に分 け、段 階 ご とに深刻 な依存 回避 の ポイ ン トを提示 した。 まず 、① 自己犠牲関与に よ つて 、他者 が救 済 され るこ とはな い こ と を 自党す るこ とが重要であ り、軽度 ∼中度 の場合 にお いて は、②相 手 に尽 くす限度 をあ ら か じめ決 める、③ 自分 のた めの 時間 を持 つ 、④ 開 かれ た 関係性 を保 ち、相 手以外 との 関 わ りを維持す る、⑤相手 の こ とで 盲 目的 にな つ て い な いか考 える とい う 4点 を提示 した。 自分 を コン トロー ル す る ことが 難 しくなる重度 の場合 は 、 ⑥ 目を背 けて い る 自分 の 気持 ち・ 状況 に 直面す る、⑦ 関係 を続 けた先 の 将来 を考 える、⑥ 、⑦ を経 て③ 自分 の気持 ちを相 手 に表 明す る とい う 3点 を提示 した。 出産 。育児経験が就労女性 にもた らす影響 201lHPl10 落合菜帆 研究 目的 本研究 では 、出産・ 育児経験 が女性 の考 え方 に どの よ うな変化 を もた らす のか について明 らかにす ることを 目的 として い る。特 に 1)離 職・ 復職 の経験 を経て、仕事 に対す る思 いが ど の よ うに変化 したのか 、2)育 児経験 が 自身 に どの よ うな変化 をもた らした のか 、 とい う 2点 に焦点 を当てて考察 して い く。 さらに この 2点 の考察 をふ まえて、3)育 児 と仕事 の互 いの影 響 について考 え、仕事 と育児 の両方 を経験す る中で、女性 に どの よ うな影響や変化 が み られ るのか を明 らかにす る。 研 究対象者・ 研究手法 「社会人」 の経験 があるが 、育児期 間中は離職 して い た女性 を対象 とし、イ ンタ ビュー調 査 を行 つた。育児期 間中のみ の離職や 、育児後 の復職 が 、 どの よ うな心理的変化 をもた らし た のかについて考察す るため、 この よ うに対象者 を絞 つた。イ ンタ ビューの 内容 は録音 し、 逐語 を作成 し、ナ ラテ ィブ分析 を行 つた。 分析結果・ 考察 (1)仕 事 に対す る思 いの変化 離職 によつて 、存在意義 が分 か らな くなるな どの影響 は見 られ なか つたが 、閉鎖的 な環境 で育児 を してい る うちに、働 きた い とい う思 いが強 くな つてい く様子 が うかが えた。 また、 今 回 の研究 を通 して 、女性 がパー トを選択す る しかない状況、育児 と仕事 の二者択 一 を迫 ら れ る現状 な ど、女性 の就労 について 、社会的 に改 善 して いか なけれ ばな らない 問題点 が 明 ら かになつた。 (2)育 児経験 が 自身 に もた らした影響 慣れな い育児や 、閉鎖的 な環境 な どによ リス トレス で不安定 になる様子がみ られ た。 しか し夫や友人 な ど周 囲 の理解 が 、不安定な母親 の大 きな助 けにな る とい うことが 明 らかにな つ た。 また、育児 を通 して成長 し、人 生が豊かにな つた とい う。 (3)育 児 と仕事 の互いの影響 育児 と仕事それぞれ で得 た学びを生か し、 日々の生活 を充実 させ てい る ことが 明 らかにな った。 また、仕事 を楽 しむ ことで 、子 どもと適度 な距離 を保 つ ことがで き、余裕 を持 つて育 児 に望む ことができるとい える。 匿名 に よ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン と 自己概 念 20HHPlll 荻野 緑 <研 究 目的 > 現 代 、携 帯 電 話 や ス マ ー トフ ォ ンの 普 及 に よ つ て 、 人 と人 との つ な が りを促 進 ・ サ ポ ー トす る コ ミ ュ ニ テ ィ型 の webサ イ トで あ る SNS(ソ ー シ ャ ル ・ ネ ッ トワー キ ン グ・ サ ー ビ ス)が 更 に 普 及 した 。 携 帯 電 話 や ス マ ー トフ ォ ン 、 そ して SNSの 普 及 に よ り、 多 くの 人 が 匿名 で 情 報 を発 信 す る こ とや 他 者 と コ ミュ ニ ケ ー シ ョン を とる こ とが 可能 とな つ た 。 匿 名 で 人 と関 わ る とい う新 た な対 人 関係 は 、 自己概 念 に な ん らか の 影 響 を及 す も の と考 え られ る。 匿名 とい うか た ち で の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョンや 自 己表 現 が 、 当人 の 自己概 念 に ど の よ う な影 響 を及 ぼ す の か を明 らか に し、 日常 生 活 とは異 な る SNS上 の 自己概 念 の 存 在 を検 討 す る の が 本 研 究 の 目的 で あ る。SNSが 新 た な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン や 自 己 表 現 の 場 と して 身 近 に 存 在 して い る現 代 、 匿名 で の コ ミ ュニ ケ ー シ ョンが 自己概 念 に どの よ うな影 響 を与 え て い るか検 討 す る こ とは 、 現 代 を生 き る青 年 の 人 間 関係 、 お よび 自己概 念 を理 解 す る うえ で重 要 で あ る と考 え られ る。 <研 究 対 象 者 。研 究 手 法 > 本 研 究 で は 、 SNSの 中 で も匿名 で も使 用 す る こ とが 可 能 で あ る Twitterを 取 り上 げ る。 Twitterの 利 用 目的 は 多 種 多様 で あ るが 、 匿名 で 日常 生 活 以 外 の 他 者 と交 流 す る こ とを 目 的 と した ア カ ウ ン ト保 有 者 4名 に イ ン タ ビュー を実 施 した 。 イ ン タ ビュー は録 音 し、分 析 はナ ラテ ィ ブ 分 析 を行 っ た 。 <分 析 結 果 ・ 考 察 > 研 究 協 力 者 4名 と も、 匿名 で Twitterで は 日常 生 活 上 の ご 自身 とは違 う側 面 をみ せ て お り、 日常 生 活 上 の 友 人 が知 らな い 一 面 を、 Twitter上 の 友 人 に は 見 せ る こ とが 出来 る。 人 間 は 、 さま ざま な側 面 を持 っ て お り、 一 緒 に い る相 手 に よ っ て も、 見せ る 自分 の 側 面 が 異 な る。 匿名 で の 相 手 に は 日常 生 活 とは違 う側 面 を見 せ る こ とが で き 、 日常 生活 とは 異 な る 自己概 念 が 活性 化 して い る と考 え られ る。 さ らに研 究 協 力者 4名 と もに マ イ ナ ー な趣 味 ・ 嗜 好 を も つ てお り、Twitterで 匿名 で の コ ミュ ニ ケ ー シ ョン を使 用 して 同 じ趣 味 を持 つ 人 々 との 交流 を楽 しん で い る。 日常 生 活 で は共 有 しづ らい 趣 味 。嗜 好 を抱 え た者 に と つ て 、 匿名 で は 自己 を 自由 に表 現 す る こ とが で き る。 ま た 、 同 じ く 4名 と もに Twitter上 の 人 間 関係 は 日常 生 活 上 の 人 間 関係 に劣 る と考 え て い る。Twitterで は 自 らを偽 る こ とが で き る と も考 え て お り、Twitter上 の 人 物 像 に信 頼 し て い な い 。 匿名 で の 交 流 を楽 しん で い な が ら も、対 面 コ ミ ュニ ケー シ ョン を至 上 とす る価 値 観 を抱 い て い る と考 え られ る。 匿名 で は 自由 に表 現 で き る とい う喜 び感 じて い る 中 で 、 匿名 で の 人 間 関係 に は不 全感 を 抱 えて い る とい う、現 代 の 若 者 の 複 雑 な匿名 へ の 向 き合 い 方 が浮 か び 上 が っ て きた。 双子 関係 にお ける心理的 自立 ― 独 立 した友人 関係 の構築 に着 日して一 201lHP149 豊吉 ゆ い 双子 関係 は一 緒 にい る時間が長 く、生 育環境 が 同 じであるた め、相 互 のつ なが りが強 く、対 の 相 手 に依存 しや す い こ とが特 徴的 である。 自分 が何者 であるか を模 索す る青年 期 において、 自分 と似 た も う一 人 の 自分 の存在 は 自立 を妨 げる もの とな り得 る。 そ の ため、対 の相手 とは異 な る 自 己を認識す るためには 、対 の相手 に対す る依存 の程度 を弱 め 、他 の 関わ りを増や してい くこ とが 重要 であ る と考 える。本研 究では、それぞれ が独 立 した友 人 関係 を構築す る こ とが、双子 の心理 的 自立に どの よ うな影響 を与 えるのか を検討す る。双子 の他者 との 関わ りと、対 の相手 と離れ た こ とによる気持 ちや行動 の変化 を追 うこ とで 、 心理 的 自立 の過程 を明 らか にす る。 そ の上 で 、依 存 と自立 の 関係 につい て検討す ることを 目的 とす る。 本研 究では、女性 同 士の双生児 き ょ うだ い を持 つ 大学生以上 の方 (5名 )を 対象 とし、イ ン タ ビュー調査 を行 った。 一 卵性 、 二 卵性 は問わないが 、分析 では考慮す る。イ ンタ ビューの 内容 は 録音 し、逐語録 を作成 し、 ナ ラテ ィブ分析 を行 つた。 イ ンタ ビュー 分析 か ら、双子 の他者 との 関わ りには 、「周 囲 か らの視線」 と 「対 の相手 に対す る 依存 の程度」 が影響 してい るこ とがわかった。親 か ら対 の相手 と比 較 され るこ とが 多 かった り、 周 りの人 か ら双子 の うちの一 人 として 見 られ た りす る と、個人 としてみて も らい たい とい う気持 ちが強 くな り、 これ は一 卵性 の双子 に共通 して 見 られ た。 一 卵性 の双子 は外 見 の類似性 が 高 い た めに 、周 囲 か ら 「双子」 として 見 られ るこ とが 多 い とい える。 また 、対 の相 手 に対す る依存 の程 度 が強いほ ど、他者 との 関わ りにおいて 自他 の 区別 がない 状態 に陥 る。双子 は 自分 の視点や考 え を育むチ ャ ンス を失 う可能性 が 高 い といえる。 対 の相 手 と距離 を とる要 因 としては 、離れ た い とい う気持 ちか らであ る場合 と、や りたい こ と がそれぞれ異 なるために 自然 と離れ る場合 が あ ったが 、 どち らも共通 して離れ てそれ ぞれが独 立 した友 人 を築 くことで心理 的 自立に 良 い影響 を与 えていた。 イ ンタ ビュー 分析 を通 して 、必ず しも依存 か ら自立 へ と向か うわ けではな い こ とがわかった。 対 の相手 か ら依存 され てい る場合 には 、対 の相 手か ら自立 し他 の 関係 を築 くなかで、対 の相 手 の 存在 を意識 し、自立 に 向 か うとい える。双子 関係 は 、他 の 関係 とは全 く異な る特殊 な関係 である。 双子 関係 は、依存 とい うよ りも、深 い相 互理 解 の ある強いつ なが りを持 つ もの とい う言葉 が適 し て い る と考 える。相 互 に内 面的な つ なが りを持 つ 対 の相手 は、人 生 にお ける心 の支 え となる特別 な存在 となる とい える。 双子 の心理的 自立の過程 をも とに、 自立 とは 、依存 の対象や程度 を広 げ ることだけでな く、個 としての 自分 を もちつつ も、互 い につ なが りを求 めあ う双 方向の適度 な依存 関係 を築 くことであ り、依存性 の変化 のかた ちで ある と考 え られ る。 Xジ ェン ダー を通 して 考 える性 自認 の あ り方 201lHP167 山 田苑 幹 自分 の 性 別 を男 あ る い は 女 と して 当 た り前 に受 け入 れ て い る人 が ,性 別 に つ い て 深 く考 え る機 会 は少 な い 。そ れ に 対 して ,男 女 二 元 論 に 当て は ま らな い 性 自認 を持 つ 人 々 (Xジ ェ ン ダ ー の 人 々 )は , 自己 の 性 別 に つ い て 考 え る機 会 が 多 くあ る と考 え られ る。 しか し , 男 女 の い ず れ か で は な い 性 自認 を持 つ 人 々 の 先 行 研 究 は 極 め て少 な く,現 在 の 男 女 二 元 論 が 主流 とな つ て い る社 会 を どの よ うに感 じ,身 体 的性 別 と 自認 して い る性 別 との 違 い を ど う捉 え ,そ う した性 別 違 和 と どの よ うに付 き合 つて い る の か ,と い っ た 点 は不 明 な こ とが 多 い 。本 研 究 は ,男 女 の い ず れ か で は な い 性 自認 を持 つ 人 々 に 焦 点 を 当て ,性 別 を どの よ うに捉 え ,性 別 と ど の よ うに 向 き合 っ て い るか を検 討 す る こ とで ,性 別 。ジ ェ ン ダ ー と い う言 葉 に 対 す る 固定 観 念 を 再 考 し,ジ ェ ン ダ ー・ ア イ デ ンテ ィ テ ィ研 究 に新 た な知 見 を も た らす こ とを 目的 とす る。 1年 以 上 経 過 して い る 成 人 (20歳 以 上 )で , 自 らの性 別 観 に つ い て 話 す こ とに 対 す る抵 抗 感 の 少 な い 4名 を対 象 に ,イ ン タ ビュー 調 査 を行 つ た 。イ ン タ ビュー 後 ,内 容 は 逐 語 にお こ し,分 析 は ナ ラテ 本 研 究 で は ,男 女 の い ず れ か で は な い 性 自認 を持 つ よ うに な っ て イ ブ 分 析 に よ っ て行 つ た 。 分 析 結 果 か ら,性 自認 が 男 女 の い ず れ で もな い 方 に と って の うこ と (2)カ (1)Xジ ェ ン ダ ー とい う (3)男 女 の い ず れ で もな い 性 別 を生 き る と い (4)Xジ ェ ン ダ ー の 存 在 の 4点 に つ い て 検 討 に焦 点 を 当 て ,考 察 した 。 言 葉 の 捉 え方 (1)Xジ ミ ン グア ウ トの 意 味 ェ ン ダ ー を 自称 す る こ とが ,Xジ ェ ン ダ ー とい う明確 な ジ ェ ン ダ ー・ ア イ デ ンテ ィテ ィに 当 て は ま っ て い る こ とを示 す わ け で は な い こ とが わ か っ た 。ま た ,Xジ ェ ン ダ ー とい う概 念 が ,マ イ ノ リテ ィ と して の 枠 組 み や ジ ェ ン ダ ー 規 範 に 従 わ な い 生 き方 の 選 択 とい っ た 意 味 を持 つ 場 合 が あ る こ とが 明 らか に な っ た 。 (2)カ ミ ン グア ウ トす る こ とは ,当 人 に と つ て は性 役 割 規 範 か ら の 脱 去 及 び 生 きや す さ獲 得 の 契機 に な り,ま た周 囲 へ 現 存 す る ジ ェ ン ダ ー 規 範 や 固 定 観 念 の 有 り様 ,マ イ ノ リ テ ィ の 存 在 等 に気 づ くき っ か け を与 え る こ とが で き ,個 人 的 及 び 社 会 的 の 両 面 で 意 味 の あ る行 為 で あ る こ とが示 唆 され た 。 一 方 で ,カ ミン グア ウ トは ,主 流 社 会 へ の 抵 抗 とい う意 味 や ,他 者 に 対 して 自 己 の 特 殊 性 に つ い て理 解 して も らわ な けれ ば な らな い とい っ た側 面 を含 ん で お り,カ ミン グア ウ ト そ の も の に 対 して 抵 抗 感 を抱 く者 も居 る こ とが 明 らか に な つ た 。 (3)対 象 者 た ち に と つ て ,女 性 ら し さを強 要 され る こ とは ,強 い 抵 抗 感 を覚 え る こ と で あ り,当 事 者 は 男 女 二 元 論 社 会 にお け る様 々 な場 面 で 苦痛 を感 じて い る こ とが 明 らか に な つた。 (4)Xジ ェ ン ダ ー の 存 在 を知 る こ とは ,抱 い て い た 違 和感・ 抵 抗 感 の正 体 が 明 らか に な り,同 じ悩 み を抱 え る者 が 居 る こ とを知 る こ とが で き る と い う点 で ,重 要 な 意 味 を持 つ こ とが わ か っ た 。
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