論 文 論 文 ボラティリティ・プレミアム ―ファクターリターンの大きさと予測可能性― 内 山 朋 規 CMA 山 中 智 CMA・CIIA 目 1.はじめに 2.ボラティリティ投資戦略 3.実証分析 次 4.リターンの予測可能性 5.結論と議論 日米の株式市場を対象に、3種類のボラティリティ投資の超過リターンを用いて、市場ボラティリティのリス クプレミアム(VRP)を分析する。この結果、両市場ともに負のVRPが存在し、ボラティリティのリスクを負 担することに対する報酬が経済的に大きいことを示す。また、超過リターンが予測可能であることも示す。さら に、VRPの高い水準が曖昧性回避や確率加重といった選好バイアスに起因している可能性についても論じる。 ることが可能になってきた。投資家は、これらに 1.はじめに 直接投資するだけでなく、オプション条項が付与 ボラティリティの取引が今世紀に入り増加して された売出債やバイライト(カバードコール)型 いる(図表1) 。伝統的に、ボラティリティはオ のファンドなどを通じて、間接的に投資すること プションやバリアンス・スワップを通じて取引さ もある。 れてきた。近年では、ボラティリティ指数の先物 市場全体のボラティリティの上昇は投資機会の やオプションも上場されている。さらに、ボラテ 悪化をもたらすため、「ボラティリティは極めて ィリティに連動するETFも登場し、容易に投資す 重要なリスクファクターである」(Ang[2014]、 内山 朋規(うちやま とものり) 野村證券 金融工学研究センター クオンツ・リサーチ部インデックス・プロダクツ・グル ープ・リーダー。三井信託銀行を経て、2000年野村證券入社の後、米国UCLAアンダーソ ンスクール客員研究員を経て、現在に至る。早稲田大学卒、青山学院大学修士、京都大学 博士(経済学)。 山中 智(やまなか さとし) 野村證券 金融工学研究センター クオンツ・リサーチ部インデックス・プロダクツ・グル 。1級ファイナ ープ。2005年野村證券入社より現職。京都大学卒、大阪大学修士(工学) ® ンシャル・プランニング技能士。CFP 。 ©日本証券アナリスト協会 2015 69
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