“XCN(クロスチェック付きなぜなぜ分析)”(PDF:113KB);pdf

一般論文
設計品質リスクを未然にあぶり出す新手法
“XCN(クロスチェック付きなぜなぜ分析)
”
鶴田明三*
春名一志**
New Analytical Method" XCN" to Manage Risks of Quality during Early Design Phase
Hirozoh Tsuruta, Kazushi Haruna
要 旨
製品設計・開発の初期段階で,手戻りや品質に関するリ
し得る内乱との組合せで構成される“チェックリスト”から
スク要因を見える化する新手法“XCN(クロスチェック付
なる。トップダウン思考の“なぜなぜ分析”とボトムアップ
きなぜなぜ分析)”を開発した。設計・開発の初期段階で品
思考の“チェックリスト”の検討内容をクロスチェックする
質を高めるためには,顧客の使用条件や環境条件の機能へ
ことで網羅性を高め,品質リスク要因の抽出漏れを高確率
の影響といった品質リスク要因を的確に見極める必要があ
で防止する。
る。品質リスク要因に対しては,対策を設計に織り込んだ
さらに,全部品の分析を必要としないため分析の効率性
り,設計審査で対策の妥当性を審議したり,シミュレーショ
が高く,詳細な部品表を必要としないため設計・開発の初
ンや試作での評価・検証の条件に採用したりできる。
期段階で活用できる先行性がある。また原因と結果の関係
XCNの主な構成は,①“設計した機能が市場(使用段階)
の可読性が高くレビューしやすいという特長を持つ。
で働かなくなる”という想定をトップ事象とした“なぜなぜ
現在XCNの集合研修や説明会で,三菱電機の各製作所
分析”,及び②製品が曝(さら)される外乱(顧客の使用条
の設計部門,品証部門への展開を図り,設計・開発の段階
件・環境条件)と,それによって製品の内部で発生・変化
での品質作り込みに活用している。
(テーマ):高輝度ランプのサブシステム「ランプ本体」
結論
腐食環境,高温環境,高湿環境,衝撃,振動,ヒートサイクル,電源電圧変動,点灯方向ノイズ因子とした機能性評価を行う。
使用頻度と異物混入は信頼性試験にて確認する。
製造時の要因に対しては製造工程で管理する。使用可能電圧範囲,消灯直後の点灯は使用上の注意として製品マニュアルに記載する。
凡例
入出力
電力
安定器
電力
サブシステム
電力
ソケット
口金
電力エネルギー
マウント
(配線と電極)
ランプ本体
(1)機能ブロックエリア
ランプへの電力エネルギー
をコントロールするシステム
インバータ回路
電力
発光管
(薬剤封入)
電力安定器
イグナイタ回路
電力を光エネルギー(光量)
に変換して取り出すシステム
光量
電力
光
(不要)
ランプ本体
ソケット
電力
口金
電力
マウント
熱電子
発光管
光量(必要)
<凡例>
(A)腐食環境にさらされた
(B)高温環境にさらされた
(C)高湿環境にさらされた
(D)衝撃が加わった
(E)振動が加わった
(F)ヒートサイクルが加わった
(G)電源電圧変動
(J)点灯方向の違い
(K)使用頻度が高い
(L)異物混入
(2)なぜなぜ分析エリア
(3)チェックリストエリア
(4)クロスチェックエリア
(5)ストラテジーエリア
XCNの特長
網羅性
効率性
先行性
可読性
XCN(クロスチェック付きなぜなぜ分析)
XCNは,不具合要因の想定を行うトップダウン思考の“なぜなぜ分析”と,顧客の使用条件・環境条件が製品内部に与える影響を列挙したボ
トムアップ思考の“チェックリスト”の組合せをクロスチェックすることで,使用段階での品質リスク要因の抽出漏れを効率的に防ぐ。設計・
開発段階でXCNを適用することでリスクに気づき,設計仕様に織り込んだり,シミュレーションや試作での評価・検証条件に反映したりでき
る。
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先端技術総合研究所 **長崎製作所(工博)
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