特集論文 静止軌道衛星用 次世代リチウムイオンバッテリー 岡 寿久* 半田誠一* 大迫庸介* 清川 丈* 吉岡省二* New Generation Lithium−Ion Battery for Geosynchronous Earth Orbit Satellite Toshihisa Oka, Yosuke Osako, Shoji Yoshioka, Seiichi Handa, Takeshi Kiyokawa 要 旨 衛星搭載用電源機器のキーデバイスであるバッテリーの 150台以上の軌道上運用実績がある。海外商用衛星市場で 小型・軽量化及び高機能化は衛星全体の小型・軽量化を可 当社リチウムイオンバッテリーの世界シェアは約35%を得 能とする。携帯電話/スマートフォンや車載用バッテリー ており,新たに開発した次世代リチウムイオンバッテリー として広く普及しているリチウムイオンバッテリーは,エ を中心に更なるシェア拡大に向けて拡販活動を行っている。 ネルギー質量効率が高く,放電電圧が高い充放電効率の良 近年は,衛星電力要求が増加傾向にあり,バッテリー高 いバッテリーであり,人工衛星用バッテリーシステムにも 効率化のニーズに対応するため,130Wh/kg以上の高いエ 多くのリチウムイオンバッテリーが使用されている。 ネルギー質量効率を実現した次世代リチウムイオンバッテ 三菱電機は継続的に衛星搭載用リチウムイオンバッテリ リーを開発し,静止衛星軌道の運用パターンで15年以上の ーの開発/生産を行い,国内のみならず世界中の衛星シス 寿命を満足し,充放電2,000サイクル以上でも容量保持率 テムメーカーにリチウムイオンバッテリーを供給し,既に 90%程度の寿命特性を実現した。 次世代リチウムイオンバッテリーセル技術 モジュール化技術 従来リチウムイオンバッテリーセル シェルフレーム構造の採用によって, 耐環境性リスクの軽減及び組立作業性 の向上 50Ah,100Ah,175Ah 機械的特性をそのままに, 電気的及び寿命特性を 向上 画像提供: (株)ジーエス・ユアサテクノロジー 宇宙用リチウム イオンバッテリー 次世代リチウムイオンバッテリーセル シャーシ同士を ねじ結合 セル セルを個別実装 することによって,熱的干渉を 保持 避け,内部温度を均一化 55Ah,110Ah,145Ah,190Ah プレート 充電 過電圧 電流 保護回路 ねじ シャーシ バイパス 放電 スイッチ 電流 (LIB) 万が一,ある規定セル電圧を超えて充電されようとしても, それ以上充電しないように充電電流を迂回(うかい)させ, 規定電圧以上にセル電圧が上がらないように保護 セル過充電防止技術 (過電圧保護回路をセルごとに) 万が一,セルの1つが開放故障を起こしても,放電電流をバイ パススイッチ内部のダイオードに迂回させ,ダイオードの発熱 を利用してスイッチを閉じ,バッテリーの充放電経路を確保 セル開放故障保障技術 (バイパススイッチをセルごとに) 衛星搭載用リチウムイオンバッテリーの基本技術 衛星搭載用リチウムイオンバッテリーを構成する基本的な技術を示す。宇宙環境で使用される衛星搭載用リチウムイオンバッテリーは,大容 量化のみならず,ロケット及び宇宙環境に適合する耐環境性及び万が一の搭載部品の故障にも対応するための保護/保障機能を持っている。 28 (178) * 鎌倉製作所 三菱電機技報・Vol.89・No.3・2015
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