聴けばすぐわかる低周波音 中野有朋(音の話6- 2015/4) 低周波音は聞こえない音である、低周波音とは周波数が1~100Hzの音である、象は低周波 音で会話しているなど、どうしてこんなことがと、ビックリするようなことが、様々に報 道されたり、述べられたりしている。 これらはすべて誤りである。一体、低周波音を何だと思っているのだろう。 低周波音とは周波数がおよそ20~100Hz位の音波によって、ボーとかブーンと我々の耳を通 して聞こえる音である。そのように聞こえなければ、その音は低周波音ではない。 ただこれだけのことである。それ以外の何物でもない。 低周波音の低は低賃金などというように、少ない、小さいという意味で使われている。 周波は周波数の略である。周波数とは字の通り周期的に変化する波の数、つまり空気の圧 力変化の回数で、通常1秒間の波の数、圧力変化の回数で表し、ヘルツ(Hz)という単位を使 っている。音は聞こえる音を意味している。結局、低周波音とは、周波数の少ない聞こえ る音ということである。 低周波音は低音ともいわれる。これは、低音波音波を発生するとき、口の中で舌が低い位 置にくるからである。ボーと発音し、舌がどこにあるかさがすと口の中の下にあることが わかる。その舌を口の中の上につけ、ボーと言おうとしてもできない。この状態では低周 波音波を発生できないのである。 なお鳥のインコでも舌の筋肉が発達していて舌の位置を変えることにより低周波音波を発 生できる。 低周波音波の発生源としては,我々のまわりにいろいろなものがある。聴いてみれば誰に でもすぐわかる。測定器で測定しなければわからないというものではない。聴いてみて聞 こえなければ、それは低周波音波の発生源ではない。 挙げてもきりがないが、人工的なものを幾つか挙げてみると,次のようなものがある。 車の走行音、冷暖房装置の室外機、電源設備キュービクル、遠方の工場音、コンプレッサ、 送風機、換気ファン、給湯機、冷蔵庫、ボイラ、燃焼設備、・・・などである。 これらの発生源はすべて耳の外にある。これらから発生する低周波音波は,耳を通して我々 に低周波音として聞こえる。これがブーンとかボーと聞こえる音である。 以前、テレビでも放映されたが、風力発電装置の低周波音問題について、事業者とある住 民説明会に出席したことがある。反対派と称する人の中には、低周波音が出ているので眠 れない、体調が悪化した、さらには、低周波音で細胞が壊れるという報告があるなどと、 すぐ装置を止めてくれと、喧喧轟々たる有様であった。 そこで筆者は、「低周波音が出ているとすれば、例えばブーンとかボーと聞こえている筈 です。皆さんの家ではどのように聞こえていますか、順番に言ってみて下さい。」と発言 したところ、シーンと静まりかえった。お宅ではどうですかと、2、3、近くの人に聴き、 催促しても誰一人何も言わない状態であった。 会合が終わって、帰りがけ、住民の一人が、風車のそばに行くと、ブーンという音が少し 聞こえるが、家の中では何も聞こえないという。 聞こえないのだから、低周波音波の発生源は風力発電装置ではないのである。 低周波音が問題であるか否かを見極めることは極めて簡単なことである。問題であるとい う場所でブーンとかボーという音が聞こえるか聞こえないかを確認すればよいだけである。 長年、低周波音問題に係わってきたが、低周波音が人体に悪影響があるなどと言っている 人々に、音とは何ですか、低周波音とは何ですか、どのように聞こえますか、と簡単な、 基本的質問をして、的確な答えが得られたことは今までに一度もない。 象は鼻の付根の部分を振動させ8Hz前後の超低周波音で会話していることは、古くから知ら れていることである。筆者も20年ほど前、測定して確認している。低周波音ではない。 なお、超低周波音とは、周波数が1~20Hz位の人の耳には聞こえない縦波である。超低周波 音という用語が使われているのでよく誤解されるが、超・低周波音、つまり低周波音より 周波数の少ない縦波という意味である。この縦波は我々には音として聞こえないので、音 ではない。 我々に音として聞こえる縦波は、周波数がおよそ20~20000Hzの、通常音波と 言っている縦波である。
© Copyright 2024