平成 26 年度全国高等学校新体操選抜大会 「審判員報告書」 女子新体操 審判長 鈴木あおい C4 1.採点上打ち合わせた事項 個人 D フープ・クラブ 線審計時審にあたられる審判員も含め、全員で申告書のチェックを行った。各難度のシンボルマークと記 載された価値点の間違い(0.3 減点)が数件あり、単なる勘違いと、思い違いによるものと思われる同じ選手 で複数種目の場合もあった。 (間違いの例)・0.2 のフェッテピボット ・スイッチジャンプにおける価値点 これらの価値間違いについては、正しい価値点で採点し、最後に一括して 0.3 の減点を入れた。その他、 DER のカウントについては、様々なパターンを予想し、それぞれの現象によって、見極める際の統一をは かった。身体難度については、フォーム・手具操作・基礎的特徴のどれかに不足があれば、ノーカウント。 その中に、不足するとはいかないまでも、やや足りないものがあった場合、フォームや手具操作のクオリテ ィーで判断することにした。マステリーやステップについては、ルールブックおよび研修で確認した。 個人 D ボール・リボン 1月全国ルール講習会の内容に基づいて、再度審判間で以下の確認を行った ・申告書上で価値点の間違いがあった場合、修正をして採点。価値間違いの減点を入れる。 ・身体難度について、フォーム/手具操作/基礎的特徴のいずれかが完全に不足する場合、難度は有効になら ない。それぞれの観点を見極めてジャッジをする。 ・DERのカウントについて、受けの前に1、2歩のステップがあった場合、そのステップの前までがカウ ントできる。シャッセや3歩以上ステップがあった場合は全カットとする。また、投げ後にステップがあ る場合も全カットとする。 ・Mは一般的なものはカウントしない。実施ミスがあった場合はノーカウントとする。 個人Eフープ・クラブ 2015 年1月より変更となった事項と平成26年度高体連適用ルールについて確認した。 また、個人の4種目について映像による演技の採点を行い、見方の統一を図った。特に芸術における動き のつなぎや曲を生かした表現、作品構成の工夫などについてしっかり評価することを打ち合わせた。 個人Eボール・リボン 芸術点について、構成の統一と身体の表現に追加された欠点項目についての確認。技術的欠点について、 身体の動きや難度・DERの移動、余分なステップの減点についての確認。映像研修を行い、見方を統一 した。 団体 D 1月全国ルール講習会の内容に基づいて、再度審判間で以下の確認を行った ・交換で2名以上が0.3以上の実施減点があった場合、ノーカウント。 ・連係で1名以上が0.3以上の実施減点があった場合、ノーカウント。 ・CRとCRRの違いの確認。 ・連係CR及びCRRの受け取る手具の投げ上がっているタイミングの確認。 ・高体連ルールの確認。 団体 E 各選手及びチームとしての身体レベルの見極め、身体難度だけでなく D でカウントしても実施の技術的 欠点においての減点を判断すること。曲のカウントにあわせて選手同士の動きを合わせていることは一般的 であるので、それだけではなく音楽の強弱や抑揚・リズム変化が動きの中に感じられるか、コンセプトが明 確なのか、作品としての構成の差を明確に点数化することを重要視することで打ち合わせた。また、技術的 欠点については、各選手での減点・一括して減点するのか?ルールブックを見直し、必要以上に減点しすぎ ないよう確認した。 2・採点上起こった事項とその処理 個人Dフープ・クラブ 全体的に、身体難度の大きさに欠けており、ジャンプ・バランスにおける開脚度や、後屈を伴うジャンプ において不足が見られた。フォームの不足や乱れがあった場合、どの程度まで D でカウントするかについ ては、研修の中でも打ち合わせをしていたが、ひとつの演技の流れの中で、審判間の目線がそろう迄には、 多少時間がかかった。また、フェッテピボットにおいて、回転中(特に回転の始め)に動脚が下がっている選 手が多く見られた。ローテーション難度において、手具操作を始めた時には、フォームが崩れているためノ ーカウント、バランスにおいて、前後に追加の回転を行っているが直結していないことが多く、回転につい てはノーカウントとした。 DER については、キャッチ直前の最後の回転前に、ステップや間のあるパターンが多く見られた。また、 投げた直後に、意識なく無駄足を出している選手もおり、はっきり見えた場合には、ノーカウントとした。 ダンスステップコンビネーションにおいては、短いもの・音楽との一致がみられないものも多い。マステ リーについては、どこまでを一般的な手具操作と判断するかの基準の難しさもあると思われたが、実際は、 簡単な組み合わせで、熟練を必要とする操作であるかどうかの判断は明確であったように思う。 個人Dボール・リボン ◇申告書上のミス ・DERの投げに この追加基準があったため、削除し、価値を修正した。 これは受けの基準である。投げに申告する場合は、 (床上にてバウンドした後の投げ、床上にて転がし た後の投げ、など)。 ・ の申告があったが、頭上を越える投げで行っていた。これは〈小さな投げと受け〉を難度中に行う 必要がある。 ・リボンのエシャッペは、スティックが回転していることと頭を超えない高さで行うものである。スティッ クが回転して頭上を越える場合は、投げで申告する。 ・後屈を伴う難度において、首だけの反りや不足する選手が多くカウントできなかった。 ・フェッテピボットで動脚の膝が水平位置を保てていないものはノーカウントとした。 ・ほとんどの選手が、DERの受けながらの回転で受けてからになっているため、最後の1回転がカットす ることになった。 ・ジャンプ難度の開脚と後屈の見極め、手具操作の有無の見落としにおいて審判間の得点が開くことがあっ たため、確認し見方を統一した。 個人Eフープ・クラブ 途中で芸術の採点で見方の違いがあり、打ち合わせをして確認した。 個人Eボール・リボン <ボール> 全体を通して手具の基本操作が未熟であると感じた。両手受けが多く、つかむ・手首で支える等手具の固 定状態が多くみられた。また、余分なステップ・投げ受けの間での減点が多かった。なかには姿勢欠点の多 い選手や音楽にあわない振り付けがいくつかあり、実施点の減点が大きい選手もいた。 <リボン> 蛇形・らせんが明確に描けていない選手が多かった。リボンが床に残る、手具が身体に近い等手具の基本 操作が弱い選手が多かった。リボンの処理があまく、投げの直前又は受けの直後にリボンが床に残り実施減 点した。また、ピボットの終末やジャンプの形等(後ろ脚・胴の後屈)基礎的特徴を欠く難度の不明確な形 の減点も多くあった。 団体 D ・個人同様、身体難度の手具操作が不完全なものはノーカウントとした。 ... ・ダンスステップコンビネーションが連係や交換の単なるつなぎでしかなく、8秒に満たないものが見られ ノーカウントになった。 ・CRR連係の準備をC連係で申告しているものがあり、共同作業とはいえないものがあった。 ・連係で0.3以上の実施ミスがあった場合ノーカウントであるが、投げ受けを行う選手だけでなく5名全体 を見て、衝突や落下があった場合もノーカウントとなる。その現象に審判間で見落としがあり得点が開い た。 団体 E 身体の資質レベル・作品の良さ・難易度もふくめた多様性・実施度 どこかの部分で不足が見られ、各審 判それぞれに点数に差を出してはいたが、結果的には同じような点数となり、詰まってしまった。 その他・申告書の間違いと減点について 個人の記載ミス、及び減点 ・DERの価値間違い 0.3の減点 ・ を投げに申告 数件 ・ の後の基準の申告 数件 ・ 受け基準の価値点を申告せず 1件 ・難度の価値間違い ・水平のフェッテピボット(0.2)の価値間違い 数件 ・ (0.5)を 0.4 にて申告 ・その他単純な価値間違い ・身体グループが4難度より多い(5つのバランス) 団体の記載ミス、及び減点 ・交換の価値間違い 数件 数件 1件 0.3の減点 1件のみ 団体の手具の基礎グループの欠如については、1件もなかった。 3・その他特記事項・意見・感想等 個人フープ・クラブD1審、団体競技E1審 藤綱 江津子 前半種目のフープは、選手達に動きの硬さが見え、落下ミスのある演技も多かったが、後半種目のクラブ においては、高体連個人団体ともに種目でもあることからか、実施度の高い演技が多かった。 ダンスステップコンビネーションについても、8 秒間の中で、単発的なアクセントはあったとしても、単 純な動作やカウントを合わせるのみではなく、選手自身が音楽を感じ、動きのイメージや意思を持って演技 することが望まれる。マステリーにおいても、手具と動きの組み合わせの工夫と、どのように作品の中に組 み込んで繋いでいくか?というところまで、あと少し見られると良いと感じた。 ルールに則したうえで、ひとつの作品として魅せることの難しさはある。さらに、現実的には練習時間の 制約もあるが、高校生だからこそ、音楽や自分自身の個性の表現をあと少し追求すれば、さらにこの競技の 良さや面白さが、観客も含めて共感できるのではないだろうか。私たち審判員も同様に、ルールに則り、こ れらを含めて点数化し、それが選手・観客にも分かる採点を行うことによって、日本全体のレベルアップに もつながると感じる。 団体においては、今シーズン始めの試合で、どのチームも、熟練度が見られるまでには、時間が足りないとい える。危険度の高い連係に挑戦し大きなミスとなってしまったり、その準備動作が長いと感じられるもの、また 選手同士の衝突も複数みられた。技術と芸術を同時に採点するために、身体の資質・構成・実施度を点数化した ときに、同じような点数になってしまった。連係や交換を作品の一部としてつなげ、さらに、身体の動きについ てダイナミズムが増していけるよう、次の試合に向けて課題をもって頂けるとよいと思う。 来年度にむけてスタートとなるこの高校選抜大会において、審判員として参加させていただき、心より感謝申 し上げます。開催された広島県の先生方・補助役員の皆様方には、準備から運営においてこまやかなご配慮を頂 き、集中して審判業務につくことができました。ありがとうございました。 個人ボール・リボン D1審、団体 D1審 新垣 友美 個人において、身体難度の基礎的特徴にある〈形が固定され明確であること〉という点をもっと重視し 実施していく必要があると思いました。またダンスステップコンビネーションについては、まだ8秒に満た ないものや、身体と手具の動きを通じて音楽を表現するに欠ける選手がいました。選手自身がもっと音楽を 理解し、手具操作にも工夫を凝らしたダンスステップコンビネーションを今後期待したいと思います。そし て今大会は全国大会でしたので、申告書上の価値間違えにおいては減点を入れました。多くのミスがありま したので、より多くの目でチェックを行って頂ければ幸いです。 団体においては、高校生は3歩以上の移動した受けは少なく、落下しなければD得点が伸びる結果となり ました。しかし、内容は様々でCRRの羅列も多く見られました。CRRが2つ以上続く申告において、ル ール通り各々の連係で5名の関わりは見られるが、ほんの少し方向を変えただけやクラブを打ち合うだけの 関わりで5名の連係を成立させているもの。一方、音楽に合わせこだわりのある連係を構成しているチーム もあり、同じ0.3の重みの違いを感じました。団体特有の“共同作業”をいかに構成するかは作品の質の 評価につながります。Dでこの差は評価し難いですが、安全策ではなく重みのあるCRRに取り組んでいく ことを今後期待したいと思います。また、上位チームは見えやすい申告と内容でした。複雑な連係や交換で ありながら見えやすく明確であることも構成を考える上で重要と思いました。 ルールの変更・追加後の最初の全国大会であり、団体競技は新しい手具となった高校選抜大会において審 判員として参加させていただき、心より感謝致します。ありがとうございました。 個人フープ・クラブE1審 松本 弘子 フープとクラブの2種目を担当したが、高体連種目となっているクラブの方が、しっかり練習しているの か演技に流れがあり、安定した演技をしていた。フープは落下ミスも多く動きの繋ぎのなめらかさに不足が あった選手が目立った。特に上位の選手に大きなミスがあり、大変残念だった。 構成に工夫がある作品をきちんと評価しようと採点にあたったが、なかなか難しかった。伴奏音楽と動き が合っていて音楽の特徴をしっかり身体全体で表現している選手はまだまだ少なかった。難度のこなしや投 げ受け、手具操作などに余裕がなく、踊って魅せるまでには至っていない選手が多かった。 姿勢欠点も気になった。ルルベの高さ、DER でのシェネの膝の曲がりや受けの時の肘の曲がりなど基本的 な動き方に注意し、手具をもっと身体より遠くで大きく操作してほしいと思う。また、多くの選手に動脚水 平のフェッテピボットが行われていたが、動脚が下がっている選手がほとんどであった。クラブではパンシ ェバランスの準備動作が長すぎたり、回転からパンシェバランスでの繋ぎに間があったり、ジャンプターン の開脚の不足などこれからの課題であると思う。 来年度に向けて、しっかり課題を確認して練習し、大会ではよりよい演技ができるよう期待している。 個人ボール・リボンE1審 小嵜 さゆり 実施では、構成・実施のバランスのよい作品の見きわめが大切であることを改めて感じました。技の羅列 ではなく作品のコンセプトが見える演技構成の評価、選手のキャラクターと曲が合っているか等、芸術の採 点についての高体連審判資質の向上をめざしていきたいと思います。 レオタードのスカートの形についてはルール通り裁断と装飾は自由ですが、スカートの生地が選手のヒッ プを覆うことを守り、デザインに注意してください。今大会も演技終了後確認が必要な選手(チーム)があ りました。 女子団体演技者の入場についてトラブルがあり、ご迷惑をおかけしましたことをお詫び致します。男子団 体演技が終了していないうちに、女子チームの入場準備に対して観客席応援者から拍手(手拍子)があり、 男子団体演技および採点に支障がありました。配慮に欠ける大変申し訳ない行為でした。深く反省し、今後 は監督会議等で応援マナーの周知徹底を行っていきたいと考えています。 終わりなりましたが、本大会の運営に関しまして献身的にご尽力いただきました地元役員の方々並びに補 助役員の高校生の皆様に心より感謝致します。 審判長 鈴木あおい この度今大会審判長という立場を頂き、まずは高体連専門部の皆様、広島県体操協会の皆様、地元役員の 皆様、その他関係者の皆様より多大なるご協力とご支援をいただき、無事終了できましたことを、まず始め に御礼申し上げます。 本年1月の全国講習にていくつかの変更が出されて初めての全国大会となり、申告書の間違い、ルールの 認識違い、また全国大会での申告書の価値点間違いにおける減点を入れることなど、いくつか不安となる材 料はありました。研修で変更事項を中心に確認を念入りに行い、審判間での打合せのもと、実務に当たりま した。 全体的には、審判員の皆様のおかげで、わかりやすい点数、順位がついたように思います。技や難度の評 価だけではなく、それぞれの作品としての評価が重要であると思います。まず、それぞれの選手、チームの キャラクターにあった曲の選択が必要であり、またその曲をそれぞれが理解しどのように表現できるかが求 められていると思います。また身体の美しい基礎づくりと共に、手具操作の正しい基本練習をより重ねてい くことが必要とも感じました。そして私たち審判員は、ルールを熟知し、ルールに則って、誰からもわかる 点数を出していかなければならないということを、改めて感じさせられた次第です。 最後になりましたが、上西先生をはじめ地元広島の役員の皆様、高体連新体操部の皆様、本部派遣として お手伝いいただいた先生方には、沢山支えていただき、本当に感謝ばかりです。ありがとうございました。
© Copyright 2024